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宴の始まり

昼にも投稿しているので、ご注意ください。


 兄上からパーティーに参加するように言われてから十数日が過ぎた。


 今、俺は王城の入り口の前に立っている。隣にはエリアナさんが立ち、俺と腕を組んでいる。カタリナとキリエもいるのだが、二人はエリアナさんほど、俺と密着しようとはしないようだ。

 エリアナさんは、もっと積極的にしなきゃ駄目だと言っているけれども、二人は困っているので、ほどほどにしてあげた方が良いと思う。


 まぁ、それはそれとして、俺は現在、城の入り口で待たされているわけだ。まぁ、待たされているといっても、兄上から城に入る時は一緒の方が良いと言われているから待っているだけなんだけどさ。

 入り口で受付のようなことをやっている使用人の人は中で待っていても良いとは言っているけど、兄上から、そういうことを言われているから待ってないとね。

 そういうわけで、俺より後から来た人が城の中に入って行くのを眺めながら待っているわけです。


 俺達以外の招待客が、こちらをチラチラと見ているけど、別に何も言ってこないので気にはなりませんね。

 堂々としていれば良いんですよ、堂々としてれば。

 そういうわけなんで、カタリナとキリエは恥ずかしがって俺の後ろに隠れてないで、前に出た方が良いと思うんだけど。エリアナさんを見習った方が良いよ、滅茶苦茶、堂々としてるからさ。

 あと、ジーク君は逃げたいって気持ちを全身から出さないでね。鬱陶しいからさ。


「どうして、僕はこんなところにいるんでしょうか?」


「俺の従者だから当然だろう?」


 従者も無しでパーティーに出られるかよ。パーティーは社交の場だぞ。

 なんていうか、こう、俺が『おい』って声をかけたら、ジーク君が何も言わずペンと紙を持ってきて、その場で紙に約束を交わしたり、『次はいつお会いできますかな?』とか聞かれたら、俺にそっと耳打ちして今後の予定を話してくれたりするんだよ。まぁ、俺の予定をジーク君が知っているわけもないだろうけどさ。


「僕は平民なんですけど、こんな風に明らかに人目につく場所にいていいのかという疑問もあるんですが……というか、服装がどう考えても、従者という感じじゃないんですが……」


「俺にみすぼらしい格好の奴を連れて歩けと言うのか?」


 そんなの嫌だぞ。そもそも、別にたいした服じゃないだろうが。今の所、俺達の前を通り過ぎていった奴らの八割よりは良い服ってだけだぞ。


「良いかしら、ジーク君。こういう場は舐められた方が負けなの。だから、堂々としていないと駄目よ。アナタが舐められるっていうのは、私やアロルド君が舐められるってことと同じなの。そのことを肝に銘じてね」


「いや、そんなことを言われても……」


「大丈夫。ジーク君には実績があるから。今の時代、籠城戦をして、そのうえ砦の指揮までやった人間なんていないから、それを言ってやれば良いのよ」


 マジかよ。スゲーな、ジーク君、自慢できるじゃん。そうなると俺は何が自慢できるんだろうな。

 うーん……マズいな、自慢できることが分からない。ドラゴンをぶち殺したとか、大砲で城壁をドッカンドッカンやったのは自慢できるのだろうか?

 出来るなら、俺以外にやったことのないことを言いたいんだけど、どうしたもんかなぁ……


「やぁ、遅れてすまなかったね」


 俺が悩んでいると、兄上がようやくやって来た。考え事をしている最中なんで来ないで欲しかったのだけれども、来てしまったのは仕方ない。文句を言うのも良くないので、普通の対応をしとこっと。


「別に気にする必要はないさ」


 おや、兄上のお嫁さんが、チラッと俺の周りの女の子を見た後で、俺の事をゴミを見るような眼で見てますね。まぁ、どうでも良いけどさ。

 しかし、普通過ぎて印象に残らない人だなぁ。あれ、エリアナさん、なんで勝ち誇った顔をしてんの? エリアナさんの方が美人なんだから、そんなに対抗意識を燃やす必要は無いと思うんだけどさ。


