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西への旅

 

 だいぶ、暖かくなり冬の気配などは完全に消えた春のある日、俺は旅行へと出発した。

 旅行に出ることはだいぶ前から決まっていたのだけれども、色々と済ませないといけない用事があったり、面倒くさい準備があったせいで伸びに伸びてしまったわけだけれども、何とか無事に出発することができた。


「西部って何か名物とかあったかしら?」


「前に行った時は何もなかった……」


 馬車の中にいるエリアナさんとキリエが仲良く話している。

 なんで、この二人が俺と同じ馬車にいるかというと、単に同行してくれるからだ。

 別にいなくても良いような気もするけど、一人旅は寂しいし、これもありだと思うことにする。


「ヒルダさん、お茶を淹れましょうか?」


「かたじけない、カタリナ殿」


 カタリナとヒルダさんも仲が良いようです。

 やっぱり、この二人も同行してくれています。

 まぁ、俺一人だと買い物も満足にできないから、いてくれた方が良いよね。


「おーい、遅れてるぞぉ。ほら、走れ走れ」


 馬車の外から声が聞こえてきたので、窓から外を覗くとグレアムさんが冒険者を走らせていた。

 なんか全員が一本の縄でつながっているようだけど、何をやっているんだろうね?

 何人かは倒れてるけど、縄でつながっているせいで置いて行かれることもできずに引きずられているけど、どういう遊びなんだろうか?

 そういえば、王都を出る時からずっと走っているようだし、丸二日くらいは走りっぱなしだよな。俺やエリアナさんが宿屋に泊まっている時も走っていたような気がするぞ。

 まぁ、そんなに走っていられるんだから、単に走るのが好きな奴らってことで気にしないようにしよう。


「舗装だ舗装! 死ぬ気で道を造れ!」


 グレアムさんの声も聞こえてきたので外を見ると、グレアムさんが土木系魔法使いもとい魔法工兵をこきつかって道を造らせていた。

 土を平らにするという簡単な物ではなく、魔法で石畳を形成して道を造っているようだけれど、なんでこんなことをやっているんだろうね。

 でもまぁ、そんなことよりも、そこら辺に青い顔で転がっている魔法使い連中の方が気になるんだよなぁ。

 そういえば、こいつらも二日くらいずっと道を造っていたような気がするな。

 まぁ、道を造るのが好きな人たちなんだろうから気にしないで良いかな。


「すいません、今いいですか?」


 窓の外から声がしたので、外を見るとエイジ君がロバに乗り、おぼつかない歩みでこちらに近づいてきているのが見えた。

 とりあえず、雑用も何人か必要だろうというエリアナさんの提案で屋敷のメイドをほぼ全員とついでにエイジ君を連れてきたので、エイジ君がここにいるのは不思議ではない。


「良くないな。俺は今、ゆっくりと旅路を楽しんでいるんだぞ?」


 いるのは別に構わないけれど、だからって俺に馴れ馴れしく話しかけて良いかどうかは許可していないんだよなぁ。


「いや、ちょっと緊急を要する問題があって」


「それは俺が何とかしなければ絶対に解決しない問題なのか?」


 他の人でも何とかできることを俺に回してるんじゃないの?

 そういう疑いがあるんだけれど、そこん所はどうなんざんしょ?


「えーと、絶対にということは無いと思いますけれど……」


 なんだよ、ハッキリしねぇなぁ。

 ノンビリと過ごしている時にたいして重要でもないことを伝えに来てるくせに、そういう態度を取られると俺もイライラするんだけど。


「アロルド様。エイジさんを困らせては可哀想ですよ」


 カタリナがエイジ君を庇ってるんだけど、なんだろうね?

 俺がエイジ君をイジメているわけでもないだろうに。なんか濡れ衣を着せられてないかな?

 ――と思ったけど、エイジ君が泣きそうな顔になっているってことはイジメていたのかな?

