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厄介な人々

俺もSSSランクとか勇者パーティー追放とかステータスが9999な話を書きたい。

 

 大量の労働力レブナントを動員した甲斐もあって、ようやく鉄道が運行した。と言っても、区間はテラノ砦からツヴェル市まで、途中の停車駅はガルデナ山脈の途中にあるナバル峠だけだ。

 ナバル峠には練兵場があり、新兵に対してモーディウスさんが地獄の特訓を施し、役に立たなそうな奴には敵を殺すか自分が死ぬかという信念を、役に立ちそうな奴には生き残る術を教えているとか。


 鉄道の運行が開始されるとツヴェル市から大量の物資と人員が運び込まれるようになった。つっても、ツヴェル市から送られた全ての人員と物資が届くわけじゃない。

 なにせ、三日に一回は事故が起きて、列車がガルデナ山脈の険しい山肌を転がっていくからだ。エイジは『いきなり山岳鉄道は無理です』とか言っていたけど、三日に一回しか事故が起きてねぇんだから殆ど成功じゃねぇかと俺は思う。たまに一日に三回くらい事故が起きるけど、それだって24時間運行の内で三回なんだから充分少ないと思う。


 まぁ、そんな風にトラブルがありながらも、鉄道は順調です。俺が順調と言えば順調になるんです。

 そうそう、人もどんどん集まってきたと言いましたが、それはアドラ王国各地にいる俺の手下である冒険者たちだけではなく、ヴェルマー王国という新天地に夢と希望を抱いてやってくる人々であったりもします。

 ヨゥドリがアドラ王国の各地に布告を出した成果で、ヴェルマー王国に来れば農民は土地、貴族は領地、傭兵は金が手に入るとかいう噂に騙されてやって来たみたいです。……騙されたって言い方は良くないね。ちょっと反省。


 そういう人たちの第一陣は貴族の生まれであるけれど家を継げないし、長男に何かあった時の予備にもなれなかった余り物の次男以下の奴らだとか。それと世間知らずの傭兵連中とか、ちょっと目端が効き自分なら何とかなるだろうとか思ってる商人とかもいますね。

 こういう奴らは、イキってるのが多いから困るよね。俺のことを舐めてる奴も多いみたいだしさ。なんでか分からんけど、自分たちが必要不可欠な人間だなんて勘違いしてやがるんだよね、こいつら。

 そういう勘違いをしてると酷い目に会うと思うんだけど、そういうことを学んでこなかったんだろうね。せっかくだから、ここで学んでいくのが良いと思います。


「うわあぁぁぁぁ!」

「ぎゃぁぁぁぁぁ!」

「ぐあぁぁぁぁぁ!」


 今日も今日とて悲鳴を聞く日々。何の悲鳴かと言うとアホの悲鳴です。

 基本的に兵の管理をしてるのはグレアムさんなんで、グレアムさんに頼みごとをすると、色々と便宜を図ってもらえるんですが、そういうことをする時に舐めた態度を取ると、悲鳴をあげる羽目になります。

『自分は○○家の者なので、隊長が相応しい』とか『○○傭兵団だが、もっと報酬を上げてもらわないと働く気にならない』とか、そういうセリフを吐いた奴は悲鳴をあげる羽目になりますね。


『よし、じゃあ試験をしよう。俺に勝てたら、君たちの要望に応えるよ』


 グレアムさんはそう言って、試験を受けるアホを殺します。だって、合格条件がグレアムさんに勝つっていう無理臭い条件なんだもん。ちなみに、試験を受けないって選択肢はないです。試験をしようかって言った時点で試験が始まっています、怖いね。ついでに言っておくと、グレアムさんに会う時は丸腰にさせられるので、素手でグレアムさんの試験を突破しないといけません、超怖いね。


 グレアムさんの試験の噂が広まりだすと、逃げ出す奴らが出始めましたけど、それに関しても問題なし。

 だって、少人数でテラノ砦からガルデナ山脈を越えてアドラ王国まで逃げるなんて無理だもん。ヴェルマー王国領に来た時点で逃げることは出来ないんですよね。

 さらに最近ではモーディウスさんがナバル峠で訓練している将来性が無さそうな新兵に逃亡兵を捕まえたら、訓練期間を短縮してやるとか言って、逃亡兵狩りをさせているので、更に逃げ場がありません。


 商人に関しては、交渉次第で俺達を懐柔できるとか考えている奴がいたりするのが嫌だよね。大抵はヨゥドリとエリアナさんがなんとかしてくれるので、問題ないけどさ。

 エリアナさんが厳しくしてから、ヨゥドリが優しく対応するみたいな、そんな感じで上手くやってるようです。ただ、つけあがって話が分かる奴らだと勘違いして交渉してくる奴には、神様と交渉する機会を設けられるように配慮してあげてます。

