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西へ、西へ

FGOのガチャ爆死でモチベがダウン


 広場のレブナント共をあらかた始末した俺達は、敵に取り囲まれていたニブル市の市庁舎の中へと入り、とりあえず休憩することにした。

 コーネリウスさんが俺に対して、ひたすらに感謝の言葉を述べているけど、感謝の気持ちがあるならうるさくしないで欲しいね。ちょっと疲れているんで市庁舎の中の一番良い部屋で休憩してるんだけど、あんまり五月蠅くされると、気持ちも身体も休まらないんだけど。


 俺が休憩している最中も、市庁舎の外ではまだ戦いが繰り広げられているようで、剣戟の音や銃声が俺の所にまで届いてくる。グレアムさんやオリアスさんがどういう方針を取っているかは知らんけど、魔法やら大砲で街の被害を気にせず一気に殲滅って手段は取らないみたいですね。

 まぁ、逃げ遅れた市民もいるみたいだし、仕方ないのかな?


「殆どの市民は市庁舎に避難させたのですが、全員とまではいかず……」


 コーネリウスさんが申し訳なさそうに俺に伝えてきたけど、それに関しては仕方ないんじゃないかな。だって、すぐに城門を破られちゃったみたいだし、避難の指示なんか伝わらなかったんだろうね。むしろ、そういう状況で頑張って市庁舎まで市民を連れてきた方が偉いよ。もっとも、ニブル市はまだ殆ど人が住んでいないけどさ。


「全滅とならなかっただけでも充分だ」


 まぁ、何で簡単に城壁を破られて市内に入られちゃったのかは気になるけどね。そこら辺は、他の兵士から話を聞いたりしないと分からないんだろうけど――


「おい、街の下に地下道が掘られてるぞ!」


 おっと、オリアスさんが怒鳴り込んで来ました。地下道って何のことなんでしょうかね?


「奴ら地上を通った形跡が無いと思ったら、ひたすら地面を掘り進んで市内に潜入してやがった」


 マジかよ、スゲェことするなぁ。まぁレブナント共は不眠不休で働けるから、そこまで大変じゃないかもしれんけどさ。


「とりあえず、掘られた穴を埋めといたが、コイツは良くねぇぞ。もしかしたら、トゥーラ市の地下も同じことになってるかもしれねぇからな」


 それは困るなぁ。一応、トゥーラ市は侯爵領の領都になっているわけだし、あの街が戦場になるのは良くないね。


「伝令を送って、早急にトゥーラ市も調べさせろ」

「もうやってる」


 そうですか、そりゃ良かった。じゃあ、もう安心かなって、そんなわけねぇよな。


「グレアムとヨゥドリ、ヤーグもすぐに来る。今後のことについて話し合うが構わねぇよな?」


 トゥーラ市に戻らなくても良いんだろうか?

 まぁ、ヨゥドリもわざわざ来るみたいだし、大丈夫なんだろうね。


 ほどなくして、グレアムさん、オリアスさん、ヨゥドリ、ヤーグさんという主だった面々が俺の休憩していた部屋に集まる。

 コーネリウスさんには市内に残ったレブナント共の掃討を任せているので、ここにはいません。一応、居た方が良いんじゃないかと思われるかもしれないけど、居た所で意見を言うわけでもないので、居なくても問題ないんだよね。


「とりあえず、ユリアス・アークスがレブナントを操って攻撃してきたってことで良いんだよな?」


 オリアスさんが俺に対して尋ねてきた。ハッキリとは分からんけど、髭面の騎士がユリアスの関与をほのめかしていたような気がするので肯定しておきます。

 ユリアスとかヤーグさんみたいな〈能有り〉のレブナントは、他のレブナントの行動をある程度コントロールできるみたいだし、ユリアスが手引きしたのは間違いないと思うんだよね。


「だとすると、良く分からないよねぇ。なんで今更、攻めてくるんだろうか? この時期である理由は?」


 グレアムさんが疑問を呈する。俺としては、何でそんなことを疑問に思うのか分からないけどね。

 俺らは収穫期を終えたばかりで食糧はたっぷりあるし、しばらくは農作業とかに人手を割かずに済むから、兵士なんかも集めやすかったりするし、俺達は割とベストコンディションってやつなんだよね。