 だとしたら、悪いことをしたね。申し訳ないという気持ちは欠片もないけれど、申し訳ないっていう態度は示しておこう。


「仕方ないな。言うだけ言え、俺も聞くだけ聞いてやる」


 まぁ、よくよく考えたら暇だからエイジ君の話を聞いていても良いよな。

 馬車の中でエリアナさん達を眺めているのも目の保養になって精神的な充足感を得られるけれど、それにも飽きてきたのは事実だし。

 ちょっと気分を変えてエイジ君の話を聞くのも良いだろう。


「えーと、では、手短に済ませますね。この先にある今晩の宿泊予定の村がどうにも俺達を受け入れ拒否しているみたいなんです」


 別に良いんじゃないかな?

 俺達ってことはエイジ君達のことだろうし、俺が問題ないなら別に良いや。

 よもや、エイジ君の俺達って言葉の中に俺も含まれているってことは無いだろうしさ。

 だって、俺ってエイジ君と一緒くたにされるような人間じゃないですしぃ。ちゃんと言うなら、アロルド様と、俺達ってなると思うしぃ。俺とエイジ君はって言葉で一括りにされるようなことはありえないですしぃ。


「それは困るわね。野宿は嫌よ?」


 ああ、そう言えばエリアナさん達もいるんだったよなぁ。流石にエリアナさん達を野宿させるのは忍びないな。

 エイジ君とか、走ったり、道を造っている奴は野宿すら必要ないような気がするけど、エリアナさん達は良くないな。


「とりあえず、その村にジークを向かわせて話でも聞きに行かせろ」


 一応、今回の旅にはジーク君を連れてきています。雑用係としてはジーク君が一番使いやすいからね。

 俺に対して距離を取っていたので、ついてくるか心配だったけれど、嫌がる様子も見せずについてきてくれたんだよな。

 ただまぁ、よそよそしい感じがするのがウザいんだけどね。でも、思春期のガキなんてこんなもんだろうし、いちいち相手にしてもしょうがないと思うんで放っておいてます。

 ついでにジーク君の分際で誰かと文通したりとかして、色気づいてるようだけれど、これに関しても俺は放っておくことにしています。

 流石に手紙を盗み見るようなことはちょっとねぇ。でもまぁ、盗み見てはいないけれど、ちょっと文面がヘタクソなのを直してはあげてるよ。

 だって、書いてあることが事実の羅列ばっかりで面白くないんだもん。ちょっと楽しい内容を付け加えた方が相手の気も引けると思うんだよね。

 盗み見たりせずに、よく確認して文面を直してあげてるんだから、ジーク君は俺に感謝してほしいね。



 ほどなくして、村へ行って来たらしいジーク君が帰ってきた。態度はよそよそしいけれど、言うことは聞いてくれるんで問題は無いな。


「なんでも、自分たちは圧政を敷く貴族へと反旗を翻すので、貴族に率いられた集団を村に入れるわけにはいかないと言っていました」


 あ、そう。

 それはその人らの用事だから俺らには関係ないよね。


「このまま村に行くぞ」


「村人は嫌がると思いますけど……」


「こちらも野宿は嫌なんだがな」


 俺は野宿しなくても済むから関係ないけれど、エリアナさん達が野宿するのは可哀想だよね。

 俺の中で見ず知らずの村人が可哀想なことになるのと、エリアナさん達が可哀想になるのを比較すると、村人が可哀想なことになるほうがマシだって、考えなくても分かるので村人には嫌な思いをしてもらおう。


