思い出の味わい
「食前酒は東部ケイネンハイム大公領産の発泡ワインを用意いたしました。口当たりは軽いながらも、香りは気品高く、巷ではワインの淑女と呼ばれる品でございます」
給仕長らしき男は説明を終えるとワインの栓を開け、ワインが俺と兄上のグラスに注がれる。
給仕の女の人が部屋を出てから少しして、慌てた様子で給仕長らしき男がやってきて無礼を謝り、心を入れ替え精一杯のおもてなしすると言い、今の状況に至るわけだけれども、別に俺も兄上も不満があるわけじゃないんだけどな。
「悪くないな」
兄上が注がれたワインを飲んだので、俺も同じように飲む。
兄上は悪くないと言っているが、俺には味の違いが分からん。たぶん美味しいんじゃないかな。飲み口が軽いわりには良い匂いが口の中に広がっていくし、良いものなんだろうね。良く分からんけど。
「そうだな」
俺もとりあえず肯定しておきましょう。不味いとは思わんし。
俺と兄上からまずまずの評価を得られたので給仕長らしき男の人もほっと一安心といった様子だし、丸く収まったんじゃないかな?
「ケイネンハイム大公と言えば、お前はあの人と仲が良いようだね」
ワイングラスを手に兄上が訪ねてくる。
仲が良いのかね? 俺はそんな気はしないけどさ。
「そうでもない」
「そうか。実の所、僕は彼に嫌われていてね。どういう理由かは分からないが、ウマが合わないという奴なんだろうね」
「そういう相手もいるだろう」
俺だって相性の悪い人間は多少はいますし、仕方ないよね。
何をもって相性いいとするのか分かんないけどさ。
「僕は自分の目の届く範囲内にはウマが合う人間を置いておきたいとも思うんだが、アロルドはどう思う?」
「俺はどうでも良い」
誰と相性が良いか分からんし、今は好きでも何かあったら嫌いになるかもしれんし、そういう基準で選んでも先のことは分からんし意味ないと思うんだよね。
「そうか。じゃあ放っておこう。できるなら、弟の友人とは仲良くしたいものだしな」
なんか良く分からんけど、兄上は一人で結論を出してしまいました。まぁ、俺の方には要望なにもないから、どうでも良いんだけどね。
「あまり堅苦しい話をしていても仕方がない。料理も運ばれてきたようだし、食べながらノンビリと話すとしよう」
兄上の言葉と同時にテーブルの上に前菜の皿が並べられる。
見た目は綺麗で良いんだけど、一見しただけだと料理の名前も中身もわからないのは困るよな。
給仕長らしき男の人がなんか言っているけど、全く理解できんし、アヒルのテリーヌなんとかなんとか風って言われても訳が分からんし、何とかのゼリー寄せとか言われてもねぇ。
まぁ、何か分からなくても食えるし良いんだけどな。
「まぁまぁか」
兄上がそう言っているけれども、俺には良く分からんね。たぶん美味いんじゃない?
