満身創痍
ユリアスがグレアムさんに向けて投げつけた槍に対し、俺はグレアムさんの前に立ちはだかり、それを剣で弾き飛ばす。だが――
「選択を間違えたな」
投げると同時にユリアスは駆け出していた。俺に対し一気に距離を詰めたユリアスは、その勢いのまま俺に飛び掛かってくる。その動きに対し、反応が遅れた俺の顎にユリアスの膝蹴りがマトモに入った。
衝撃で意識が飛びそうになるが、そうなった瞬間、俺が死ぬのが確定する。俺は咄嗟に舌を噛み、意識を覚醒させる。口の中が血で溢れて気持ち悪いが、そんなことを気にしている場合じゃない。
「いい加減、死んでくれないか?」
ユリアスが俺に向けて剣を振り下ろした。その一撃を手に持った大剣で受け止める。
即座に蹴りが飛んでくるので後ろに飛び退くが、俺の動きを読み切って、すぐさま追いかけてきたユリアスの拳が俺の顔面を捉える。舌を噛んだことで口に溜まった血が、その衝撃で噴き出る。
「なんだよ、まだ意識があるのか?」
呆れたような声が聞こえたが、俺はそちらに意識を向けずに、勘に任せて大剣を振り回す。
実の所、俺の視界は半分になっていた。顔を殴られた際に瞼が切れて目の中に血が入り、右目が殆ど見えなかった。こうなると目に頼って動くわけにもいかない。そう思って、俺は勘に頼って剣を振り回したわけだが、結果的にそれが良かった。
俺が勘で振った剣は、狭まった俺の視界の死角を狙って放たれたユリアスの剣に当たり、それを弾いて防ぐ。まぐれだが、結果さえ良ければ全て良しだ。
「取り囲んで殺せ!」
俺はユリアスから距離を取るため後ろに跳躍しながら、噛んだ舌と瞼の傷を回復魔法で治す。その際に時間稼ぎに兵士たちを突っ込ませる。
「雑魚がどんだけ来ようが相手になるかよ」
そりゃそうだ。だから俺も行くんだよ。
ユリアスの視線が俺から他の兵士に向かった瞬間に合わせて限界まで魔力を込めて自分に〈強化〉の魔法をかけて、全力でユリアスに向かって走り出す。
残念ながら、俺の〈強化〉は普通に使うとユリアスより出力が低いが、それは魔法に込める魔力で補う。普通の数倍の魔力を込めればユリアスとだって、真正面から殴り合えるはず。
まぁ、これはヤーグさんが言っていただけなんだけどさ。それに賭けるのも、こういう状況では仕方ないんではなかろうか。
「――何がしたいか丸見えだぞ」
ユリアスの視線が俺に向かう。周りの兵士はどうとでもなると判断したんだろう。そいつらよりも俺の方が厄介だと思って、俺に注意を向けたってわけだ。こうなると真正面から殴り合うのは無理だね。
戦ってきて分かったけど、ユリアスは戦闘技術が俺達より遥かに高い。身体能力が互角になっても技術の関係で俺が一方的に殴られるだけで終わる。なので、ちょっと小細工を。
「アロルドごと殺れ!」
オリアスさんがユリアスに突っ込もうとしていた兵士達に命令する。
その言葉を受けて兵士たちは足を止め、懐に手を入れたり、腰につけているポーチを探り、その中にある物を取り出す。
ユリアスはもう兵士の動きを見ていない。何があっても余裕だって思ってるんだろう。まぁ、実際に余裕だろう。なので、今回はその余裕っぷりを頼らせてもらおうか。
「投げます!」
律儀に声を掛けなくても良いと思うけどね。
俺がユリアスに肉薄すると同時に兵士たちが手に持った物をユリアスに向けて投げつける。
