表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
139/273

二人の処分

 

 なんか忘れてる気がするんだよなぁ。

 どっかの誰かとお別れして、別れ際に何か頼まれたような気がするけど思い出せないんだよな。

 記憶力が曖昧なのはいつものことだし気にしても仕方ないし、そもそも忘れるってことは本当に重要なことじゃないような気もするから思い出す必要もないかもしれんし、別に忘れてても良いかも。


「どうかされましたか?」


 色々と考えながら歩いていたら、なんか衛兵らしい人が尋ねてきた。

 どこかで会ったことがあるような気がするし、なんかお金をあげたような憶えもあるような無いような記憶もあるんだけど、どこのどなたでしたっけ?

 つーか、なんで、衛兵の人と仲良く歩いているんですかね、俺は?

 

 ああ、そういえば、俺はお城の中にいたんでしたっけ?

 確か、セイリオスと喧嘩してから何日か経ってから呼ばれたんだよな。呼びつけるんじゃなくて向こうから来てほしいんだけど、気が利かねぇよなぁ。俺の今の状況を見れば、そういう判断くらいは出来ると思うんだけど、できないんだろうなぁ。


「随分な怪我をされているようですが、お加減はよろしいのですか?」


 衛兵さんは気にしてくれて優しいね。

 でもさぁ、右腕を固定して吊っている時点で元気かどうか聞くのもズレてると思うんだ。

 そりゃカタリナの回復魔法でなんとかくっついたから普通の怪我に見えるけど、魔法で治るまで骨が粉々になって右腕とかグニャグニャだったんだぜ?

 命には別状はないけど、気持ち的には元気なくなっちゃう怪我だし、お加減とかよろしくないにきまってるじゃんね。


「問題は無い」


 まぁ、痛い痛いと泣いたりすんのはカッコ悪いので我慢しますけどね。

 でも、俺が我慢してるって察して気を遣ってくれるべきだと思うんだけど。

 まぁ、そういうのは置いといて、俺はどこに向かって歩いているんですかね。


「陛下もセイリオス殿も既にお待ちですので、少し急がれた方が」


 はぁ? なんで奴が待ってんの? 全く理解ができないんだけど。

 なんてことを思っていたら見覚えのあるデカい扉の前に到着しました。なんか少し前にもこの中に入ったような――


「セイリオス・アークス殿が参りました」


 衛兵の人が扉に向かって、そう告げると扉が勝手に開く。

 自動で開く扉って凄いねと思って、扉が開いた先の部屋に入ると、扉の裏には人がいました。自動じゃなくて手動ですか。さっきの俺の感動はどうしてくれるんだって言いたいけども、こんなことで騒いでいたらキチガイみたいなんで、おとなしくしています。

 そういえば、部屋の中に陛下とか殿下とかセイリオスとかに加えて、その他大勢の貴族の皆さんがいるけど、別にどうでもいいかな。


「中央へどうぞ」


 俺は衛兵の人に言われて、部屋の中央に向かいます。

 円形の議場っていうのかね。なんかこの間も見たような場所というか、この間と同じ場所そのものかな。

 なんか新鮮味がないから興味もないし、何が起ころうとどうでもいいかな。


 議場の中央には二つ席があり、そのうちの一つに俺は座る。

 んでもって、もう片方にはセイリオスが座っているわけだけど、セイリオスの顔色が凄く悪いのはなんでなんだろう。

 神妙な顔と言うか、罪悪感が凄い感じられる表情で、何も知らない人間が見れば可哀想としか思えないような雰囲気を出しているわけだけど、俺からすると演技にしか見えないんだよなぁ。

 でも、この部屋の貴族の大多数はセイリオスに同情の眼差しを向けているし、なんだか良く分かんないな。もしかすると、俺の目が節穴で本当にセイリオスは可哀想なんだろうか?