「な、なな、何故、アロルドがここにいるっ!?」


 あらま、父上もいるし母上もいるんですか? まいったなぁ、一家勢ぞろいかよ。とりあえず、久しぶりの再会だし、挨拶しておくか。


「なぜって、アロルドも招待されたからに決まっているではないですか、父上」


 おっと、兄上に先に言われてしまったぞ。どうすっかな、ちょうど良いタイミングを逃してしまったぞ。とりあえず、同意の意味も含めて『フッ』って笑っておくか。


「あなた、私は気分が悪く……」


 なんか、俺が微笑みかけたら、母上の顔色が悪くなってしまいました。父上が、よろめく母上を抱きとめていますね。俺も結婚したら、あんな風にラブラブでいたいものだ。


「どうやら、母上は気分が優れないようだ。少し風に当たった方が良いだろうから、僕達は先に会場に入ろうか?」


 兄上がそう言うなら、そうしようかね。今日は面倒くさいことはエリアナさんか兄上にお任せの方向性で行こう。

 おっと、ジーク君が逃げようとしたので、首根っこを掴んで引っ張っていきましょう。


「ああ、ジークフリート君も連れていくのか、それは良いね」


 兄上から御墨付きも貰えたから、お前も来るんだよ! 嫌がっても連れていくからな!



 そういうわけで、片方はエリアナさんの腕と組み、もう片方をジーク君の首に巻き付けて、パーティー会場に入りました。


 いやぁ、凄く視線を感じますね。俺を見るなり、逃げようとする人もいますよ。足とか震えちゃってる人は、前にムカついたから、家に魔物に死体を投げ込んでやった人ですね。俺はもう気にしてないから、水に流してあげよう。


 なんか、エリアナさんを見て、こそこそと話している人がいるのが気になるね。

『家を追放された女が……』とか『王子殿下の御下がりか……』とか『売女が、男に取り入っていい気なものだ……』なんて言ってるけど、よく意味が分からんね。ただまぁ、良い意味で言っているわけでもなさそうなんで、ちょっと詳しく話を聞いておきましょうかね。


 俺はエリアナさんと腕を組んだまま、コソコソと話している人達の所に行く。


「こちらを見て何事か話していたようだが、何か御用かな?」


 俺が行って、そんな風に尋ねると、露骨に狼狽えた様子になってしまったので、なんか傷ついた。用がないなら、あまりこっちが気になることをしないでほしいもんだ。これだと、俺が馬鹿みたいじゃないか、いらん恥かいたし、どうすんだよ。


「い、いえ、なんでもありません……」


「そうか、それは失礼した。ただ、あまりに私たちの方を見ていたので、あれでは気にするなという方が難しい。これからは、何か話すのなら気をつけた方が良いな」


 俺が微笑みながら、肩を叩くと、その人たちの顔が真っ青になってしまいました。調子悪いなら帰った方が良いと思うよ?


「お喋りに興じるのも良いだろうが、ほどほどにしておかなければ、無事に帰れなくなるかもしれないぞ?」


 体調が悪くなるまで、話してないで、さっさと帰った方が良いってつもりで言ったんだけどね。なんか、更に震えだしてしまったんだけど、どうしたらいいのかね、これ?


「その辺にしてあげたら、アロルド君。彼らも調子が悪そうだし、もう、お話し・・・をする気も無くなったと思うわ」


 そうっすか、じゃあ俺も何も言わないことにしておこうっと。じゃあ、さいならってことで、その人たちの所から俺とエリアナさんは離れる。


「コソコソと陰口ばかり叩いてるだけで、攻撃したつもりなってる馬鹿共は、これくらい脅してやったほうがいいわね。前は詰め寄っても、とぼけられて終わりだったけど、アロルド君がいるおかげで、素直になってくれるみたいだし」


