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旧友来たりて

「結果だけ見れば悪くはないね」


 馬車に揺られながら兄上は俺にそう言った。

 結局、あの場はお開きということになり俺は帰宅が許された。

 そして、今は帰り道を兄上の馬車で送ってもらっているところだ。


「金を払わなくても済んだからな」


「ついでに牢屋に行かなくても済んだ」


 いやぁ、それに関しては良いことなのかどうかは分からないな。


「生まれてこの方、牢屋には入ったことがないからな。もしかすると居心地の良い場所かもしれんし、それを考えると牢屋の居心地を調べる機会を逃したのは良くなかったかもしれない」


「そうか、では今度は二日か三日ほどしてから助けるようにしよう」


 何が面白いのかは分からないけど兄上は笑っています。

 笑い事じゃないんだけどな。もしかしたら俺にとっても楽園だったかもしれないんだぜ。世間的には牢獄なんかは地獄とかそう言われるけど、俺は実際に言ったことがないから実情は分からないんだしさ。ちょっと見てきた方が良かったんじゃないかと思うのよね。


「冗談はさておき」


 兄上が急に真顔になる。俺としては冗談なんか一言も口にしてないんで、冗談で済まされるとか嫌なんだけど。


「これで王家の信用に傷をつけることができたのは確かだ。王家と貴族の関係は純粋に忠誠心に基づいているものではなく打算に基づいたものだ。どこの馬の骨とも分からぬ小娘に良いようにされる王家に仕える利益は如何ほどのものだろうか。あんな王家に頼るのも従うのも良しとせずに独立独歩の道を歩もうと考える者たちもいるだろうね」


「いないかもしれないがな」


「いないかもしれないが、こういうのは積み重ねだよ。今はそう思わなくても、いずれ何であんな王家に仕えているんだと思う貴族も出てくるし、王家を侮る貴族も出てくるだろう。アロルドのような若造に何の罰も下せずに引き下がった今日のようなザマを見れば、失望はあるだろうしね」


 なんだか、王家的には俺が牢屋に行っていたほうが良いみたいね。まぁ、そうした方が舐められなかっただろうしさ。俺としても牢屋の住み心地を確かめるために一度くらいは行っても良かったし、頼まれれば喜んで行ったんだけどな。なんか悪いことしちゃった気分だぜ。


「もっとも、罰を下したところで公の場で洗脳されていた疑いをかけられたんだ。国王も王子も御終いだよ。これから先あの二人の言葉は何も意味をなさない、何を言おうとも常に正気を疑われるんだからね」


 うーん、良く分からんね。あの二人は正気だったと俺は思うんだけどな。

 でも、俺が間違っている可能性もあるし黙っていよう。


「もしかするとイーリスの魔法がかかったままなんじゃないのかっていう不安を誰もが持つ。操られているかもしれない輩の言葉をどこまで信用できる? 少なくとも僕は信用できないな。僕にとって都合の悪い命令を国王にされたとしても、それはイーリスが言わせているだけで国王の言葉じゃないはずだから、それに従う必要はないと言い逃れをするよ。そして、そうする者は僕だけじゃないと思うね」


 うーん、俺は言うこと聞くけどな。まぁ聞ける範囲だけどさ。

 だって、陛下って偉いんだろ? 俺は偉い人の言うことはなるべく聞いておいた方が良いなぁって思うし、ウーゼル殿下は学友って奴だし、知り合い以上の関係なんだから仲良くはしたいし。