はっきりと美味いって言えるほど俺は自分の味覚に自信ないし。つーか、人間なんて風邪ひいたりして、ちょっと体調が変わっただけで味が分かんなくなるような不安定な味覚しか持ってないんだから。美味いと思っても、それが確かなものとは限らんよね。
だから、まぁ、たぶん美味いで良いんじゃないかしらって良いと俺は思ったり。
「南部で戦っていた時はこんなものは食べられなかっただろう?」
「まぁな」
出てくるのは麦粥が殆どだったね。パンとかは用意すんのが面倒くさいし、その割には腹に貯まらなかったしさ。
鍋に魔法で水を張って鶏肉をぶち込んで煮込みつつ、適当に野菜を突っ込んで一煮立ち、麦を突っ込んでもう一煮立ちっていう良く分からん粥を食ってた。南部は鶏肉だけはアホみたいにあったし、魔物の肉も十分だったから困りはしなかったな。
「それは中々に辛かったろう。……ところで、そんな辛い思いをして倒したノール皇子を逃がしたのは何故だ?」
別に今になると辛くもなんともないけどね。
俺が嫌だったのはクソ田舎に滞在してなきゃならんことくらいだったし。
俺みたいな都会育ちには、やっぱ都会が一番よ。土の臭いとか獣臭いのは勘弁。それだったら人間の臭いがする所の方がマシだね。
おっと、そういやノール皇子を逃がしたことについて聞かれていたっけか? 逃がした理由ねぇ……。
「理由は特に無い。ただ、逃がしてやっても良いと思い。向こうがそれを頼んできただけだ」
俺の答えを聞くと兄上はため息を吐いた。
どうしようもない奴だって言いたそうだけれども、それで構わないという雰囲気も出ていて何を考えているか判断に困るね。まぁ、何を考えていても既にやっちまったことだし、今更色々と言われても困るぜ。なんか言われても気にしないようにしましょう。
「それならそれで構わない。文句をつけてくる奴はどちらにもいるかもしれないが、どうせ口だけの連中だ。とはいえ、その口だけの連中に余計な真似をされるのは面白くない」
「余計な真似?」
「お前に対する査問会というか裁判のようなものだ。ノール皇子を逃がしたことに対する責任を追及するつもりで、ウーゼル殿下がその席を設けた。……彼もいい加減に鬱陶しくなってきたな。敵意を向け、言葉をぶつけてくるだけならば、その囀りを楽しめもするが――」
うーん、なんか俺が怒られる会みたいな感じなのかな。しかし、俺って何かしたかな?
したかもしれないし、してないかもしれない。うーむ、俺は悪いことした記憶がないけど、嫌な思いをした人がいるのかね?
だったら、謝ってやるのもやぶさかじゃないよ。ただ、謝る相手に全く非がないって場合に限るけどさ。俺悪くねーじゃんて一言でもいえるなら絶対に謝りませんよ。逆に向こうに謝ってもらおう。
「まぁ、なんにせよ、アロルドが心配するようなことはない。すべて問題なく片付けられる」
だったら良いんだけどね。全部、兄上にお任せしようかしら。
なんてことを考えていると、前菜の皿が下げられ、次の料理の皿がテーブルに置かれる。
「堅苦しい話はしたくないと言ったんだがね。どうにも雑談は苦手ですまないな」
「俺も得意な方じゃないから気にするな」
つーか、話すこと自体が苦手だしさ。
小さいころに父上にちゃんとしろって言われて、なるべくちゃんとしようとしては見たものの、俺が喋ると微妙な顔になる人もいるし、あんまり成果でなかったのよね。
「そうは言うがな。僕の方は素でこれなのだから、どうしようもない。お前と違って伸びしろがないからな」
「俺にも無いとは思うが?」
「いや、お前はまだ伸びるよ。その身にかかった呪いさえ解ければな」
呪いって何の話だろうね。どっかの誰かがそんな話をしていたし俺も聞いたと思うけど、忘れちった、テヘッ。
「お前の呪いが解けて本当の力が戻れば、状況は一気に変わるだろう。そのための準備も僕はしている」
俺は呪いにかかっているような感覚はないんだよなぁ。それに呪いにかかってても今の所は不便がないしさ。不便がないなら解かなくても良くね? ダメなのかな? ダメだったら、まぁ試しに受けてみるけどさ。
「どんな方法で解くんだ?」
「単純に解呪の魔法だよ。僕が身柄を預かっている異国人の魔法使いがとても優秀でね。そいつから色々と魔法を教わっているんだ。人間を竜に変える魔法なんかも知っているし、遠くの相手を会話する魔法も知っていて僕も教わった」
人間を竜に変えるねぇ……。
俺はそんなことしなくても人間から竜に変わった人を見た記憶があるね。どこで見たかは忘れたけどさ。
まぁ、その人も兄上が言っている魔法を教わったのかもしれんけど。
しかし、そんな珍しい魔法が使える人とこんなに関わる機会があるのは不思議な話だなぁ。まぁ、そういうこともあるか。
「ただな――、どうにも上手くいかなくて困っている。その異国人の話を聞くと世間にはレベルという物を持ち、レベルが上がると使える魔法が増えるような人間もいるらしくてな。おとぎ話の類だし、その異国人もそう言っていたが、僕がそれを異国人に対して試したところ見事に使える魔法が増えた。人間を竜に変える魔法もその類でな。それを知ってから、ひたすらにレベルを上げさせているんだが――」
まぁ、おとぎ話には真実が混ざっているかもしれないしね。
しかし、便利だなぁ。レベルってのがなんだか分からないけど、それが上がるだけで魔法が使えるようになるとか羨ましいんだけど。
「どうやら、レベルも高くなるにつれ上がりにくくなるようで、まだしばらくかかりそうだ。以前は腕の二三本折れば、使える魔法が増えたんだが、最近は四肢を引きちぎっても新しい魔法を習得する気配が見えなくてな、解呪の件に関しては期待してもらってもいいが、何時になるかは分からないことだけは理解していてほしいな」
なんか物騒な話が聞こえたけども、まぁ普通なのか?