声が聞こえたのと、〈探知〉の魔法で周囲の動きを把握していたんだろう。ユリアスの視線が一瞬だけ、兵士達と、そいつらが投げつけた物に向かう。それで隙が出来たわけじゃない。だが、ユリアスは自分に投げつけられた物を見て、反射的にそれを防ぐ対応を取る。
ユリアスに向けて投げつけられた物、それは手投げの爆弾だ。威力はそれなりで、ユリアスに向かって投げたら、至近距離にいる俺も巻き込まれるのは間違いない。だがまぁ、それに関してはそこまで心配することも無いよな。だって、最強のユリアスさんがいるわけですし。
「心中する気はねぇよ」
ユリアスは反射的に自分に向かって投げられた爆弾を防ぐために〈障壁〉の魔法を発動する。
魔法で作られた壁によって爆発の威力はユリアスまで届かない。そして、ユリアスの懐に飛び込んでいた俺にもだ。
「防いでくれると信じていた」
そして一瞬でも俺から注意が逸れることもな。
爆弾を防ごうと魔法を発動したその瞬間、ユリアスの意識は俺以外に向かっていた。その隙を狙い、俺はユリアスに密着する。武器として持っていた大剣は放り捨てる。息がかかるくらいの距離じゃ、剣は振り回せないからだ。
「テメェ――」
何か言おうとしているようだが、気にせずに俺はユリアスの顔面に拳を叩き込んだ。
ユリアスが発動した〈障壁〉の向こう側で爆発が生じているが、その爆発はユリアスに密着している俺にも届かない。
「死ぬまで殴らせてもらうぞ」
俺の拳を食らったユリアスが衝撃で大きくのけぞる。ユリアスは強いけれども、耐久力が特別高いわけじゃない。剣や槍が効かないわけでもないし、銃弾や爆弾でも殺せる。当然、殴り殺すことだってできる。
「一発入れたくらいで――」
ユリアスが剣を振ろうとした瞬間にユリアスの体に組み付く。
何度も言うが、密着するような至近距離だ。マトモに剣を振り回せる間合いじゃないし、それでも振ろうとすれば隙が出来る。咄嗟に組み付いて動きを制限できるくらいの隙だ。
「死ぬまで殴ると言ったろ?」
俺に組み付かれて、もがくユリアス。俺はユリアスの抵抗が激しくならない内にユリアスから離れる。
それによって自由になったユリアスが攻撃に移ろうとするが、俺の方が素早くユリアスの顔面を殴りつけた。主導権はこっちにあるんだから、こっちの方が早く攻撃できるのは当然だ。
「ゴミがっ」
「ゴミに殴られてるクソの言葉は分からないな」
剣を振り回せる距離じゃないことを理解しているユリアスが武器を捨てようとしているのが見て取れる。だが、僅かに判断に遅れがあった。
良い剣だもんな捨てるのは少しだけ迷うよな。ユリアスの考えが分かった俺はそういうことを考えなくても済むようにようにしてやろうと、更にユリアスに向けて拳を放つ。
腹に一発。鎧を着ているし、痛みも何も感じないレブナントだからダメージなんて物は無い。だけど、僅かに体勢が崩れる。
膝を踏みつけるように蹴る。レブナントは痛みを感じないが、無敵の肉体というわけじゃない。攻撃を食らえば、その衝撃で体は傷つく。俺の蹴りによって、ユリアスが膝をつく。
おっと、ちょうど良いところに頭が来たぞ。俺は膝をつき、位置が下がったユリアスの頭を掴み、その顔面に膝蹴りを叩き込む。鼻が折れた感触がするけど、これじゃ殺せないよな。
俺は膝蹴りを叩き込んだ体勢のまま、ユリアスを押し倒す。その際、頭を掴んでいた手の位置を耳を掴むように直している。
俺が押し倒すとユリアスの後頭部が床に叩きつけられ、耳が引き千切られる。
