表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
149/273

西部到着


 道中、色々とあったけど無事にオレイバルガス大公領に到着しました。

 糞みたいな貴族に喧嘩売られたり、町人とか村人とかが悪いことをしたりしていたので反省を促すために結構頑張ったよ。

 そんで思ったけど、なんつーか、もう色々と駄目かもしんないね、この国は。

 空気というか雰囲気が、どうにも荒んでいて平和には程遠いし、そういう空気というか雰囲気のせいで人の心も悪い方向に向かっているようだしさ。

 自分さえ良ければ構わないっていうの? 人間なんて誰しもそんなもんだと思うけど、そういうのを隠そうとしない人が増えると大変なことになりそうだよね。

 実際、オレイバルガス大公領に到着するまでに通ったところは大体が荒れてて大変なことになってたしさ。


「ここは変わらないわねぇ」


 エリアナさんが馬車から外を眺めながらしみじみと言う。

 見えている景色はオレイバルガス大公領の領都であるキルゲンスだ。

 どういうわけか、都市の周囲を囲んでいる城壁がボロボロなんだけど、何があったんだろうね。


 それに、俺が馬車から顔を見せると怯えて跪く人もいれば、歓声をあげるっていう人もいて歓迎されてるんだか歓迎されてないんだか良く分かんないな。

 まぁ、人間だれしも好き嫌いってのはあるし、俺のことを好きな人もいれば嫌いな人もいるのはしょうがないね。ただまぁ、この辺りの人に嫌われるようなことをした記憶は無いんだけども。


「随分と恐れられているようだが、何をしたのだ?」


 キルゲンスを攻略する時にはいなかったヒルダさんも気になったのか俺に聞いてきたけど何をしたっけ? 

 籠城してるから城壁に大砲をガンガン打ち込んだり、兵糧攻めにしたりとかかな?

 別におかしくないと思うんだけど、何かマズかったんだろうか?


「戦いに勝つために必要なことをしただけだ」


 まぁ、よくよく考えてみたら負けた方はムカつくよね。

 勝つための努力をされたら攻撃されてる側は嫌な気分になるし、そういう思いを未だに引きずっているんだろう。

 そういう恨みつらみには付き合っていられないので今後も無視します。

 一度でも謝ったら、一生謝罪し続けないといけない状況になりかねないし、こういう時は悪びれずに強気で行く方が良いよね。


 俺は向けられている気配を気にせずに馬車が進むに任せてキルゲンスの街中を行く。

 行先は市内に用意された俺の屋敷で、今のオレイバルガス大公に譲ってもらったものだ。どういう理由で貰えたかは忘れたけど、住むところが欲しいって言ったら貰えたんだよな。

 結構、大きな屋敷だった記憶があるけど、王都にある俺の屋敷と比べたら小屋も同然だったような――


「うーむ、中々に立派な屋敷だ。しかし――」


 窓から外を眺めていたヒルダさんが屋敷を見つけたようだけど、なんだか首を傾げていますね。


「何か騒ぎが起きているようだぞ?」


 そんなのはいつものことなんで気にすることでもないと思うよ。

 そう思って、俺はヒルダさんの言葉を気にせず、馬車が屋敷に到着するのを待つ。

 だけど、実際に屋敷に辿り着いて馬車を降りると――


「兄者、マズい、マズいぞ! アロルドの奴が来るというのに間に合わない!」


「落ち着け、弟! 大丈夫だ! 奴はまだ来ない!」


 オレイバルガス家の兄弟が大騒ぎをしていました。

 二人して、ああでもないこうでもないとやりながら、屋敷の中に調度品やら何やらを運び込む指示をしているけれど、何をやっているんだろうね?


「貴様ら! チンタラやってるんじゃない! 奴が来るというのに何の準備もしてないとなれば、我々はどんな目に遭うか分からんのだぞ!」


「キルゲンスの住民全員が奴に殺されるかもしれないんだぞ!」


 何を言っているんだろうね、この二人は?

