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見返りの行方


 さっさと王都に帰るために南部で残った仕事を片づけにゃならんわけだけど、どうしたもんかね。


「コーネリウス大公家は捕虜の面倒を見れるか?」


「すまないが、無理だ」


 コーネリウスさんを呼びつけて聞いてみた結果、即答でした。

 もう少し悩んでほしいんだけどなぁ。


「数が多すぎる。とてもではないが養いきれん。捕虜の引き渡しをするにしても、帝国へ通じる山脈は通行不可能である以上、捕虜の受け取りにもこれないので、この冬はこちらで預かり続けるしかない」


 だから捕虜なんか取らなくていいんだよ。

 戦争に勝ったけど、負けてるようなもんじゃん。これじゃあさ。


「飢え死にさせるとどうなる?」


「アンデッドになるのは間違いない。それを処理できるなら良いが、我々には困難だ」


 浄化の魔法が出来る聖職者なんかは俺もそんなに連れてきてないから難しいね。

 いやぁ困った。つっても、実の所そんなに困ってもないんだけどね。命の取り合いじゃない分、気楽だから。


「だったら、春まで待つしかないな」


 春になってコーネリウス山脈が雪融けすれば、帝国の奴らも捕虜の引き取りに来るだろ。

 ノール皇子が山道を破壊したせいで大人数が通れない状態も春になったら工事も出来るんでなんとかなるだろうしさ。

 まぁ、探知一号に調べさせたら、今の状況でも少人数だったらなんとかなりそうな道はあるみたいなんだけどね。でも、帝国の方に行くような予定は無いので、どうでも良いわな。


「ううむ。それまで養えるかどうか……」


 ゾンビになられると困るからしょうがないね。

 ああ、そういや、捕虜の中で話をしておいた方が良い奴がいたんだった。そいつに相談しておこうかね。



 ――で、コーネリウスさんを退室させて、俺は捕虜を呼びつけました。

 えーと、ノール皇子の近習だったとか、そういう奴ね。


「バルデンと申します」


 ああ、はいはい。バルデンさんね。名前を憶えておいた方が良いのかしら? まぁ、必要ないかね。


「俺は名乗らんが誰かは分かるだろう?」


 面倒くさいんで、これで済ませます。頷いてくれたのでバルデンさんも理解はしてくれている様子です。


「はい、面会にいらっしゃられた殿下から聞き及んでおります」


 そりゃ何よりだ。どうせ処刑だと思って好き勝手にさせていたのが功を奏したのか面倒が無くて良いね。


「そうか。では、そちらの皇子が逃亡したという話は聞いたか?」


「聞いてはいませんが、そのようなことを聞かれた場合には既に自分は逃げきっているだろうと、殿下はおっしゃっていました」


 結構前から計画でも練っていたのね。


「では、詳しい説明は省くとして、そちらに聞きたいのだが、これからどうする?」


「可能であれば、殿下の元に戻りたいと考えております」


 うーん、それは難しいかもねぇ。色々とキミらの処遇に関して困ってるわけだしさ。

 養うのも大変だし、色々と面倒くさいのが多いのもアレだよね。

 聞いた話だと捕虜にした奴らの中にそれなりに身分が高い奴がいて、そいつが威張ってるとかなんとか。

 俺の手下の冒険者連中はそういうのは気にしないんだけど、コーネリウスさんの手下とか他の兵士とか貴族相手だとビビっちゃって手荒な真似が出来ないんだよね。そのせいで、結構好き勝手やってるとかいう話だし、困るんだよなぁ。

 いっそ、皆殺しにした方が後腐れは無い気が済んだけど、俺が手を出すとウーゼル殿下が何か言ってきそうだから、ちょっとねぇ。


「俺としても帰してやりたいんだがな。捕虜の数が多すぎて難しい。減ったとしても五月蠅いのが残るとなると、こちらは厳しい対応をしなければならなくなるな」


「それはどういう話でしょうか?」


「別にどういう話というわけでもない。ただ、捕虜が減り、大人しくなれば、こちらとしても捕虜に酷いことをしようという考えは無くなるだろうということを口にしただけだ。俺が優しい気持ちになれば、捕虜の処遇が良くなるような気がしないか?」


