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最後の一人

 

 首を刎ねた筈なのにセイリオスの動きは止まらず、セイリオスの拳が俺の顔を捉える。

 奥歯が砕けるような感覚の次に浮遊感を覚えて、次には地面を転がっていた。俺は体を起こしてセイリオスを見据えると、セイリオスは俺が刎ねたはずの首を繋げて平然とした様子で俺に近づいてくる。


「どうした? 不死身を見るのは初めてだったか?」


 そんなことはねぇよ。

 俺は答えを口には出さずに立ち上がる。口の中に血が溜まっていたので吐き出すと、血の中に砕けた奥歯が混じっていた。

 血が出ると気分が変わってくるよね。『ぶっ殺す』って気分が『絶対にぶっ殺す』って感じになる。こういう状態の方が最高のパフォーマンスを発揮できるような気もするね。


 俺は剣を構えて前に出る。同じようにセイリオスも前に出てくる。

 小細工なしにセイリオスの拳が俺に突き出された。俺はその拳を叩き落して防ぐのではなく、鎧に覆われていない腕の関節を狙って斬り落として防ぐ。

 腕を失ったことで僅かにひるんだセイリオスの肩口に剣を振り下ろす。俺が振り下ろした剣を肩を断ち切り、そのままの勢いで心臓にまで達する。だが、ダメージを受けたのは俺の方だった。

 俺の剣がセイリオスの体に食い込み心臓に達したのと同時にセイリオスのもう片方の拳が俺の胴体に直撃していた。鎧を着けていても衝撃は通る。セイリオスの拳の衝撃は俺の脇腹を捉えていた。

 自分でも顔が歪むのが分かり、俺は飛び退いて距離を取る。


「実の兄を斬っているのだから、もう少し躊躇してくれないか? 治るにしても斬られるのは痛いんだ」


 セイリオスは俺が斬り落とした腕を繋げている。肩から心臓にかけての傷は痕もない。

 不死身か何かなのかと、俺が考えようとした矢先にセイリオスが突っ込んでくる。防御も何も考えていないような勢いで走りながら、セイリオスは拳を振りかぶる。

 その動きに合わせて俺もセイリオスに向かって踏み込み、すれ違いざまにその脇腹を剣で斬り裂く。互いに交差した俺達はすぐさま振り返り、相手を見る。

 俺は無傷でセイリオスは傷口からはらわたをはみ出させているが、気にする様子はなく俺に向かって来る。


 どうなってんだ?

 そう思いながら向かって来るセイリオスに剣を振る。

 セイリオスは防御の構えを取ることなどはせずに攻め一辺倒の構えだった。俺の剣がセイリオスの体を何度も斬るがセイリオスはどんな傷を負っても止まらず、攻め続けてくる。

 攻め続けるセイリオスの拳や脚が段々と俺の体に当たってくる。最初から相打ち覚悟で放つ攻撃であるので、斬られても構わずに放つ攻撃は避けるのが難しい。


 そうしている内に、遂にセイリオスの拳が俺を完全に捉えた。

 心臓を貫くために放った俺の突きに合わせて放たれたセイリオスの拳。俺の突きが心臓を貫いた瞬間、セイリオスの拳が俺の胸元に直撃していた。

 胸に受けた衝撃で一瞬、息が止まる。その隙を狙ってセイリオスの拳が俺の顔面を撃ち抜く。

 体勢を整えようと後ろに下がった瞬間を狙って、鞭のような蹴りが太腿に当たる。鎧がひしゃげるような衝撃を感じ、俺の足が止まったそこを狙い、頭への蹴りが放たれる。


 ギリギリ腕で防ぐと、直後にセイリオスは俺にタックルを仕掛け、押し倒す。

 打撃にばかり気を取られていたせいで反応が遅れ、なすすべもなく倒された俺に馬乗りになったセイリオスが取った行動は顔面へのパンチ。俺は腕で顔を覆って防ぐが、セイリオスはそんなこと関係なしに馬乗りの状態で俺を滅多打ちにする。