 エリアナさんが楽しそうで何よりです。


「今日はこの調子でガンガン、プレッシャーをかけてくわよ。この会場にいる全員の胃に穴を開けてやるくらい気持ちでね」


 それだったら、剣を持ってくれば良かったな。胃に穴を開けるなら、素手より剣の方が手っ取り早いんだけど。

 素手だと手が汚れるから、ちょっと嫌なんで、そういうのは無しにしてほしいもんだ。


 おっと、俺が席を外している内に今度はカタリナとキリエが囲まれていますね。ジーク君は……色んな貴族に囲まれていますね。モテモテで羨ましいことだ。

『砦の指揮を執ったと聞いたが本当かね?』

『やはり冒険者など辞めて、私の家に仕えないか?』

『話の通じる冒険者となるとキミしかおらん。また、依頼をするので、その時は頼む』

『あの連中と関わっていると正気を失う。将来を考えるならば、早々に縁を切った方がいい』

『キミならば引く手数多だろう。我々の話も考えてみてくれ』

 うーん、何を話してるか分からんけど、ジーク君なら放っておいてもいいでしょう。というか、思い出したんだけど、ジーク君には俺がいない時のカタリナとキリエのエスコートをして欲しかったんだけど、何やってんだろうか? そういう話はしてないけど、そこら辺は察して動いてほしいね。


「俺のパートナーに何か用かな?」


 俺はカタリナとキリエに群がっている男どもに質問してみた。


「パートナーって、え? そちらの腕を組んでいる女性は?」


 男の一人が俺に質問してきた。質問を質問で返さないで欲しいが、まぁ、俺はそういう細かいことは気にならないので普通に答える。


「エリアナも俺のパートナーだが、彼女に何か問題でも?」


「い、いえ、美しい方だと思います……」


 そうでしょう、そうでしょう。エリアナさんは美人さんです。人形みたいに完璧に整った顔立ちで、氷の女王みたいな雰囲気だけど、そこが良いよね。

 今日は俺の黒い服に合わせて黒いドレスを着ているけど、胸元が大きく開いていてエロいです。さっきから、チラチラとエリアナさんの胸元を見ている男共がいるけど、バレバレだからやめた方が良いよ。

 まぁ、銀色の髪を流して、黒いドレス着こなすエリアナさんは煽情的な月の女神って感じだから、見ても仕方ないよね。

 そんな美人さんと腕を組んでいられる俺はなんて幸せ者なんでしょうか。なんというか、こう、ふつふつと優越感が湧いてきますね。


「こういう場に一人で複数の女性を連れてくるというのは、いかがなものでしょうかね? 王子殿下の婚約披露の場に、一人で何人も女性を侍らせるような真似を見せつけるのは適切ですか?」


 なんか、俺に言ってくる奴がいたが、何を言っているか分からないな。別に女の子をいっぱい連れ歩いたっていいじゃないか、華やかなんだしさ。俺としてはキミらの方に言ってやりたいよ。


「俺としては、一人の女性も連れて来られないような甲斐性なしの方が問題だと思うが?」


 女の子なんか星の数ほどいるんだから誘ってくればいいのに、そういうこともしないで、こういう場に来てから、慌てて相手を探すってほうがカッコ悪いよね。

 おや、何をグヌヌって顔をしているんでしょうか? なんか顔を赤くして、どっか行ってしまいましたね。

 まぁ、どっか行ってしまった人のことはいいでしょう。それよりも、カタリナとかキリエを放っておくと危ないな。


「すみません。アロルド様」


 カタリナが申し訳なさそうに言うけど、別に気にする必要はないと思うね。


「美人に男が寄ってくるのは宿命のようなものだ。とはいえ、あまり、お前たちの周りに俺以外の男がいるのは面白くないな」


 一応、保護者だし、上司でもあるしね。この三人が無事に結婚出来るまでは悪い虫が寄って来ないように、俺が見張ってないとね。美人だから尚更心配ですよ、俺は。

 カタリナはエリアナさんとは逆に優し気な美貌の柔らかな雰囲気は凄く良いと思いますし、みんな良いと思っているんじゃないですかね?

 金色の髪はキラキラしてて綺麗だし、今日の白いドレスは胸元は露出していないけど、体のラインは分かるものだし、胸の膨らみも目を惹くよね。

 エリアナの時と同じで、やっぱりチラチラと胸を見てる男がいるけど、そういうのは良くないと思うよ?

 まぁ、エリアナとは逆に太陽の女神さまみたいな感じだし、見たくなるのは仕方ないのかもしれないけどさ。

 キリエは少し幼い感じもするけど、顔は可愛いし、やっぱり注目されてるね。

 青いドレスを勧めてみたけど、青味がかった髪色とあわさって、涼やかな感じがして良いと思う。本人もクールっぽい性格だし、合ってると思うんだけど、どうだろうか?