「……それは確かに」


 分かってくれてうれしいね。

 察しが良い人は助かるぜ。俺が余計なことを考えずに済むからさ。


「俺が優しい気持ちでいられると良いな。そうすれば、お前たちもノール皇子のもとに帰れるだろうからな」


 俺がそう言うと、バルデンさんは無言で頷いてくれました。

 なんか理解したような気配を出していたけれど何を理解してくれたんでしょうね。

 まぁ、察しが良い人みたいだし、俺の気分を良くしてくれることをしてくれるんでしょう。

 一気に捕虜を減らしてくれる方法でも思いついてくれたならありがたいんだけどね。



 ――で、俺がバルデンさんと面会した翌日。


「捕虜同士で喧嘩があったみたいだよ」


 グレアムさんがそんな報告をしてくれました。

 えーと、捕虜の三分の二が寝ている間に音もなく殺される喧嘩ね。

 まったく怖いなぁ。まぁ、捕虜同士の喧嘩なんざ、俺の知ったこっちゃないから、どうでも良いってのが、俺の本音だけどさ。もっとも、俺以外の奴も捕虜同士の喧嘩なんかは知ったこっちゃないだろう。俺らは個人的な付き合いのトラブルには関わらないことにしてるんでね。そもそも、同じ国の人間同士のトラブルなんだから解決は当事者同士でやってねって感じだしさ。

 そういや、死ぬときに怨念とかあるとアンデッドになりやすいって話だけど、寝ている時に死ぬってのはどうなんだろうね? 怨念とか抱く暇も無いからアンデッドにはなりにくいと思うんだけど。


 まぁ、出たら出たなんとかすりゃ良いか。

 それよりも、捕虜が勝手に減ってくれたのは有り難いぜ。五月蠅い奴も死んだようだし、管理がやりやすくなると思うけどどうだろうか?


「捕虜は減ったのだから、これで南部でも面倒を見れるだろう?」


「ううむ、不可能ではないと思うが……」


「可能にしてもらわないと俺が困るんだがな。適当に荒れ地の開墾でも山道の復興でもやらせておけばいいだろう」


 塀の中に閉じ込めてメシだけ食わせておくのも生産的じゃないし、数が少なくなって管理が出来るようになったんだから、ガンガン働かせて自分の食い扶持くらいは確保させようぜ。


「確かに南部の荒れ具合を考えるなら、人手はいくらあっても足りないが、捕虜の管理の手間を考えるとだな……」


「やるまえから考えていても仕方がないだろう。とりあえず、やれ。管理が手間だったら捕虜を減らしても構わん。数が少なくなったからアンデッドになったところで、処理は可能だ」


 とりあえず、春までには山道を開通させてもらいたいもんだね。

 そうすりゃコーネリウス山脈を通って、帝国に捕虜を返せるしさ。

 後は返すまでは捕虜なんかは安価な労働力として使いたいところだな。メシだけ食わせてれば良いだけだし、給料を払わなくて良くて使い潰しても、まぁしょうがないで済む労働力って貴重だしな。問題が起きたら処分すりゃ良いだけってのも使いやすくて良いよね。


 さて、後はもうコーネリウスさんに丸投げすりゃ良いだろ。

 捕虜が少なくなったから、一人一人に対する処遇は良くなるだろうから、運が良ければバルデンさんも生きてノール皇子の所に帰れるだろうしさ。まぁ、死んじまってもノール皇子は何も言わないような気がするんだけどね。でもまぁ、一応手下らしいし生き残ってりゃ、多少は嬉しいだろ。


 とりあえず、これで捕虜問題は俺の手を離れて片付きました。片付いてなくても、片付いたということにしようぜ。後は金だけ出すから南部の人間が好き勝手にやってくださいって感じ。


 さて、他には何かあるかね?