 一応、訂正しておきましょう。


「そんな物騒なことをするつもりはないな」


 俺はこっそりと二人に近寄って、その肩を叩きながら言う。


「何か問題があれば、責任はお前たちが取るのだから、お前たちの首を落とすだけだ」


 まぁ、そんなことはしませんけどね。貴族風ジョークって奴です。

 笑ってほしいんだけど、兄弟はどっちも顔を青くするだけでクスリとも笑いません。

 ちょっとジョークが高度過ぎたと反省。仕方ないのでジョークだと伝えておきましょう。


「ただの冗談だ、気にするな」


 俺の言葉に二人はぎこちなく笑う。どうやら、ジョークであると分かって楽しい気持ちになったんだろうね。


「は、は、は、いやはやアロルド殿は冗談がお上手だ。なぁ、弟よ?」


「あ、ああ、そうだな、兄者。アロルド殿は武勇だけでなく冗談も達人並とは、流石としか言いようがない」


「そんなに面白いことを言ったつもりはないんだが、馬鹿にしてるのか?」


 よくよく考えたら、そんなに面白くないよね?

 それを面白いとか言いだすとか、こいつらはセンスがないのか?

 それとも面白くないのを面白いと言って俺を煽ててんの? 豚も煽てりゃ木に登るとか、そんな感じ? だとしたら、なんかムカついてくるぞ。


「俺を馬鹿にしてタダで済むとでも思っているのか?」


「いやいや、そんなつもりは毛頭なく!」


「滅相もない、我々は心からアロルド殿の言葉を聞いて愉快な気分になっただけで!」


 そんなに慌てなくてもいいのにな。

 これも冗談だってのに、なんでこいつらはすぐにマジになるんだろうかね。

 俺って簡単に人を殺しそうに見えるんだろうか? だとしたらショックだぜ。


「これも冗談だ。そんなに慌てるな」


 一応冗談だってことを説明しておきます。

 どうやら、この兄弟はジョークを解するユーモアが足りないようなので、いちいち説明しなきゃならなくて面倒くさい。


「は、はは……アロルド殿は冗談が上手いなぁ」


「全くだなぁ、はは……」


 なんか反応が芳しくないけど、理解は出来たんでしょうかね?

 まぁ、そんなことは置いといて、今のこの状況が何なのか、聞いてみましょうか?


「ところで、貴様らは何をやっている?」


 俺が尋ねると二人は硬直してしまった。

 そんなに聞いてはいけないことだったんだろうかね?


「えーと、これはですね、アロルド殿がいらっしゃると聞いて模様替えをしているところでして」


「そう、その通り! アロルド殿に少しでも快適に過ごしてもらおうと思いまして」


 なんか嘘ついてそうなんだよな、こいつら。

 まぁ、別に深く追及する必要もない気がするし、どうでもいいんだけどさ。

 それよりも重要なことがあるし、こいつらに関しては放っておこう。


「ここまでの旅路で疲れている。模様替えはもういいので、俺は休ませてもらうぞ」


 どういうわけか俺の行く手を遮ろうとする。

 別に模様替えをしている程度なら我慢できる、それが済むまでぼんやりとしているわけにもいかないので、二人を無視して俺は屋敷の中に入る。

 だが、屋敷の中に入ってみると――


「何もないな」


 模様替えというには、俺の屋敷の中は余りにも殺風景だった。

 なんていえば良いのだろうか良く分からないが、簡潔に説明するなら家具が無い。

 質の悪い家具が申し訳程度に屋敷のあちこちに置かれてはいるが、それも充分な数ではない様子だ。


「これはどうなっているんだ?」


 俺は運び込む途中といった有様で玄関に置かれていたソファーに腰かけて、オレイバルガスの馬鹿兄弟に訪ねる。

 俺の記憶は曖昧だけれども、前に滞在していた時はそれなりに家具が揃っていたと思うんだが。


「いや、これは、ちょっと事情がありまして」


 なんか言い訳をしたそうな顔をしているので聞いてやることにする。

 納得できるものであれば良いんだけど。

 ――と思っていた矢先。


「あーっ! 無い! 無い! 私が買った絨毯、ベッド、カーテン、茶器、食器、絵画、彫像、全部無くなってるぅぅぅぅ!」


 屋敷の中からエリアナさんの声がする。

 俺の後に続いて屋敷の中に入っていったエリアナさんだけど、何かあったんだろうか?

