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現地調達

ランキングに入りました。ありがとうございます。

 

 テラノ砦から冒険者を引き連れて出陣した俺達はトゥーラ市という場所を目指す。この場所は冒険者が偵察してきてくれた場所で、テラノ砦から最も近い大都市だ。


「とは言っても、そこまで大きな都市ではないんですけどね」


 ヤーグさんが水を差してくるんですが。こういう奴がいると気分が盛り下がるよね。ちょっと、ぶっ殺してやろうかって気分になったりするけど、感情的になるのは良くないよね。一応、生きていてもらわないと困るしさ。でも、そもそもの話、レブナントって生きてるって言うんですかね?


「どうやら、あれがトゥーラ市のようですね」


 何故かついてきた、ヨゥドリが指さした先に、巨大な城壁に囲まれた都市が見える。


「あれで、そんなに大きくないと?」


 気のせいでしょうかね? 俺が知る限りだとあれより大きい街となると、アドラ王国だと王都のアドラスティアくらいしか無いように思うんだけど。


「ヴェルマー王国では普通の大きさですよ」


 しれっとした態度で言われるとムカつくんですけど。こういうちょっとしたイライラの積み重ねが殺人事件につながると思うんだ。


「流石のアロルド殿とその精鋭部隊でも、アレを落とすのは骨が折れるのでは?」


 ヨゥドリが挑発的な口調で俺に話しかけてくるけど、骨が折れるって何を言っているんだ? 俺はいつだって骨を折る側だぜ? そりゃもうバッキバキって感じにな。


「まぁ、見ているといい。どちらの骨が折れるのかをな」


 グレアムさんが騎乗している冒険者たちに隊列を組ませる。その後方にオリアスさんが率いる魔法兵部隊が並び、魔法を使って石の大砲を作らせる。

 大砲と言っても基本はただの筒であり、それに燃焼の効果を付与した魔石を粉末化したものと、魔法で球の形にした石を突っ込んで爆発させて、石を飛ばすといった代物だ。

 俺は魔法兵の後ろにオリアスさん、ヤーグさんと並んで隊列が組み上がるのを待つ。


「お前も働けるか?」


 俺はヨゥドリに尋ねた。ヨゥドリも銃を肩に担ぎ、戦闘の準備はしているから、戦う気はあるんだろう。


「十人ほど貸してくれるのでしたら、大将首を獲ってきますよ」


 そいつは頼もしいね。じゃあ、ヨゥドリにも何人か冒険者を貸してあげましょう。

 俺が兵隊を貸すと、ヨゥドリは軽く打ち合わせをして、兵を引き連れて俺達から離れていった。なんか逃げ出したようにも見えるけど、考えがあるんでしょう。


 そうこうしている間にトゥーラ市の城壁の上に兵士が並び、市内への入り口らしき大門からも兵士が続々と姿を現す。その中に普通の人間は当然だが一人もおらず、全てがレブナントだ。

 生前の習慣なのか、城壁の前で隊列を組む兵士の中から、立派な鎧を身にまとった騎士が姿を現し、こちらに近づいてくる。開戦前の挨拶のつもりなんだろうか? でも、俺はレブナントと挨拶をしても仕方ないと思うので――


「オリアス、やれ」


 俺の言葉を受けて、魔法兵部隊が大砲を放つ。目標は勿論こっちに近づいてくる騎士だ。放たれた砲弾は騎士に直撃し、騎士を粉々に吹き飛ばす。さて、これでどうだろうか?


「ヤーグ、どうだ?」


 俺が尋ねてもヤーグさんは何のことを言っているのか分からない様子で首を傾げる。あれ、何をするか言っていませんでしたっけ? そういえば言ってなかったかもしれませんね。


「指揮官を倒したのだから、能無しのレブナントに命令を出せるようになったのではないか?」


 ヤーグさんは初めて会った町で他のレブナントに命令をしていましたし、他のレブナントも命令して操れると思ったんですけど、どうなんでしょうか?

 ヤーグさんが命令を出す邪魔をしそうな奴も一応ぶっ殺したから大丈夫だと思うんだけど……


「……無理ですね。他にも何体かが、トゥーラ市のレブナントの指揮権を持ってるようです。そいつらを全員始末しなければ、トゥーラ市のレブナントは掌握できませんね」


 そうですか、じゃあ全員ぶっ殺すか。


「アロルド、城壁に偉そうな奴がいるぞ」


 オリアスさんの声を聞いて、俺は城壁の上を見ると、オリアスさんの言う通り偉そうな感じの奴が喚きたてているように見える。だが、次の瞬間、銃声がしてそいつの頭が吹っ飛んだので、見えたのは一瞬だった。

 誰が撃ったのかは分からんけど良い腕だ。後で褒めてやっても良いかもしれんね。


「城壁は残した方が良いか?」


「別にいらんだろう」


 オリアスさんが尋ねてきたので、答えるとオリアスさんが魔法兵に大砲を撃つように命令を下す。狙いは城壁の上からノロノロと弓を構える兵士たちだ。放たれた砲弾が城壁に直撃し、城壁の上の兵士たちが吹っ飛んでいく。

 それに合わせてグレアムさんが騎兵を率いて、門の前に待ち構える兵士たちに向かって突っ込んでいった。グレアムさんの率いる騎兵の突撃は一合で敵の隊列を崩して、突破し、そのまま市内へとなだれ込む。


「俺も行くか」


 何もしないのも良くないと思うので、俺は愛馬のドラウギースを駆って、隊列の崩れた敵兵の中を悠々と進む。途中で敵兵が邪魔をするように立ちはだかるが、ドラウギースが巨体で踏みつぶして進んでくれるので特に問題は無い。