「……死ぬまで殴る――」
それを言ったのは俺じゃない。俺に押し倒されたユリアスの口からボソッと放たれた言葉だった。ユリアスは俺に押し倒され、耳を千切られた直後に俺の体を胴体と首の力だけではね上げた。
それでも距離はまだ近い。俺は即座に態勢を整えると再びユリアスに殴りかかった。ユリアスは武器を捨てていたが、それだって予想出来ていたことだ。
「ぶち殺してやるよ、ガキが」
やってみろよ。耳無しになってる奴に凄まれたって怖くねぇぜ。
俺は大きく振りかぶってユリアスに向けて拳を振り抜く。対するユリアスも同様に大きく振りかぶり俺に対して拳を振り抜いた。
互いの拳が互いの顔面を捉えて、人間の体を殴ったとは思えないような音が辺りに轟く。それは一度では済まずに何度も何度も辺りに轟いた。
俺が殴ると即座にユリアスに殴り返される。瞬間的な力はユリアスの方が上だ。力の継続時間は俺の方が上だ。圧倒される瞬間はあるが、圧倒されるばかりじゃない。
ユリアスの拳が俺の顔面に突き刺さる。即座に俺もユリアスの顔を殴り返す。俺の拳を食らっても、少しも揺るがずに反撃が飛んでくる。それを俺は守りを固めて耐える。
そして、耐えるうちに一瞬、ユリアスの攻撃の勢いが落ちる。それに合わせて俺が攻勢に出る。太腿を狙って放つ下段蹴りが当たった。痛みを感じないので食らってもユリアスは動じる様子もなく反撃をしてくるが、さっきより勢いが落ちている。
反撃で放たれたユリアスの拳より早く、俺の拳がユリアスの顔面を捉える。頭に衝撃を食らい体勢が崩れたユリアスの胸に俺は突き飛ばすように蹴りを放つ。更に体勢が崩れた所へ俺は飛び掛かりながら、勢いをつけて殴りつけた。
衝撃に耐えられずに床を転がるユリアスだが、すぐさま立ち上がり、俺に向かって突っ込んでくる。〈強化〉を掛けなおしたようで、速度も力強さも戻っている。
想像以上の速さに、俺はユリアスの突進を避けきれず、マトモに食らってしまう。そして再び始まるユリアスの一方的な攻撃。
真っ直ぐ突き出される拳を腕で防いだ瞬間。もう片方の手が俺の顎をかち上げる。
体勢が崩れた瞬間、足元が払われ、体が宙に浮き、そのまま尻餅をつく。そして尻餅をついた俺の顔面にユリアスが前蹴りを叩き込む。
首から上が吹っ飛んだような錯覚を覚えるけれど、まだ耐えられる。俺はなんとか立ち上がり、反撃のつもりで拳を振る。だが、俺の拳はユリアスに容易く躱される。
俺が一発殴ろうとすると、ユリアスの打撃が三発放たれる。手首のスナップだけで打つような軽い打撃だが、何発も食らうと辛い。だが耐える。
「死ぬまで殴るって言ったよな?」
それは無しの方向性で行こう。さすがに無理だ。
守りを固めようとした瞬間に腹に蹴りが入る。鎧を着ているはずなのに打撃の衝撃が全く防げず、俺の体にダメージを与える。気付いたんだが、殴られ過ぎて鎧の形が変わってきていて、鎧が俺の体を圧迫していたりもする。
耐えようと思ったけど、耐えきれません。攻撃の回転が速すぎるんだよ。
俺が一発殴るまでにユリアスが五発ぐらい殴ってくる。しかも、俺の全力より強い力で。
そんなもん耐えられるわけないじゃん。
「偉そうにしやがってよぉ、本当にムカつくガキだぜ」
ユリアスの攻撃の勢いが弱まる。〈強化〉が切れたんだろう。
それに合わせて俺も反撃に移ろうとするが、体が動かない。ちょっと殴られ過ぎたか?