 セイリオスの振り下ろす拳を受け止めた腕が軋む。

 防御もそうは持たない以上、反撃の糸口をつかまないと死ぬだけだ。そう思い、俺はこの状況を打破する物を探し、それを手に取る。

 セイリオスの心臓にはまだ俺の剣が刺さった状態だった。俺は一発か二発を受けるのを覚悟し、防御を解いて手を伸ばす。

 直後にセイリオスの全力の拳が顔面に炸裂して意識が飛びかけるが、そんな痛い思いをしたかいがあって俺手は剣に届いた。


 俺は掴んだ剣の柄をセイリオスに更に押し込む。

 痛みを感じると言っていた以上、そんな真似をされて平然としていられるわけがない。

 そして俺は掴んだ剣を全力で引き下ろす。心臓に刺さった剣が俺の腕力で肉を掻き分けて腰まで降りてきた。

 激痛を感じたのかセイリオスの上体が跳ね上がり、俺への攻撃が止み、俺は拘束が弱ったことを感じ取って、馬乗りになっていたセイリオスを撥ね退けた。


 セイリオスをどかした拍子に剣が抜け、セイリオスは俺に撥ね退けられた勢いで地面を転がるが、即座に立ち上がる。対して、俺はまだ床に這いつくばったままだった。

 立ち上がったセイリオスが俺に走り寄り、俺を蹴り飛ばそうと足を振りかぶって蹴りを放つ。放たれた蹴りに対し、俺も剣を振る。受け止めるのではなく斬り落とす軌道。俺の剣はセイリオスの蹴りの足首を断ち切り飛ばす。だが、セイリオスはその脚で俺の顔面に蹴りを入れる。

 脚の断面をぶつけるような蹴りを受けて俺は這いつくばった状態から更に床を転がる羽目になった。


「どうして、僕が不死身なのか、その理由が分かるか?」


 セイリオスが俺に話しかけてくる。

 よたよたとした動きで落ちた足首を拾いに行っている所を見るに時間稼ぎだろう。

 まぁ、俺も時間稼ぎが必要な状態なので、セイリオスが隙を見せても放っておき、とりあえず体に回復魔法をかけておく。


「勝負は公平フェアに行きたいんで、答えのヒントくらいはやろう」


 ここに来てそんな話は無いだろう。そんなことを言って信用されるような行動をお前は積み重ねてきたのかって言ってやりたいが、喋るの面倒くさいんで黙って体力の回復に専念する。


「答えは三択。①実は僕は魔法が得意で、どんな傷も癒す魔法が使える。②僕が身に着ける王家の秘宝に傷を治す効果がある。③僕は自分の体に獣心兵と同じ処置を施しており、治癒力が強化されている。さて、この三つのどれだろうか?」


 そんなの知るかよ。

 俺は体力が回復したので、セイリオスに斬りかかる。セイリオスも足がくっついたのか動き出す。

 セイリオスは相変わらず捨て身での攻撃。斬られても死なないんだから大胆な攻めが出来るんだろうね。逆に俺は消極的にならざるを得ない。どんな攻撃を仕掛けても殺しきれないし、逆に捨て身のセイリオスに反撃を食らうからだ。


 とはいえ、そんな状況だからか、少し冷静になって来たぞ。まずはセイリオスの不死身をどうにかしないといけないと思うんだが、あれは魔法なのかそれとも何か特別な力が働いているのか、何が理由なんだろうね。

 そんなことを考えていたらセイリオスが俺の懐に飛び込んで連打を放ってきた。それを剣で捌きながら俺は後ろに下がる。

 この野郎近づきすぎじゃない? 不死身なんだから、もっと距離を取って悠々と戦えば良いじゃない。拳だから接近しないといけないとはいえ、俺に密着する時間が多い気が――


 そんなことを考えていたせいなのか、がっつりと拳を食らい。俺は体勢を崩す。

 セイリオスの脚が跳ね上がり、俺の頭に目掛けて蹴りが飛ぶが、俺は頭を下げて転がるようにして逃げる。

 その結果、俺とセイリオスの立ち位置が入れ替わり、セイリオスの背後に通路の出口があるような位置関係に変わろ、振り向いて走りだせば、俺から逃げることが出来るような位置になった。