 無いと良いんだけどって思ってたら、グレアムさんがやってきました。


「ちょっと、相談があるんだけど良いかい?」


 良くないんだけどな。しかし、グレアムさんはそんな俺の気持ちを無視して人を連れてきていました。

 せっかく来た人を追い返すのも可哀想だし、会ってあげようかな。そのついでに相談も聞いてあげましょう。


「聞いてやろう」


「話が分かる奴はありがたいねぇ」


 グレアムさんはそう言うと、部屋の外にいた人に声をかけ部屋の中に招く。

 入って来たのは四十代近いように見える女性だった。

 まぁ、それだけで何となくどういう頼みなのかは分かる。グレアムさんの女性の趣味にピッタリと当てはまりそうな年上の女性だし、なんか未亡人くさい陰気さもあるしさ。


「こちらの女性はとある男爵夫人でねぇ。可哀想なことに旦那さんと息子さんが戦で死んでしまったので困ってるらしいのよ。子どもは娘さんしかいないとかでねぇ、娘さんには領地の継承権が用意されてなかったみたいだし、このままだと旦那さんの物だった領地とかも召し上げられてしまうとかで路頭に迷いそうなんだってさ」


 そんなの俺の知ったことじゃないんだよなぁ。

 母娘で仲良く修道院にでも行って慎ましく暮らしてください。


「こんな美しい女性達をそんな可哀想な目には合わせられないと思うんだけど、なんとかならないかねぇ?」


 ならないんじゃない? 知らんけど。

 俺としては完全にどうでも良い気分になっていたのだけれど、そこで男爵夫人が頭を下げて訴えかけてきた。


「どうかお願いします、閣下。わたくしの実家も此度の戦で大変な被害を受け、わたくしたちへの支援は出来ないと申しております。このままでは娘共々、領地を追われ修道院に入るしか……。わたくし一人ならば、それも構いませんが、娘はまだ若く、そのような生活をさせるのは忍びなく――」


「神に仕える道が嫌というのを俺に伝えるのはどうかと思うがな。俺のそばには聖職者もいるんだが?」


 カタリナが身近だけど、冒険者連中の中には僧侶あがりの奴も多いからね。そういう奴らがいるのに修道院に入るのは嫌とか言うのはどうなんざんしょ? まぁ、俺は入りたいとは思わないから気持ちは分からないでもないけどさ。

 おや、微妙に顔色が悪くなってますね。具合が悪いなら帰ってもらっても良いんだけど?


「あんまりイジメないでやってよ、アロルド君。俺の顔も立てて、ちょっと頼むよ」


「俺がお前の顔を立てると、お前は別の所を立たせるんだろう?」


 まぁ、だいたいどういうことなのかは分かるよ。

 名前は知らんけど、男爵夫人も悪い男に捕まったもんだ。グレアムさんは年増好きだからなぁ。頼みを聞いてやる代わりに一発アレコレって話だろ。

 もしかしたら、既に済んでいるのかもしれないな。だとしたら、なんとかしてやらんと可哀想かな。


「まぁいい。俺は知り合いの下半身事情には興味がないんでな。それよりも、そちらの御婦人が何を望んでいるのか聞いておこう。知り合いが色々と世話になったようなんで、その礼くらいはしてやってもいい」


 俺は年増は好きじゃないんで、お礼は良いや。


「じゃあ、アロルド君が娘さんの後見役になってやってよ。で、その娘さんが領主に慣れるように手助けをしてやってあげるのが良いかもなぁ、なんて」


 グレアムさんが提案してきて、男爵夫人さんも頷いている。

 女領主ねぇ、それって大丈夫なのかしら?


「女を領主にして良いのか?」


「前例がないわけじゃないみたいだし大丈夫じゃないかねぇ。爵位を持ってる女性だっていたしねぇ」


 過去形なんだな。俺は貴族事情とかどうでも良いから、全く知らんのだけど。

 でもまぁ、知らんでもいいや。昔がどうとかは俺には関係ないしね。


「後見役にはなってやってもいい。そちらの御婦人の娘さんが成人し、何の問題も無く領地経営が出来るようになるまで、ちょっかいを掛けてくる奴らをなで斬りにしてやるくらいは、まぁ良いだろう」


 個人的には女の人が領主とか、それに準ずる地位になるのはあまり良いとは思えないけどね。

 別に女の人を差別するわけじゃない。能力で言えば、エリアナさんなんかは領主とか問題なく務まるだろうしさ。でも、そういうのをやるのは時代が早いんじゃないかな?