「揃ったな。では、これよりアロルド・アークス、セイリオス・アークスの二名に対して処分を下す」


 陛下が怖い顔で口を開くとそんなことを言った。

 俺が何か悪いことしたんじゃないかっていう話の続きと、セイリオスが何か悪いことをしたんでお仕置きをしますって話かな。

 あれって無しになったんじゃなかったんだ。


「聖神教会からはイーリス・エルレンシアが魔族である可能性は無いという報告が来ておる。であるならば、王家の者も魔族に誑かされているという可能性はなくなったということになり、余の言葉も正気から発せられたものであると言えるな、セイリオスよ」


「その通りにございます」


 ああ、頭おかしくないって分かったのね、陛下。良かった良かった。

 しかし、教会の人がイーリスが魔族じゃないってことになったのはどういうことなんだろうかね?

 そもそも教会の人って魔族を判別するような能力は持ってないし、それなのにどうやって魔族であるかないかを見極めんだろうか?


「修道院を襲ったのは、聖騎士を騙る者達だったそうだ」


 陛下はそう言ってるけど、それ本当かな?

 俺が戦った二人は本物だったような気がするけど偽者だったのかな?

 つーか、本物だったとしても本物とは言いにくい雰囲気だよね。本物だったら、教会秘蔵の最終兵器みたいな聖騎士が殺されちゃったってことになるし、バレると恥ずかしいから偽者ってことにしたいと思うんだけど。

 ついでに、聖騎士の殺られた相手がイーリスである可能性もあるわけだし、そのイーリスが魔族であると分かると、聖騎士って魔族には無力なんじゃねって話になりそうだよね。

 あとさ、イーリスが魔族でも良いんだけど、それに気づくのが遅れて死人を大量に出したのは事実だし、イーリスが魔族であるってことになると、教会の人の目は節穴かって言われそうだし、イーリスが魔族じゃないと教会の人は嬉しそうだよね。


「そして、修道院にいたというセイリオスが率いた王国兵もまた偽者であった。どうやら、修道院では教会と王国の手の者であること騙る二勢力が争いをしていたようだ」


 そっちは良く分かんねぇや。

 まぁ、教会の人が王国兵にうちの聖騎士が、ぶっ殺されたんですけど。って文句言ってきた時、そんなの知らねーよ、そいつら偽者だからって言ったら教会マジギレしそうだよね。

 教会がマジギレして喧嘩売ってきたら、王国の方も身に覚えはないからキレ返すと思うんだけど、そうなったら大喧嘩になりそうだよね。


「このことは教会の方も理解しており、王国と教会を仲違いさせようとする者の策略であると結論が出ている。セイリオスよ、貴様はその策に踊らされていたということだな」


 踊らされる方なんだろうかね? むしろ躍らせる方だと思うんだけど、ちょっとこの場じゃ言い難いかも。

 だって、セイリオスは凄く狼狽えてるし、ここで俺が何か言うと、セイリオスを虐めてるみたいで印象悪くなりそうだし黙っていよう。


「どうか、どうか、弁明の機会を」


 セイリオスが必死で訴えている。俺は演技にしか見えないんだけど、この場にいる人にはどう見えてんだろうね?


「許す」


 陛下から許しが出ると、セイリオスはおもむろに椅子から立ち上がり、床の上に跪くと陛下に向かって額を床にこすりつける。

 どこかで聞いたか忘れたけど、これって土下座って言うんだっけか? すごく申し訳ないと思った時にする謝罪の姿勢らしいけど、俺はセイリオスに謝罪の意思が感じられないんだよなぁ。だって、俺の位置からはセイリオスの口元に薄ら笑いが浮かんでるのが見えるしさ。


「此度の私の行動には王家を害する思いなどは毛頭なく、ただ偏に王家の安寧を願ってのものであることだけは陛下にご理解いただきたく存じ上げます」


「そうは申すが貴様の独断により、ウーゼルの婚約者のイーリスは無実の罪で死を迎え、教会と王国の関係に亀裂が入る恐れがあったのも事実。国のためを思うという貴様の志は立派ではあるが、過ちは過ちである」


「それは重々承知でございます。王家とこの国に不利益となるようなことをしでかしてしまった罪を償うことを厭うつもりはございません。ただ、ただ私のこの思いだけは、どうか、どうか、この場にいる皆様に理解していただきたく――」


 言いながら、セイリオスの声がすすり泣く様な物に変わる。

 俺は白けてるんだけど、この場の雰囲気としてはなんかセイリオスに同情している人が多そうだ。

 まぁ、陛下もセイリオスを土下座させたままは良くないんじゃないかな。

 俺は良く分かんないけど貴族って面子とか体面が大事らしいし、こんな大勢の前で土下座しているとか恥になるんじゃない?