 いや、無いと叫んでいる。何もないんだろうけどさ。


「お前ら、何やった!」


 エリアナさんが凄まじい形相で俺の所まで戻ってきた。

 つっても、俺に用があるわけではなく馬鹿兄弟の方に用があるんだろうけどさ。


「私の物がどこにもないんだけど!」


 エリアナさんが馬鹿兄弟の兄だったか弟だったか分からない方の胸倉を掴んで殺気をぶつけている。


「いや、それに関しては信頼のできる者に預けておりまして――」


 最後まで言おうとするが、エリアナさんのパンチが炸裂し、強制的に黙らせる。


「すいません、嘘をつきました!」


「実は全部、質屋に預けてしまいました!」


 へー質屋に預けてしまったんですか?人の物を勝手に?

 なかなか思い切ったことをするもんだな、この馬鹿兄弟。


「ここの所、どうにも景気が悪く。ちょっと財政が厳しかったので、当座の領地運営資金を確保するために、悪いとは思いながらも、アロルド殿の屋敷にあるものを質屋に預けて、お金を貸して貰いまして」


「勿論、金が入れば質屋に向かい買い戻すつもりでしたとも。ですが、アロルド殿が戻ってくるのには間に合わなくてですな。計算が狂ったというかなんというか」


「アロルド殿がいないうちに秘密裏に事を進めておけば問題ないだろうと思ったのですが見通しが甘かったというかなんというかで、屋敷にあったものの殆どは、まだ質屋にあり、それを全て買い戻すための金は用意できておらず――」


 話はまだあるようだったけれど、エリアナさんが大きくため息を吐いたので中断された。

 馬鹿兄弟は怯えた表情でエリアナさんを見るが、エリアナさんの表情は呆れ果てていた。


 まぁ、呆れるのもしょうがないよね。

 お金が無いからって、俺の屋敷の物を勝手に質屋に出して、金に換えたんだろ? 俺らにバレたらマズいってのは分かってたけど、いつも西部にいるわけじゃないから屋敷から物を持ち出してもすぐにバレないし、バレそうになってから買い戻せばいいと思ってたんだろうね。

 で、買い戻すにしてもお金が無いから増やそうとしたわけだけど、思うように増えてくれなかったってことなんだろうな。


「悪気があったわけではなく――」


「多少はありましたが、申し訳ないという気持ちはあるので、代わりの家具を運び込んでいた次第で――」


 どっちだよ?

 エリアナさんも完全にあきれ果てたのか馬鹿兄弟の兄だったか弟だったかの胸倉から手を放してガックリと肩を落とす。


「あのねぇ、懐が苦しいなら言いなさいよ。融資くらいならしてあげるんだから」


「いやぁ、金の無心をするのは貴族の恥かと思いまして」


 今の方が恥のように感じるのは価値観の違いかね?

 俺には貴族の価値観は良く分かんねぇぜ。

 あ、俺も貴族でしたね。じゃあ、良く分かります。お金を借りるのは恥ずかしいよね。恥ずかしいから、こっそりと人の物を質に流しても仕方ない仕方ない。

 無くなったものは仕方ないので、これからのことを考えようじゃないか。


「俺の屋敷の物は後で戻ってくるとして、俺たちは今日はどうするべきなんだろうな?」


 馬鹿兄弟が青い顔で俺の方を見る。

 なんだろうか? そんなに都合の悪いことを聞いたか?


「えーと、家具は全部揃っておらず……」


「生活するのは些か大変かもしれません」


 そうか……お前らふざけてんの?

 それとも俺らがふざけてるって言いたいの?

 泊まれるわけねーだろ、当たり前のことを聞くんじゃないって感じなの?


