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行状を問う

 ――俺は王城の一室にて目を覚ました。……なんで、ここにいるんだっけ?

 えーと、アレだ。酒飲んで寝ちゃったんだよな。しかし、なんでお城で寝てるんでしょうかね。

 微妙に怪しいけど、お酒がないと眠れないって言った記憶はあるんだよな。本当の所は退屈だったんで酒飲んで楽しい気分になりたかっただけだったと思うけども、まぁそんなの誰も知る由はないよね。

 それで誰かにお酒を持ってきてもらって、こんな安物の飲めるかって文句を言った記憶はあるなぁ。勿体ないから、安物の方も飲んだ記憶もあるぞ。

 ちなみに高いのと安いのの味の違いは判りませんでした。だって、俺ってそんなに味覚が鋭いわけじゃないから仕方ないよね。でも、せっかくだし高い物をいっぱい飲みました。

 そういや酒だけじゃつまらんし、夕飯が量的に物足りなかったせいで腹も空いていたから夜食持って来いって言ったんだよな。何食ったか憶えてないけどさ。

 なんかグチグチと言っていたけど、文句あるなら暴れるぞってことを言ったら色々と持ってきてくれたんだよな。意外とお城の人って融通が利くもんだね。


 おっと、そういえばなんで俺はお城にいるのかまで思い出してなかったぞ。うーん、なんでだっけか? うーん、うーん……。

 ――まぁ、良いか。人間には足がついてるんだし、どこに移動したっておかしくないよな。

 自分自身気づかずにこういう場所に移動してたって可能性もあるしな。現状俺は困ってないわけだし、俺がいる場所がどこだろうとどうでもいいことだな。つまんないことを気にしても仕方ないし、二度寝でもしようかな。


「アロルド・アークス、時間だ。出ろ」


 寝ようと思ってたら、騎士団長代理だったかなんだかの人が俺を起こしに来ました。

 ああ、そういやこの人に城まで連れてこられたんだったな。

 騎士団長代理は部屋の中を見回して苦虫を噛み潰したような表情をしていますが、なんぞ不満でもあるんでしょうかね。部屋が散らかってることに文句を言いたいのかな? まぁ、トイレが面倒くさくて置いてあった花瓶の中に小便を入れたのはまずかったかなとも思います。

 でも、あれだよ。俺の屋敷のメイドは俺が部屋を汚すと掃除し甲斐がありますと言って張り切るぜ。キミもそういう風になった方が良いと思うんだ。まぁ、俺は散らかってる部屋が嫌いだから、部屋を汚す奴は好きになれないけどね。


「随分と勝手をしていたようだが、それができるのも今日までだ。今までの無法な振る舞いのツケを払う時が来たことを思い知れ」


「そうか」


 身に覚えがないんだけどなぁ。

 まぁ、俺の記憶力は怪しいし、この人の言っていることの方が正しいのかもね。


「軽口も叩けんとは余程に追い詰められているようだな」


「いや、お前と話す必要を感じなかっただけなんだが」


 おっと、なんだか騎士団長代理の目が急に吊り上がりましたよ。いや、だってさぁ、ちょっと言い訳させてくんない?


「ツケの催促をしてくるような使い走りと話すのは下々の仕事だろう。これでも俺はそれなりの立場なんで会話の相手は選ばないと権威が保てないんだ。使い走りは自分の立場に相応しい相手と話をしてくれないか? だがまぁ、ツケを払う必要があると伝えてくれたのは感謝しよう」


 おや、なんだか顔が真っ赤になってしまいましたよ。なんですかね、何か不満でもあるのかね。

 とりあえず、用件があるなら探知一号にでも話しておいてくれと思ったけど、騎士団長代理ってもしかして偉いのかしら? でも代理だしなぁ。正式だったら俺が話しを聞いてやっても良いよ。


 ――まぁ、なんとなく思いついただけで普段はまったく気にしないから別に話しかけてこられても構わないんだけどさ。でも、ちょっと俺も偉ぶりたい年ごろなので格好つけてみたんだけど、どうでしょうかね?


