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ゼリー事件 2

三人で腰を落とし、話していると、カイル様とシャロン様がやってきた。

カイル様は心配そうな顔だった。


「ルーナ、怪我はないか?ガラスが割れたと聞いたぞ。」


どうやらシャロン様が呼んできたようだ。


「遅いから心配したぞ。」


早足で寄ってくるカイル様に私は立ち上がり、近付いてしまった。

そこで、ヒューバート様が話した。


「団長、グラスを割ったのはシャロンです。後片付けもせずに行ってしまったようです。シャロン、ルーナさんに謝罪を。」


「わざとではありません。きちんと謝りました。」


シャロン様の堂々とした態度にヒューバート様がこっそり耳打ちしてきた。


「あれが悪役令嬢です。」


確かに少しふてぶてしいと思ってしまい、うんうんと頷いてしまった。


「シャロン、片付けをするんだ。」


カイル様が冷たく言った。

シャロン様はカイル様の言葉に使用人を呼んで来るとは言わなかった。


ヴィンス様は当然のようにホウキをつきだした。


渋々なのだろうが、残りをシャロン様が片付け、それを見張るようにカイル様は見ていた。


「ルーナ、割れたグラスで怪我はしてないか?指を見せなさい。」


カイル様は私の両手を握りしめ、指や手に口付けをしていた。


「してませんよ。…ゼリーは失くなりました。すみません。」

「ルーナのせいではない。残念だが、」

「型の崩れた失敗作だけ残りました。また作りますね。」

「ではそれを貰おう。」

「残ったやつで、綺麗に盛り付けしてませんよ。」

「かまわない。」

「本当にいいのですか?」

「ルーナが一生懸命作ったものだ。食べさせてくれ。」


カイル様はまた両手に口付けをしてきた。


横にいるヒューバート様に何気に気付くと、親指を立てて笑顔だった。

シャロン様は何だか見るのが怖いので見るのは止めた。


残ったゼリーを冷蔵庫からだし、少しでもキレイに見えるようにとグラスに入れた。

何だかジュレっぽくなったと思った。


掃除が終わると、シャロン様は、すみませんでした。と謝り部屋に帰った。


「ルーナさん、俺達にも頂けますか?」

「ヒューバート達はいらないだろう。腹が減ったならチーズでも何でもあるだろ。」

「だ、大丈夫ですよ。残ったものでよければ、お二人もどうぞ。」


そう言い、ヒューバート様二人にも一つずつ渡すと、部屋へ帰った。


私とカイル様も部屋に戻り、カイル様の着替えを手伝った。

どうやら、着替えの途中でシャロン様が呼びに来たのだろう。

タキシードの上着がソファーに脱ぎ捨ててあった。


「カイル様、寝る時の上着は要りますか?」

「ズボンだけでいい。ルーナもガウンを脱いだらどうだ。」


部屋にいる時はガウンを着ないからいつも通り、ナイトドレス一枚になり、カイル様の隣に座った。


「頑張って作ってくれたのだな。」

「はい、本当は今日ハートの型のカップを買ったのですけど…」

「今日の買い物はそれだったのか…」


割れたものはしょうがないがやっぱり残念だった。

でもカイル様は型の崩れたゼリーを食べて下さった。


「あの、カイル様。私のことお好きですか?」

「当然だ。」

「では、ひ、一口だけ食べさせてあげます。」


食べさせてあげるのは初めてで、緊張してしまったけど、カイル様は何だか嬉しそうだった。


ゼリーをカイル様の手から受け取ると手と手が触れ益々緊張してしまう。


一口カイル様に食べさせてあげると、カイル様は旨いな、と言い優しく微笑んだように見えた。


私が持っているゼリーとスプーンをカイル様はテーブルに置くと私を抱き寄せた。


「明日は二人で夕食に出掛けるか。」

「二人でですか?嬉しいです。」


「お前が好きだ。」

「私も大好きです。」


そのまま、流されるまま押し倒され、悪役令嬢の起こしたゼリー事件の夜は過ぎていった。






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