「宿を探すにしても、アロルド殿の御連れの方全員を収容できるような宿はキルゲンスにはなく。キルゲンス中の宿を合わせても全員を収容するのはちょっと……」


 馬鹿兄弟が俺たちがここに来るまでに通ってきた道の方に視線を向ける。

 俺も二人に倣って、そちらを見ると、俺の連れてきたメイドやら冒険者が列を作って待っていた。

 何人かはクレイベル砦の方に泊まるみたいな話だったけど、それでも百人以上が俺に付いてキルゲンスにやってきている。

 流石にこの人数をいきなり宿屋に入れるっていうのも大変かもしれないね。

 時間帯としては日も傾きかけて夕方って感じだし、この時間に急に泊まるって言っても宿屋の人は困るかもしれないし、そういうのも可哀想だと思う。なので、俺は決断する。


「――野宿だな」


 今日は野宿。それが俺の決断だ。






 ――日は沈み、辺りは闇に包まれる。

 そんな中、キルゲンスにある俺の屋敷の前だけが煌々とした灯りに照らされていた。


「燃やせ、燃やせ。燃やせる物は何でも燃やせ」


 なんだか物騒なことを言いながら、冒険者連中が俺の屋敷の中庭で焚火をしている。

 その側では俺の屋敷のメイドがせっせと夕食の支度をしていた。ただまぁ、出来上がる頃には時間的には夕食を過ぎて晩飯になりそうだけどもさ。


「アロルド君、飲んでるぅ? 私は超飲んでる? どんだけ飲んだか忘れちった、えへへ」


 焚火を眺めながらエリアナさんはお酒を飲んでいる。

 俺もまぁ飲んでいるけど、酔いが回るのはまだまだっぽい。


「何見てんだ、テメェら! 金取るぞ! 私のような美人を視界にいれただけ料金発生だぞ!」


 エリアナさんが周りの人に喧嘩を売ってるけど、いつもの事なので気にしないようにしましょう。

 いやぁ、でも気になるなぁ。一体幾ら出せば良いんでしょうかね? そもそも、何の金だよ。訳わかんなくなってきちゃったぞ。


「アロルド様、エリアナさんを止めてきますね」


 カタリナがそんなことを言って、俺の隣から、そこら辺をほっつき歩いているエリアナさんの方に向かって行った。

 えぇーいいよぉー、そんなことより俺の側にいてよぉ。女の子を楽しくお酒を飲むのが唯一の楽しみなんだからさぁって――はぁ? 唯一の楽しみってなんだよ、俺はそんなに好色なのか、クソッ死にたくなってきた。つーか、殺すぞ。お前らだよ、お前ら、なにを平気な顔で座ってんだ?


「あ、あの、アロルド殿、どうかされましたか?」


 えーと、オレイバルガスさんの所の馬鹿兄弟だっけ?

 俺がどうしたって言うんだ? つーか、なんでお前ら俺の前に平気な顔で座ってんの?

 周りの奴らが、お前らのことを凄い眼で見ているのに気が付かないか?

 俺は気が付かなかったぞ。いや、今気づいた。いや、もっと前に気付いていたような、気づいていなかったような。そんなことより、もう少しお酒を飲みましょうかね。

 それ、グイーっと。


「いやぁ、お強いですな。火酒を水の様に飲んでも顔色一つ変えないとは」


 何が強いのか主語を言えよ主語をさ。ぶっ殺すぞ。でも、俺ってば平和主義だからそんなことはしません。

 いやぁ、なんだか顔が熱くなってきたぞ。どうやら興奮してきてるみたいです。平和主義者とは程遠い俺は暴力的な気分になってしまいますけど、平和を愛しているので暴力的な気分にはなりませんよ。


「いやぁ、一時はどうなることかと思いましたが、皆さん楽しんでおられるようで何より」


 馬鹿兄弟が何か言っているけど、良く聞こえなかったので無視。

 俺は酒を飲みながら周囲を眺める。

 エリアナさんはカタリナを押し倒してチュッチュッやっていて楽しそう。

 キリエとヒルダさんは二人で焚火の側でノンビリと食事していて楽しそう。

 オリアスさんとグレアムさんは冒険者を集めて賭け事をやっていて楽しそう。

 冒険者連中は飲んで歌って騒ぎつつ、俺の所のメイドさんを口説いていて楽しそう。

 メイドさんは食事の支度をしていない人はお喋りをしながらお酒を飲んでいて楽しそう。

 俺は馬鹿兄弟と楽しくお喋りをしていて楽しくない。


 なんだろうか、この格差社会は? 

 でもまぁ、雑用を任せたので、今頃キルゲンスの街中を走り回っているであろうエイジ君と探知一号の二人の方が楽しくないだろうから、下には下がいると思うと溜飲が下がってちょっとだけ気分回復。


「ところで、話は変わりますが、我々はアロルド殿のご滞在の目的を聞いておりません。此度はどのような用件があってオレイバルガス大公領にご滞在なされるのか、差支えが無ければお聞かせ願いたく」


 なに? なんでここに来たかって?

 なんか滅茶苦茶警戒していないか、お前ら? 俺の気のせいか?