手足引きちぎっても回復魔法でくっつけられる場合もあるし、俺も小さいころは遊んでたら、しょっちゅう全身の骨が砕けてたし、よくあるって言えばあるのかな?
偶然、この場に居合わせていた給仕の人の顔色が悪くなっているし、普通じゃないのかもね。
「キミ、僕の話を聞いていたかい?」
兄上が給仕の人に質問していますね。顔色悪くなっていたんだから聞いていたと思うんだけど、兄上に尋ねられた人は首を横に振る。
「嘘はつかないで欲しかったんだがな。別に聞かれたところで構わないが、嘘をついたことは面白くないと僕は感じるね。まぁいい、次の料理を運んでくれ」
給仕の人は逃げ出すように部屋を出ると、すぐに別の人が料理を運んできた。
「あまり血生臭い話は良くないな。少し軽い話をしようか」
兄上はそう言うと料理を口に運びながら他愛ない話を始める。
「エリアナ嬢とは上手くいっているのかい?」
「上手くいっているの意味が分からないな」
「彼女と寝たのかという話だよ。お互いに若いんだから、そういう気分になることもあるだろう?」
「ないな。兄上の方はどうなんだ? そろそろ子どもが出来ていてもいいだろう」
「僕はそっちの欲が強い方じゃないから上手くはいっていないな。もっとも最初から妻に対して魅力を感じていたわけじゃない。結婚をしていないと体面が悪かったから適当な女を見つけただけで、愛などは無いし、夫婦の営みも義務的に抱いているだけだよ」
兄上の奥さん可哀想だなぁ。夫婦生活に口をだすのもアレだから、何も言わないけど愛の無い結婚だったことをハッキリと伝えられるとかドン引きなんですけど。
「それでは跡継ぎはどうするんだ?」
一応、兄上が長男だしアークス家を継ぐんだよね。で、兄上の子供が、その次ってことになるはずだし、子供が生まれないとまずくねぇ?