「――さて、概観は説明したが、理解はできたかい?」


 あまり良く分かってないので、分かったふりをして、俺は黙っておきます。

 ただ、陛下と殿下がこれから色んな人に無視されたりするのは可哀想だなぁって思いました。幼児並みの感想ですみません。


「まぁ、理解できてなくても構わないよ。僕がすべて片付けておくから、お前はゆっくり休んでいるといい。しばらくは力を借りる必要もないだろうからね」


 ゆっくりしていても良いなら、その方がありがたいけどさ。

 何をするんでしょうかね? まぁそんなに興味はないからどうでも良いけども。


「そろそろお前の屋敷に着く。つまらない話は終わりにしようか」


 兄上はそれきり話を打ち切り、俺の屋敷に着くまでの間、何も言わずに微笑みながら、遠い未来に思いをはせているようだった。




 俺は屋敷の前に着くと、兄上の馬車から降り、昨日の夜に帰ってきた時と変わらぬ振る舞いで屋敷の門を潜り抜ける。すると――


「準備しろ! 王城へ攻め込むぞ!」


「何人かは王都に火を放て。王都の機能を徹底して麻痺させようか」


 俺の屋敷の庭でオリアスさんとグレアムさんが冒険者連中を整列させ、物騒なことをやろうとしているようでした。


「どうせアロルドは死にゃあしねんだ。気にせず城に大砲をぶち込め。国王が死んだら一等賞、王子が死んだら二等賞だ。俺の懐は寂しいが、褒美を出してやるくらいの蓄えはある」


 なんか盛り上がってるけど、何の御祭りでしょうね。

 俺は蚊帳の外みたいだし、邪魔したら悪いのでさっさと屋敷の中に入ります。

 入り口の扉を開け、屋敷の中に入るとメイドと鉢合わせしましたけど、メイドなんて空気みたいな存在なんで無視します。向こうもご主人様にいちいち気にされてたら、仕事しづらいだろうしね。


「奥様! 奥様! 旦那様がお帰りに!」


 うっせえなぁ。声を上げる前に茶でも出せよ。そんくらい気を利かせないとクビにすっからな。

 まぁ、エリアナさんがクビにはしないだろうから、俺が何を思っても意味はないんだけどね。


「あら、早かったのね」


 そうそう、こういう対応じゃないとね。声を聞きつけたのかエリアナさんがやってきたけれどもノンビリしていらっしゃる。やっぱりエリアナさんは分かっていらっしゃる。


「奥様、何をそんな冷静な! 旦那様が無事に戻られたのですよ!」


「そんなに騒ぐことじゃないわよ。無事に戻れないわけがないんだから」


 エリアナさんはそう言うと俺にテーブルに着くように促し、手ずから茶を淹れ、座った俺の前にそれを出す。


「これだけ名が売れてるアロルド君を処刑するわけにはいかないわ。そんなことをすれば民心は離れるだろうし、そのくらいの分別は陛下にもつくわ。殿下にしても、理性的な判断と臆病な性格が相まってそうそうひどいことはできなかったろうしね。私の読みでは一か月くらい牢屋に入れて反省の意思が見えたので釈放って程度だったし、それに比べれば随分と早いけれども大きな問題ではないわね」


 マジかよ、一か月かぁ。住み心地が良ければ平気だろうけど、悪かったら辛いなぁ。

 兄上に助けてもらって正解だったかもしれんね。


「何があったかは知らないけれど、無事に済んで何よりよ。未来の旦那様が死んでしまったら悲しくて涙で枕を濡らす日々を過ごす羽目になっていたもの」


 今も旦那様呼びさせてるし、自分が奥様呼びなのは突っ込んだ方が良いのかな?

 まぁ、突っ込むようなことじゃないから別にいいか。それよりもエリアナさんが悲しい思いをしなくてよかったね。美人が泣いているのは綺麗ではあるけれども可哀想でもあるから、なるべく避けたほうがよさそうだしさ。


「――それで、どうやって無事に帰ってこれたかは教えてくれないの?」


 うーん、それを話すと面倒くさくなりそうだし嫌だなぁ。つーか、ちゃんと話せる自信がない。


 えーと、俺が悪いって話になって。

 そしたら、兄上が聖騎士だったっけ? 趣味の悪い鎧を着た人たちを連れてきたの。

 それでね、聖騎士の人がバヒュンって魔法をやったら殿下がパリンしちゃって、殿下がイーリスにたぶらかされているって話になって。

 そんでもって、イーリスの魔法で殿下の頭がおかしくなってるから、頭おかしい人の言うことなんておかしいから、みんな冷静になろうぜって兄上が言ったのね。

 ででで、陛下もイーリスと顔合わせてるんだし、イーリスの魔法で頭おかしくなってるんじゃねって話になって、頭がおかしくなっている可能性のある人が王様って良くないから、頭がおかしくないか分かるまで、やっぱり冷静になろうぜって兄上が言ったの。


 わぁ、俺ちゃんと説明できたぞ。すごくね、すごくね?