 しくじったと俺は思う。

 俺は転がって蹴りを避けたせいで体勢が悪く、立ち上がって追いかけるのに一瞬だが遅れが出る。

 その間にセイリオスの足なら俺が簡単に追い付けない程度の距離を稼ぐことは可能だろう。そうなったら、まんまと逃げおおせるに違いない。

 つまり、俺はちょっとの判断ミスでセイリオスに逃げる機会を与えてしまったわけだ。


「待て」


 セイリオスが出口の方を振り返る。その動きを見て、俺はセイリオスが逃走をすることを覚悟したが、セイリオスは動かない。

 セイリオスは出口側を見た後、俺の方を見て、苛立たし気に戦闘態勢をとる。

 俺を見たのだとは思うが視線の位置が少し変だったような気もするが、そんなこと深く考える間もなくセイリオスが俺に接近する。絶対に距離を開けるわけにはいかないという感じの攻めだ。


 そしてそんな攻撃を受けるうちにセイリオスが僅かではあるが、立ち位置を戻そうとしていることを俺は感じ取った。どういうわけか、セイリオスは出口側に立っているのが嫌のようで、俺に対して通路の奥側に立とうとしている。

 わざわざ逃げ道を無くすような動きをする理由が俺には分からない。

 それに間合いの取り方も変で、妙に距離を詰めてきている。そのせいで視界に入るのはセイリオスの姿だけで、セイリオスの後ろまでは細かく把握できない。セイリオスの背後を観察しようにも、セイリオスが攻撃してくるせいでそんな余裕は無いしな。


 ふと、何かあるんじゃないかって気がしてきた。

 セイリオスが三つくらい不死身の理由を言っていたけど、何を言っていたかちゃんと聞いてなかったんで忘れてしまったけど、セイリオスが後ろをかばってるような動きを見せてるような気もするし、何かあるんじゃないでしょうか?


 そう思って俺は立ち位置を替えようと前に出る。

 セイリオスが放った拳を叩き落して、その横を抜けるように胴を払う。それでもセイリオスは止まらないので、胴を払い抜けた直後に振り向き、背中側から心臓を剣で突き刺す。普通ならこれで死ぬがセイリオスは死にそうにないので、すぐには動けないようにするために更に攻撃を加える。

 剣を心臓から引き抜き、背中を向けているセイリオスの足を膝裏を斬り落とす。これで足が治るまで這いつくばったままだ。

 俺は立ち位置を入れ替え、通路の奥を背にした状態でセイリオスが復活するのを待つ。今まで僅かの時間で生き返ったのだから、今度もすぐに起きるだろう。


 そう思って見ているが、どういうわけか何も起きずにセイリオスは倒れたままだった。

 急に死ぬようになったのか? そう思って俺が近づくと背中に何か暖かい何かを感じる。それは感じたことの無いものではなく、俺もよく使うアレの感覚で――


「余所見をするなよ」


 俺が背中の感覚に意識が向いていた間にセイリオスは復活しており、俺が気を取られている間に距離を詰めいた。

 俺が油断した隙を突いて、セイリオスは俺に渾身の打撃を叩き込む。胴体を狙ったそれは鎧を身に着けていても、それが意味をなさない威力で、衝撃が俺の体を貫く。そして膝をつきそうになる俺を抱えてセイリオスは俺を投げ飛ばす。

 追撃で打撃が来るかと思ったけれど、予想に反してセイリオスはそれをせずに、俺と立ち位置を調整するような行動を取った。投げ飛ばされた俺は最初と同じように出口を背にしてセイリオスの行く手を遮るような位置に立ち、セイリオスは通路の奥側で出口を目指すような位置に立っている。