「最悪アロルドの子供でも養子に取ればいい。もっとも、これから先は血統で跡継ぎなどが決まる世の中ではなくなるだろうから、そんな心配はいらないがね」
能力主義ってことかな?でも、それって俺らが生きている間は無理な気がするんだけど。
まぁ、あんまり心配することでもないか、ヤることヤってりゃそのうちできるだろ。
俺はヤることヤれそうな気配まったくねぇから無理そうだけどさ。そもそも、俺は結婚するまで純潔を守った方がいいんじゃないかなって主義に十秒ぐらい前になったから、結婚するまで童貞を守りますよ。結婚相手いないから一生童貞になりそうだけど。
――そんな感じに他愛もない話をしながら、食事の時間は過ぎていきます。
食事に関しては、まぁ美味いんじゃないのって感じ。比較対象が無いし良く分かんないんだよね、やっぱりさ。
ああ、お酒に関しては美味しいと思いますよ。東部産の十年物とか二十年物のワインがいっぱい出てきますし、エリアナさんも呼べば良かったって気がしたり。
でも、エリアナさんのお酒は酔っぱらうためのお酒だからなぁ……。ここで出されるお酒とは方向性が違うみたいだから合わないかも。食欲増進だったり口の中をサッパリさせたりとかの目的もあって出してるお酒だからあまり酔っ払われるのも店としてはまずいのかもね。
そんなこんなでたいして酔うこともなくメインディッシュ。
南部ではクソ不味いメシを酒飲んで誤魔化してたこともあったから、素面に近い状態でメインディッシュに到達したのは久しぶりな感じ。
メインディッシュとして出てきたのは肉のローストに良く分からん名前の長いソースがかかったもので、たぶん美味いと思うし、俺は割と好きよ。でもまぁ、俺は好きでも好きと感じない人はいるわけで――
「不味いな」
そう言ったのは兄上です。
給仕の人の顔色が悪くなり、慌てて皿を下げ、別の料理を用意すると言うけれども――
「肉はもういい。アロルドが食べ終わるまで待っているよ」
そう言って、兄上は給仕を下がらせました。俺はそんなに不味くないと思うんだけどなぁ。
良い肉使ってるし、ソースも美味しいような気がするし良いと思うよ。まぁ、それでも口に合わないってのはあるから仕方ないのかな?
「――やはり、あの時の肉の味には劣るな」
兄上は思い出に浸るように遠いまなざしを浮かべながら、まだ食っている最中の俺に話しかけてくる。
「憶えているか、昔二人だけで食べた肉の味を?」
「忘れたな」
いや、だって何の話か分からねぇもん。そもそも俺は兄上と一緒にメシ食った記憶すら曖昧だぜ?
小さいころは一緒に食っていたような気がするけど、二人だけで食った記憶はちょっと……。
「そうだろうな。お前にとっては取るに足らないことだろう。でもな、僕にとってはアレは人生の分岐点だった」
兄上は俺が忘れたと言っても怒ることはなく、逆に楽しそうに、そして昔を懐かしむようだった。
「昔、ずっと昔だ。お前の面倒を見ろと言われてお前に付き合った結果、夜の山で迷って一夜を明かしたあの日のことだ。飢えた僕にお前が殺した魔物の肉をくれたことがあった。そして、迷子になっていた僕らを攫おうとしたゴロツキを僕が殺し、その食料を奪った。そして手に入れた食料を二人で分けて、夜の山中で数日を過ごした」
そんなことあったかな?
まぁ、あったとしても良くあることだから憶えていても仕方ないし、忘れちゃったんだろうね。まぁ、重要なことも忘れちゃうし、取るに足らない出来事なんてすぐに忘れちゃうよな。
「僕はどうしてもあの時に食べた肉の味を忘れられない。何故だろうな、たいしたものでは無いはずなのに、あの時に食べたものと比べると全てが陳腐な味に感じる」
「空腹は最高の調味料らしいぞ」
「それはそうだろうな。確かにあの時の僕は空腹だった。だが、いくら空腹の時に食べても僕が満足する味の物には出会ったことがない。そして満たされぬ日々が続く中で僕はあることに気付く。僕の空腹は肉体ではなく精神によるものだと」
ふーん、そうっすか。俺には良く分からんね。
精神の空腹って意味が分からんしさ。お腹がすくってのは体のことだろ? どっから精神なんてもんが出てきたんだ?