 どんなに頭が良くて事務仕事とか内政が得意でも、首を落とされたら終わりだし、話し合いよりも首を斬り落とした方が楽なのが今の時代だからなぁ。

 偉い人ってのは、なんだかんだで暴力を振るう能力が必要なんだよね。話し合いで済むのはそうしたほうが楽だからで、暴力を振るう方が楽だったら暴力を振るうよ。

 女の人は男に比べると暴力に対して抵抗がある感じだし、ったられたが日常茶飯事の今の時代に組織とか頭はキツイと思うね。

 もしも、女の人が領主とかやれるとしたら、もう少し平和な時代じゃないと無理だと俺は思うな。それか暴力とか力技が疎まれ、人死にが出るのが忌避される世の中にならないとさ。

 まぁ、そういう不利を抜きにして何とか出来る才能があるんだったら良いんだけどね。俺は娘さんに会ったこともないし、会う予定もないから知らないで終わるだろうけど。


「とりあえず、俺の方はこれ以上話すことは無いな。後見役となった以上は多少、俺の言うことも聞いてもらうことになるだろうが、それについては追って伝えるので待っていてくれ」


 まぁ、細かいことを決めるのは俺じゃなくて、エリアナさんだろうけどね。


「いやぁ、悪いねぇ。面倒事を頼んじゃってさぁ」


「このご恩は忘れません。閣下」


「忘れてくれても構わんがな。そうしたら俺もすぐに手を引けるんでな」


 もういいんで、さっさと出ていってください。

 出来れば早々に恩を忘れてくれりゃ、俺も気を遣ってやる必要も後見役をやってやる必要も無いんで楽だし、そういうことも頭に入れておいてくださいね。

 そんなことを言ったつもりなんだけど、男爵夫人さんは恐縮した様子で頭を下げたまま退室してしまいました。グレアムさんがその後に続いて部屋を出たので、しっぽりとヤることヤるんだろうね。

 俺は年増に興味がないし、結婚するまで純潔を守ろうかなとか最近思うようになってきたから羨ましいとかいう気持ちは全く無いんで、どうでもいいことだな。


 この時はそれで終わったと思ったけど、よくよく考えてみるとアレだよね。

 グレアムさんが他の年増に手を出している可能性は少なくないわけで、その人たちも娘さんとか息子さんがいたりするよね。

 そういうのを俺は翌日になって気づいたわけです。気づいたって言うより気づかされたって感じかな。

 いやぁ、来るわ来るわ。未亡人やら何やら、可哀想な身の上の女の人達がさ。その人たちから、もうずっと話を聞かされ続けるわけですよ。


「主人が卑劣な帝国兵に命を奪われ、残されたのは幼い息子だけで――」

「お腹の子とどうやって暮らしていけば良いのか……。安心して出産できる場所もなく――」

「このままでは夫の兄弟に領地を奪われ、私と息子は家を追われて――」

「娘を側室にしていただければ、私達も安泰なので――」


 うん、色々な人が色々と言ってきて面倒くさいね。

 みんながみんな、いちいち俺の知り合いの紹介でやってくるから、俺も話聞かなきゃならんのだよね。


「頼りにされるのは良いことよ。相手にされないよりはね」


 エリアナさんはそんなことを言いながら、後見役になる見返りやら何やらをまとめています。ノール皇子が逃げた件には関しては色々と文句がありそうだったけれども、許してくれました。

 エリアナさんはなんだかんだで甘いからありがたいぜ。俺のやることには基本的に文句言わない方向性みたいだしさ。


「とりあえず、しばらくの間は領地の取り仕切りに関してはアロルド君に伺いを立ててからということにしましょう。緊急の事態で即応性が必要な場合は南部のコーネリウス大公家が面倒を見るという点もつけ加えてね」


「俺は何でも構わんよ」


 エリアナさんの好きにやってくださいって感じだな。

 まぁ、そのせいで俺の仕事が増えることになるのは嫌だけどさ。


「他にも、今回の件で当主とか跡継ぎが死んじゃった家はそれぞれが同盟を組んで互助体制を作るようにも提案しておくわ。それの監督役もコーネリウス大公に頼むことになりそうだけどね」


