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最初の村

 

「どうやら、そろそろのようだぞ。アロルド殿」


 俺と並走して馬を操るヒルダさんが声をかけてきた。そろそろと言われても何のことなんだろうか。

 そろそろ終わり? 何が? 人生が? 馬鹿言っちゃいけないよ。まだ、出発して四日じゃないか、これ以上馬に乗っていたら、お尻が終わりそうな気はするけど、それだって死ぬわけじゃないんだから、人生を悲観したいけないよ。


「見ろ、アロルド殿」


 あ、山を越えたってことね、分かります。だって、俺の前に地平線まで続く大地が見えますし――って、マジか、すげぇわ。


「なんとも広大だな」


 俺達のいる場所は山脈の終点となる山の頂上付近だった。そこから見えるのは地平線の彼方まで広がるとんでもなく広い大地であり、草原、森林、湖に海、そして遠くに巨大な城が見える。


「なるほど、これがアロルド君の物になるわけかぁ。いやぁ、大貴族だねぇ」


 後ろからやってきたグレアムさんが言うけれど、別に俺の物になってもなぁって感じ。だって広すぎるじゃん。俺的には最低限、庭付き一戸建てで良いのよ。まぁデカい家も悪くないけど、庭がデカすぎるのはちょっとね。


「俺の物になると決まったわけではないだろう」


 管理の手間を考えると、できれば誰か別の人に貸して、貸し料をもらう方が良くない? エリアナさんとかが全部やってくれるっていうなら、自分の物にしてもいいけど、俺に面倒があるなら、いらないかな。


「新たな領地を得るというのは貴族の誉れだぞ、アロルド殿。ここは積極的にいくべきだ」


 ヒルダさんがの鼻息荒い言葉にグレアムさんが頷く。どうやら、俺の味方はいないようだ、悲しいね。とはいえ、二人の思い通りになるのもアレだ。何がアレなのかは分からないけれども、まぁアレです。


「だが、ここから見える範囲ではここが魅力的な土地なのかは分からんからな。ともかく、山を下りて調査してからでも問題は無いだろう」


 とりあえず先延ばしの方向性で行きましょう。まぁ、別に俺の物にしても悪くはないと思うんだけどね。だって、大貴族になると贅沢し放題なんだろ? それにはすっごく憧れるし、そのために領地が必要って言うなら、手に入れてもいいかなって思ったり思わなかったりなわけで。


 ――そんなことを考えながら馬を走らせていると、いつの間にか下山していました。思ったよりも山道の状態は良いようで、馬を走らせることができるくらいには山道は整っているようです。昔の人の技術って凄いですね。


「閣下、この先に村があるようです」


 俺と一緒にここまで来てくれた三十人の冒険者の中の一人が先の様子を偵察して報告してきた。別に俺に報告しなくてもいいんだけどね。グレアムさんかヒルダさんに報告して二人に指示を仰いでくださいよ。そうしてくれたら俺は二人に任せることができて楽なんだしさ。それに俺に報告してきたら、俺が答えるしかないじゃんよ。


「では、そこに向かおうか」


 村があるなら、そこで様子見をするし、一泊ぐらいするといいんじゃないかな。できれば手厚い歓迎を貰えると嬉しいんだけどね。




――――まぁ、そうそう上手くはいかないよね。

 村へと到着して一息ついた俺たちの前には首の無い衛兵の死体が転がっています。なんでそんなのが転がっているかって? 俺とグレアムさんがぶった斬ったからです。

 いやさぁ、だって村の中に入ったら、衛兵が近寄ってきたのよ。何も言わずに近づいて来たから敵か味方か分からんので様子を見てたら、武器を抜きやがったから、先手必勝って感じに俺とグレアムさんで血祭りに上げてやったというわけです。せめて、何か言ってくりゃいいじゃんね? ついでに武器を抜くなっての。


「いやぁ、これはちょっと」


 ヒルダさんがドン引きしてる感じだけど、何もしてないくせに俺を非難する感じなのは良くないと思うよ。ついでに連れてきた冒険者連中も突っ立ってるだけで役に立たないってのはマズいんじゃない。いや、俺は別に良いと思うんだけど――


「ちょっとさぁ」


 ――グレアムさんが怒ると思うよ。そんな風に俺が思った直後にグレアムさんが冒険者の一人の腹を剣の鞘で突いた。


「君らが鈍いのは承知してるんだから、反応が遅れるのは百歩譲って許すよ。だけど、ボーっとそのままってのは良くないねぇ」


 腹を突かれて悶絶している冒険者の頭を蹴飛ばし、グレアムさんが指示を出す。


「二人はここの後始末。残りは村の中を探れ。邪魔をする奴、邪魔をしそうな奴、邪魔かもしれない奴は殺して構わんよ。それじゃあ、散れ」


 グレアムさんの言葉に従い、冒険者たちが動き出す。いやぁ、俺は突っ立っているだけで良いから楽でいいね。なんか銃声が聞こえてきたけど、まぁそういうこともあるか。


「こいつらもガルデナ山脈にいた奴らと同じなのか?」


 ヒルダさんが転がっている衛兵を眺めながら俺に尋ねる。良く分かんないけど、たぶんそうなんじゃない?

 こいつら武器を持っているけど、錆が浮きまくってて使い物にならない感じだし、普通の頭をしてたらこんなもんを使わないだろうし、マトモな奴らではないよね。


「そりゃあそうだよ。そうじゃなきゃ、俺もアロルド君もいきなり斬りかかったりしないって」


 グレアムさんが笑いながら言っているけど、ぶっちゃけ斬りかかる時は何も考えてませんでした。だってグレアムさんが斬りかかるから、俺も斬りかかっただけだしさ。いやぁ、良かった良かった、普通の人間じゃなくてさ。


「なるほど、流石はアロルド殿とグレアム殿だ」


 ヒルダさんが感心した表情で俺達を見ているけれど、いやぁ照れるね。感心される理由が良く分からんけど、まぁ悪く思われてないなら良いよね。

 それはそうと、いつまでここに立ってりゃ良いんでしょうか? お外にいると銃声がうるさくて嫌になっちゃうから室内で休憩しませんか?


「世辞はいい。それよりも今日の寝床を探すぞ」


 いい加減、野営はウンザリです。今日くらいは屋根のある所で寝たいので、良さげな宿か家を探しましょうか。









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