「いつまでも調子に乗っていられると思うな」


 そう言い残し、顔を真っ赤にした騎士団長代理は部屋を出て行ってしまいました。

 結局、何だったんでしょうね。一応、騎士団長代理が出て行っても、その手下みたいな人たちは残っているけどさ。


「あ、あのぉ、閣下……よろしければ、査問会の会場へ案内いたしますので、その、よろしいでしょうか?」


 ああ、そういやそんな話もあったね。

 俺がなんか悪いことやったんじゃないかって理由で俺のことをいじめる会だろ?

 行きたくねぇなぁ。まぁ、我慢していくけど。

 とりあえず、それは置いといて案内してくれる人たちにお礼でもあげておきましょう。なんか怯えた様子で体調悪そうだし、それでも頑張ってるご褒美ってやつ?


「ご苦労。これで美味い物でも食うといい」


 とりあえず銀貨三枚くらいあげときましょう。

 これで美味しものでも食べて体力つけて元気になってください。


「あ、いえ、それはその頂けないというか……」


 そんなことを言いながら目は銀貨に釘付けじゃないですか。

 遠慮する必要はないと思うので俺は無理やり銀貨を握らせました。すると、拒否するそぶりを見せながらも部下らしき男はそれを懐に収めました。最初からそうすりゃいいじゃんね。


「では、行こうか」


 行く先は分かんないんで案内してくれると助かるんだけど。

 俺がそんなことを思っているのに銀貨を渡した男は呆けた様子で俺を見ています。

 なんだか使えない感じの人だね。まぁ、良いけどさ。


 俺は案内されながら王城の中を進む。

 なんでだかは分からんけども城の中がピリピリしてるね。正確に言うと何故だか分からんけど、俺を中心にしてピリピリとした感じかな。戦でもありそうな雰囲気だけど、もう一回やんのは嫌だぜ。アレって結構疲れるしさ。


「こちらになります、閣下」


 あんまりいい雰囲気ではない王城の中を進んだ俺は、やがて大きな扉の前に案内された。

 扉の中の部屋にはかなりの人間の気配がするけれども、なんだろうね。お祭りか何かでしょうかね。だったら俺も混ぜてもらいたいもんだぜ。


「部屋の中におられる方々にお伝えしますので、少々お待ちください」


 え、嫌だよ。だって、みんなでなんかやってんだろ?

 俺も混ぜてほしいから勝手に中に入りますよ。というわけで扉をドーン!

 派手な登場の方が受けがいいかと思って数メートルくらいの大きさがある扉を俺は蹴り開けて部屋の中に入ります。

 いやぁ、掴みはバッチリなんじゃないですかね? 受けなかったら恥ずかしいけどさ。

 さて、部屋の中の方々の反応は――


「なんだ、随分と静かだな」


 みんな、俺を見て目を丸くしているだけで、誰も何も言いません。

 つーか、ここはなんなんでしょうかね。円形のホール状の部屋で、真ん中の辺りが低くてその周りを一段か二段高い席で囲んでいて、あと部屋のまっすぐ奥には偉そうな感じの人が何人か横並びになって座っています。

 部屋には二階部分があって、バルコニーのようにせり出した、その部分には陛下と殿下が座っていますね。観劇でもするみたいな位置だけれども少し下に来ようぜ。その位置だと何か面白いことがあっても混ざれないぜ。


「で、俺の席はどこだ? 満席には程遠いようだが、好きなところに座っても構わんのか?」


 勝手に座るような頭のおかしいことはしませんので聞いてみましたけども、誰も答えてくれませんねぇ。

 みんなシーンとしちゃってるし、どうしちゃったんだろうか? もっと元気よく騒いでも良いんじゃない? 俺はしばらくぶりに王都に帰ってこれたから、かなり元気よ。今なら何でもできそうなくらいに。

 まぁ、できそうってくらいで大概のことは無理なんだけどさ。


「……アロルド殿は中央へどうぞ」


 奥に座っている横並びの人らのうちの一人が教えてくれたので、俺の席らしい場所に向かいます。

 しかし部屋の中央とはね。みんなからの注目が凄いぜ。四方八方全方位から俺が見られるってわけか、もっと良い服着てくりゃ良かったな。まぁ、それは今度気を付けるとして、そんなことよりも俺の席は――


「椅子がないな」


 部屋の中央、みんなから見下ろされるような位置には何もありませんね。

 これってアレか? 俺に立ってろっていうのか? 若いから大丈夫って?

