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第二城壁

 

 全身を火で包まれた兵士が絶叫を上げながら夜闇を照らしていた。

 ゆっくりと休息を取り、態勢を整えた状態で行った奇襲は想定していなかった状況に陥っていた。


「ありゃあ、こっちの動きが分かってんな」


 オリアスさんが俺に話しかけてくる。

 城壁の近くにあった家の中に隠れながら、俺はオリアスさんと城壁の様子を観察していた。


「魔法を使えるレブナントがいるんだろうな。おそらくは〈探知〉だろう」


 そうですか。探知の魔法を使って、夜陰に乗じて奇襲を掛けようとしていた俺達の動きを把握して、的確に炎の魔法をぶっ放してくるって、そういう感じですかね?


「奇襲は失敗か」


 夜の闇に紛れて少数精鋭で城壁に侵入しようとしていた俺達の動きは完全にバレているようです。

 まさか魔法使いがいて、その上そいつらがちゃんと魔法を使えるとは思わなかったのが失敗の原因だね。ちょっと反省してます。

 まぁ、反省したからって何が変わるわけでもないんで、そんなことを考えるよりも現状をどうにかするほうに頭を使った方が良いよね。


「〈火弾〉来るぞっ!」


 俺達がいる場所を〈探知〉の魔法を使って把握しているのか、魔法で生み出した火の玉が一直線に俺達が隠れる家に目掛けて飛んでくる。

 受け止めるべきか? 一瞬、考えて無理だと思い、俺は家の中か飛び出る。俺に続いてオリアスさんも転がるようにして家から脱出、他にも家の中にいた奴の何人かは脱出に成功。その直後に火球が家に直撃し、家はあっという間に燃え盛る。

 逃げ遅れた兵士も何人かいたようで、火の玉が直撃して燃え盛る家の中から叫び声が聞こえ、全身が炎に包まれた兵士が家の中から飛び出てきた。


「あいつは無理だ。殺すぞ」


 オリアスさんが〈風刃〉の魔法で炎に包まれながら辺りを走り回る兵士の首を落とす。

 生かしておいても、辺りに撒き散らされてる回復魔法を一人で無駄に消費するから仕方ないね。いくら飽和させて、戦場に回復魔法を溢れかえらせてるって言っても、魔法を消費し続けてれば効果は切れるんだし、助かる見込みが無さそうな奴を無駄に回復しても仕方ないから、さっさと始末するに限るぜ。


「思ったよりも抵抗が激しいな」


 俺とオリアスさんは城壁から飛んでくる火の玉を避けるために、その場に伏せて匍匐前進で近くの物陰まで進む。

 立ち上がって必死で逃げようとしていた奴らに魔法が直撃するのを横目で見ながら、俺とオリアスさんは無事に遮蔽物に隠れることに成功する。俺についていた兵士達も散り散りになって隠れているはずだろうから、そんなに心配することも無い。


「城壁までの距離は目測で100メートルって所か」


 オリアスさんが物陰から顔を出し、第二城壁と俺達の距離を測っている。

 100メートルなら余裕だよな。ちょっと走れば、すぐ壁に到達するだろうし、それなら俺達が頑張らなくても良いような気がするぞ。

 もしかしたら、もう城壁まで到着している奴らがいるんじゃないか? そんなことを思って俺も物陰から顔を出して、戦場の様子を確認してみる。すると、どうだったか――


「これは無理だな」


 控えめに言って地獄って感じです。

 城壁からは、突撃していく俺の兵士達に向けて絶え間なく火の玉が降り注いでいる。それを何とか掻い潜っても矢の雨も降ってくるんだから、まともに進めない。

 そして少しでも足を止めたら、城壁の魔法兵に気づかれて魔法を食らって死ぬって感じで、辺りには肉の焼ける臭いが漂い、悲鳴が途切れることなく聞こえてくるって惨状。


「大将が前に出て良い戦場じゃねぇわな」


 オリアスさんは俺に対して帰っても良いみたいな気配を出しているんだけど、俺の勘だとここで逃げるのはマズい気がするんだよね。だって、逃げ出そうとした奴らの一団に向かって火の玉が直撃してるのが、いま見えた所だし、逃げようとして、周りとちょっと違う動きをした奴らから狙われるパターンな気がする。


「逃げるわけにもいかんだろう」

「そいつは御立派なことで。ただ、逃げないなら逃げないで、何とかする方法を考えてくれると助かるんだけどよ。壁に隠れて逃げ回ってるだけじゃいないのと同じで邪魔だからな」


 テメェ、俺を邪魔と言いやがったか?