「どうなっても知りませんよ?」


 ジーク君が俺に対して呆れたような顔を向けているけれど、別にジーク君にそんな表情をされてもなんとも思わないので放っておきます。




 ――そして、俺の指示通り、受け入れ拒否をしている村に辿り着いたわけだけど――


「まさか、お越しになられるのが、あの名高きアロルド・アークス様だとは露知らず、失礼をいたしました」


 割とあっさり受け入れてもらえました。

 なんか知らなかったと言っている割には、俺をもてなす準備はすぐに整ったのが良く分からないね。

 貴族なんか受け入れるかっていう感じだったはずだけど、実際は受け入れ態勢は整っているようなんだよなぁ。


「別に気にはしていない」


 本当はすごく気にしているけどね。

 でも、俺も社会経験を積んできたので、ムカついていてもすぐに文句を言うことはありません。


「話を伺いましたところ、この村で一泊したいそうですが、今は何分取り込んでいまして、満足できるおもてなしが出来るかは分かりません」


「そうか」


「ええ、そうなのです。この村は今、大変取り込んでおりまして――」


「そうか」


「おもてなしをしたいのですが、非常に厄介な問題を抱えており――」


「そうか」


「とても大きな問題がありまして、このとても大きな問題は我々では解決できないことでして――」


「そうか」


 なんかチラチラ見ていて鬱陶しいんだけど。確か村長だっけ? スゲーウザい。

 なんか色々と大変なことがあるみたいだけど、それがどうかしたんだろうか?


「……できれば、アロルド殿には問題の解決を手伝って頂きたく――」


「わかった、手伝おう」


 頼まれたなら断らないよ。つーか、なんでさっさと言わないんだろうか?

 俺が自分から首を突っ込むとでも思ってんだろうか?

 別に首を突っ込んでも良いけど、俺的には頼まれた方が気楽だよね。

 後で何かあっても、俺は頼まれただけで責任なんかないだろって言い訳できるし。


「おお、流石アロルド殿。流石は英雄殿であらせられる、圧政に苦しむ民を御救いくださるとは!」


 ん? なんだろうか、この流れは?


「我々は重税を課す領主の圧政に苦しんでおりまして、ついに耐えきれず今まさに反旗を翻そうとしていたところなのです。とはいえ、我々だけでは領主に反抗したとて虐殺されるのは必定。ですが、天の助けかそんな時にアロルド殿が現れてくださった」


 話長いなぁ。

 つーか、圧政に苦しんでいる割には村長の顔色とか悪くないし、村人も飢えているって感じは無いな。

 むしろ、まだ昼飯を食っていない俺の方が調子が悪いと思うぜ。


「アロルド殿は民の為に戦う高潔な英雄だと聞き及んでおります。苦しむ我らを見捨てるようなことなどはないでしょう」


 ないでしょうと言われてもねぇ。

 正直、見捨てたい気分。だって、なんかわざとらしいんだもん。切実さが感じられないんだよなぁ。


「ああ、見捨てることは無い。お前たちが苦しみの中にあるというなら、それが消え去る瞬間まで見届けよう」


 まぁ、色々と思うこともあるけど、困っているなら可哀想だし助けてあげようと思うんで、そう言って俺は村長さんの家から出ました。


「――とまぁ、こんな具合だ」


 村長さんの家で色々と頼まれたことを一応、エリアナさんに話しておきます。


「本当に圧政に苦しんでいるなら、助けてあげたいけれどねぇ」


 問題はそこだよね。

 正直、村人とか苦しんでいる様子が全く見えないんだよなぁ。


「でも、これ見る限りだと全然苦しくなさそうなのよね」


 エリアナさんの手には帳簿があった。

 今回の旅に同行させている探知一号に盗んでこさせた帳簿で、ここ数年の村の収支報告がまとめられているらしいけど、俺は面倒くさいので読まずにエリアナさんに任せている。


「むしろ、軽いくらいよ。この村の規模だと税は今の二倍くらいあっても余裕だと思うのだけれど」


 うーん、何か悪いことをやっているのかね?


「それでも、帳簿を見る限りだとギリギリやっていけてるみたいに書かれているのよね」


 それ、おかしいなぁ。

 なんでギリギリの暮らしをしているくせに俺達が泊まっている宿は新築なんでしょうね?