そんな考えが頭をよぎると同時にユリアスが俺の胸を思いっきり蹴り飛ばした。衝撃で吹っ飛ばされ、俺は床を転がる。鎧の胸部分がユリアスの脚の形に陥没し、胸を圧迫し胸骨を砕いている気がする。つーか、気がするじゃ済まなくて実際に、そうなっている。そんでもって胸が圧迫され過ぎて息ができない。
鎧が身を守る役目を果たしていない? いや、鎧が無かったら、さっきの蹴りで胸をぶち抜かれていた。それを考えたら鎧は役目を果たしている。
「さて、今のが最後のチャンスだったと思うんだが、その辺はどうなんだ?」
至近距離で何とかするっていう方法は失敗した。正直どうにもならん。俺は鎧の胸部分を外す。これで胸に何か食らったら死ぬことになった。
ユリアスは満身創痍の俺の様子を楽し気に眺めながら自分が捨てた剣を拾い上げようとする。だが、そこに俺の兵士たちが襲い掛かる。
何もせずに俺とユリアスの殴り合いを見ていたわけじゃない。体力を回復させて、戦う準備を整えていたんだ。
「邪魔だ」
まぁ、戦う準備を整えていたって勝てるわけじゃないんだけどな。
ユリアスに襲い掛かった兵士たちが一瞬で倒れ伏す。単に殴られただけだが、並みの奴が食らった死にかねない威力があるのがユリアスの打撃だ。でも、まだ死んじゃいない。
倒れた兵士たちは起き上がれずともユリアスに組み付くが、それだけでは、ほとんど意味は無い。二人三人が組み付いたところでユリアスの動きは止められないからだ。
でもまぁ、邪魔にならなくとも、鬱陶しくは感じるはずで、実際に鬱陶しく感じたんだろう。ユリアスは自分の足にまとわりつく兵士たちを払い除けようと視線をそちらに向ける。その瞬間だ。
「撃てっ!」
オリアスさんが魔法兵に命じて、ユリアスに向けて魔法を撃つ。
ユリアスにまとわりつく兵士たちも巻き添えにするつもりの攻撃だった。大量の火球がユリアスに向かって放たれる。
「とうとう手段を選ばなくなったな」
ユリアスは飛んでくる火球に対して、自分にまとわりつく兵士の首根っこを掴んで持ち上げ、盾にする。そして、人を盾にしながら、オリアスさんと魔法兵の方へと突進を始める。
「いい気になってるんじゃねぇよ、ゴミども」
どれだけ魔法を撃ってもユリアスは防いで、魔法兵に近づいていく。
魔法よりもユリアスの方が速い。ユリアスに接近されたら魔法兵は魔法を放つ暇もなく、一瞬で殺されるだろう。
「誰と戦ってるのか分かってんのか?」
ユリアスの突進を遮るように兵士が立ちはだかる。しかし、一瞬で突破される。
瞬時に間合いを詰められ、その勢いのまま頭を掴まれ、床に叩きつけられた。
「最強と戦ってるってことを忘れてるんじゃねぇよ!」
ユリアスに接近された魔法兵の体が文字通り粉砕される。ユリアスの全力の打撃を食らって肉体が吹っ飛んだ結果だ。
ユリアスに接近された魔法兵の体が文字通り粉砕される。ユリアスの全力の打撃を食らって肉体が吹っ飛んだ結果だ。
一旦、近寄られると、魔法兵の方には対抗策が無い。なにせ、ユリアスは魔法より早いし速いからな。近寄られたら間に合わないし、魔法を撃てたとしても、魔法よりユリアスの動きの方が速いから当たらない。後は一方的にやられるだけだ。
「それを見てるだけってのは良くないよな」
若干、体力が回復した。傷も魔法で少し治した。まだまだ動けるぜ。
それに俺以外に動ける奴もいるんだから、諦めるのは早いよな。ユリアスの方に目を向けると、魔法兵を守るように兵士達が、突進するユリアスに向けて真正面から突っ込んでいくのが見えた。
今までのざまを見てれば何もできずにやられるだけだと予測がつくが、いくら何でも、そこまで考えなしではないはずだ。
「そのタイミングで突っ込め!」
兵士たちが突っ込もうとした瞬間に聞こえてきたのはグレアムさんの声だった。
その声に従って兵士たちがユリアスに組み付こうとする。今まで通りなら、そんなことは不可能。だが、今回は――
「この、クソどもっ」
兵士たち三人がかりではあるがユリアスの動きを止めることに成功していた。
