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進軍開始

明日も投稿できると一週間休みなく投稿したことになるんだけど、そういう頑張りを評価してくれても良いと思うの。

 

「我らは最強!」

「我らは無敵!」

「我らは最強!」

「我らは無敵!」


 テラノ砦から出陣した貴族とか傭兵を中心にした軍勢は、そんな叫びをあげながら、トゥーラ市の先にあるというニブル市を目指して、街道を進んでいます。

 なんで叫んでいるかと言うと、俺が叫べって命令したからです。実際にはクソ弱くても、叫んでいるうちに自分は強いのかもという思い込みが働いて強くなるかもしれないと思って叫ばせているんです。まぁ、嘘なんですけどね。


「やっぱり見ていますね」


 ヨゥドリが俺に近づき耳打ちをしてきた。そう言われて、俺も辺りを見回してみると、生前の習慣に従って、街道の脇にある農地で作業をしているレブナント達の中に明らかにこちらを見ている個体がいた。

 最近、こんな反応を示すレブナントが出てきた。レブナントの大半は俺達が何をしようが無視し、自分たちのテリトリーに入ってこない限り反応を示さない。

 それが普通のレブナントの反応なんだけれど、どういうわけか、特定の言葉の反応して、言葉を発した奴を見つめる個体が最近見つかるようになってきた。時期的にはトゥーラ市を攻め落とした頃から現れたとか。

 それを発見したヨゥドリが言うには、反応する言葉は『最強』であるとか。もう、その時点で何となくだけど、俺は色々と察しました。となれば、それが真実かどうか確かめたくなるわけで、その実験のために『俺達は最強』なんてアホなことを叫ばせているんです。


 というわけで、この戦いは俺を舐めてる貴族とか傭兵とかを酷い目に遭わせて、どうしようもないくらい悲惨な状況に追い込み、俺の助けがないと生きていけないようにさせ、最終的には俺に従順にさせようという目的もあるんですが、実験も重要な目的です『最強』と叫ばせ続けていると一体、何が起こるのかを確かめないとね。まぁ、なんとなく予想はつくんですけどね。


「我らは最強!」

「我らは無敵!」


 うーん、すげぇアホっぽい。俺も叫んでたらアホっぽかっただろうけど、叫んでないので平気です。

 俺は先頭を進む貴族と貴族の私兵連中、その次の傭兵たち、そして元農民なんかの順番で並ぶ集団の後ろにくっついて進んでいます。今回は俺と冒険者連中は基本的には見学です。

 だって、今回のメインは俺を舐めてる奴らだからね。その人たちに頑張ってもらわないと意味が無いよ。


「アロルド殿、我らはこの位置で良いのだろうか?」


 南部の貴族連中がおっかなびっくり俺に話しかけてきたりする。なんだか、南部の人に怖がられているんだよね、俺ってさ。


「良い。戦いが始まったとしても前に出ず、俺の兵と共に居ろ」


 怖がってても、俺の言うことは聞くし、俺を舐めてたりもしないから、南部の人たちは別に酷い目に遭う必要はないんだよね。むしろ、優しくしてやりたい気分。俺を怒らせないように気を遣ってくれる人たちには、俺も気を遣ってやりたくなるよね。


「しかし、それでは褒美が――」

「戦から生きて帰れることこそが、最大の褒美だと思わないか?」


 危なくないようにしてあげるんだから、それで我慢しようよ。まぁ、俺の予想だと、俺達が守らなくても、大半は生きて帰れるだろうけどね。

 俺の言葉に納得したのか、南部貴族の人は青い顔で自分の率いる兵のもとへ帰っていきました。


 しかし、ピクニックかと思えるくらい楽な行軍だなぁ。南部で帝国と戦ってるときは、死ぬほど面倒くさかった記憶があるし、それと比べたら天国だね。

 道は多少古いけど、街道のていをなしてるし、基本的にレブナントは自分たち住処から離れて行動しないから奇襲をくらう心配もない。後ろから物資を運んでくる輜重しちょう隊も輸送中に妨害をくらう心配もないので、物資は運び放題だし、到着の遅れも少ない。目的地に到着するまで、何の心配もないとか、遠足かって思うよ。