「お前、後ろに何かいないか?」


 どう考えてもおかしい動きだ。

 執拗に立ち位置を調整して自分が通路の奥に立つようにしている。まるで通路の奥にある何かをかばうような——俺の勘もセイリオスの後ろに何かがあると伝えている。

 こういう時は勘に従う方が良い。まぁ、こういう時でなくても勘に従って生きているんだけどね。


「―――――」


 セイリオスは何も言わずに俺に対して踏み込み、距離を詰める。それが何よりの答えって奴で、図星を突かれた故の反応にしか見えない。

 距離を詰めてくるセイリオスの動きは先ほどまでと打って変わり、捨て身ではなくなっていた。きちんとした技術に基づいた攻防を考えた動き。だけど、それは既に俺に破られているって忘れているのか。


 俺は向かって来るセイリオスに剣を構える。

 セイリオスは俺の剣に備えるような気配を出しているが、俺の攻撃はそうやって防げるような攻撃じゃない。

 俺は近づくセイリオスに剣を振り下ろす――ように見せかけて、セイリオスの背後に投げつける。セイリオスは思いもがけない俺の攻撃に身を反らして剣を避けるが、それで本当に良いんですかね?


 素手になった俺は近づくセイリオスに合わせて距離を詰め、セイリオスの顔面を殴りつける。それと同時にセイリオスの拳が俺の顔に叩き込まれた。

 打撃の衝撃によって崩れ落ち、膝をつくセイリオス。同様に俺もよろめくが俺の方がセイリオスよりタフなので、そう簡単には倒れない。


 もっとも、セイリオスも軟弱というわけではないので、俺の本気のパンチを食らっても立ち上がることは出来る。だが、その様子は先程とはまるで違い、殺されても平然と立ち上がっていた奴にしては弱々しい動きだった。

 殺されてもダメージ無しで立っていた奴が、殴られただけでダメージを受けてよろよろと立ち上がるなんておかしいよな?

 その理由タネは何時からいたのか分からず、姿を見せなかったセイリオスの後ろに倒れている男にあると俺は思っている。きっとセイリオスはその男を庇い続けていたんだろうと思うんですが、どうですかね?


「クソが――」


 立ち上がったセイリオスが後ろを振り返り、男を見る。

 男の胸元には俺が投げた剣が刺さっており、虫の息といった有様。ローブを身にまとっているが、頭部には狼の兜を身に着けているので獣心兵の一種だと思うが——


「そいつが、お前に回復魔法をかけていたんだろう?」


 執拗に背後を守っている様子から何かいそうだなって思った。

 ついでに、通路の奥側に立った時に背中に感じた暖かさは回復魔法をかけられた時に感じるものだ。

 ローブの獣心兵はずっと通路の奥側に立っていて、セイリオスに回復魔法をかけていたんだろう。獣心兵の頭じゃ細かい制御なんかは無理そうだし、狙いも付けられないだろうから、セイリオスは自分がやられたらとりあえず回復魔法をかけろとか命令していたんじゃないかな?

 狙いが付けられない以上、俺にもかかる可能性があるから、セイリオスはなるべく近くで回復魔法を受けたくて通路の奥側を陣取っていたんだろう。俺が背中に回復魔法を感じたのは狙いのミスで、回復が遅かったのも俺が邪魔になっていたからかな?


「随分とまぁ、小細工をするもんだ」


 なんか三つくらいヒントを出していたような気がするけど、その中に正答に繋がる物はありましたか?

 ちゃんと聞いてなかったから記憶は曖昧だけど無かったんじゃないか?