 ……まぁ、特に何もやってないから、そう言われてもしょうがないね。

 第一城壁の時みたいに、突撃しようにも矢と違って魔法だからなぁ。当たったら吹っ飛ぶだろうし、幾つか耐えて突撃は無理だもん。


「〈障壁〉の魔法でもかけて突撃するか?」

「俺の計算だと50m辺りで、大半の魔法兵の魔力が切れるな」


 半分進んだだけでも上出来じゃないか。その方針で良いんじゃねぇ? 残り50mは気合いと根性で突破する感じで行くのも良いんではなかろうか。


「ちなみに、前を見れば分かるが、建物があるのは城壁からの距離50mくらいには隠れられる建物や遮蔽物が無いんで、向こうの攻撃に晒されるぜ」


 第二城壁の城門前は広場になっていて、城壁の真下とその周辺は道路になっているんで見通しが聞くんだよね。でも、それは向こうの攻撃も分かるってことだと思うんだ。

 頑張れば向こうの魔法を避けられると思う、少なくとも俺は避けられるんで君らも頑張って欲しい。

 そんなことを考えていたら、急に伝令の兵士が俺達の隠れる石壁に滑り込んできた。


「定員オーバーだ出ていけ!」


 オリアスさんがやって来た伝令に蹴りを入れて追い出そうとするが、伝令の兵士はオリアスさんの蹴りに耐えながらも俺に報告を伝えようとする。

 その最中も石壁に城壁からの魔法がバンバン飛んでくる。おそらく、城壁側から、このクソ伝令が俺の隠れている石壁に飛び込んできたのが見えたせいだろう。

 怪しい動きをした奴から殺しにかかっているようなんで、伝令は狙われるだろうし、伝令が逃げ込んだ先にいる俺達も狙われるよな。


「ヴィンラント将軍から報告です! 城壁に限界まで接近したが、現状では、これ以上の進軍は不可能。火力支援があれば何とかなるそうです」


 建物伝いに頑張って近づいたってことかな?

 火力支援かぁ、火力支援って何をするんだろうね? 今後のこともあるから、あんまり魔法を使って魔力を消耗してもらいたくないんだけどね。でもまぁ、魔力をケチって、ここを突破できない方がマズいし仕方ないか。


「オリアス、もういい全力でやれ」

「城壁とか市街地への被害はどうする?」


 城壁とか市街地とかは残しておきたかったけど、こうなったら仕方ない。

 ちょっとくらい廃墟になっても、後で直せば問題ないだろ。これが普通の人間が住んでる街だったら、もう少し躊躇するんだけど、レブナントしかいない街じゃあねぇ。


「全力でやれと言ったぞ? 周りを気にしていて全力が出せるか?」

「了解、全部ぶっ壊すくらいの勢いでやらせてもらう。伝令、グレアムには1時間耐えろと伝えておけ」


 オリアスさんの言葉を受けて伝令の兵がすぐさま石壁から飛び出そうとする。しかし、オリアスさんが伝令の肩を掴み、その場に留まらせる。

 俺はなんとなくオリアスさんが何をしようとしているのか察しました。なので、オリアスさんと目が合っても何も何も言いません。


「何を――」


 伝令が怪訝な表情を浮かべると同時にオリアスさんが伝令に蹴りを入れて、石壁の外に押し出す。

 そして、それとほぼ同時に俺とオリアスさんが伝令が転がるように出た方とは逆側から走り出る。


「悪ぃな。頑張って避けろ」


 オリアスさんが走りつつ顔だけ振り返り、伝令の兵士に応援の言葉を贈ると直後に、城壁から飛んできた火球が兵士を飲み込み、焼き尽くした。

 まぁ、アレです。囮です。明らかに狙われていた、あの状況だと誰かを囮にしないと出られませんでしたし、そうなると、あの場で一番立場が低い奴が囮になるしかないよね。

 伝令の兵士だから俺らの言葉が届かないとマズい感じかしそうだけど、グレアムさんだったら何も言わなくても気を利かせて1時間くらいは耐えてくれるだろうから、伝えてもらえなくても特に問題は無さそうなのが後押ししたよね。


「一旦、下がる! お前らはその場で踏みとどまれ!」


 全速力で後方に向かって走りながら、俺は周囲の兵士に命令する。

 ただ、ここで気づいたんだけど、なんで俺は後方に向かってるんでしょうね。勢いよく走っているけど、俺はオリアスさんの向かおうとしている先に一緒に向かっているだけなんだよな。


 後方に下がったとして何かあるんでしょうかね?

 まぁ、それに関してもオリアスさんが何か考えてくれているだろうから、きっと大丈夫だろうし、とりあえず、オリアスさんに全部任せる方向性で行きましょうかね。






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