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蛮族の最強

 

『よっしゃ、ぶっ殺す』


 風に乗って、俺の所まで響いてくるユリアスの声。ユリアスは俺のことを完全に標的と定めたようだ。

 まぁ、良いんじゃないですか? 準備さえ整っていれば、あのアホなんざいくらでもりようがあるって気づいたんだよね。だって、冷静に考えたらアイツって、ほぼ蛮族じゃん。文明人の俺達が負けるわけねぇよ。


 ユリアスは高台にいる俺の姿を認識すると、俺の所へ真っすぐ突っ込んでくる。普通の神経をしてたら、絶対にそんなことしないよね。


「狙撃します」


 ヨゥドリが銃を構えて、即座に発射する。しかし、ユリアスは放たれた弾丸を長剣で苦も無く弾いた。


『効かねぇんだよ』


 まぁ、そりゃあ無理だろうね。あの野郎が銃ってものをなんだか知ってるかは分からんけど、それが危ないかどうかくらいは直感で判断できるんだろう。多分、マトモに戦闘したら絶対に勝てないね。

 ヤーグさんが言うにはヴェルマー王国は戦争ばっかりしてたし、殺し合い最高っていう割とイっちゃってる人たちの多い国だったらしい。そんな国でぶっちぎりにヤバいって言われてたのがユリアスなんだから、それはもう俺達の常識では測れないほど、イカレてるんだろうね。


「真正面から撃っても無理ですね」


 ヨゥドリは諦めて銃を下ろす。その間も、ユリアスは俺に向かって真っすぐ突っ込んできている。俺のいる高台に到着するまでには、そびえたつ崖があるのだが、ユリアスに迂回する気配はない。

 普通に考えたら迂回しそうなもんだけど、ユリアスは躊躇わずに垂直に近い壁を登ろうとしてくる。


『そこで待ってろ』


 マジで俺の所まで登ってくるつもりなんだろうね。頭おかしいね。ユリアスはそびえたつ崖に対して、両手にもった小剣を突き立て登ってくる。


「殺れ」


 隙だらけなんだもん、今のうちに撃ち殺すよね。登ってくるユリアスに向けて、俺の手下が銃を撃ちかける。だが、ユリアスは《障壁》の魔法で銃弾を防ぎ、登り続けてくる。まぁ、そういうことが出来るって話も聞いていたから、驚きはない。

 だけど、反応が早すぎるよね。きっと、《探知》の魔法で俺達の位置を確認して、位置取りから何をしようとしているのか予測して行動してるんだろう。


『邪魔すんなよぉ』


 ユリアスが、左手の小剣を崖の上にいる俺の手下に向けて投げてきた。《念動》の魔法を使って飛ばしているので、不安定な態勢で投げたとしても問題なく届く。ユリアスが投擲した小剣は寸分の狂いもなく、俺の手下の一人の喉元に突き刺さり、命を奪う。


「よし、押さえつけろ」


 放っておくと小剣はユリアスのもとに戻っていく。飛び回る小剣を自由にさせておくと危ないので、刺さったままにしておきたい。だから、俺は手下どもに命じて、小剣を抜けないように押さえつけさせる。絵面としては一人の喉に刺さっている剣をみんなで掴んで、さらに押し込んでいるような感じで結構ヤバめ。どんな殺人現場だよって感じ。


「銃が駄目なら岩を落とせ」


 登ってくるユリアスに魔法使い部隊が岩を生み出して、崖から岩を落とす。つっても、これも《障壁》の魔法で防がれるんだけどね。この程度では嫌がらせにもならないようで、ユリアスの登攀速度は衰えない。このままだと、俺の所まですぐに登り切ってしまう。


 まぁ、それならそれでいいんだけどね。高台の端にユリアスの手が掛かった。それを俺の手下が踏みつけて、登りあがってくるのを邪魔しようしたが、逆にユリアスの小剣で足を斬り払われ、そのうえ足を掴まれ、引きずり降ろされる。引きずり降ろされた先に足場なんかはないので、そいつは高台から地面まで真っ逆さまに落ちていった。


「待っててくれて、嬉しいぜ」


 風の魔法は切っているのか、ユリアスの声は目の前のいる奴らにしか届かない。


「ヨゥドリ、剣をよこせ」


 俺が言うと、ヨゥドリは恭しく俺の剣を差し出す。俺は受け取った剣を抜き放ち構える。対するユリアスは小剣を左手に持っているだけ、腰には俺の長剣があるし、厄介なロープだってあるので、武器は充分すぎるほどあるだろう。


「では、やるか」

「上等だ!」


 俺の言葉に応じたように、ユリアスが声をあげるが、お前に話してるわけじゃないんだよね。

 俺の声は合図だ。俺の声に反応して隠れていた冒険者たちがユリアスに向けて一斉射撃を行う。しかし、ユリアスは動じずに《障壁》の魔法を使って銃弾を防ぎながら、俺に向かって突進してくる。