 でも、エリアナさんの表情は険しいですね。まぁ、険しい顔していても美人だから見ていて楽しいから別にいいけど。


「ちょっと待って、どうしてそんな話になるの? 頭が変になりそう……」


 おや、エリアナさんも頭おかしいって展開ですか? 心配しなくても大丈夫、頭おかしくなっても俺が養ってあげるからさ。


「えーと、どうして聖騎士が絡んでくるの? 王家と教会は互いの権威を高めるために協力しようとしていたのに……」


 そんな話もあったかね?

 王権は神に与えられたもので絶対であるとかいう話?

 神様なんかいないのに、どうやって神様から貰うんだろうね?

 それにさ、与える作業をしているのって教会じゃんね。それって教会が嘘っぱちこいてもなんとかなりそうじゃない? 神様なんていないんだからいくらでも出まかせ言えそうだしさ。

 でも本当だったら、神様から王様を決める権利を貰えるとかすげぇね。敬った方が良い感じかな?

 ついでに神様に認められた王様すげぇ、たっとんだほうがいいのかな?

 なんか良く分かんないけど、尊んだ方が良い人と敬った方が集団が一緒になると凄そうだね。二つ組み合わさると何でもできそうだ。


「教会側が今の力関係を嫌がったということかしら? イーリスが魔族であるというのが事実だとしたら、それは王家の汚点だし、教会が王家に魔族の影響は残っておらず殿下も陛下も元に戻ったと宣言しないと今の状況は収まらなそうだし、教会の宣言を引き出させるために王家が教会に対して大幅な譲歩を行い教会の権力を強める?」


 色々と頭を働かせているようでエリアナさんも大変だね。

 俺は良く分からんから黙っているけど、そもそもイーリスって魔族なのかね?

 そりゃ、エリアナさんには劣るし田舎臭さもあるけど、そこまで悪い顔ってわけじゃないのよね。まぁ、何人も男を侍らせることが出来るほど器量じゃないような気もするけど、人の好みはそれぞれだしそういうこともあるよね。

 そもそもさぁ、なんで今更言うんだろうかってね。兄上だってイーリスを始めてみるわけじゃないよね?

 だったら、もっと前に言っていても良くない? 兄上だったらイーリスがおかしいことに気づきそうな気もすんだよね。兄上がどういう力量の持ち主かは見たことないけど、なんとなくそう思うのよ。


 まぁ、こういうこと言ってエリアナさんを混乱させるのも悪いし、俺は黙って茶でも飲んでようと思うんだけど――


「御くつろぎの所、申し訳ありません。旦那様、お客様がお見えです」


 メイドが俺のティータイムを邪魔しやがった。まぁ下々の者のがやることにいちいち腹を立てていたら貴族なんかは務まりませんし許します。運が良かったな、クビを洗って待ってろって言ってもやりたいけれど黙っていましょう。


「通せ」


 あ、誰が来ているのか聞いてないけど、まぁ良いか。たぶん知り合いだし問題ないでしょう。知り合いじゃなくても、会えば知り合いになるから問題ないと思うよ。


 俺が許可を出すとほどなくして客が俺たちの前に通される。

 えーと、なんだろうね。この人は? 会ったことがないような気はするけど、見たことないわけじゃないんだよなぁ。つーか、見たら忘れないんじゃない?

 だって、女の子なのに鎧姿だしさ――


「――ヒルダ?」


 おや、エリアナさんが目を丸くしていますね。お知り合いでしょうか?