 なんだよコイツラ頭おかしいんじゃねぇの? 俺が主役みたいな位置なんだから、俺の場所にはキチンと椅子を用意しておけよ。


「おい、椅子を持って来い」


 とりあえず俺は目についた人に頼みました。でも、その人は頼んだ俺ではなく、周囲の人たちを見回しています。


「早く椅子を持って来い。俺は気が長い方ではないぞ」


 短い方でもないけどね。俺が頼んだ人はやはり周囲を見回していますが、横並びになっている人たちの一人が首を縦に振ると慌てた様子で椅子を取りに走りだしました。


「ついでに茶も持って来い。後は俺の朝食がまだだ」


 そして数分後。

 なんということでしょう、何もなかった部屋の中央部分には立派な椅子と机が並んでいます。

 机の上には温かいお茶と、パンと卵と燻製肉という俺の朝食が並んでいますよ。


「では、始めてくれ。俺は食べながら成り行きを見守っているのでな」


 部屋の中の皆が俺のことを凄い顔で睨んでいますが、なんでしょうかね?

 お腹が空いているなら貴方たちも何か食べたら良いんじゃないですかね?

 だって、俺の食っているものが羨ましいから見てるんだろ?

 つーか、俺のことを気違いを見る目で見てる奴らはなんだよ?

 腹が減ったらメシ食うだろ? 喉が渇いてたら茶を飲むだろ? それが悪いことなんですかね?

 俺は目の前でメシ食っている相手がいても怒らないし気違い扱いもしないんだけどなぁ。


「……では、これより先の戦においてのアロルド・アークスの行状に対しての査問会を開く」


 横並びの人らは何人かいるけど、みんなが俺に対して怒っているようだね。でも、俺は怒られるようなことをしているんだろうか?

 もしかしたらしているかもね、まぁそれくらいは分かるよ。俺は完璧な人間じゃないし、癇に障るようなことをしているかもしれないからさ。でもまぁ、なんで怒られているかのは分かんないんだよなぁ。


「アロルド・アークス。此度の戦における貴公の働きは真に見事であったことは確かなものであった。だが、貴公に帝国との内通の疑いがあることも事実。この査問会の目的は貴公を裁くものではなく、真実を明らかにするための物である。そのことを心に刻み、嘘偽りなく答えるように」


 横並びの人の真ん中にいる一番偉そうな人がそんなことを行ってきました。

 しかし、なんすかね。真実はどこかっていう話か?

 そういう難しい話は食事中にはしないでもらいたいもんだ。もっとも食事中以外は更に嫌だけど。


「では早速本題に入ろう。まず貴公がイグニス帝国第五皇子ノール・イグニスの脱走を許したという件についてだが、これに関して貴公がその手引きをしたという話もある。それについて貴公に申し開きすべきことがあるならば――」


「ごめんなさい」


 申し開きって言われても分からないんで謝ってしまいました。

 そんなにノール皇子が逃げたことが気に食わないって知らなかったからさ。いやぁ、なんだか俺も悪いことした気持ちになっちゃったから謝ってしまいました。俺だって良い歳なんだし悪いことしたら謝れますよ。

 つーわけで、謝ったんで許してください。


「う、うむ?」


 なんすかね、俺が謝ったら横並びの人だけじゃなくて、部屋の中の皆が不思議な顔になってしまいましたよ。そんなに俺が謝ったらおかしいのかね?