 つまり、本気の俺達と戦いたいなら今しかないし、文句なしに決着をつけたいなら、このタイミングしかないわけで、戦いを挑むのも、そんなにおかしいことじゃないと思うんだよね。


「私たちが戦いに応じるのを待っているのでは?」


 ヨゥドリの意見に俺も同意です。ユリアスの野郎は本気で俺達と決着をつけたいんだと思う。俺が奴の立場なら、きっと同じようなことをしていると思うしね。


「ユリアスが旧ヴェルマー王国領のレブナントを動かすことが出来るとしたら、我々は速やかにユリアスを排除しなければなりません」


 まぁ、そうだろうね。一体一体は弱くてもレブナントは数が多いし相手にしてたらキリがないし。

 それに奴らに攻め込まれ続けたら、俺達はその対応をしなきゃならなくなるし、それに人手も割かなきゃいけないから、普段の生活にも支障が出る可能性があるんだよね。

 だから、さっさとユリアスを仕留めて、レブナント共を操らせるのを止めさせたいわけで……


「そうなると、王都に兵を出さなきゃいけないよな」


 オリアスさんが溜息を吐く。俺も溜息を吐きたいけど、偉い立場の人間なんで我慢します。

 本音を言うとユリアスと戦いたくないんだよね。だって、あの野郎と戦うと絶対に痛い思いをするだろうしさ。


「そりゃあねぇ、最前線に立ってくれてれば良いけど、王都にいるらしいし、王都にいるってことは、恐らく王城の奥に引っ込んでいるだろうからねぇ。きっと、そこに辿り着く前にレブナントの軍勢を王都の守備に回しているだろうから、こっちも軍を派遣しないといけないかな」


「そんでもって、兵士を派遣したところで奴を倒せるかって話だよ。単純に倒せないなら良いけどよ、王都を落とされたせいで、王都から逃げ出しちまったらどうする?」


 そっちの方がヤバいよね。あの野郎が自由にそこら中を歩き回っている方が怖いよ。

 一人で千人の兵士と戦うような奴だぜ? 奴が一人で俺達を暗殺しに来たら、絶対に守り切れないね。

 今は、あの野郎が自分のルールに従って王都で俺達が来るのを待ってるから良いけど、それが無くなって奴が自由に俺達を攻撃するようになったら、俺達は終わりだ。


「絶対に逃がせねぇんだ。奴と戦うなら確実に仕留められる人員を揃えねぇと駄目だって、お前らも分かってんだろ?」


 確認しないでくれると嬉しいんですが、オリアスさん。

 確実に仕留められるように強い奴を揃えようとすると、間違いなく俺とオリアスさんとグレアムさんの三人は入るんですが、俺も行かないと駄目?


「まぁ、俺は構わないけどねぇ」


 グレアムさんは大丈夫だそうです。じゃあ、この際、グレアムさん一人に行ってもらいませんか?

 まぁ、間違いなく失敗するだろうけどね。だって、この人、ユリアスとの戦いで良いところ全くないんだもん。この人に任せてたら、また負けて終わるだろうから、この人だけを行かせるのは却下。