 そうやって恥をかくような状況に追い込んだ陛下は酷いし、見せしめの様にやめろと言わずに放っておいているのも貴族の人たちとしては面白くないんじゃない? 面子とか体面とか無視して、貴族を平気でいじめる王様だとか思われちゃいそうだよね。


「どのような言葉を弄しようが過ちは過ちであり、罰は与えねばならん。とはいえ、善意からの行動であるならば、情状酌量の余地も考える必要があるだろう」


 陛下は苦い表情だ。

 まぁ、こんだけ国のためを思ってとか言っている奴を一方的に断罪するのは気が咎めるよね。

 気が咎めないにしても、事情を詳しく知らない人はセイリオスってもしかして悪いことしてないんじゃないって思うようになってくるだろうからなぁ。

 実際、この部屋にいる貴族の大半はセイリオスが若者らしい暴走で国と王家の為に行動を起こしたら罠に嵌められたみたいに見えていて、ちょっと同情気味だし、ここでセイリオスに酷いことをすると陛下に対して不満みたいなの溜まりそうだし、そんな状況で厳しいことは言えないよね。


「どのような罰でも甘んじて受け入れる所存です」


 セイリオスはいまだに土下座の姿勢で、そんなセイリオスに陛下は告げる。


「ではセイリオス・アークスの処分を伝える。セイリオス・アークスはアークス伯爵領に戻り一年の謹慎。そしてアドラ王国において今後十年に渡り領主以外の公職に就くことを禁ずるものとする」


 陛下からセイリオスに処分が下される。

 それを土下座しながら聞くセイリオスは俺の位置からだとほくそ笑んでいるように見える。

 俺はこの処分の重さが良く分からないからイマイチ判断がつかないけど、セイリオスの様子だと軽いのかな?


 えーと、謹慎で領地に籠るってことは社交界から離れることになるんだよな。それを一年となると、一年間はマトモな人づきあいができなくなるってことか?

 うーん、一年間マトモに人と交流することが無いと、世の中の流行からは遅れるし、社交界に戻っても昔の人ってことで相手にされないようになるかもしれんね。

 あと、公職に就けないっていうのはどういうことなんだろうかね。たぶん大臣とかになれなくて、王宮で働けないってことかな。王宮で働けないとコネとか築きにくいし、そうなると出世とか難しそうだなぁ。セイリオスは二十台だし、働けるようになるのは三十代かな? 三十台でいきなり王宮で働くようになっても、新人ということになるだろうから出世とかは大変そうだよね。


 良く分からないけど、この処分を下されたってことはセイリオスは出世の道を絶たれたっていうことになるのかな。

 これから先、ただの領主で終わることになるだろうし、偉くなりたいと思っている人からすると、かなり厳しい処分なのかもしんないけど、セイリオスにはなんてことないような気もすんだよなぁ。


「寛大な御処分、感謝いたします」


 セイリオスはそう言うと立ち上がり席に座る。表情は神妙な感じだけど、雰囲気には余裕が感じられるんだよな。


「では、次にアロルド・アークスの処分だが――」


 あ、今度は俺ですか? そういや、中断されていたんだったよな。

 えーと、確か陛下が正気じゃないかもしれないから、頭おかしい状態で処分を下すのは良くないって話で中断してたんだけど、実際は正気だったわけで、そんでもって中断される直前の俺は牢屋行きになりそうだったけど、アレ? もしかして、流れ的に俺は牢屋行きなのかな? 中断される前のが正しかったってわけだし――


「初めに訴えを出したウーゼルが、それを取り下げたので、内通の疑いがあることに関しては白紙となったため、処分は行わないものとする」


 あらまぁ、無罪放免ですか? まぁ、なんか悪いことしたって記憶はないし、当然といえば当然かな。記憶ないだけで悪いことをしてた可能性はあるけど、言ったら立場が悪くなりそうなんで黙っています。

