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西部という土地

 


 はぁ、かったるい。調子に乗って人を増やした結果、物凄く面倒くさいです。毎日のように揉め事が起こるし統率取れて無さ過ぎで、あまりにも鬱陶しかったから、本気で怒ったら、雰囲気が葬式みたくなってるし、どうすんだよ、これ。既に帰りたくなってきたんだけど。


 それに、西に進むにつれて魔物が明らかに多くなっていくんだけど、どうなってんだ、これ。南部も魔物が多かったけど、南部とは方向性が違うんだよな。南部の魔物は引きこもり体質で、西部は徘徊系という感じかな。


 俺と同じような感覚を持っている奴らは多いようで、それに関して、オリアスさんが講釈してくれた。


「西部はガルデナ山脈から定期的に強い魔物が下ってくるんで、魔物同士の縄張り争いが頻発すんだよ。縄張り争いに負けた魔物の群れは、新たな住処を探して西部を動き回る。で、他の魔物の縄張りを奪うなりなんなりして、また別の魔物が西部中に散っていくわけだ」


 生存競争の激しい土地なんだね。怖い怖い。


「魔物がそこら中をうろつき回っているせいで、畜産業は発達しなかった。基本的に魔物は肉食だからな。家畜なんか、育てても魔物のエサにしかならねぇんだよ。下手したら魔物をおびき寄せるだけだしな。そういうわけで、麦とかの穀物を育てる方向に進んだというわけだ」


 なに牛とか豚の肉を食べられないの? やだなぁ、帰りたくなってきたよ。


「基本的には川魚を食っているな。後は地味に馬肉料理も有名だったりする。馬は大抵の魔物から逃げられるくらいには足が速いんで、西部では結構な数が繁殖していて、野生の馬を捕まえて食ったりもしてる」


 マジかよ。西部人怖いんだけど。馬とか食うって、頭おかしいんじゃねぇの? 魔物を食うなら分かるけど、馬を食うって、どういう頭の構造してたら、そんなことできんの? 馬を食うのは無しにして、魚かぁ、俺って魚嫌いなんだよね。生臭いしさ、お腹痛くなりそうじゃん、アレって。


「ゾルフィニルって大物が西部に現れたせいで、西部の魔物の生息状況もだいぶ変わってんだろうから、気をつけた方が良いな」


 オリアスさんの言った通り、西部の魔物は凄いぜ。家を無くして放浪してるって話も納得の狂暴さと、徘徊率。草原を移動しているだけで、地竜の群れに遭遇するくらいだしな。腹が減ってるせいなのか、人間を発見するなり突っ込んでくるような奴らだったよ。こちらをエサだとしか認識できてないんじゃないかな。


 苦戦? するわけないじゃん、雑魚ですよ雑魚。

 探知一号を筆頭にした斥候役の奴らが周囲を警戒してるんで、大抵の魔物に対して、先手を取れるんだよね。

 それに、突っ込んでくる地竜の群れに対しては、魔法使いの集団が土を操る魔法で落とし穴を作ってくれるんで、そこに落とせばいいし。毎日十八時間エダ村の工事をさせてたせいか、穴を掘ったり、土を積み上げたりする魔法が極まってるから、一瞬で巨大な落とし穴が造れるようになっていて、走り出したら急に止まれない地竜が面白いように、落とし穴に落ちていって壮観です。

 落ちた地竜は前衛が無理をせずに始末。まぁ、落とし穴に落ちて、混乱してる地竜を袋叩きにしているだけだから、危険も少ないね。

 落とし穴に全部落ちるわけじゃないから、残ったのは、俺とオリアスさんとグレアムさんで片づける。俺は剣で頭を叩き割り、オリアスさんは魔法で目玉から脳味噌まで串刺し、グレアムさんも剣で目玉を突き刺して脳味噌をかき回すなどして、仕留めた。

 楽勝とは言っても、戦えば怪我する奴も出るので、そういう奴らは回復魔法を使える僧侶に任せる。


 だいたい、そんな感じで地竜の群れは撃破。他にも突っ込んでくる魔物がいたけど、だいたい同じ方法で殺した。


 斥候役が魔物を発見し、こちらに誘導。魔物を討伐に来てるから見逃すわけにも行かないんで、発見次第、殲滅するということにしている。

 誘導されてくる魔物に対して、穴掘りやらの土木作業が得意な土木魔法使いを使って、有利な陣地を即座に造る。落とし穴以外にも、膝くらいの高さの段差を即座に造れたりするので、こちらに突っ込んでくる魔物の群れに対して使うと、面白いように転んでくれたりもした。

 ある程度、始末できるようになった段階で前衛を突っ込ませて、根こそぎ殺させる。他にも、少し手強そうな魔物の誘導なんかや、魔法使いの守りをやらせると結構上手く働いてくれる。

 怪我しても僧侶連中が回復魔法を使ってくれるので、前衛なんかはビビらずに突っ込んでいけるようだ。カタリナの祖父さんの司教さんが連れてきたっていう僧侶の人らだけど、みんな守旧派で修行僧なんだとか、意外に体力もあるので、前衛役の真似事を出来る人もいるので思いのほか役に立っている。


 グレアムさんが言うには、かなり凶悪な集団に仕上がっているとか、『騎兵なんかは、俺達と戦うことになったら、泣きを見ることになるねぇ』などと言っていたけど、騎兵なんかとは戦うことはなさそうなんで、どうでもいいです。