「まぁ、イカサマはバレなければイカサマじゃないからな。こういう詐欺も僕の実力の内だ」


 セイリオスはゆっくりと動きながら位置取りを変える。

 自分の不死身を保障してくれたローブの獣心兵が虫の息である以上、通路の奥側を陣取っている必要は無い。


「しかし、そこの彼も可哀想になぁ」


 セイリオスは俺の油断を誘うように視線を倒れた獣心兵に向ける。

 俺もチラリとそちらを見るが、あんまり興味がない。何か特別な人なのかね。


「そこの獣心兵はカイ君と言うんだが、異世界の出身なんだ。お前の所にいるエイジ君と同郷のね。まぁ、今となっては聖神が頼りにする最後の一人になってしまったんで、お前の所の異世界人とはお仲間とは言い難いんだが――」


 急に何を言っているんだコイツは?

 異世界って何なんですかね? 俺が聞いたことのある話題ですか?


「懐かしいよ。この世界に来る時に彼はちょっと特殊な能力を手にしたようで、僕が初めて会った時は凄く調子に乗っていてね――」


 それで最初は喧嘩するような間柄だったけど、色々あって親友になったとか、そういう話か?


「思わず半殺しにして監禁、拷問、洗脳をしてしまったんだ。その過程で色々と面白い話を聞けたんで、中々有意義な時間だったんだが、楽しい時間というのはあっという間に過ぎるもので、すぐに何も反応しなくなってしまったんだ」


 うーん、殺伐としているなぁ。

 それはさておき、セイリオスは逃げるようなそぶりを見せない。回復魔法を使ってセイリオスを不死身にしていた獣心兵が何もできない以上、セイリオスが俺に勝つのは不可能に近いと思うんだけど。


「彼の特殊な力を考えると、そのままにしておくのは惜しくて獣心兵にしたんだが、これは失敗だった。命令は聞くんだが、知性が落ちてしまって使い物にならない。狙いもマトモにつけられないんじゃ砲台にすらならないからな」


 俺はセイリオスの話を聞き流しながら回復魔法を使って体力を回復する。

 万全の状態まで数秒って所だろう。その数秒が過ぎれば、ダメージは消えて全力で動いてセイリオスを殺しに行ける。


「所で、そこの彼の特殊な能力ってなんだと思う? それは――」


 俺はセイリオスの問いかけに応えずにセイリオスに向かって踏み込む。

 体力は回復したので問題は無い。俺は一気に距離を詰め、セイリオスに向けて拳を振り抜いた。

 セイリオスは籠手で俺の拳を辛うじて防ぐが、勢いまでは防ぎ切れずに弾き飛んだ。


 俺に弾き飛ばされた地面を転がるセイリオスだが、すぐさま体勢を整えて俺を見る。

 しかし、立てずに膝をついたままだ。俺は追い打ちをかけるために拳を振りかぶりセイリオスに接近する。

 そんな俺をセイリオスは笑いながら見つめていた。


「――異世界人のカイがこの世界の聖神から授かった能力、それは全ての魔法が使えるという力」


 俺の放った拳をセイリオスは転がって避け、俺から逃れたセイリオスが叫ぶ。

 俺は猛烈に嫌な予感がして、セイリオスを追うが、俺が追い付くよりもセイリオスの発する言葉の方が速かった。


「解呪の魔法を使え、カイ! アロルドの呪いを解け!」


 セイリオスの声が通路内に響き渡ると共に、俺の視界の端でローブの獣心兵が蠢きながら何かを呟く。

 その直後、ローブの獣心兵から放たれた光が広がり、俺を呑みこみ、俺の視界が光に覆われる。真っ白な光に包まれた世界で聞こえてくるのはセイリオスの声――


「全てはこの瞬間のため。全ての魔法が使えても碌に狙いが付けられないんじゃ、戦闘には使いづらいが、狙いをつけずに周囲の呪いを解くだけなら問題ない。ありがとう、カイ君。死にぞこないでも最後に役に立ってくれて助かった」


 セイリオスの声が聞こえる中、俺の意識は段々と曖昧になり、俺は目を閉じる。

 そして、遂には何も感じなくなり――――




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