 あああ、頭の中に大量の疑問符がぁぁぁっ。自分の存在にすら疑問が生じてくるぜ。そもそも、この世界とは何なのか? 疑問だらけの世の中という存在に疑問を抱く堂々巡りだ。

 ――で、なんだっけ、なんでここに来たかって話だっけ?


「山を登りに来た」


 確か山籠もりに来たんだよな。

 あれ? 俺は山籠もりって言ったかな? 言ったような気がするから別に良いや。


「山ですか? それは、オレイバルガス大公領の西端。つまりはアドラ王国の西端でもあるガルデナ山脈の事ですかな?」


 そうなんじゃねぇの?

 オレイバルガス大公領の西端。つまりはアドラ王国の西端でもあるガルデナ山脈に登るんだと思うよ?

 あれ、山籠もりだったっけ? えーと、なんで山籠もりするんだっけ?

 ああ、頭がクラクラして気持ちが良くなって来たし、そういうことを考えても仕方ないね。


「何故、あのような魔境に足を踏み入れようとなさるのか?」


「まさか、誰も辿り着いたことがないという山脈の向こうを目指すというのか!」


 何を言っているんだ、この馬鹿兄弟。顔が赤いし酔ってやがるな。

 酔っぱらってない俺を見習ってほしいぞ。

 で、えーと、何だっけ? オレイバルガス大公領の西端。つまりはアドラ王国の西端でもあるガルデナ山脈に登る理由だっけ?


「体を鍛え直すのにちょうどいいと思ってな」


 理由を言ったのは良いけど、なんだか馬鹿兄弟が驚きの目で俺を見てるな。

 どうしたんだろうか?


「なんという自信だ。今まで幾人もの勇者がガルデナ山脈の先を見るためにあの山へと足を踏み入れたことは知っているだろうに」


「誰もが恐れるあの山々へ挑むこと口にしながら、まるで小高い丘を登るような気楽さ。なんと豪胆であろうか」


 なんか良く分かんないけどさ。そんなに大袈裟なことなのかな?

 まぁ、素人の山登りは危ないのかもしれないけどさ。


「恐れることなどはない。何も一人で登るわけではないのだから、どうとでもなる」


 大変そうだったら、みんなでハイキングをしてお茶を濁そうと思うの。

 山籠もりをしようと思った気持ちだけで充分だと思うしさ。

 ちょっと高い所まで登ってお弁当食べて良い空気を吸って帰ってくるとか、そういうのもありだと思わない。


「なるほど、そのためにこれだけの大人数を引き連れてきたということですか」


「彼らはガルデナ山脈攻略のための精鋭ということですな」


 なんか言っていることが良く分からないな。

 あいつらは来たいから連れてきただけだぞ。

 西部の山を登るって言ったら喜んでついてきた山好きたちだ。


「アロルド殿の自信に溢れた姿を見るに勝算はあるということか」


「これは我らも手を貸すべきだな。兄者!」


「ああ、弟よ。ガルデナ山脈越えはオレイバルガス大公家の長年の悲願であるからな!」


 なんだか、馬鹿兄弟が楽しそうだぞ。


「アロルド殿、後のことは御心配なく! アロルド殿が亡き後も我々は西部を正しく治めていきますので!」


「アロルド殿が帰って来られずとも、我々はその志を受け継いで参りますので、どうか安心してガルデナ山脈越えに臨んでください!」


 おお! 良く分からないけど激励されてるぞ。それに、とにかく行ってこい、絶対に行ってこいって気配も感じるぞ。

 激励されてるのにこいつらぶっ殺してぇって気持ちになってくるのが不思議だけど、応援されたからには頑張って登山をしよう。


 しかし不思議だな。俺は山籠もりに来たはずだけど、なんで登山の流れになっているんだろうか?

 まぁ、山籠もりでも山に登るってのは同じだから別に良いか。正直、頭がフワフワしてきて色々と考えるのが面倒くさいし、どうでもいいや。


「「英雄の進む道に光あれ!」」


 馬鹿兄弟が二人揃って叫んでいるけど、どうしたんだろうね。

 何がそんなに楽しいんだろうか?


 でもまぁ、俺も山登りっていう楽しいイベントが待ってるわけだし、羨ましいってことはないな。

 しかし、結局ガルデナ山脈ってどういう山なんだろうかね? 色々と凄そうなことを言っていたし、結構良い所かもしれないな。楽しみだぜ。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