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不安

カイル様を見送りした後、午前はデビュダントのダンスの練習をする。

普段履いている靴より少し高めのヒールの靴に履き替えて講師の方と練習をした。

少しずつだが踊れるようになり、誉めて下さった。

カイル様が夜に少しずつダンスをして下さるからかもしれないと思うと耳まで赤くなりそうだった。

早めの昼食を食べると、その後はオーレンさんがマナーを教えてくれた。

ファリアス公爵家は公爵の中でも上の方らしく、陛下に呼ばれるのもおそらく一番目だと言われた。

挨拶を優雅にと、お辞儀の練習をした。


その時カイル様が帰ってらした。

まだ昼すぎで随分早いお帰りだった。

カイル様は足早に書斎に入って来た。


「カイル様、どうされたんですか?」

「王都に召集がかかった。すぐに出る。ルーナ、来てくれ。」


緊急の召集だったみたいに見えた。

カイル様に連れられ部屋に行くと、すぐに王都に行くと話してくれた。


「明日の夜には帰るから、待ってなさい。」

「はい…」

「出発する前にルーナの顔が見たかった。」

「それでわざわざ帰って下さったのですか?」


カイル様は少し笑ってくれたように見えた。


「王都に行ってもあまり時間はないが何か土産を買って帰る。」

「もう沢山頂きましたから…気をつけて行って下さい。」

「すぐに帰って来るから一人で邸を出るなよ。」

「はい、待ってます。」


すぐに出発しなくては行けないのに私に会う為に帰って下さったのが嬉しかった。

私を抱き締める為に帰ってきて下さったと思った。

カイル様を玄関まで見送りすると、外にはヒューバート様が馬と一緒に待っていた。


「ヒューバート様もお気をつけ下さい。」

「早馬で行きますから明日には帰りますよ。」


いつもの調子でヒューバート様は言って下さった。

カイル様はヒューバート様やオーレンさん達がいるのに、頬に優しく口付けをして下さった。


「では、行ってくるぞ。」

「はい、いってらっしゃいませ。」


頬が熱いのと同時に今日はカイル様の邸に来て初めて一人になる。

少し寂しく感じていた。


「オーレンさん、緊急召集なんてなんでしょうか?」

「騎士団のことはわかりかねます。」


もしかして、戦に行くのかと不安になった。

そうでなければいいと願っていた。


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