 ん? なんで、カタリナは微妙に赤くなっているんだろうね? 良く分からんね、調子悪いなら、肩を抱いておこうかな。

 うーん、カタリナの肩を抱いたけれども何だか体温が高いね。胸元は開いてないけど、肩は露出してるんで直接、肌に触れるから、良く分かるんだけどさ、俺が肩を抱いたら、どんどん熱くなっていくんだよね。

 顔を赤くなって、なんか色っぽいです。


「あの、アロルド様……みなさん、見ていらっしゃいます……」


「別に見られて困るものでは無いだろう?」


 介抱してるんだから悪いことじゃないだろうしね。俺としてはカタリナが調子悪くなって倒れられたら困るから肩を抱いてるだけですよ?

 まぁ、体が密着してるので、柔らかな部分が当たって気分良くはあるし、カタリナの匂いを嗅ぐのも悪くはないんだよね。まぁ、役得って奴でしょう。


「駄目よ、カタリナ。もっと密着して。男として格でアロルド君に負けてるってことを理解させるのよ。連れてる女のレベルで男の格ってのは上がる物なんだから。嫉妬させるくらいで良いのよ。ほら、キリエもアロルド君にくっついて」


 エリアナさんが小声で、カタリナとキリエに指示を出してますね。まぁ、どうでも良いんだけど。しかし、エリアナさん、隙を見て、カタリナとキリエのお尻を触りすぎだと思うんですけど、ついでに俺のお尻を触るのは……まぁ、気持ち悪くも無いので良いです。


 しかし、男共の羨望の眼差しが凄いね。特に独り身で来ている奴らからの殺気みたいな物が凄いです。


「そんなに物欲しげにしているなら、卿らも女性の一人くらい誘って来れば良かったではないか? 誘えば一人くらいは一緒に来てくれる女性もいたのではないか?」


 気になったので、俺に羨望の眼差しを向けてくる奴らにアドバイスの意味も込めて言ってあげました。

 俺は誘ったら来てくれたんで、キミらも誘えば来るんじゃないかなと思うんだけど。

 うーん、アドバイスしたら、なんか殺気が増したような気がするけど、なんでだろうね。良く分からないな。


 おや、良く見てみたら、騎士団の副団長さんがいるじゃないですか。あ、目が合った。こっちに気づいたのか近づいてくるね。


「貴様っ! どうして、ここにいる!?」


 うーん、なんだか機嫌が悪いな。そんなに大声出さないでくれよ、みんな見ているじゃないか。


「どうしてと言われてもな。招待されたのだから、ここにいるのは当然だろう」


 兄上が偽造したっていう招待状もあるし、それ以前に西部でのドラゴン退治について報告しに来いって手紙も来てたから、ちょうど良い機会なんで、まとめて済ませるために来たんだよね。

 王子が婚約したってのを発表するみたいだから、ついでに俺が竜退治したっていう話もしちゃおうと思うんだけど、どうだろうか? 良いことが重なって素晴らしいと思うんだけど。


「なんだと? 貴様が招待されるわけが――」


 俺は面倒くさいので、招待状を副団長さんに渡しました。


「……確かに、王家の紋章が記されている。それに筆跡もウーゼル殿下の物だ。だが、どうして……」


 全部、兄上がやってくれました。兄上の所には、ちゃんとした招待状が届いていたようなので、さほど苦労はせずに同じような物を作れたようです。


「く、どうやら本物のようだな」


 兄上もあんまり詳しくは調べられないだろうって言っていたようで、その通りになりましたね。実際に会場に入ることが出来れば、そうそう偽造だとは言えないとかなんとか。

 偽造だと分かっても、それが判明すると都合の悪いことになる人もいるらしいです。偽造したものに、まんまと騙されて、会場の中に入れたとなるといろんな人の権威に傷がつくからだとか。

 俺だったら、偽造を見抜けなかったり、簡単に偽造されるものを作った奴には御仕置きするけど、そう言うことは出来ないんだろうか。お仕置きする人間なんかは百人ぐらいで済むだろうに。百人くらいに御仕置きするのも面倒くさがるとか良くないと思うよ。


「だが、あまり良い気になるな。竜退治など、我々、王国騎士団でも可能だったのだ。宰相共が我々を出し渋らなければ……」


 あ、すいません。聞いてませんでした。


「何をしたところで、貴様らなどは所詮はゴロツキだ。そう何度も上手く行くと思うな」


 はぁ、そうっすか。でも、なんの話ですかね。

 まぁ、それは良いんですけど、周りの人が俺達を見ていますよ。恥ずかしいんでやめてくれませんか? 俺まで変な人に見られて評判悪くなっちゃうよ。


「我々だけでも竜は退治できたということを忘れるなよ」


 あ、今のはちゃんと聞いていました。けどさぁ、キミらじゃ無理なんじゃないかな?