「与えられたものだけを食べ、肉体的に満腹になるだけでは僕は満足できない。自分の力で勝ち取るという精神が満たされるという過程があって初めて僕の飢えは癒されるんだ。常に誰かから奪い取り自分の努力と成果を確認し、それを噛みしめる過程がないといけない。それがないと僕は満腹を感じられないんだ」
「ずいぶんとまぁ、偏食なことだ」
とりあえずメシの話だろ? 何言ってんだか分かんないけど、俺が聞いていた限りじゃメシの話だと思う。
「それは自覚している。だが、僕の偏食はアロルド――お前と過ごしたあの夜のせいだ。奪うことの喜びと力を振るうことの快感の体験。あの夜の達成感と満足感が僕を捉えている。僕のこの偏食はアロルド、お前のせいでもあるんだぞ。お前が僕を連れて山の中で迷いさえしなければ、僕はこうならなかった」
俺のせいにされてもなぁ。つーか、俺の責任かよ。
完成した自分の人間性の由来を人に求められても困るよ。そうなったのは全部自分のせいじゃねぇかな。偏食を治すのだって自分次第だし、大人になって好き嫌いをグダグダと語られてもなぁ。大人になるまでに治せなかった自分の不手際を問題にするべきじゃなかろうか?
「で、俺にどうして欲しいんだ?」
俺は皿の上の肉を切り口に運ぶ。
やっぱり美味いね。俺は出された物は文句はあっても大概普通に食える性質だし、そういう身からすると食べられないものが多い兄上は可哀想に思うね。
「どうもしなくていい。ただ、これまで通りでいいんだ。僕の言うことをおとなしく聞いて僕が満たされるのを見守ってくれていればいい。それだけで充分」
まぁ、弟だし兄上の言うことは言われなくても聞くけどね。
ただまぁ、おとなしくってのは難しいかもしんないけどさ。だって、俺が言うこと聞いてんのは、別に聞いても困らないからだったからで、不満があれば言うこと聞きませんでしたよ。それを分かってんのかね?
「僕は僕が好きなもので体と心を満たしていたい。だから、そのための協力をしてほしいんだ。お前だって、満たされたいと思うだろう?」
随分と贅沢言ってんなぁ。
王様だって毎日好きな物を好きなだけ食っていられるわけじゃないと思うし、つーかそんなに好きな物ばっか食っていても飽きると思うし、好きな物が飽きたらどうすんだろうね。なんか、現実的じゃないなぁって思う。
あと、俺に関しては別にいいです。俺は味とか分からないし、何食っても不満を言いつつそれなりに満足できるんで。贅沢は好きだけど、それにこだわってませんから。
えーと、とりあえず兄上は美食家で、俺はそうでもないってことでいいのかな? 良く分からんけどメシの話だよね? 違くてもどうでもいいけど。
俺が料理を食べ終えると、給仕の人が部屋に入ってきて、俺の前にある皿を下げる。
「デザートとお茶をお持ちします」
どうやらシメかな。結構食ったような気もするけど、そんなに食えてないような気もするし、戻ったら誰かに夜食でも作ってもらおうかな。
兄上もあまり食べてないように見えたけど腹は減ってないんだろうかね。
「――やはり満たされないな。どうにもこうにも物足りない」
だったら、好き嫌いしないで食えばよかったじゃないか。
「もっと好き勝手に獲物が取れれば良い。アロルドもその方が生きやすいだろう?」
何の話なんだかよくわからんけど、とりあえず頷いておきましょう。
「力を振るうことが肯定されるような世の中でなければ、僕らの飢えは満たされない。誰にも余計な口を挟ませることなく、自由に腹を満たしたい。僕らだけではなく誰だって同じはずだ」
それじゃ肥え太って調子悪くなるだけだと思うよ。つーか、世間のみんなはそんなにむやみやたらに食いませんから。みんな、ほどよく食べて、ほどよく幸せに、ほどよく不満足に生きているよ。
兄上も、あんまり自分を基準に考えないで欲しいよなぁ。みんながみんな兄上のようにグルメじゃないんだからさ。
「アロルド、お前はどう思う。僕の考えを理解できるか? 答えるのは呪いが解けていないお前で良い」
ん? 俺の答えですか?
ああ、うーん。正直何言っているか分かんなかったけど、兄上がここの食事に満足できていないことは分かったよ。で、満足できないから、自分が満足できるような物を出してくれる場所を作りたいって話だろ。
うん、わかったわかった。どうやら、俺は理解できているようですよ。
――でもまぁ、とりあえずデザートを食べ終わってから答えるので、それまでは保留ってことでよろしくお願いします。




