吐きそうです
「…何か入れました!?」
「何も、ただのアイリッシュミルクティーです。もしかして、ブランデーは初めてですか?」
お酒が入っているのですか!?
一気に飲みました!
しかも、ミルクより強く味があったかもしれません!
絶対、量が多いです!
「か、帰ります!」
焦っているのか、お酒のせいかフラつくと、ヘイデン様に支えられた。
「触らないで下さい!」
「騒ぐと、ファリアス公爵様にご迷惑がかかりますよ。まさか、ファリアス公爵夫人が酔うなんて、品がないですからね。」
吐きそうです。
お酒は気持ち悪いです。
ヘイデン様も気持ち悪いです。
口を抑え、廊下に出るとヘイデン様は、連れが気分が悪いようだ、と説明し、そのまま私を連れて行く。
そして、ハッとした。
気がつけば人気のない廊下。
逃げようとすると、そのまま連れていかれる。
「離して下さい!っ、このまま吐きますよ!」
ヘイデン様は、うるさい!と怒鳴りながら階段を上がって行く。
「シャロン様の婚約者でしょ!シャロン様が何とおっしゃるか!」
「あれは、金目当ての女だ!」
「私にはカイル様がいます!」
変態です!
絶対この男は変態です!
パシーンッ!!
ゾッとし、ヘイデン様の顔を平手打ちしてしまった。
平手打ちの音が響くと共にそれに驚いたのか、ヘイデン様は私を落とすように、離した。
カイル様!
助けて下さい!
そう思いながら逃げようとすると、廊下にある花瓶が目の前にあった。
思わず、ヘイデン様に向かって花瓶を落とすと、ガシャーンッ、と大きな音を立てて割れた。
何故かヘイデン様の叫び声が聞こえたがそれどころではなかった。
昼間で、ホテルの部屋には人がいないのか誰も出て来ず泣きそうになってしまった。
その時、一つの部屋から人が出てきた。
「た、助けて下さい!」
助けを求め叫ぶと、私の名前を呼んだ。
「ルーナ…、ルーナ!?」
誰ですか?
私を呼びながら、誰かが駆け寄って来た。
「ルーナ!どうしたんですか!?」
「どなたですか…助けて下さい…」
「俺です。ジュードです!」
「あの男は不届き者です!」
「…あの、うずくまっている男ですか?」
ジュード様が見ている先を見ると、ヘイデン様は割れた花瓶の所でうずくまっていた。
「吐きそうです…。」
ジュード様がヘイデン様を見張っているからと、その間ジュード様の部屋のトイレを貸してもらい、思いっきり吐いた。
そして、その間にカイル様がやって来た。