 見た目的にエリアナさんの好みに当てはまりそうな綺麗な顔だし、知っていてもおかしくないのか?

 でも、良い関係ってわけじゃなさそうね。だって、今エリアナさんがティーカップぶん投げたしさ。


 エリアナさんが全力で投げたティーカップをヒルダさんは軽やかに躱しました。

 身のこなしを見る限り、それなりに強いように見えますね。俺の手下の冒険者連中と比べても、そうそう負けないように見えるけど、どうだろうか?


「見苦しい所を見せてすまない。私はヒルダ・ソフィエル。ソフィエル伯爵家の者だ。アロルド殿とは言葉を交わすのは初めて故名乗らせてもらう」


 そう言ってヒルダさんは俺に頭を下げます。

 ソフィエル伯爵家ってのが何かは知らんけど、ヒルダさんは美人で良いんじゃない?

 キリッとした顔立ちで赤い髪を長く伸ばしているけど、女性的な印象はなく凛々しい感じだね。体形は背が高くスラッとしているけど、肉付きが悪いわけじゃないように見えるし素敵だと思います。


「エリアナも久しぶりだな。アロルド殿のもとに身を寄せているとは風の噂で聞いていたので驚きはないが、また会えて私は嬉しく思――」


 ヒルダさんが言い終わる前にエリアナさんが俺のティーカップを掴んで、また投げつけました。

 慣れたものなのか、ヒルダさんは軽やかにそのカップを避けます。


「――ちょっと顔貸せや」


 エリアナさんが女の子しちゃいけない顔をしていますが、まぁ人間そういうことあるだろうと思うので俺は成り行きを見守りますよ。ぶっちゃけ関わりたくないだけですけどね。


「……すまない。お前を守ることが出来なかったのは私の不徳のいたすところであるというのは理解している。許してくれとは言えない。もしも、気が済むのなら――」


 やっぱり言い終わる前にエリアナさんの拳がヒルダさんの顔面を打ち抜きました。

 酔ってないのに絶好調だねエリアナさん。女の子の顔面にグーパンいれるのに躊躇が無いのは凄いと思うよ。


「痛い! ごめん、悪かったから許してくれ!」


「くれじゃねぇだろ! 許してくださいだろ!」


 殴られ倒れたヒルダさんをエリアナさんが足蹴にしていますね。加減しているようなので、俺が何か言うことは無いけれども、女の子同士でもこういうことはあるもんなんだなぁってちょっと驚き中です。


「許してください。ごめんなさい。庇ってあげなくてごめんなさい」


 ヒルダさんが跪いて許しを乞うていますね。さっきまで凛々しかったのに台無しだと思います。

 その気になれば、エリアナさん程度ならどうこうできそうだけど、甘んじて攻撃を受けた上に下手に出ているのは理由があるのかね?


「そこまで言うなら許してあげるわ。ほら、こっちに座ってお茶でも飲みなさい」


 なんだか良く分かんない関係だなぁ。もしかして俺ってこの場にいなくても良いんじゃない? まぁメイドが新しいお茶を持ってきてくれたんで、それ飲むためにこの場にいるけども、正直な所この二人だけで十分じゃない?

 つーか、結局ヒルダさんって何なの?


「いい加減、誰でどういう人物なのか俺に教えてもらいたいんだが」


 分かんないので聞いちゃいました。しょうがないよね、良く分かんないまま話が進まれても困るしさ。


「見苦しい所をお見せした、私は――」


「軍務大臣をやっているソフィエル伯爵家のお嬢様よ。でもって私たちが退学させられた魔法学校の同期で、男勝りに剣術修めたちょっとイタい女騎士志望の綺麗な女の子。そして私の友達だった・・・人よ」


「だったって……私たちはまだ友達だろう?」


「そうねぇ、貴女にしたら切実よねぇ。私以外に友達いなかったもの。でも、私としては陥れられ窮地になった時に助けてくれない人は友達としては見れないし、お友達を続けるのは難しいかなぁって思うの」