 俺はいつもいつでも謝る気満々なのにさ。まぁ謝った記憶があるかどうか聞かれると怪しいけど。


「ごめんなさい。俺が悪かった」


 念のためにもう一度言っておきました。

 俺としては難しいことを言ったつもりはないんだけど理解できてない人が多そうだったので一応ね。

 まぁ、二回言ってもすぐに理解できてなさそうな人が多そうだったから、俺はノンビリと燻製肉をナイフで切り分けて口に運んでいますね。いやぁ、美味しい美味しい。


「つまり、貴公はノール皇子の脱走の手引きを認めるのか?」


 すまん。今、口の中に物が入っているから答えられないんだ。ちょっと待ってくれないか。


「どうなのか答えたまえ」


「悪いが俺は食事中なんだ。話しかけられても答えられない時があることを理解してくれ。畳みかけるように話しかけられても答えられないことくらいは理解できるだろ? そういことも考慮に入れた速度で話をしてくれ」


 俺はまっとうなことを言ったつもりですよ。でも、なんか俺に質問してきた人は怒りだしてしまいました。


「ならば食事はやめたまえ! 進行の邪魔だ!」


「やめる理由はどこにある? そちらは許可をしただろう? そもそも腹が減っていたら俺はちゃんと話ができるか怪しいのでな。まともな進行をしたいのであれば、これは必須だと思うが?」


 取り上げるなら暴れますんで、その辺はご理解ください。

 で、お話があるようっすけど、俺に何か御用でございますかね。


「まぁまぁ、二人とも落ち着いてください。アロルド殿は謝罪をした。それはつまり罪を認めたも同然であり、アロルド殿は内通の事実があったということを正直に話してくださった、それで十分ではないですか?」


「何を言っているんだ? 俺は逃がしたことを謝っただけだ。他は知らんので勝手な勘違いはやめてほしいものだな」


「ほう、そうですか。ですが貴方は自分が悪かったと認めたようですが?」


「そりゃ悪いだろ。お前らが逃がしてほしくなかったものを逃がしてしまったんだから申し訳なく思う。俺の謝罪の気持ちはそこの一点に絞られてる。後は知ったことじゃない」


「いいでしょう。では、貴方が悪いと思っている事柄について焦点を絞りましょうか。謝罪をしたということは当然償いも必要だと思いますが、その点に関してはどうされますか?」


 言っている意味が分かんないなぁ。


「謝罪をして頭を下げた。これで俺の償いは終わりだ」


「それで納得するとでも?」


「納得できないのか? 俺はこれが適切だと思ったから謝った。それで終わりだ。お前らは償いの仕方について何も提案しなかったのだから俺が決めた。それとも何か? お前らは俺が謝った所を見計らい嵩に懸かって俺を責め立てるような卑怯な真似をするのか? 相手が悪いかどうか判断がつかなかった時は及び腰で相手が悪いと認めたら強気に出るというのは品性が疑われるな。そもそも、この会の目的は真実を明らかにすることだと誰かが言ったな。俺を裁く場ではないというなら、償いのあり方に関して言及するのはおかしいと思わないか?」


 つーか、謝ったんだから許せや。ぶっ殺すぞ。

 俺は謝ってきた奴は大抵許すぞ。まぁ、なんでか知らんけど俺に対して謝ってくる奴は少ないから許せたためしがないけどな。だいたい、武力行使してきて謝るってことしないからな。


「屁にも劣る空虚な理屈で埒があきませんね。とりあえずは貴方がノール皇子を逃がしたということについて申し訳なく思っているということは理解できたということで、この話は終わりましょう」


「申し訳なくは思っていないな。俺が言ったのは御免なさいだ。まぁ、終わりにすると言うなら、それで良いが」


 俺的には逃がしちゃったっていう行為を許してねっていう意味だからさ。だって、御免なさいって、相手に免じなさいってのを丁寧に言う意味だろ?

 申し訳がなく思うってのとは違うのよね。申し訳ないだと弁解の余地もないくらい悪いと思っているになっちゃうのよね。だって申しようがないわけだしさ。

 なので、俺的にはそんなに悪いと思っていませんよ。でもちょっとだけ悪いと思ってるから、許せやこの野郎って感じです。許さないと流石の俺も怒るぜ。


「……確認したいことがあるので、もう少し先ほどの話題を続けましょう」


「別に構わんよ」


 そんなに話すこともないと思うんだけどね。話すこともないのに続くとか、なんか面倒くさくなりそうだなぁ。俺としてはさっさと終わらせて屋敷に帰りたいんだけど、これっていつまで続くんでしょうかね。

 俺だけじゃなくて、部屋の中の人みんながウンザリした感じになってるみたいだし、早く終わらせてほしいもんだ。








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