そのままの方向で
「――ということがあったわけ」
ごめんなさい、聞いてませんでした。
ようやくやって来たエリアナさんが皆を集めて何か言っていたけど、眠かったので聞いてませんでした。
なんか変な奴らに襲われたっていう話は聞いたような気がするけど、憶えてるのはそんくらいで、途中で寝ちゃったんだよな。
とりあえず、エリアナさんに襲撃かけた奴らは皆殺しの方向性っていうのは俺の頭の中で決まったから別に他はどうでもいいやって感じだし、他のことは別にどうでもいいか。
「良く分からん話だな」
オリアスさんが首を傾げているけど、俺も良く分からんよ。
まぁ、俺の場合は話を聞いてなかったことに起因するわけだけど。
「姫様ねぇ……姫様かぁ、エリアナがねぇ」
「無いよなぁ。言ってたやつの目は節穴なんじゃねぇの?」
オリアスさんとグレアムさんがありえないみたいな顔をしてるけど、俺はエリアナさんが姫様はありだと思うよ?
だって、見た目は高貴だし。まぁ、性格はアレらしいけど。でもまぁ、俺はアレってのが良く分からないし、エリアナさんの性格は好きだけどさ。
「私のことはもういいわよ。それよりも奴らが何なのか教えてちょうだい」
奴らって言われても、どの奴らだよって感じ。
最近、襲ってくる奴らだったら、良く分からんね。
俺たちが今いる場所に拠点を築いてから現れるようになった奴らで、それなりに強くて面倒くさいってことくらいしか分からん。ついでに言うと古い武具を身に着けていて、大昔の人たちみたいに見えるのと、俺を見かけると一瞬だけ戸惑って、次の瞬間に殺しにかかってくるくらいしか分かんねぇや。
「俺らも良く分からねぇんだよ。俺たちが、この辺りに拠点を設営し始めた頃に出没してきたくらいか」
「後は普通の人間じゃないくらいかねぇ。どちらかというアンデッドとかに近いってのが、戦り合った上での予測かなぁ」
ああ、そういやそうね。
何だか死ぬことを恐れてないっていうか、もう初めから死んでるみたいに生に対しての執着がないんだよな。
「アンデッドの割には生きてる人間みたいだったわよ?」
「だから、どうするか困ってるんだよねぇ。浄化の魔法も効かないみたいだけど、ゾンビみたいに自分がどうなろうと構わずに突っ込んでくるから、こっちの被害も馬鹿にならないし」
そうなんだよなぁ。
普通に戦ってりゃこっちの方が数が多いし、連携も取れてるから問題なく対応できてるみたいだけど、それでも無傷ってわけにはいかないみたいで、襲撃くらう度に少しずつ負傷者が増えてるし、困ってんだよなぁ。どっかの誰かが片付けてくれないもんかね。
「あんまり戦況は良くないみたいね。どうするか考えはあるの?」
エリアナさんが尋ねてるけど、俺に尋ねてるわけではなさそうだし、黙っていましょう。
グレアムさんとオリアスさんは肩を竦めるだけで何も言う気は無いようだけど、誰か何か良い案でも出してくれるでしょう。
「無いなら、ここから先は諦めるのも一つの方針じゃないかしら?」
おいおい、誰も何も言ってないのに勝手に答えを出さないでくださいよ、エリアナさん。
きっと、ジーク君とかエイジ君辺りが何か良い考えを思いつくと思ったけど、アイツラじゃ駄目そうだから別に良いや。
「尻尾を巻いて逃げるか?」
エリアナさん一人に喋らせておいて何も反応が無いっていうのも可哀想だから俺が声を出してあげました。
「それしかないなら仕方ないんじゃないかしら?」
「それしかないかは分からないな」
人間が一生の内に得られる答えなんてものは、ほんの僅かなんだから、それしかないってことはないんじゃないかな?
きっとどこかになんか良く分からないけど、一瞬で状況を変えるような素晴らしい答えがあると思うよ?