 そうして何事も無く進んでいき――


「ニブル市まで間もなくです」


 斥候が俺に伝えてくる。本当に遠足かと思えるくらい楽でした。

 前の方ではガヤガヤと騒いでいるけど、何をやっているんだろうね。さっさと隊列でも組んで突っ込めよって思うけど、今日の俺は基本的に見学の方針なんで、何も言いません。

 俺と俺が率いる冒険者、それと南部貴族の人たちはガヤガヤと騒いでいる奴らは放っておき、ニブル市の近くにある高台に陣を敷いた。高台からはニブル市と、その周辺――これから戦場になる場所を一望できる。

 俺は事前にこの場所のことをヤーグさんから聞いていたので、俺はニブル市を目的地に定めた。ここからなら戦場の様子が良く分かるので、見学にはもってこいの場所だ。


 戦場が良く見える位置にテーブルと椅子を用意して、ヨゥドリに食事の用意を頼む。すると、程なくしてパンとチーズ、炙ったベーコン、干し肉のスープ、キャベツの漬物、腸詰と芋の炒め物。さらに飲み物として葡萄酒が並ぶ。


「戦場とは思えない贅沢さですね」


 俺と同じテーブルにつきながら、呆れ交じりにヨゥドリが言う。文句があるなら食わなくてもいいですと思うけど、そうなると俺一人で食わないといけなくなるんだよね。オリアスさんとグレアムさんもついてきているけど、別の用事があって、この場にはいないしさ。


「俺達が戦うわけではないからな。見物客なのだから、多少は贅沢も良いだろう?」


 俺はあんまり贅沢だと思いませんけどね。だって、俺のだけ量が少ないし。なんでも量が多いと見栄えが悪いし、貴族っぽい食事にならないから、上品に少なめに皿に盛りつけてるんだってよ。

 兵士とかにも、同じ物が出されているらしいけど、そっちは上品さとかいらないから量を重視してるんだとか。ちょっとふざけんなって思う。補給は完璧で食事には困らないんだから、もっと贅沢に俺の料理も増やして欲しいぜ。


「まぁ、そうですね」


 俺に同意しながら、ヨゥドリは葡萄酒を一口飲むと下の戦場に目をやる。つられて俺も下を見ると、ニブル市の前で、アホどもがゴチャゴチャと騒いでる。


「誰が先陣を切るかで揉めてるようです」


 やる気があるようで何よりです。


「誰が先に突っ込むのかという押し付け合いですけどね」


 やる気が無さそうで何よりです。


 まぁ、一番最初に突っ込む奴は死ぬ確率高いから、やりたくないよね。何も考えずに突っ込んだら、魔法とか矢が振ってくるから、近づく前に死ぬし、先陣を切りたくなくても仕方ない。

 先陣切る奴らの負担を減らすためには、弓や魔法で先制攻撃を仕掛けたら良いと思うし、俺達の場合は銃騎兵が銃をぶっ放して先制攻撃をかけて、相手の隊列を崩しながら突っ込んでいくんだよね。

 あいつらって、それが出来る兵士とか魔法使いとかいたかな? まぁ、いないならいないで、何とかするだろ。


「こちらの数はどれくらいだ?」

「冒険者を含めないなら、1000人くらいですね」


 1000人ねぇ、まぁ良いんじゃない? 何が良いかは分からんけどさ。

 そう思って、戦場を眺めていると、ようやく先陣を切る奴が決まったようで、この間まで普通の農民でしたって感じの奴らが、先頭に並んで隊列を組む。

 どういう交渉があったのか分からんけど、戦意の欠片も感じられない奴らを最初に突っ込ませるってどうなんだろう。先陣を切る奴らは結構な確率で死ぬけど、だからって弱い奴らにやらせるのは良くないと思うんだよね。


「彼らは中央地域出身が多いですからね。西部や南部と違って魔物に襲われることも、領地同士の揉め事もない場所で生きてきた人々なので、戦の経験は殆どありませんよ。まぁ、先祖伝来の戦の心得みたいな物は伝えられていると思いますけどね」


 じゃあ、何とかなるかな。なんか、やる気が感じられないけども、まぁ大丈夫でしょう。ニブル市からも衛兵が出てきたけど、そっちも大概な感じだしさ。

 トゥーラ市の時はヤーグさんとかユリアスほど有能ではないけど、何体かは〈能有り〉がいたから、こちらの攻撃への対応も比較的スムーズだった。だけど、ニブル市には〈能無し〉のレブナントしかいないようで、ノロノロと生前の動きを模倣しているだけみたいだし、こちらが弱くてもなんとかなりそうな気配があるね。


「――何か叫んでますね」


 俺にも聞こえてるから、別に教えてくれなくて良いよ。内容は無いようだしさ。おっと、高度なジョークが出てしまいましたね。内容が無いよう……内容がないよう……ないようがないようってな具合ですが如何でしょうか?


