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第一城壁

 

 魔法兵も投入することになったんだけど、戦況は特に変わりません。

 まぁ、仕方ないよね。だって、城壁は馬鹿みたいに硬いし、あんまり強力な魔法攻撃を使って魔法兵を消耗させたくないしさ。

 魔法を使うための魔力だって有限だし、今後のことを考えると無理は出来ないわけで、そうなると最低限の魔法で最初の城壁は攻略しないとね。


「一応言っておきますけど、私の部隊は動かせませんよ」


 ヤーグさんに頼もうと思ったけど、先手を取られてしまった。ヤーグさんが率いている魔法兵は貴族出身の連中が多くて、そいつらは広範囲に高威力の攻撃が出来る代わりに応用性が低い新式魔法を得意としているから、強力な魔法を一発か二発くらい使ってもらおうと思ったんだけどね。


「今の戦況ですと、私の部隊が戦場にばら撒いている回復魔法が尽きたら一瞬で最前線は壊滅しますんで」


 そういえば、ヤーグさんの部隊は広範囲と高威力の魔法が使えるから、回復魔法を広範囲に撒いてもらってるんでした。回復魔法を撒いてもらってるから俺の兵士も捨て身で突っ込んでいけるんで、それが無くなるのは良くないよな。

 ヤーグさんの部隊は絶対に守らないといけないから、わざわざ俺の近くっていう最前線から一番遠い所に配置しているくらい重要なことも忘れていたよ。


「では、どうする?」


 俺の位置からだと城壁に向かって捨て身の突撃をする兵士たちが良く見える。

 おっと、また一人、即死が出たみたいだぞ。やっぱ、盾も何も無しに突っ込ませるのは良くなかったかな?

 でも、盾を持たせると走らせるのが遅くなるし、盾って結構な荷物だから行軍速度にも影響が出るから最小限しか持ってきてないんだよな。

 うーん、こうなったら仕方ないし、もう良いや。


「オリアスの隊も前線に出せ」


 俺は近くに待機している伝令に声をかける。伝令はすぐさま走り去り、ほどなくしてオリアスさんの指揮下にある魔法工兵部隊が最前線の兵士たちに合流するために動き出す。

 当然、城壁の上から魔法工兵隊にも矢が降り注ぐが、矢に合わせて石の壁を魔法で生み出して防ぐ。まぁ、全員がそれを出来たわけでもなく、何人かは矢を食らって倒れてるけどね。そんな間抜けでも魔法工兵であるから、歩兵は死なせないように必死で引きずり、物陰に隠す。

 俺達の戦い方は魔法工兵に依存している部分が大きいから、絶対に守らなきゃいけないって意識が兵士たちの間に浸透してるんだろうね。


「さっさと壁を造れ!」


 歩兵が叫びながら、矢が当たった工兵の口に回復薬を突っ込み、殴り殺しかねない勢いで拳を叩き込んで意識を覚醒させている光景が見えますね。いやぁ、素晴らしい友情だね。戦場でしか芽生えない熱い関係って奴かな?


「役立たずの首を落とせ! 生かしておいた所で盾にもならねぇ!」


 城壁から降り注ぐ矢を耐える兵士たちがとんでもないことを叫び出しました。

 まさか口だけだろ? と、思っていたら近くにいた奴の首を斬り落とし、頭の無い死体を担ぎ上げて盾にしながら城壁まで突撃する兵士も出てきてるんだけど、こいつらイカレすぎじゃねぇかな?


「弓兵を殺せぇ!」


 グレアムさんの叫び声が聞こえるんだが、相当にヤバそうです。

 声の方を見るとグレアムさんとその部下が城壁の間近で死体を積み上げて、即席の防壁で橋頭堡を築いている。それに対して、俺が投入を判断した魔法工兵はその後ろでタラタラと石壁を造っていて、攻めているんだか守っているんだか分からん状態でイライラする。

