閑話⑨ ガブリエルの視点 【前編】
話は『第201話 漆黒の泉より這い出る者』のガブリエル視点から始まります。
前回の話を投稿した日の夕方頃から何故か、自宅のインターネットが繋がらなくなってしまいました。
今現在は家の近所にあるインターネット喫茶に、Excelで書いておいた原稿をUSBメモリで持ち込んで投稿しています。
そのため、次の更新時(6/30予定)もしくは、自宅のPCが元の状態に戻るまで御感想の返信、メッセージの返信、活動報告のコメント返信、誤字の修正等ができないので御了承ください。
今は色々調べて、一刻も早くPCが使える様になるのを祈っている次第です。
長々と前置きを並べて失礼しました。
その日、私は神王様の御部屋を掃除しながら下界に降りられた神王様の御無事を今は亡き、前神王様にお祈りしていました。
「神王陛下が無事に天界にお帰りいただけますよう、どうかお願いいたします」
本当なら神王様の護衛騎士となった、セフィリアやリグルドとともに私も神王様の御傍にと思っていますが、天界に所属する天使の中でも私達熾天使クラスは神気が大きく、下界に悪影響を及ぼす危険性があるとの事で余程の事がない限りは下界に降りる事は出来ません。
神王様曰く、『大きな怪我をしても瞬時に何事もなかったかのように回復するから心配ないよ』と何時も仰られていますが、それでも怪我をしないに越した事はありません。
「さて、神王様がいつお戻りになられても良いように食料の備蓄を確認しましょう」
そう思いながら、食糧庫の扉に手を触れようとした瞬間、不意に天界内が慌ただしくなった。
何が起こっているのか確認しようと、神王様の私室の扉を開け通路に出たところでウリエルとラファエにぶつかった。
「この騒ぎは一体なんですか!?」
「ああ、ガブリエルか、丁度今呼びに行くところ所だったんだ」
「神王様が降りられた世界に於いて大規模の召喚魔方陣の魔力が検出された。魔力の規模から言って魔族が絡んでいることは間違いない」
「そんなまさか…………神王様が行かれた世界にはそのような情報は含まれてなかったはず……」
「その事についても既に調査が始まっている。ミカエル様からご説明があるはずだ」
それから数分後、私達3人の熾天使は高速飛行でミカエル様が居られる下界監査室へ文字通り飛び込んだ。
「緊急招集を発令した私が言うのもなんだが、もう少し落ち着きをはらって行動しろ。下々の天使に示しがつかんぞ」
監査室へ雪崩れ込んだ私達3人を、既に部屋の中に居たミカエル様が自らの頭を片手で抑えながら窘める。
「そんな事よりも神王様の身に何が起こっているのか説明してください!」
私は折り重なるように倒れているウリエルとラファエルを力任せに引き剥がすと、呆れ顔のミカエル様へと詰め寄った。
まぁ、ウリエルはその影響で部屋の壁にめり込む様な感じで気を失っていますが。
「今現在で判明している事は2つ。1つは神王様に手渡しした下界情報カードが何者かによって改竄されていたこと。もう1つは改竄を加えたと思われる者を捕えたは良いが、牢の中で惨殺されていたことだ」
「情報カードの改竄ですか?」
「そうだ。監査機械に情報カードの履歴が残っていなかったので、もしやと思い調べさせたのだが…………」
ミカエル様が項垂れているところへ、1人の天使が報告を行った。
「ミカエル様、悪魔討伐隊Sランク50名及び、Aランク50名配置につきました!」
「では急ぎ、神王様の救援に向かえ!」
「はっ!」
「では、私も一緒に行きます」
「ま、待て、お前は行ってはならん!」
ミカエル様は私の肩を掴もうと手を伸ばしてくるが、先ほど力任せに引き剥がした際に壁に頭をぶつけて気を失っているウリエルが上手い具合に邪魔になったため、あと1歩のところで私には手が届かなかった。
私はこの隙に悪魔討伐隊の面々に混じってクロノス様の元へ行き、神王様が居られるであろう下界へと降り立った。
クロノス様は直前で私が討伐隊の中に居たことに気付いたらしいのですが、何も言わずに送ってくれました。
それから暫くの時が経過した後、下界の地に降り立った私たちが見た物は、今まさに漆黒の泉からデュラハンやスケルトンといった魔族の軍勢が這い出るところでした。
そして瓦礫の山となった場所の上空には神王様がセフィリアとリグルドを伴って、漆黒の泉を心配そうに見つめている姿が見受けられた。
「神王様、ご無事で何よりでした。お怪我は御座いませんか?」
私がそう問いかけると、神王様は可也吃驚なされた御様子で私が何故此処に居るのかを聞いてきた。
その後、神王様の御無事な御姿に安堵していると、不意に神王様が疑問を持たれていた指示された方向を見て背筋が凍るような思いがした。
「なっ!? どうしてあの者が此処に!」
額から出た冷や汗を右腕の袖で拭った次の瞬間、私と神王様の目の前に先ほどまで見ていた者が突然現れた。
「どうした? 知ってい「これはこれは、どうして貴女がこのような場所にいるのです?」……!?」
不覚! この者の能力の前では一瞬たりとも視線を逸らせては駄目なのに…………。
しかも神王様の御前でこのような失態をするとは。
私は無駄と知りながらも不思議そうな顔を為されている神王様の手を引いて、距離をとった。
「おやおや、私も嫌われたものですね。今は何もしませんよ? 今・は・ね?」
「魔将軍オルセシス、貴様が何故此処に…………」
何千年、何万年経とうとも決して、貴様のことは忘れる事など出来はしない。
現在の神王様の魂の持ち主である、前々神王様の御命を奪った憎んでも憎み切れない魔将軍オルセシスの姿を。
私の背に匿っていた神王様の事を、今一番に知られてはならない者にばれてしまった。
ただ、今はその気ではなかったらしく『いつでも好きな時に殺せる』と言わんばかりの余裕さで神王様の御命を奪われずに済んだ。
それから数時間後、神王様が我が身を省みずにセフィリアを振り切って隣町に移動したデュラハンを倒すために移動してしまった事や、少年の姿をした魔族が最後に漆黒の泉から姿を現して腕の一振りで悪魔討伐隊数人を屠ってしまったりと若干のトラブルがあったものの、無事に神王様と御一緒に天界へ戻ることが出来た。
「はて? 何か重大な事を忘れているような? まっ、神王様も御無事ですし大したことはないでしょう」
一時期はそう思っていたのですが、私がクロノス様の時の神殿に帰ってくると、其処には地獄の鬼を思わせるかのように、肩を震わせながら顔を極限まで歪めたミカエル様とメタトロン様の御姿が。
此処に来て漸く忘れていた事を思い出した私は、まるで犯罪者の如く左右を身動きできないようにガッチリとミカエル様とメタトロン様に挟まれ、反省室送りとなってしまいました。
結果的に下界に魔将軍オルセシスが居た御蔭(?)で私の罪は軽いもので済まされました。