 《探知》が使えるんだから、隠れていたって意味はないし、不意打ちにならないんだから防がれるのは当然だよね。


 ユリアスは俺に向けて小剣を投げた。当然、《念動》で動かしているんだろう。下手にこれに反応すると、ユリアスの動きに対する反応が遅れそうだし、そちらを気にしてしまうとユリアスに対応しきれなくなりそうなので、対応は別の奴に任せる。


「ヨゥドリ」


 俺が声をかけるまでもなく、ヨゥドリが小剣を銃で撃ち落とした。しかし、すぐに小剣は宙に舞い上がり、俺に襲い掛かろうと飛んでいく。だけど、俺は全部ヨゥドリに任せる。飛んでいる小剣を撃ち落とせる技量があるのはヨゥドリしかいないしね。


 ヨゥドリが連続して銃を撃つ。俺達の銃は単発式だから、連射はできない。だが、連射をする方法はある。単純に装填済みの銃を何丁も用意しておけばいい。

 ヨゥドリは発砲すると、装填済みの銃を傍らに置いている冒険者から、すぐさま受けとり、即座に撃つ。そうやって、宙を舞う小剣を俺に届かないように抑え込んでいた。


「だから、どうした」


 小剣は無力化できている。後はロープと長剣だ。


「突撃」


 俺が命令すると、銃を撃っていた冒険者たちが銃と鎧を捨て、素手でユリアスに向かっていく。半端な鎧を着てたところで、ユリアスの剣は防げないんだから、いっそのこと裸で挑んでしまえって感じ。

 それとロープにつかまってぶん回されたりしたら、鎧を着てる方が危ないんだしさ。だって、重くなるし硬くなるんだもん。振り回されてる奴が着ている鎧の金属部分が当たったら、痛いじゃすまないぜ? 武器だって同じだよ。武器を持ってる状態で振り回されて、その武器ごと味方に叩きつけられたら危ない。

 それなら裸になって、なんとか受けとめられる柔らかさでいてもらった方がいいよねって感じで裸になってもらいました。


 ユリアスは向かってきた丸腰の冒険者を一刀のもとに斬り捨てる。しかし、下で戦っていた時のキレはない。疲れたのか? そんなわけはないよな。レブナントは疲れないからな。

 単に戦いにくいだけだ。なにせ、こっちは命を捨てるつもりで戦ってるからな、近接戦で特に強力な攻撃手段を躊躇わずに使えるんだ。

 何が強力かって? 体当たりだよ、体当たり。速度をつけて思いっきりぶつかるんだ。

 鎧を着けてないから多少は軽くなるけど、それでも人間一人の重さが突っ込んできたとして、剣で斬ったからって勢いを殺せるわけもない。普通だったら躱されて反撃を食らう恐れがあるから、やらないんだろうけど、反撃を受けて死んでもいいという覚悟でいる奴らだからな。躊躇せずに突進してくれるぜ。

 小手先の技で戦ったところでユリアスには勝てないんだから、無駄死に覚悟で組み付いて転がせって命令したんだよ。


「うぜぇぇぇぇ!」


 突っ込んできた冒険者を斬り捨てる。だが、勢いまで殺せずに既に死体になった冒険者の体がユリアスに激突する。その隙に別の冒険者がユリアスに組み付こうとするが、タックルで組み付いた瞬間に背骨を振り下ろした肘で砕いて動きを止めると、そいつの首根っこを掴んで振り回して、自分に寄ってくる冒険者を弾き飛ばし、最後に突進しようとしてくる冒険者に投げつけた。


 僅かながらに、攻撃の手が緩むと、ユリアスはロープを投げ、冒険者の首に引っ掛け、例のごとく武器のように振り回そうとする。だけど、それの対策もあるんだよね。


「そいつを潰せ」


 俺の言葉に応えるよりも早く、打ち合わせ通りに冒険者が動き、首にロープをかけられた冒険者に殺到し、その冒険者を集団で押しつぶすと、潰された冒険者を核にして剥がれないように一塊になる。

 流石のユリアスでも何百kgもの重さになった塊を振り回すことはできない。塊の中心付近にいる奴は圧死しただろうが、その犠牲でユリアスのロープを無力化できた。


「ちっ」


 ユリアスの舌打ちが聞こえてきて、超楽しいね。ユリアスはロープを使うことを諦め、それを捨てる。これで、ユリアスの武器は長剣だけだ。


「いいぜ、やってやるよ」


 ユリアスは剣を収め、丸腰で自分に向かってくる冒険者たちを待ち受ける構えを取る。

 冒険者たちは一塊になってユリアスにぶつかることを狙う。対するユリアスはそれを避ける気配もなく、逆に冒険者たちに突っ込んでいった。


 普通に考えたら重さの差やら何やらで、ユリアスが一方的に吹っ飛ばされて負けるはず。しかし、そんな常識はユリアスに通じない。ユリアスは一塊になって集団で突進してきた冒険者を一人受け止めた。


