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実験

 とりあえず、宿になりそうな建物を探して村の中を見て回る俺とグレアムさんとヒルダさん。

 村のあちこちでは冒険者が家探しやら何やらをして回ってます。その最中に村人だった感じの奴らをなで斬りにしたり、撃ち殺したしてますけど、まぁ魔物みたいなものだし、別に問題ないよね。せめて言葉を喋ってくれたりすれば色々と考えるけど、そういう感じもないゾンビみたいなもんだし、殺しても心が痛まないんだよね。


「ふむ、ここはどうだろうか、アロルド殿」


 歩いているとヒルダさんが良さげな建物を見つけてくれました。酒場かなんかでしょうか? 古臭いし、ボロいけど、大きな建物なので、ここに泊っても良いかもしれませんね。


「悪くないな」


 本当はもっと豪勢な感じが良いんですけどね。まぁ、贅沢は言いませんよ。というわけでお邪魔しますかね。


「邪魔するぞ」


 無言で入っても良いのに断りを入れる俺。なんだかとっても紳士な感じで素晴らしいね。でも、店の中に入っても、いらっしゃいませも何も無いんだけど。そういうのってどうなわけ? いやさぁ、無人だったら何も言いませんよ? でもさぁ、いるじゃん、店員がさ。


「どうするんだい?」


 どうするって何が? 酒場なんだから、とりあえず席に着こうぜ。話はそれからでもいいだろ?

 そう思ったので、俺は何も言わずに酒場のテーブル席に腰を下ろす。俺がそうすると、グレアムさんとヒルダさんも座るけれど、グレアムさんはワクワクした顔なのに対し、ヒルダさんはドン引き顔です。

 正直言うと、俺もドン引き中。だって、テーブルと椅子が埃まみれなんだもん。俺って綺麗好きだから、こういうの許せないんだよね。ハッキリ言って店員をぶっ殺してやりたい気分だけど、でもそういうことで怒るのもどうかとも思うんだよね。


「おや、注文を取りに来てくれたようだよ」


 グレアムさんの言う通り、店員の女の子が俺たちのテーブルまでやってきた。手にはコップが載ったトレイを持っている。

 うーむ、水でも持ってきてくれたのかしら? そんな推測をしていると、店員の女の子はトレイからコップを下ろして、俺たちの前に置く。ただまぁ、コップは割れてるし、蜘蛛の巣が張ってたりするんだけどね。

 まぁ、しょうがないよね。だって、店員の女の子はゾンビみたいなもんだしね。


「生前の行動を繰り返してるって感じかねぇ」


 グレアムさんはそんなことを言いながら、店員の女の子のお尻を触る。


「見た目は普通で、触って腐ってる感じもないし、程よい弾力。だけど、体温は無いね」

「…………グレアム殿、それはどうかと思うぞ」

「好きでやってるわけじゃないんだけどねぇ」


 そりゃあそうでしょうね。グレアムさんは未亡人にしか欲情しないもんね。でもヒルダさんが文句を言いたくなる気持ちは分かります。俺だって女の子のお尻は触りたいし、きっとヒルダさんもそういう気持ちなんでしょうね。

 まぁ、それはそれとして、グレアムさんにお尻を触られた女の子は大丈夫なんでしょうか。いやらしいことをされたとかで大騒ぎとか――――は無いみたいですね。だって、何事もなかった感じで店の奥の方に引っ込んでしまったしね。


「良く分からんな」


 生きている時と同じ行動をしてるなら、グレアムさんの行為に対して反応してくれても良いと思うけど、そういうのは無しなんだね。


「まぁいい、次だ」

「次とは?」


 俺はヒルダさんを見る。グレアムさんがやったんだから、今度はヒルダさんの番だよね。グレアムさんもヒルダさんを見ているわけだし、ヒルダさんにも何かやってもらいましょう。


「何かやってよ」


 グレアムさんがニヤニヤとしながらヒルダさんに促す。なんかやれと言われても困るよね。


「何かと言われても、何を?」

「なんでもいいよ、とりあえず実験してみないとねぇ」

「そう言われても――――じゃあ、ちょっと来てくれ!」


 決断早いなぁ、ヒルダさん。速攻で店員を呼んでしまいました。まぁ、呼んでも来ませんけど。


「音声に反応はしないのかな」

「なんだか、一人で大声出して私が馬鹿みたいなんだが」

「気にするな。頑張って考えた上での行動を笑いはしないし、馬鹿にもしない」


 まぁ、その程度のことで馬鹿ってなったら、俺とかヤバいことになりそうだしね。ヒルダさんが頭おかしいのかってなったら、俺とか完全に正気じゃないと思うんだ。


「じゃあ、次はアロルド君だねぇ」


 グレアムさんがニヤニヤ笑って何かを期待しているようだけど、さてどうするかね。つーか、そもそもこういうことをやる意味ってなんなんだろうね。なんだか分かんないけど、実験になってるしさ。俺的には寝床を探しに来ただけなんだけどな。