だから、諦めるのは良くないと思います。
つっても俺は良い考えは思いつかないし、そもそもの話だけどいい加減に山の中が嫌になってきたから、さっさと平野に帰りたいから、エリアナさんの帰りたいという意見に賛成なんですがね。
「何か考えがあるの?」
「さて、どうだろうな」
無いけど無いってハッキリ言うと恥ずかしいしあるふりをしていましょう。
「まぁ、アロルド君に考えがあるなら私は別に構わないけれど。でも、襲ってきてる奴らの正体も良く分からないのよ? どうやって戦うつもりなの?」
正体って言われてもね。俺気付いたんだけど、あれってどう見ても人間じゃん。
なんで皆が真剣に良く分かんないねぇって話し合ってるのか、そっちの方が分からんちんなんだけども。
見た目が人間なら、人間を殺すのと同じ方法で殺せるだろうし、実際に俺たちはその方法で殺せてるんだから、別に困ることないよね。
「普通に戦えば良いだろう。こちらは人間相手に何度も戦をしてるんだ。人の始末の仕方などいくらでも思いつくし、経験がある上に手慣れている」
「まぁ、そりゃそうだねぇ」
グレアムさんが同意してくれましたけど、別にこいつに同意されても嬉しくないんだよなぁ。
エリアナさんとかに「キャー凄い」とか言われたくない? 別に言われたくなかったわ。じゃあ、同意してもらう必要もないな。
「えーと、人間って、もしかしてアロルド君はあいつらが何なのか分かったの?」
「そんなの決まっているだろう。大昔の人間だ」
もっとシンプルに考えようぜ。
大昔の武具とか身に着けているのにアンデッドでもない普通の人間っていうなら、きっと寿命が長い人なんだよ。
「ちょっと良く分からないんだけど何を言っているのか。それに私のことを知っているみたいだったけど、それに関してはどう説明をつけるのかしら?」
「同じ顔の人間がいてもおかしくはない。昔の知り合いと間違えたんだろう。奴らは寿命が長いようだしな」
「突っ込みどころしかない気がするんだけど」
だって真面目に考えてないもん。
俺って真面目に考えるの向いてないし、しょうがないよね。
「まぁ、とにもかくにも真面目に考えた所で答えは出ないのだから考えずに行動するだけだ。幸いにも殺せるということが分かっているんだから、どうしようもなく困難な問題は無い。数を集めて武器を揃えて、殺せば済む話だしな」
エリアナさんは頭を抱えているけど、オリアスさんとグレアムさんはニヤニヤと笑みを浮かべているな。俺としてはエリアナさんの方に笑っていて欲しいんだけども。
「奴らの正体を知るためには先へと進む必要もあるが、どうする?」
俺は行きたくないし帰りたいんだけどな。でもまぁ、行きたい人もいるだろうし聞いてみましょう。
「はぁ、アロルド君が行くっていうなら私も行くわよ」
いや、俺は行きたくないんだけどな。でも、行くみたいな雰囲気になってるから進むとしましょうか。
オリアスさんとグレアムさんはどうでもいいや。どうせ、放っておいてもついてくるだろうしな。
「僕は行きたくないんですけど」
「俺も同じく危ないのはちょっとなぁって思いまして」
ジーク君とエイジ君の意見はいいや。
こいつら生産的なことを言う割合低そうだし、発言の信用度が俺の中では割と低いから無視の方向性で。
「とりあえず、このまま進む方向性でいくとしよう」
ジーク君とエイジ君からため息が聞こえたけど気にしても仕方ないな。
「大まかな方針は分かったけれど、細かい作戦はどうするのかしら? 別に力押しでもいいけど、こんな山の中で人数を揃えるのは大変よ?」
細かい作戦は俺じゃなくて、グレアムさんとかオリアスさん辺りに任せりゃいいと思うよ。
なので、俺はグレアムさん達を見るけども、グレアムさんは肩を竦めるだけだし、オリアスさんは目を閉じて黙りこくる始末なんだけど、どうしてやろうかこいつら。
「もしかしてノープランで行こうとかそういうのじゃないわよね?」
「安心しろ、考えはある」
実際は無いんだけども、無いっていうと馬鹿だと思われそうだし見栄を張ってしまいました。でもまぁ、なんか思いつきそうだ。
うーむ、とりあえず数を集めてぶち殺して回るのが頭を使わなくて済むんだけど、疲れそうだし反撃くらうのは嫌なんだよな。だからまぁ、反撃を食らわずに上手くやる方法があればと思うんだけど――
「考えがあるなら教えてくれると助かるわ。準備にお金と時間がどれくらいかかるか分からないんだし」
あんまり急かさないで欲しいな、エリアナさん。
つーか、俺にばっか考えるのを求めないでくれよ。そのうえ行動するのは俺だろ?
なんか不公平じゃないか? いやまぁ役割分担というのがあるし、人には人の仕事というのもあるんだろうけど、たまにはそういうのを取り払ってエリアナさんに最前線で働いてもらいたいようなそうでもないような。
つーか、今思いついたんだけどさ。エリアナさんがいるなら――
「ああ、今教えてやろう。俺の考えはだな――」
――エリアナさんに頑張ってもらえばよくねぇかな?
「エリアナを人質にしよう」
うん、この作戦が一番しっくりくるな。この作戦を考えつく俺って実は凄いかもしれねぇな。なんだか自信がついたぜ。
そんじゃまぁ俺の思い付きを説明させてもらうとしようかね。そんでもって、どうするかみんなに判断してもらうとしよう。