「それは無理だろう。そちらは城壁の中でゴロツキを追うことが仕事だろうに。壁の外へ出て魔物と戦うなど出来るのか?」


「なんだと?」


 ん? なんで微妙に怒った雰囲気なのかな?

 だって役割分担があるじゃない。王国騎士団の人は街中の悪い奴らを捕まえるのが仕事で、こっちは魔物を狩るのが仕事だし、外へ出て戦うのは不利だと思うんだけど。


「我々が安全な場所にこもっている臆病者だと言いたいのか?」


「いや、単にそちらはゴロツキを追っているのがお似合いだと言いたいだけだ」


 なんか拡大解釈してきて面倒くさいなぁ。誰も臆病者だなんて言ってないと思うんだけどさ。


「ゴロツキが随分と大層な口を聞くじゃないか?」


 うーん、なんか殺気が感じられるんだけど、どうしようかね。

 殴り合いをしても良いけど、上手く手加減できるかな。流石にパーティー会場で頭吹っ飛ばすのはマズいしな。首をへし折ってやろうか。


 と、俺が戦闘をしてやろうかなと思った時だった。楽器が鳴り響き、王族や、王族と親しい人たちが会場に入って来た。


「ちっ、運が良かったな」


 なんか、副団長さんが、そう言ってから、俺の前から去って行った。

 いや、王族が来たくらいで逃げるとかなんなんだろうか? 別に関係ないと思うんだけどさ。


「アロルド君、跪いて頭を下げなきゃ駄目よ」


 エリアナさんが小声で俺に伝えてきますが、なんで跪かなければいけないだろうかね?

 まぁ、エリアナさんの言う通りにしますけどね。


「楽にせよ」


 偉そうな声が聞こえたんで、俺はすぐに立ちあがる。別に跪いて頭を下げるだけなんで、別に何ともないし、辛くも無いので、楽にしろと言うのも変な話だ。

 バカなんじゃねぇの、最初から楽だっつーのって言いたいけど、みんな黙っているし黙っていようっと。さっき、あれだけ五月蠅かった副団長さんも黙ってるしさ。


「皆、我が息子の婚約を祝うために集まってくれて感謝する」


 確か、あの人は王様だったよね。えーと、それって、今日のパーティーはウーゼル殿下の婚約を祝うためのものだったのか。へー初めて知ったぜ。

 で、ウーゼル殿下の御相手はどなたですかって……え?


「皆、私の婚約を祝う為に集まってくれて感謝する。既に知っている者もいると思うが、今日ここで、改めて私の未来の伴侶となる女性を紹介をしたい」


 王子の隣に立っている女の子は……


「彼女の名はイーリス・エルレンシア。私の将来の妻だ」


 マジかぁ、今日の婚約発表ってイーリスと王子のだったのか。うわぁ、知らなかった。知ってたら来なかったよ。何が悲しくて、昔の婚約者だった子の婚約発表を聞かなきゃいけないんだよ。


 なんか、すっげー気まずいんだけど、帰っていいかな? でも、帰れなさそうなんだよね。どうしようかな……


 うん、気にしないことにしよう。

 そういうわけで、昔のことは気にしないで、俺はパーティを楽しむことにしました。

 ついでに、客として来てるんだから、婚約の御祝いも言っておこう。あ、あと大事なことを伝えなきゃいけないんだった。忘れないようにキチンと王様とか王子とかイーリスに伝えとかないとな。


 さて、王子の話が終わったら、ちょっと王子の所に顔を出すとしますか。直接、顔を合わせるのは久しぶりだから、どんな反応をするんだろうね、楽しみだぜ。










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