「仕方が無いな。俺も行こう」


 行きたくないけど、俺が行かないと戦力的に勝てそうもないしね。我慢してユリアス討伐に行こうと思います。


「領主を最前線に立つというのもどうかと思いますが、それ以外にどうしようもないですからね。頑張ってください」


 なんだか他人事のようなことを言ったのはどなたでしょうかね。今まで、一言も発言してなかった人の声のような気がするんですが。


「お前もついてくるんだがな、ヤーグバール」


「冗談でしょう? 私は荒事が苦手な魔法使いでして、研究ならまだしも戦いはちょっと無理かと。しかも、相手はユリアス・アークスでしょう? 私は戦力になりませんよ」


 本当にそうなんですかね? 俺はヤーグさんと付き合いがあるオリアスさんを見る。すると、オリアスさんが――


「いや、そいつは割と戦えるぞ。魔法使いとして、単純な力量は俺以上だしな」


 ――だそうです。ヤーグさんは問答無用で連れていくことになりました。


 まぁ、後は適当に近衛の連中を選んで、そいつらと俺、オリアスさん、グレアムさん、ヤーグさんで特攻を決め込んでユリアスを仕留めるしかないだろうね。とにもかくにも、奴をなんとかしない限り、俺達は平穏な日々を過ごせないだろうし、ちょっと必死にならんといけないと思うんだよね。


「本気でユリアスを倒そうとするなら、王都に行かないといけませんよ?」


 ヤーグさんが露骨に嫌そうな顔で俺達に説明を始める。

 嫌そうな顔をされても、俺らはレブナントを操って攻撃してくる可能性のあるユリアスを放ってはおけないんだよ。アンタがユリアスの手下になっているレブナントを逆に操り返せるってんなら良いんだけど、向こうの方が上なのか、それは無理みたいだし、あの野郎を直接倒すしかねぇんだって分かってんのかな?


「旧ヴェルマー王国の王都ロードヴェルムはトゥーラ市から街道を西に進んでいけば、やがては到着します」


 なるほど、とりあえず西へ進んでいけば良いわけね。


「ただし、王都へ辿り着くまでには大都市を幾つも経由しなければいけません。各都市は我々を敵と見なしている可能性が高く、戦闘は避けられないかと思います」


 なんで、戦う羽目になるわけ?


「ユリアスは王の命であるとして、各都市の代表に我々と戦うことを要求しているはずです。各都市の代表がユリアスの言うことを素直に聞くとは思いませんが、王命であると言われれば話は別です。

 王は姿を見せておらず、存在しているかも定かではありませんが、王へ絶対の忠誠を誓う彼らが、その命令を蔑ろにするはずがありませんから、ユリアスの口車に乗って我々と戦うことになるでしょう。

 まぁ、そもそも彼らが私のようなレブナントである可能性も低いんですがね。そこら辺にいる〈能無し〉と同じになっている可能性も高いですし、そういう場合、ユリアスの命令には無条件に従うので間違いなく戦闘になりますね」


 実際の所、王様は生きているんでしょうかね? レブナントに生きているって言葉を使うのも変だけどさ。

 生きているなら、ユリアスにここまで好きにはさせないだろうし、そうなると死んでいる可能性が高いかな?

 もしも生きているなら、王様の身柄を確保して、レブナント共に俺達を攻撃しないようにって命令を出してもらうんだけどね。

 ヤーグさんから話を聞く限りだと、王様の方がレブナントの支配権は強い感じだし、王様に命令を出してもらえば、ユリアスは自由に使える駒が無くなって……むしろ、そっちの方がヤバいか。

 ユリアスが自棄になって一人で俺達を攻撃するようになられた方が対処に困るんだよね。結局、ユリアスの野郎が俺達に対して攻撃の意思を持っているなら、奴を仕留めなきゃ、状況は良くならないってことか。


「各都市を攻め落としながら王都へと進み、最後は王都を攻め落として、王城にいるであろうユリアス・アークスを倒さなければならないんですが、それでも本当に行くんですか?」


 だから行くって言ってんだろうが。

 ユリアスをぶっ殺して安全を手に入れられる上に、よくよく考えれば王都と城も手に入るし、王都に着くまでの各都市で略奪もできるんだもんな。ユリアスの事は抜きにしても、いずれは王都に行くことになっただろうね。


「行くに決まっているだろう。俺達はユリアスを始末するために王都へ向かう」


 というわけで、俺達は王都ロードヴェルムに向けて西へ、西へと進んでいくことになりました。

 途中にあって俺達の行く手を遮る大都市を制圧し、王都を守るために配置された軍勢を殲滅し、最終的には王城に居るであろうユリアス・アークスをぶち殺すため、俺達は旧ヴェルマー王国を征服していくことになったわけです。




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