 たまに空を飛ぶ魔物が出てくるけど、それはグレアムさんとか斥候役が弓で射殺して処理していたり、魔法使いが、一斉に空に向けて火球を撃ったりして片づけた。地面を走ってくる魔物に比べて、空を飛んでくるの魔物は処理しづらいのが困るね。もう少し、事務的に片づけられるのが良いんだけど。空を飛んでくる魔物に関しては俺は役立たずなんで、基本人任せになるんだけどさ。

 俺も弓を放とうとしたんだけど、弓は折れるは、弦は切れるはで無理だった。ザランドの爺さんが言うには普通の素材を使った弓だと俺の腕力に耐えられないんだとか。地竜を大量に狩ることが出来たので、地竜の素材を使って俺用の弓を作るとか興奮して言っていたけど、別に欲しくないんだよね。


 魔物は多いけど、基本的な処理の方法が固まり、被害を出さずに片づけることが出来ているので、特に問題はないと思います。


 魔物が大量に狩れるということは、魔物の素材も大量なんで、一緒についてきたザランド爺さんが大喜びで、武具の構想を練っています。地竜の鱗やら骨やらを使ったものを考えてるらしい。まぁ、俺は良い剣があるからどうでも良いんだけどね。


 素材以外にも魔物の肉とかで食糧が豊富になり、魚を食わなくて済んで俺は幸せです。魔物が食糧にしか見えなくなってきている冒険者も多い感じです。罠とか張らなくても向こうから、俺達の方にやってきてくれるので、ありがたい食材なので、皆で美味しく頂く。


 総勢二百名を超える集団なので、野営も中々に凄い物がある。まぁ、土木系魔法使いのおかげで、石壁ありの野営地が、すぐに造れるから大変さは全く無い。魔力に余裕がある時なんかは土木系魔法使いに頼めば、土壁くらいの家なんかはすぐに造ってくれるので、かなり快適な旅路だ。


 西へと進んでいく途中で、たまに商人やらが合流してきたりもする。酒とかを売ってくれたりして、ありがたい存在なので断ることはせず、同行を許す。

 あとは娼婦の集団なんかも、俺達についてこようとした。冒険者は男が多いし下の物も溜まるだろうから、処理してくれる娼婦がいるのは有り難いだろうと思って受け入れた。

 俺は娼婦とかばっちい感じがして嫌いだけど、好きな奴もいるかもしれないし文句は言いません。ただ、娼婦とかって金にうるさくトラブルを起こしやすいとか聞くので、娼婦一人一人に予め銀貨を十枚くらい握らせ、冒険者からは金を取らせないようにした。喜んで了承してくれたので、金の問題でピーチクパーチクわめくことが無くなり、安堵した。

 あと、ばっちいし病気もってそうなので、きちんと病気の有無を調べさせた。俺って潔癖症だから病気持ってる女とか、見るのも嫌なんで治るまで、外を出歩かせないようにした。当然、客を取るのも禁止だ。なんか文句を言っていたけど無視した。でも、なんか放っておいたら、娼婦連中は何も言わなくなった。どうでも良い話だけど、働いてなくても娼婦に渡した銀貨は取り上げてない。正直に言うと、誰に渡したか憶えてないからだ。


 西に行くにつれて魔物はどんどん増えていくので、食糧が食いきれず困りはじめたので、商人やら娼婦やらにもタダで食糧を提供した。商人は普通に喜んでいて、娼婦の中には泣いて喜んでいるのもいたが、何がなんだか分からない。


 気づくと、王都を旅立った時には総勢二百名を超える集団だったのが、五百人くらいになっていた。途中で商人とか娼婦が加わっただけでなく、腕に自信のある奴らがついてきたりもしていたわけなんだけど、あんまり増えてもうるさくて嫌だし、基本的に汗臭くて、気持ちが悪いのでジーク君に選別させて、ジーク君の気に入らない奴は連れていかないってことにした。


 最初は雰囲気の悪かった集団だけど、いつの間にか雰囲気の悪さは解消されていたので、俺も一安心です。まぁ、移動の旅に村が一つ動くような騒ぎになるのは困るけどさ。




『西部人は排他的ですから気をつけた方がいいですぞ』


 俺に酒を売ってくれた商人の一人がそんなことを言っていた。確かに歓迎ムードの所は少ないね。

 エリアナさんが、それとなくジーク君に説明していたけど、昔から西部は王国の他の土地の奴らに対して、良い感情を持ってないんだとか。つっても、西部人というより、西部の領主らしいけどさ。

 土地の雰囲気って領主次第だし、領主が他所を嫌いなら領民もそんな感じになるよね。しかし、なんで嫌ってるんだろうね。俺には良く分からないんだけど。まぁ、エリアナさんも知らないみたいだったし、特に深い理由も無いんじゃないかな。

 もしかしたら、西部より西には山脈と樹海しかない土地だから、他所を僻んでるんじゃないかな? まぁ、良く分からないけどさ。話を聞いた限りだと大昔から、そうらしいし、案外理由なく嫌いだとか、田舎者が都会人を嫌いみたいな感じかもしれないね。まぁ、どうでもいいんだけどさ。嫌われてるなら好かれるような努力をすればいいだけだしさ。


 ……うーん、オレイバルガス領に近づいてきたのは良いんだけどさ。変な噂があるんだよね。オレイバルガス大公家は王家嫌いなんだとかいう噂でさ。そんなオレイバルガス大公家が王都に援助を要請するはずが無いとかなんとか。なんだろうね、もしかしたら来てはいけない系だったのかな。


 まぁ、それよりも疑問なのは、大公家ってなんなのってことなんだけど――





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