 そして俺は門を抜けて市内へと入った。市内では、グレアムさんの率いる部隊が馬を下りて、レブナントの兵士と白兵戦を繰り広げていた。つっても、一方的な虐殺だけどね。

 ケイネンハイムさんの所の新式銃は、多少狙いがズレても手足に当たれば、手足を吹き飛ばして無力化できるんで、かなり役に立っているようだ。


「こういう時って偉い奴はどこにいるのかねぇ?」


 敵兵を二三人斬り伏せながら、グレアムさんを俺に近づき、質問してくる。そんな質問をされても俺が知るわけないじゃん。でもまぁ、予想でも良いなら、答えをもってます。偉い人って言うのはだいたい――


「城にでもいるんじゃないか」


 近寄ってきたレブナントの頭を掴み、握りつぶしながら俺は答える。頭を握りつぶしても体液が出てこないのはレブナント良いところだよね。

 普通の人間の頭を握りつぶすとオエッって感じになるけど、レブナントは砂っぽい感じでサラサラと気持ちよかったりする。


「じゃあ、ちょっと行ってみようか?」


 俺も行く感じですか? まぁ構いませんけど、ちょっと待ってくださいね。


「誰か剣を貸してくれ」


 気づいたんですけど、俺は丸腰でした。いつも使ってる剣をユリアスに盗まれてるのを忘れてたし、新しい剣を手に入れるのも忘れてました。俺ってドジっ子だね、ちょっと恥ずかしい。


「どうぞ、お頭!」


 冒険者の一人が俺に剣を貸してくれました。

 まぁ、こうやって貸してくれる人もいるし、忘れたって困らないよね。ただまぁ、今の奴みたいに、なまくらを貸してくる奴がいるのは困るけどね。


「じゃあ、競争でもするかい?」


 グレアムさんが突進してくる敵兵の首を刎ねながら俺に提案してきたけど、俺はそういう馬鹿なことはしないので、無視しつつ、近くにいた敵兵の頭を剣で叩き潰す。

 グレアムさんは無視して、俺は遠くに見える城ような建物の方に行こうと思います。


「一人で行かない方が良いと思うけどねぇ」


 まぁ、ついてくる分には良いでしょう。一人より二人の方が楽だしね。

 俺とグレアムさんはトゥーラ市の中を進んでいく。途中でレブナントの敵兵が邪魔してくるけど、そんなに強くはないので、ぶっ殺しながら進んでいく。そうして、城のような建物に到着しました。


 別に到着したからなんだってことは無いんだよね。やることは変わらないんだしさ。

 城の中に入ると、同時に数体のレブナントが襲ってきたので、一体は胴体を剣で貫き、二体目は頭を殴り砕き、三体目は蹴りで背骨をへし折ってやり、四体目はグレアムさんに任せて始末した。


「忠誠を抱かれる程度には人望がある人だったんだろうねぇ」


 グレアムさんは自分が始末したレブナントを見て、そんなことを言った。俺もそのレブナントを見ると、どういうわけかメイド服だった。

 メイドが侵入者を殺すために必死になるとか物騒だねって感想しか俺は抱けないんですけど、グレアムさんはそれを見て、何を思ったんでしょうね。


 城の中を偉い人を探して歩いていると、兵士だけでなくメイドとかの使用人の姿をしたレブナントも襲ってきた。まぁ、だからどうしたって感じなんですがね。

 だって、そんなに強くないんだもん。首を握れば首が千切れるし、腹を殴れば腹に風穴があくような脆さだし、全く怖くないね。

 ユリアスみたいにシャレにならないくらい強いレブナントもいれば、この城の使用人みたいにクソ弱いレブナントもいるし、不思議だよね。


 そんなことを考えつつ城の中をレブナントをぶっ殺しながら歩いていると、なんだか立派な扉の前に到着しました。


「こういう扉の先に親玉が居そうだよねぇ」


 それに関しては俺も同意です。じゃあ、扉を開けてみましょうか。お邪魔しますよっと――

 扉を開けた先は執務室のようで立派な机があり、その向こう側に煌びやかな格好をしたレブナントが座っていた。だが、俺達が部屋に入ると同時に城の外から銃声が聞こえ、椅子に座っていたレブナントの頭が吹っ飛んだ。

 俺は部屋の窓から顔を出し、外を見てみる。すると、遠くの屋根の上に立つヨゥドリが銃を片手に俺に手を振っているのが見えた。どうやら、ヨゥドリが撃ったようだ。まぁ、大将首を獲ってくると言っていたんだし、これくらいはやってもらわんとね。


 さて、これでトゥーラ市でレブナントに命令を出せる奴はいなくなったわけだけど、これならヤーグさんも大丈夫でしょう。じゃあ、早速、命令を出してもらいましょうかね。



 ――そして数日後。


「こうやって現地調達をしていけば、労働力はいくらでも手に入る」


 俺達の目の前で、トゥーラ市のレブナントはヤーグさんの命令に従って、黙々と線路の敷設工事に従事していた。

 人間を使うのも大事だと思うけど、人件費が掛からず、文句も言わず、二十四時間働いてくれる労働力レブナントがいるんだから、そっちも使った方が良いよね。こうしたほうが開発も捗るだろうし、どんどん労働力レブナントを集めていきましょう。


 こういうことをやってると、『何を舐めたことしてくれてんだ!』って、ユリアスが攻めてきたりもしそうだし、そっちの対策も用意しておいた方がいいかも。

 流石に二回も負けるのはちょっと恥ずかしいし、今回は勝てなくても引き分け位にはしたいところだね。






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