 そんなに前に出るのが恐いのか? そりゃあ、回復魔法で治るにしても矢が当たったら痛いよ。当たり所が悪かったら死ぬしさ。でも、だからってビビってたら駄目だろうが。


「俺も前に出る」


 ちょっとばかし、手本を見せなきゃいけないな。

 俺は愛馬ドラウギースの腹を軽く蹴って、城壁へと足を進ませる。

 途中、地面に伏せている兵士を踏みつけそうになったんで、ちょっとイラっとした俺は場所も考えず寝っ転がっているアホの内の一人をドラウギースで踏み殺してしまった。


「これで目が覚めただろう?」


 俺が聞くと、どうやら目が覚めたようで寝転がっていた奴らは脇目も振らず前線へと走り出していった。

 どうやら、ちょっとくらい寝た方が調子が上がるってことなんだろうね。俺も横になった方が良いんだろうか? まぁ、そんなことをしている時間も無いんだけどね。


「皆殺しにしろ!」


 すげぇ声が聞こえてくる最前線にやってきてしまいましたよ。

 俺は適当な石壁の裏でドラウギースから降りて、大剣を片手に走り出す。流石に城壁が目と鼻の先の位置にあるのに馬に乗っているのもね。的がデカくなって狙われやすくなるし、良くないからさ。

 しかし、近くに来ると、改めで城壁のデカさに圧倒されるね。ただ、高さが100mあるってのは嘘くさい気がするけどね。


「何人か俺と一緒に死にかける勇気がある奴はいるか?」


 石壁に隠れていても仕方ないんで、速攻で特攻を決め込んでやろうという判断。

 俺は近くにいた兵士たちの首根っこを掴み、目と目で見つめ合って一緒に逝こうと勧誘してみた。すると、全員が泣きながら頷いてくれました。いやぁ、俺の人徳は凄いね、やっぱ侯爵って地位が大きいのかな。


「よし、突撃だ。とにかく、壁をよじ登れ」


 俺は、俺についてくる意思を示した兵士たちと一緒に石壁から飛び出して城壁に突撃する。

 矢が飛んでくるけど、頭に当たらなきゃ大丈夫だろうという勢いで突き進む。それと、矢とか石とか弾とかは当たると思ってる奴の所に飛んでくるものだと思うので、俺には当たらないだろって思いながら、城壁に向かって走り続ける。


「鎧を脱げ。重いと壁を登れん。それと俺の鎧は拾っておけ」


 俺は走りながら、鎧を外す。後で俺の鎧は拾っておいてね。そこらの雑兵のとは違って俺の鎧は凄く高価なんで。

 鎧が無くなったので、当然だけど矢は刺さる。だが、頭に当たりさえしなければ問題なし。凄く痛いけど我慢できる範囲内です。


「銃兵っ! もう良い撃て!」


 グレアムさんが叫んでます。銃兵は弾の関係もあって温存したかったんだけど、こうなったらしょうがないね。もっとも、銃兵は最前線には置いていないんだけどね。だって温存したかったわけだしさ。


「オリアスも出し惜しみは無しだ!」


 グレアムさんの叫びに応じて、後方から砲声が轟き、城壁に大砲の弾が着弾する。つっても、それで城壁を壊せるわけじゃないし、城壁の上とか、中から矢を放ってくるレブナントの動きを止められるわけじゃないんだけどね。

 レブナント共は基本的にビビらないから、ビビらせる目的で派手なことをやっても意味は無い。じゃあ、砲撃は意味が無かったって? そんなことは無いよ。

 だって、砲弾の直撃を受ければ、流石に物理的な衝撃はあるわけだし、その揺れで矢の狙いがズレたりするから、俺達も安全に突っ込んでいけるわけです。


「何でも良い! 投げつけろ!」


 砲撃を受けてもなお、突撃する俺達に向けて矢を撃つ弓兵に対してのグレアムさんの指示。

 俺は近くに落ちていた、兵士の死体を投げつけて城壁の弓兵にぶつけた。ついでに、手に持っていた大剣も城壁の窓のから石を投げつけていたレブナントに投げつける。俺が投げた大剣は真っすぐ飛んで、胴体を貫き一撃で仕留める。