「脱税をしているか」


「間違いなくね」


 おお、適当に言ったら当たってしまいました。

 しかし、脱税かぁ。俺もマトモに税金は払ったことがないけど、人がやっているのを見ると面白くないな。


「すいません。戻るのが遅れました」


 ちょっとお使いに行かせていたエイジ君が帰ってきたようだ。


「領主さんに会ってきましたけど、気弱そうな普通の人でしたよ。屋敷も質素でなんだか可哀想なことに見えるくらいでした」


 エイジ君には領主さんに直接会って、『貴方は悪い人ですか?』って聞いて来いって命令をしたんだけど、どうやらエイジ君の話を聞く限りで悪い人ではなさそうだ。


「村人が一揆を起こそうとしていると聞いたら、可哀想なくらい狼狽えてました。無理して税を下げているのにそんなことをされる覚えはないとも言っていました」


 ふーん、そうなんだ。

 良く分かんないけど、村人に気を遣いすぎたんじゃないのかな?

 そんで、村人がつけあがったとかそんな感じだと思うんだよね。


 貴族も偉そうに振る舞っていれば良いわけじゃないからなぁ。

 そりゃ、本当に偉ければ、別に偉そうにしていても良いんだろうけど、大半の貴族は色々と気にしなきゃならないからね。

 調子に乗ったことをしていると、自分より偉い貴族から――


『お前、ちょっと調子に乗ってない? そういう態度って貴族としてどうなのかなぁ? ん? なんか反抗的な態度だなぁ。ちょっと躾するしかないなぁ。躾してやるんだから、お礼は寄越せよ? 寄越せないなら、勝手に貰っていくから別に良いけど』


 そして圧政なんかしてると――


『見ーちゃった、見ーちゃった。悪いとこ、見ーちゃった。悪いことをする奴とか貴族に相応しくないから殺すね。誰にも相談せずに抹殺するけど、後で陛下とかにはお前がとんでもなく悪い奴だったので殺すのも仕方なかったと伝えておくから。ああ、あとさ、領主が急にいなくなると領地の人たちも困るだろうから、俺の親戚とか息子、もしくは友達が君の領地を治めるからね。そういえば、奥さんと娘さんがいたけど、それに関しては心配しなくても良いよ。息子さんは行方不明になるかもしれないけど、それに関しては諦めて』


 ――とか、色々とあるらしくて、大半の貴族は調子に乗ったり、悪いことをすると速攻で死ぬから、かなり気を遣って生きているんだってさ。

 村人に圧政を敷かれているとか告げ口されただけで、正義感の強い貴族の人が襲って来るらしいから、村人に対しても、かなり気を遣うらしいね。


「村の外れの小屋を覗いたら、色々と隠してあったぞ」


 今度はオリアスさんがやってきて、そんな報告をしてきた。


「金銀財宝の山とは行かないが、相当な量を貯め込んでいたな。よくもまぁ、あれだけ貯め込んで、生活が苦しいなんて言えたもんだ」


 俺は直接見ていないので何とも言えないけれど、オリアスさんが呆れているくらいだから、相当なもんなんでしょう。


「生活が苦しいってのは真っ赤な嘘。むしろ、領主が強く出れないことを察して、税を逃れて豊かな暮らしをしていたということね。それで済ませておけば良いものを欲をかいたってことね」


 領主さんも駄目だなぁ。

 強気に出れないってことを悟られたら良くないってことを知らないんだろうか?

 弱気な所を見せたらズルい奴には付け入る隙を与えるってのにさ。


「もっと税を軽くしてやろうとでも思って、領主に脅しをかけようとしたんでしょうね。アロルド君を上手く抱き込めば、ここの領主さんは怯えて言うことを聞くとでも考えたという感じじゃない?」


 ふーん、そうなんですか?