 そういや、ウーゼル殿下が何か取り下げてくれたから無罪みたいだけど、やっぱりこれは仲良くしておいたせいかってことかな。

 情けは人の為ならず、いつかは自分の為になるってのは本当だったぜ。


「とはいえ、貴様は査問会を侮辱したうえ、近頃は王族に対する不敬な振る舞いも目に余る。内通の疑いは白紙となったが、これに関しては正しく処分されるべきだ」


 は? ちょっと待ってほしいんだけど。俺っていつも陛下とかに普通に接してきたじゃん。

 それが駄目ってのが良く分かんないんだけど。つーか、駄目なら駄目って、もっと早く言えって、ここに来てお前の言動とかすべてアウトだったんだとか言われても困るんだけど。


「よって、ここにアロルド・アークスへの処分を改めて発表する。ただし、これは先の戦のアロルドの活躍を鑑み、本来の処分を軽減したものである」


 俺が目で訴えるが陛下は無視して俺への処分を読み上げる。


「まず、先の戦でのアロルド個人への報酬支払の中止。ただし、戦費の用意の際にアロルドが負った借金は王家が支払うものとする。次に王都から半年間の追放と、その後五年間に渡りアドラ王国において公職に就くことを禁ずる。それに伴い、現状アロルドが有している将軍としての地位も剥奪となる」


 あれ? なんか思ったより楽じゃない?

 戦を頑張ったご褒美のお金が払われることは無いにしても、罰金を支払う必要は無いみたいだし、借金もチャラにしてくれるんだよね。全然困ることないじゃん。

 で、王都から半年間の追放ってのは、あれだろ? 半年間旅行して来いって話だよな。

 んでもって、公職に就けないにしても、ギルドは民間だから処分の適用外で問題ないし、将軍だって別に続けていたいわけでもないし、やめさせられても問題ないよな。


「だが、戦を終えて帰って来てからアロルドはまだ間もない。王都において済ませておくべき用事もあるだろう。よって王都からの追放は三か月後とする。その間に身辺の整理を済ませておくがよい」


 なんだ猶予までくれるんですか? まったく、ありがたいことだぜ。

 しかし、旅行となるとどこ行こうか困るんだよなぁ。なるべく都会の方が良いんだけど、旅している感を出すには田舎の方が良いよな。でも、田舎とかだとエリアナさんとかは一緒に来てくれるかな。


「アロルドよ、貴様がウーゼルのために動いたことは評価できる。だが、それだけで今までの振る舞いが全て許されるわけではない。王都を離れ、今までの自分の行いを反省するのだな」


 へーい、分かりやした、陛下。

 でも何を反省すりゃいいか分かんないんだけど、どうすりゃいいのかね。

 うーん人に聞いた方が良いんだろうけど、聞いたら馬鹿だと思われそうだし恥ずかしいから聞きたくないな。

 まぁ、何を反省すりゃいいか分かんなくても、とりあえず反省してるふりしてれば誤魔化せるだろ。


「アロルド・アークス、セイリオス・アークスの両名は処分の意味をよくよく考え反省せよ。では、これにて閉会とする。両名には追って通達があるだろう、その通達に従うように」


 陛下はそう言って、俺たちに処分を下し終えるとさっさと帰ってしまった。

 そんな陛下の後ろをウーゼル殿下がついていくけど、去り際に俺の方を見てきた。なんか意味ありげだったけど良く分かんないね。できれば口で言ってほしいもんだぜ。


 しかし、陛下は反省しろと言われてもね、俺もセイリオスもそんなつもりはサラサラないんだけど、そのことを陛下は分かっているんだろうかね?