「俺が……」


 そして逆に押し返す。集団で行けば倒せるという目論見が外れた冒険者たちは逆にユリアス一人に吹っ飛ばされた。


「最強だぁぁぁぁぁ!」



 近づく冒険者を殴り殺し、蹴り殺し、投げ殺し、折り殺し、ユリアスは蹴散らしていく。先程まで、こちらが優勢に見えたのが、一気にユリアスが優勢になった。


「舐めやがって、ぶっ殺してやる」


 近づいてきた冒険者の頭を手刀で粉砕しながら、ユリアスは俺を見る。どうやら、本気になったようだ。目つきが今までと全然違う。


 ユリアスは俺から視線を外さずに、近寄る冒険者を素手で殺しながら、俺に近づいてくる。これは逃げられそうにないね。であるならば、仕方ない。迎え撃ってやろうじゃないか。


「来い」


 俺の言葉が聞こえたのか、ユリアスが俺に向かって走ってくる。走りながら、長剣を抜き放ち、ユリアスは俺に向けて剣を振り下ろし、俺はそれを受け止める。


「雑魚を並べたところで無意味だ」


 そりゃあそうだ。並べるだけじゃなくて、使いつぶすくらいしないとな。

 俺と鍔迫り合いをしている最中のユリアスに背後から冒険者が組みつこうとするが、《探知》で周囲の状況を把握できるユリアスは、その冒険者の動きも予測できており、長剣を持たない手で、近づく冒険者を払いのけた。


「《探知》の範囲内であるならば、全ての動きが予測できるということか」


 俺が確認のために話しかけてもユリアスは無視して、剣に力を込めてくる。むぅ、無視と酷いな。これじゃあ肝心のことが聞けないじゃないか。《探知》の範囲外からの攻撃はどうなのか?ってことをさ。


 俺がそんなことを考えた直後――爆発、爆音、衝撃が俺達を包んだ。

 何が起きたのか? 打ち合わせ通りなので、俺は分かる。俺達のいる場所から、遥か遠くの場所から、魔法兵が大砲を撃ったのだ。

 《探知》の範囲内で不意打ちは無理。では《探知》の範囲外からでは、どうなんだろうと思い、大砲で長距離から攻撃してみたというわけだ。

 その試みは見事に成功し、《障壁》の発動が万全でない状態でユリアスは砲撃を食らい、地面を転がっている。対して、同じ位置にいた俺は無傷。なぜ、無傷で済んだかというと、俺についていた魔法兵が《障壁》を俺に掛けてくれていたからだ。自分が無傷で済む算段がついてなきゃ、こんなことはしませんよ。

 もっとも、近くにいた丸腰の冒険者連中は砲撃を食らって全滅寸前だけどね。あいつらが近くにいてくれたおかげで、ユリアスは味方を巻き込むような攻撃はしないと思ってくれたようだ。ユリアスも案外、考えの甘い奴だぜ。


「手を変え品を変え、よくやるもんだぜ」


 ユリアスは立ち上がろうとするが、それをされると嫌なので、俺は跪いているユリアスの顔面を蹴っ飛ばした。


「最強なんてほざいてても、このザマか」


 いくら色々とヤバい攻撃を持っているっていっても、何人かの命を犠牲にすれば無力化できる攻撃が大半じゃねぇか。余裕で対処できるっての。


「いくら強かろうとも、一人でどうにかなると思ったら大間違いだ」


 まぁ、実際は一人で何とかなるんだろうけどね、何の準備も無く、ユリアスが奇襲をかけてきたら、俺らもどうにもならなかったと思うしさ。それを考えたら、やっぱりユリアスは最強って言ってもいいんだろうね。だけど、そんなユリアスより、俺の方が強いです。


「数で囲んで嬲り殺す。それをできる数を揃えることができ、そいつらに捨て身を前提にした戦術を取らせることができる俺の『力』の方がお前より上だ」


 一人で頑張って無理だったら、皆で頑張ろうって感じ。これが俺の最強さ。

 ぶっちゃけると権力って武器が最強って話なんだけどさ。それなりに使える奴を集めて、俺の命令を聞かせるには権力が無きゃ無理だしね。

 これがユリアスには無い俺の武器だ。どんなに最強って言っても、ユリアスの最強は蛮族の最強だからね。いずれは文明人に駆逐される運命なのさ。実際、ユリアスは俺の目の前で這いつくばってやがるしな。


 そんじゃまぁ、そろそろ首を落とすとしますかね。それで、この野郎も終わりだ。そうすりゃヴェルマー王国で俺の邪魔をする奴はいねぇだろうし、俺も平穏な生活が遅れるってもんだ。というわけで、俺の平穏な生活のために死んでくれ、ユリアス・アークス。





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