 でもまぁ、何かやらないといけない感じだし、うーんうーんうーん――――うん、思いつかんね。つーか、何で俺がゾンビごときでこんなに頭を悩ませなきゃならんのだ? なんか腹立ってきたぞ。つーか、色々考えるまでもなく、ゾンビなんか皆殺しじゃねぇか。正確にはゾンビじゃないのかもしんないけど、そんなの俺の知ったことじゃないね。


 ――――というわけで、俺は注文でも取りに来たのか、ヒルダさんの呼びかけから随分してやってきた店員の女の子風ゾンビの首を剣で斬り落としました。だって、面倒くさいじゃん。


「いきなり首を落とさないでくれよ。どのくらいで殺せるか分からないだろ?」


 グレアムさんがそんなことを言うけど、首を落とせば絶対に殺せるって分かってるんだから充分じゃないかな。まぁ、グレアムさんはグレアムさんで色々と知りたいことがあるんでしょうから、文句を言うのも良くないかもしれんね。


「そうか、では次は気を付けよう」


 一応、気を付けるとだけ言っておきます。口では何とでもいえます。そもそもグレアムさんの要望に応える義理とか俺には無いんだよね。

 まぁ、それはそれとして店の奥にもう一匹の気配があるので、俺は女の子風ゾンビの首を掴んで店の奥に投げ入れておきます。これでおびき出されてくれると思うんだけど――――


「反応が無いねぇ」

「しかたない。乗り込むか」


 ヒルダさんはドン引き顔で沈黙中。俺的にはグレアムさんじゃなくて、女の子と話したいんだけどね。そんでもって『がんばって!』とか女の子に言われれば、俺のやる気が最高になるんだけど、なかなか上手くいかないもんだ。


「すまん。ゴミを投げ入れた」


 俺はそう言って店の奥に入ると、そこは調理場であった。中では店主らしきゾンビが鍋をかき回している。

 ほどなくして、調理場に入ってきた俺に気づいた店主風のゾンビが俺に詰め寄ってくる。まぁ、俺が悪いので、頭を下げて調理場から出る。相手がゾンビであっても、相手の嫌がることをして怒らせたら駄目だよね。


「始末したのかい?」


 店の奥から出てきた俺を見たグレアムさんが尋ねてくるけれど、俺は首を横に振って、再び店の奥に戻る。

 よくよく考えたら、俺がゾンビに気を遣う必要とかないわけだし、別に詰め寄ってこようがどうしようが、気にしなけりゃいいじゃん。というか、そもそも、ぶっ殺しに行ったんだよね。

 俺は調理場に再び入る。すると、再び店主風ゾンビが詰め寄ってくる。だが、俺は無視して居座る。やがて、しびれを切らしたのか店主風ゾンビは錆びた包丁を俺に突き付けてくる。しかし、なんでこいつらは喋らないんだろうかね? 文句があるなら口で言ってくれたらいいのにね。

 店主風ゾンビは包丁を俺に突き付けているが、全く怖くない。脅しをかけているだけで俺に危害を加えようという感じがないのだから、怖がりようもない。恐らく、生きていたころから人を傷つけたことが無いんだろうね。だから、攻撃に移れないんだと思う。

 じゃあ、俺の方はというと、これが普通の酒場の店主だったら危害を加えるのはちょっと悩むけど、目の前にいるのは店主風ゾンビなので、全く悩まずに剣を頭に振り下ろせるわけで――


「首を飛ばさずとも、頭を砕けば死ぬか」


 店主風ゾンビは頭の破片を調理場にぶちまけて床に転がっている。グレアムさんに言われた通り気を付けて首を落とさないようにしたけれど、それとの違いが分からんね。どっちも首から上は無いわけだしさ。

 しかし、なんなんだろうね、こいつら。なんか面倒くさいから途中からゾンビってことにしちゃってたけど、よくよく考えたらゾンビみたいな奴らって俺は最初に定義してたよね。そういう表記ゆれって良くないから、気を付けよう。――まぁ、気を付けたからなんだって感じだけどさ。


 とりあえず、邪魔くさい奴らは始末して、今日の宿は確保したんだから、それでいいよね。細かいことは誰かが考えたり、片付けてくれるだろうから、俺はのんびり過ごすとしようかね。






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