「まぁ、気にすることじゃない。自分を奮い立たせるために虚勢を張る奴は多い」


 ぶっ殺すとか、汚い言葉を叫びが聞こえてくるけど、超絶不快ですね。俺は食事中なんですけど、そういう時に汚い言葉を聞かされると『ぶっ殺すぞ!』って気分になって、楽しく食事が出来なくなるんですよね。


「だとしても、あまり見栄えが良くない行為ですね」


 そりゃあね、武器を手に持ってるんだから、ぶち殺すとかいう前に、さっさと殺しに行けよって俺も思う。それに相手はレブナントだぜ? 言葉が通じるわけじゃないんだから、ぶっ殺すとか言っても、相手をビビらせることは出来ないんだし、意味ないことをやるなよって感じ。


「すぐに終わるから、我慢しろ」


 だって、ニブル市から出てきた兵士レブナントがノロノロとした動きではあるけど、攻撃の体勢を取り始めたしさ。

 自分たちの街に攻めてきた奴らを倒すっていうことをやってきたから、レブナントになっても、その行動が出来るし、行動が決まったらレブナントは徹底してるんだよね。


「先手を取ったのはレブナント側ですか」


 先頭に立つ農民が後方の貴族からの命令を怯えて待っている間に、レブナント側は攻撃の意思を統一し、突撃を始める。対して、アホどもはどうすればいいか分からずに、同じだけど多少偉いアホどもの命令を待っているようだ。


「傭兵どもは何をしている?」


 ヨゥドリに尋ねつつ、自分でも探してみると、何もしていないとすぐに分かった。

 傭兵どもは、戦場の隅にいて、あまり戦いに絡む気は無いようだ。負け戦になったら速攻で逃げる。勝ち戦の時でも最低限の報酬さえ貰えれば良いやって感じなんだと思う。そういうやる気のない奴らはムカつくよね。


「彼らも中央辺りで働いている傭兵ですからね。まともな戦いの経験はありませんし、未だに冒険者に転職もせずに傭兵なんてやってる目端の利かない連中ですからね。期待するだけ損ですよ」


 ヨゥドリが冷めた眼で傭兵たちを見ながら、俺に教えてくれました。どうやら、ヨゥドリは傭兵が嫌いのようです。

 まぁ、俺もそんなに好きじゃないけどね。なんかカッコよく見えるけど、まともな仕事じゃ稼げない人達の集まりだし、乱暴な奴らも多いし、生産的なことなんか何一つしない連中だからね。山賊と同じようなもんだよね。

 たまに生産的なことをするとしても、戦のどさくさに紛れて、そこらにいる女の子に乱暴して、親に望まれぬ子供たちを作ることくらいだし、傭兵とかいらねぇと俺は思うね。


「ふむ、どうやら、そのまま迎え撃つようですね」


 おっと、余計なことを考えていました。

 傭兵については、将来的には根絶する方向性で確定しているんで、今考えることじゃないね。冒険者ギルドと仕事が被る商売敵でもあるから、皆殺しにするって決まってるしさ。


 まぁ、そのことは置いといて、戦場はどうなっているかというと、特に何かあるわけでもなく、突撃を始めたレブナントに対し、元農民たちは動揺しながらも、武器を構えています。

 逃げないのは偉いので褒めても良いかもしませんね。後ろにいる貴族の兵士たちに矢が向けられているのにビビって逃げないのは立派だと思います。あれって、もしかして逃げたら農民を撃つとかそういう感じなのかな。


 なんにしても、ようやく戦闘開始だね。

 別に負けてもらっても構わないんだけど、一応実験をしているわけでもあるし、実験の結果が出るまでは頑張って欲しいもんだぜ。




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