 俺達の基本方針は『舐めた奴は殺す!』なので、甘く見られることは我慢できないんです。お互いにリスペクトの念を抱こうね。そういう気持ちが無い奴は過酷な世界では生きていけません。

 たまに商人連中は自分たちが世界を牛耳っているような感じになるのが多いですからね。地道に体を動かして働いている人を蔑ろにする、そういう思い上がりは世の中に良くないので、ぶっ殺して反省を促します。

 世の中に良くない奴をぶっ殺すのは、俺達の行いは殆ど世直し。悪いことをしたっていう反省の成果は来世で発揮してください。


 こうして俺はアドラ王国側からヴェルマー王国側にやって来た人に対して、思考の一部を割いてあげているわけですが、どうにも、そんな俺の思いや優しさ、配慮は伝わっていないようです。

 だって、毎日のように匿名の手紙が届きますからね。俺の宿舎に石が投げ込まれたと思ったら、石は紙に包まれていて紙を剥がしてみると、俺に向けての血文字の手紙だったりするのね。

 手紙の内容は良く分かりません。なんか俺に対する文句らしいけど、直接言いに来ない時点で対したものじゃないだろうから、無視。


 多分だけど、最近アドラ王国からやって来た人たちは、ちょっと俺のことを舐めてるんだろうね。南部とか西部出身の人たちは、俺に対して従順なんだけどね。

 それ以外の地域出身の人が俺に舐めた態度を取るのは、出会いがしらの一発が足りないのかったのかもしれないとも思う。人間関係ってのは第一印象が大事だし、そういうところで俺は失敗したんだと思う。

 最初に一発ぶちのめして、その後は優しくしてやるってことを怠ってしまったのが良くなかったかもね。こうなってしまったからには、酷い目に遭わせて、心身ともに衰弱させて、俺しか頼る相手がいないって状況にするべきかもしれない。幸いにも、そういう状況を作ってくれる相手はいるわけだしね。


「トゥーラ市の先にある都市を攻め落とすとしよう」


 というわけで、酷い目に遭わせようと思います。酷い目に遭えば、頼りがいのある俺に縋りついてくるだろうし、そうなりゃ俺の言うことを聞くようになるだろ。

 ヤーグさんがトゥーラ市の先にあると教えてくれたニブル市は規模はトゥーラ市に劣るけれども、平地のド真ん中にあって攻めやすいとか。まぁ、そういうのはどうでもいいんですけどね。酷い目に遭わせるのが目的なんだし。


「先鋒は新入りに任せよう。実力を見たいのでな」


 という提案をだしておきました。つっても、新しくやって来た冒険者連中は使いません。だって、俺の大事な手下だしね。

 使うのは欲に目がくらんだ傭兵とか貴族連中です。こいつらは正直、適当に数が減ってくれる方が良いと思う。だって、今の状態だとプライドみたいなのがあって、俺の言うことを聞かないんだもん。


「ニブル市を落とした暁には……そうだな、金か土地か好きな物をやろう。農民、商人、傭兵、貴族の区別なく功績のあった者には褒美をくれてやる」


 そういうことを言ったら盛り上がりましたね。なので、ちょっと調子に乗りました。


「働き次第では土地持ちの貴族だ。貴様らが手にした土地に関して、俺は貴様らの自治を認め、貴様らの領地とすることも認めてやろう」


 領地に関してだけど、アドラ王国の王様とかの意見を聞かなくてもいいよね。だって遠いし、一々お伺いを立てるのは面倒くさいよ。

 そもそも、アドラ王国と違って、旧ヴェルマー王国領に関しては俺の物みたいな感じなんだし、俺の裁量で土地を分配したっていいよね?

 でもって、分配した土地は持ち主が上手く使ってくださいって感じです。ああ、そうそう、俺の物を分けてあげたんだから、見返りくらいはもらわないといけないよね? なんか俺に貢ぎ物でも持ってきてください。もしも持ってこなかったりしたら、土地は返してもらうしかないと思うんだ。もっと、俺のことを考えてくれる人にあげた方が、俺にとっては良いわけだしさ。


 ――とまぁ、こんなことを色々と考えたし、言ったけど、ニブル市を攻める奴らにはあまり関係ない話だよね。彼らにはひどい目に遭ってもらわないといけないわけだし、良い思いはせずに終わるんじゃないかな?俺は後ろから、その様を見物させてもらいましょうかね。






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