どういう仕掛けを使ったのか。単にユリアスの〈強化〉が切れたタイミングをグレアムさんが見切り、兵士に指示を出して突っ込ませたってだけだろう。
ネタがバレればなんてことはないが、とにもかくにもユリアスの動きを一瞬でも止められたのは大きい。
俺は一気に駆け出し、動きを押さえつけられているユリアスの顔面に飛び蹴りを叩き込んだ。当然、この程度で倒せるわけが無い。
ユリアスは自分にまとわりつく兵士たちを風の魔法で生み出した衝撃波で吹き飛ばしながら、飛び蹴りを放った俺の足を掴んで振り回し、床に叩きつけ、その上で更に俺を蹴り飛ばした。
「手を休めるな!」
オリアスさんの号令で生き残っている魔法兵がユリアスに向けて魔法を放つ。
「いい加減、鬱陶しいんだが」
ユリアスは自分を狙う魔法に対して避けるような動きは見せない。代わりに身を守るための魔法を発動した。
土の属性の魔法〈石鎧〉、黒曜石の鎧が現れユリアスの身を覆い、魔法の直撃を鎧の防御力だけで防ぎながら、真っ直ぐ最短距離で魔法兵の元に迫っていく。
ユリアスの足を止められる奴はいるか? そう思って辺りを見回すが、接近戦をやれる兵士の殆どが満身創痍だ。ここで魔法兵までやられると本格的にヤバい。全滅の可能性も見えつつあるくらいだ。
それもこれも思っていた以上にユリアスが強いせいだ。もう少し何とかなると思っていたんだが、全くそんなことは無かった。完全に予想が外れた結果になった。
こうなったら、もうどうにもならない。後は最後の手段に賭けるしかない。
「こうなったら仕方ないか」
実の所、奥の手は用意してある。何の隠し玉も持たずにユリアスと戦うわけないだろ。だけど、それは出来る限り使いたくないし、仮に使ったとしても上手くいく保証はない。
だから、なるべくなら使いたくなかったが、ここまで追い込まれてしまった以上、使う他ない。
「オリアス! もういい、やれ!」
俺はオリアスさんに最後の手段を使う許可を出した。
具体的な指示じゃないが、俺が何を命令したいのか、オリアスさんはすぐに理解してくれたようで、合図の信号を出す。後は、数秒か数分もたせるだけだ。
「グレアム! 他の奴も来い!」
俺は落ちていた大剣を拾い上げ、ユリアスに突っ込む。
傷を負ったグレアムさんも両手に剣を持ち、ユリアスに飛び掛かった。
「そろそろ、ウンザリしてきたんだけど」
黒曜石の鎧を身にまとったユリアスが俺の剣を片腕で防ぎながら、もう片方の腕を振り回して俺に叩きつける。
グレアムさんや他の奴の攻撃は効かないってことが分かっているのか、防御する素振りすら見せずに、腕を振り回して近寄ってくる俺達を叩き潰すことに意識を向けているようだった。
「もう少し耐えろ!」
オリアスさんが叫びつつ俺達を魔法で援護してくれているけど、だいぶ無理なことを言ってくれてもいます。俺の方も体力が尽きてきたのか、思うように動けなくなってきたんだけど――
「死ね」
疲労やダメージの蓄積のせいで一瞬、意識が飛んだ。
一瞬ではあるが、それが致命的だった。俺の隙をユリアスが見逃すわけもなく、俺に向けて放たれる全力の拳。これは死んだと確信した、その瞬間だった――
「全員、身を守れ!」
オリアスさんの声と同時に爆音が真上から轟き、続けて天井が崩れ落ちてくる。崩落した天井が俺やユリアス、その場にいた全員の頭の上に落下してきた。
「テメェら、何を!」
俺への攻撃を中断し、俺から飛び退いたユリアスの真上に大きな瓦礫が落ちてきた。それを受け止めながら、ユリアスは俺を睨みつけてくる。
どうやら、何をしたか聞きたいようなので、俺が答えてあげようじゃないか。
「一緒に生き埋めになろうぜ」
おっと、これじゃ質問の答えになってないな。
でもまぁ、別にちゃんと答えなくても良いし、何がしたいかだけ分かれば良いだろ。
とにもかくにも、これが俺の最終手段『一緒に生き埋め作戦』だ。
これで駄目なら、もう俺らの負け。さぁ、決着をつけよう、ユリアス。