 まぁ、分かってないから軽いんだろうし、そのおかげで助かったから文句を言おうって気にはならないな。


 とりあえず、処分も下されたしさっさと帰ってエリアナさんにこのことを伝えなきゃな。

 んでもって、旅行の準備をしないと、どこへ行こうかな、南部はこの間行ったから候補から外すとして――


 なんてことを考えて歩いていたら帰り道にセイリオスとばったり出会った。


 王城の城門の前にたたずみ、セイリオスは俺を待ち構えていたようだった。

 セイリオスは俺を見るなり、口元に微笑を浮かべながら軽く手を上げて挨拶をしてきた。


「怪我はどうだい?」


「見ての通りだ」


 わりと元気だぜ。左脚は完治で左腕もまぁ大丈夫。右腕はヤバいし右脚もちょっとリハビリが必要だけど歩けないほど酷くはないし、問題ないかな。


「お互い処分が軽くて何よりだ。まぁ僕の方は貴族としては終わってしまったようだけどもね。社交界から離れてしまうとコネを築くのも難しいし、他の貴族から信用を得るのも難しくなってしまったよ。こうなるともう貴族として上を目指すのは難しいね」


 困ったような口調で言うが、見た感じでは困ったような雰囲気は無いし、セイリオスにとってはどうでも良さそうだった。


「こうなってしまうと僕は野心を捨て、伯爵領に引きこもって余生を過ごすしかないな。いやぁ寂しい人生になりそうだ」


「俺はそういう人生でも良いと思うがな」


 いいじゃんね、引きこもり。

 ノンビリと暮らすには悪くないと思うよ。


「そうかな。まぁそれも悪くないかもしれないけど一人は寂しいな。あれだけ喧嘩をしておいて、こんなことを言うのもなんだけど、できればアロルドには遊びに来てもらいたいな」


 そう言いながらセイリオスは左手を出す。

 どういうつもりの左手なんだろうね? 俺には良く分からないんだけど――


「お互い痛み分けに終わったんだ。色々とあったのも水に流して、また仲良くやっていこうじゃないか」


 ああ、仲直りの握手をしたいのね。

 んじゃ、俺も左手を出してっと。


「左手であることに深い意味はないよ。ただ、お前が右腕を吊っていて動かせ無さそうだからさ」


「そんなことを気にするような奴だと思っているのか?」


「いーや、ただまぁ、もしも誤解されたりしたら嫌だから予め弁解をしておこうと思ってね」


 俺はセイリオスの言葉を面倒くさく思いながら、セイリオスの左手を握る。


「これで仲直りだな」


「そうだな」


 いや、俺は仲直りするつもりないんだけど。

 なんか良くわからないけど、お前と仲良くしたいって気分にならないんだわ。

 正直な所、セイリオスのことは敵としか思えなくてな。


「じゃあ、仲直りも出来たことだし、僕は帰ることにするよ。伯爵領に戻る準備もしなければならないしな。アロルドも僕が落ち着いた頃に伯爵領に遊びに来てくれよ。精一杯の歓迎をしてやるからさ」


 そう言ってセイリオスは去っていった。

 どういうわけか、あいつを倒さなきゃならないって思いが脳裏をよぎる。

 どっかの誰かの頼みなのか、誰かとの約束なのかは記憶がないが、俺はセイリオスを倒す約束を誰かとしたような気がする。


 俺はセイリオスが立ち去るのを見届けると屋敷へ帰るために歩き出す。

 まぁ、なんにせよ。あの野郎はしばらく引きこもりだろうし放っておいても大丈夫だろ。

 そんなことより、俺はエリアナさんと行くかもしれない旅行の方を考えなきゃな。


 セイリオスを倒すのも大事な気がするけど、今の俺にはそっちの方が楽しそうだし大事なんで、約束したかもしれない人には悪いけど、約束に関してはそのうちってことで。


 とりあえず憶えていたってだけで今の段階では充分だと思うし、それで許してくれるんじゃないかな。

 約束したのがどこの誰か忘れたけど、そいつは俺が忘れっぽいってのは分かってるだろうから、ここまででも充分だと言ってくれると思うしさ。


 しかし、どこの誰と約束したんだっけか?

 こういう時、記憶力が悪いと本当に不便だよなぁ。

 なんか思い出した方が良いようなことも気もするけども思い出せないし。

 でもまぁ、本当に大事なことなら、そのうち思い出すだろ。

 不意に思い出すこともあるかもしれないし、その時を気長に待つとしますかね。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