「俺が一番乗りだ!」


 手元にある物を投げつけながら進んでいると、何処の馬の骨か知らん奴が俺を差し置いて一着で城壁に辿り着き、雄たけびを上げながら、城壁をよじ登りだす。

 俺を抜かすとは良い度胸だと思っていると、壁を登っていた頭に石が落ちて、砕かれる。


「素手で登る馬鹿がいるか! 誰か梯子を持っていけ!」


 グレアムさんが積み上げた死体の壁の上に立ち、剣を指揮棒のようにして城壁を攻略しようとする軍勢を指揮している。


「工兵、壁はいらん! 階段を造れ!」


 グレアムさんの命令に従って工兵が石壁の隙間から姿を現し、魔法を発動しようとする。

 それを待っても良いんだけどね、俺はもう城壁に到着しちゃったんだよね。そうなったら、やることは一つだよね。


「ついてこれる奴は来い」


 大剣は投げつけて俺は丸腰、鎧も脱いでるし、最高に身軽だ。

 俺は城壁に手をかけ、よじ登る。中に鋼板を仕込んであると言っても、外側は石を組んだりして造っている城壁だから、いくらでも手をかけて登る所はある。


「大将に先陣を切らせるんじゃない! お前らが先に逝け!」


 グレアムさんが怒鳴っているのが聞こえるけど、俺には関係ないね。俺は既に城壁をよじ登ってる最中なわけだしさ。

 とりあえず、15mくらい登れば窓があるし、そこから城壁の中に入るとしよう。それまではノンストップで垂直の壁を腕の力だけで登っていかないと。だって、止まったら狙い撃ちを食らうしね。


「うわぁぁぁぁ!?」


 俺より先に壁を登っていた奴が、ちょっと止まった瞬間に矢を食らって落ちていきました。

 こういうことがあるから止まってはいけないんですよ。


「ぐぁっ!?」


 おっと、敵が投げ落としてきた岩が直撃して、俺と同じくらいの速度で壁を登っていた奴の頭が潰れました。

 まぁ、立ち止まらなくても当たる時は当たるってことです。


「銃兵、弾を惜しむんじゃない!」


 グレアムさんの指示のもと、銃兵が城壁の敵に向けて射撃を行っています。

 ちなみに城壁を必死でよじ登っている兵士にも流れ弾が当たったりもしていますが、誰もそれを気にする様子が無いのが、なんだか戦場の狂気って感じ。


 おっと、俺の方も下々の連中のことを考えている場合じゃない。

 なにせ、矢が飛んできたりしてるからね。城壁の側面にあるバルコニーみたいに張り出した場所から、弓兵が俺に矢を射かけてくる。何体かは下にいる銃兵が始末してくれているけど、全部を何とか出来るわけでもないため、これに関してはどうしようもなかったりする。

 とりあえず頭には当たらないように気を付けるが、壁をよじ登っている状態で全てを防ぎ切るのは、当然だが無理であり、俺の体にも何本か矢が突き刺さる。


 スゲー痛いけど死にはしないから我慢は出来る。すると、今度は真上に見える窓から敵兵が身を乗り出して俺に石を投げつけてきた。これも身をよじるなどして頭を守りながら耐え、俺は壁を登る。

 こんだけ痛い目にあわされた俺の我慢も限界に達しつつあり――


「絶対に殺す」


 防ぎ切れずに石を食らった頭からはダラダラと血が流れてるし、矢が当たった体はハリネズミみたいになってそうな気がするが、その甲斐あって、ようやく窓枠に手がかかる。

 だが、その直後、窓に引っ掛けた俺の手を払いのけようと、レブナント共が俺の手に向けて剣を振り下ろした。しかし、そんな攻撃よりも俺の動きの方が速い。

 俺は腕の力だけで体を引っ張り上げ、窓の枠によじ登ると俺に剣を振り下ろそうとしていたレブナントの顔面を殴りつけて粉砕する。


「散々、邪魔しやがって」


 流石の俺も怒ってますよ。

 俺はここまで必死で登り続けてきた城壁に別れを告げて、窓から場内に侵入する。すると、侵入した先ではレブナントの兵士どもが待ち構えていた。

 まぁ、当然と言えば当然だよね。だって、侵入口になりそうな場所は窓とかしかないわけだし、そこから入ってくる奴を殺す準備はしているよな。

 まぁ、雑魚なので特に問題はないですけど。


 俺は待ち構えていたレブナントの兵士どもを殴り殺し、蹴り殺し、壁に叩きつけて殺し、窓から放り捨てて殺した。

 戦闘? 戦いになるわけないだろうが、こんな雑魚共とさ。ついでに、別の窓から石とか岩を投げ落としている奴らも始末する余裕だってあるくらいさ。


 そうこうしているうちに、俺以外の連中も何人か城壁内に侵入できたようです。

 外はまだ戦っているわけだし、外からだけで城壁を攻略するのは不可能だろうから、それなら俺達が中から制圧するなりして、外にいる奴らを助けてやるとしようか。











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