 仲が良くてよろしいね。綺麗な人は一人でも良いけど二人いるとさらに華やかになってよいよね。

 俺としては美人二人がいるだけで十分満足なので何も言いません。

 そういや、エリアナさんと同じ学校ってことは俺とも同じ学校か? 顔を見た記憶があるような無いようなっていうのは、そのせいかな。

 しかし、エリアナさんの友達かぁ。エリアナさんも友達いなさそうなイメージだったけど友達いるのね。ちょっと驚きです。


「それは、その、あの時はお前がイーリス様を虐めていた可能性が拭いきれずにどうしようか分からなくて……」


 まぁた、こいつもイーリス様かよ。そんなに偉いのかねイーリスはさ。

 まぁでも、偉いのか? もしかしたら王妃になりそうだしさ。でもなんか風向きが悪いようだよね。


「私は友達だから守ってくれると信じていたのに……騎士を目指している貴方を頼りにしていたのに……」


 よよよとエリアナさんが泣き崩れますけど嘘泣きですね。でも、ヒルダさん分かっていないのか泣いているエリアナさんを見て慌てています。


「あああ、ごめん本当に許して。何でもするから泣かないで」


「じゃあ許すわ。なんでもしてくれるのなら許すわよ」


 ほら、ケロッとしています。


「なんでもすると言ったわよね? 騎士に二言は無いわよね?」


 ヒルダさんが唖然としていますけど、そんなに驚くことかね?

 エリアナさんはこんなもんだと思うよ。なにがこんなもんかは分からないけどさ。


「まぁ、なにもしてくれなくても謝れば最初から許すつもりだったわよ。衆人環視の中、私が身に覚えのない悪事について責められている場で、貴方みたいにちょっと頭の足りない娘が何かできたことがあるとは思えないし、今思えば仕方ないわ。だから許してあげる」


「えっと、じゃあどうして殴ったんだ?」


「理性的には許せても感情的には許せないからよ。貴方の不甲斐なさに腹が立っていて、それに対する怒りの発散のためでもあるわね」


 じゃあ仕方ないね。俺もキレたらぶっ殺してやろうかって気持ちになるしさ。エリアナさんがそういう気持ちになっても仕方ない。

 まぁ、なんにせよ仲直りは済んだのかな? じゃあ、質問しても良いですかね? まぁ勝手に聞くだけどさ。


「仲直りが済んだところで、いい加減本題に入りたいんだがな。エリアナに謝るためにやってきたというわけではないだろう?」


 これでエリアナさんに謝るためだけですだったら俺が凄い格好悪いよね。


「ああ、アロルド殿に頼みたいことがあるんだ。だが、その少し言い辛くてだな」


「遠慮せずに言ってくれ。可能な頼みならば聞き届けてやる」


 別に忙しいわけじゃないしね。頼み事くらいは聞きますよ。困っている人を助けるのは気分良くなること多いしさ。

 俺が遠慮しないで良いと言ったら、ヒルダさんはホッとした様子を見せる。遠慮しないでとは言ったけど、人間の常識として多少は遠慮しようね。俺だって、どの程度が遠慮にあたるのかは分からないけど頑張って遠慮してることが多いんだから、キミもやってよ?


「そうか、では――」


 ヒルダさんは頼みを聞いてもらえると安心したのか、ゆっくり落ち着いた様子で口を開く。


「――イーリス様を守る手助けをしてくれないか?」


 その言葉が聞こえた瞬間エリアナさんが、メイドが淹れた新しいお茶をヒルダさんの顔面にぶっかけた。

 女の子同士なのに荒っぽすぎて怖いんだけど。でもまぁ、俺も剣を抜いて斬り合う日常を過ごしたりしてるし、それに比べたら平和かな。


 しかし、イーリスを守ってほしいって頼みごとかぁ。聞いてやるべきか、聞いてやらないべきか、さて、どうしたもんかね。

 まぁ、エリアナさんのご機嫌次第になりそうだから俺が考えても仕方ないか。全部エリアナさんの判断にお任せするんで、あとはよろしくお願いしますね。






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