 俺としては困ってなさそうな奴らを助けてやる義理は無いんだけどな。

 むしろ、領主さんの方が困っているから助けたやりたい感じです。


「で、アロルド君はどうするのかしら?」


 エリアナさんが俺に訪ねてくるけど、こういうのって俺が決めても良いのかね。俺が決めるなら当然――





「これは一体どういうことだ!?」


 縛り上げられた村長さんが叫んでいる。

 場所は村の広場で、村長さん以外の村人も縄で縛り上げられて地面に転がされている。

 女子供には何もしていないけれども、この状況に怯えて動けない様子だから放っておいても良いだろう。


 なんで、こんなことになっているかというと、村に一泊した次の日の早朝に村人を襲撃して縛り上げたというだけだ。

 別に縛り上げなくても、村の周囲を冒険者で囲んでいるから、何もできないだろうけど万が一のことがあったらいけないしね。


「どういうことと言われてもな。お前たちの苦しみを取り除いてやろうと思っただけだ。俺は言っただろう? 苦しみが消え去る瞬間まで見届けるとな」


 広場の中央に村人が不正に税から逃れて得た蓄えが積み上げられていく。


「悪事を働いて富を得たという罪悪感に苦しんでいたんだろう? 俺がそれを消し去ってやる。そして、お前たちが苦しみから解放される瞬間を見届けてやろう」


 俺は《ファイア・ボール》の魔法を村人の蓄えに向けて放った。

 麦やら、何やらの入っていた・・袋、それを売り払い得た金銭を隠していた・・袋が燃え上がる。


「ああ……」


 村人たちは顔に絶望を浮かべているけど、そんなに絶望するような額かね?

 俺の二三か月分の小遣いくらいの額しかなかったけど、それってそんなに惜しいもんなのか?


「領主には話をつけて、今までに逃れてきた税に関しては無かったことにしてやった。罪に問えば村人全員が死罪だからな。それを哀れと思った俺の優しさに感謝し、これからは真面目に働くんだな」


 村長は魂が抜けたように生気の無い表情で、燃え上がっていく村の財を見つめていた。

 別にそこまで落ち込まなくてもいいのにな。真面目に生活していれば村が飢えない程度には残してやってるんだしさ。

 まぁ、反省を促すためにはこれくらいショックを受けないと駄目だと思うから気にする必要もないな。

 それに悪いことをやっていたんだから、ちょっとくらい痛い目に遭わないと。


 しかしなんだな、悪い奴を懲らしめるのは気分が良いもんだな。

 村人たちは絶望しているようだけど、これから先は俺が気にすることじゃないな。

 欲をかいたうえでの末路だから諦めろって感じ。

 これからは領主さんも甘い顔はしなくなると思うので、心を入れ替えて頑張ってほしいもんだね。


 俺たちは良いことをしたことで良い気分になりながら村を後にする。

 やっぱり、善行は良いもんだね。懐も潤ったしさ。


「……アレは、領主さんに渡さなくて良いんですか?」


 ジーク君が俺に話しかけてきた。

 アレって何だろうね? 思い当たるのは、さっきの村で貰ってきた不正な蓄財だけど――


「別に構わないだろう。既に存在しないものだ」


 誰も彼も無かったことにしていたものだし、今更、渡されても領主さんも困るだろうから俺達で貰いました。

 村人に反省を促すために消し去る必要があったけど、一緒に燃やしてこの世から消してしまうのは勿体ないから、俺たちが使った方が世の中の為だと思ったんだよな。

 村人は何も入っていない袋が燃えるのを眺めて絶望していたわけだけど、事実を踏まえてよくよく考えると変な人たちだよね。袋が燃えるのを見て絶望するとか、どんだけ袋に思い入れがあったんだよって思うわ。


「もう少し誠実に生きた方が良いと思いますよ」


 俺は俺なりに誠実に生きているというのにジーク君に酷いことを言われました。

 でもまぁ、ガキの言うことなんで怒ったりはしません。聞き流してやるのが大人の対応って奴です。


「では、誠実な生き方の手本を見せてくれると助かるな」


 怒りはしないし、聞き流すけれど、大人として言い返したりはしますよ。

 別にそんなにキツイ言葉を言ったつもりはないけれど、俺の言葉にジーク君は気まずい表情を浮かべて、逃げるように立ち去っていきました。


 なんだか変だね。まぁ、思春期のガキなんてだいたいが変なもんなんだし、気にしても仕方ないか。

 俺はエイジ君の事を忘れて、ぼんやりと馬車の窓から外の景色を眺めることにする。

 オレイバルガス大公領までは一週間。それまでの旅路が楽しいものであれば良いと考えながら――




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