 別に良いんじゃないかね。コーネリウスさんの調子が悪くなりそうだけどさ。

 あの人って見た感じは物語の騎士みたいに格好いいけど、中身はクソヘタレだからなぁ。揉め事が起こったら、たぶん泣くよね。

 まぁ、良い大人が泣いても、俺の心にクるものは何も無いから、どうでも良いんだけどさ。


「後はアロルド君が後見役になっている家の持つ領地には必ず、冒険者ギルドの支部を置いて、冒険者の活動に関して可能な限りの支援を行うとか、ギルドが関わっている品物とかにかかる税金を減免するとかかしら? できれば、税を払わずにギルドの活動の自由を認めてもらいたいんだけど、それをすると領主の収入に大きな影響が出るし止めておきましょうか」


 俺に言っているのか、自分で結論を出したのかどっちだ?

 俺に聞いているなら、答えは期待しないでほしいな。全く聞いてなかったしさ。

 とりあえず、聞いている風を装って誤魔化しておきますか。


「好きなように進めてくれ。問題が起こったら、その時々に応じて処理すれば良いし、問題処理は俺の得意分野なので、造作もない」


 今までの経験から考えると俺が出れば大抵の問題は片付くんだよな。切った張ったの揉め事になることが殆どだけど、そっちの方が俺としては面倒が無いし、手早くて良いよね。


「頼りになる人って素敵よ。それが荒事方面であってもね」


 頼りになる男なのね、俺って。実感は全く無いんだけどね。

 まぁ、エリアナさんみたいな美人に頼りにされるのは悪い気がしないね。なんかあっても、俺に任せてくださいって感じで調子に乗っちゃいそうだね。

 つっても、まぁ程々で頼むたい気持ちもあるね。やっぱり、面倒なのは嫌だしさ。でもまぁ、俺がそんなことを願っても上手くいかないのがいつものことなんだよね。


 そんな予感はすぐに現実のものとなってしまったわけだしさ。


「アークス卿、頼むから勘弁してくれ」


 エリアナさんと話をしてから数日後、コーネリウスさんがやってきました。


「私も夫を亡くした女性達や、その子供たちは可哀想だとは思うが、貴公が彼女らに継承権を認めるのはマズい」


「何がマズいというのだ?」


 南部のメシが不味いのは分かるけど、可哀想な女の人を助けるのがマズいってのが良く分からんね。


「貴族の土地の管理は王家の仕事でそれをこちらで行うのは越権行為も甚だしい行為なのだ。いやまぁ、地方に土地問題に関して、王家は口出しせずに大公家が解決するのは慣例であるから、問題が無いと言えば無いのだが……」


 問題があるのか無いのかどっちなんだよ。面倒くせぇなぁ。


「何が言いたいのか分からんな。俺は察しが悪い方なんで、ハッキリ言ってもらわねばな」


「ううむ、実はそのなんだ、南部の諸侯貴族の間で此度の戦の褒賞はどうなっているのだと話が出ていてな……。敵国に侵略したわけでは無く、略奪が出来たというわけでも無い。金も物も出ていくばかりで、国を守れた以外に手に入れたものは無いという結果に不満を募らせている者達も多く……」


 俺も何も貰っていないような気が済んだけど。

 まぁ、エリアナさんとかが上手く稼いでくれていたみたいだから結果的には儲かったみたいだけど、戦に勝ったことに対する直接的な報酬は無いね。


「見返りも何も無かった者達が、此度の戦で当主が戦死した家の領地を生き残った家で分配してはどうかという話も上がっていてだな。貴公が後見人となった者達が持つ領地やらを分配する話になっていたのだ」


「そうか」


 なんか、コーネリウスさんがビビッているように見えるのはなんだろうね。

 別に俺は怒ってはいませんよ。お金に余裕がない時にタダ働きは嫌だってのは良く分かる話だしさ。お金に困ってない俺ですら、タダ働きはちょっと嫌な気持ちになるし、それを考えたら、正当な持ち主不在の物なんか盗っても良いんじゃねって気分になるよね。


「支出分を取り戻したいという気持ちは分かったが、その領地の分配の話に俺が関わっていないのは何故だ?」


 俺に話すのを忘れてたって話なら別に良んだけどさ。


「いや、それはその……」


「こちらもそれなりに金を使っているのだから、その話に一枚噛んでも問題は無いだろう?」


 まぁ、俺は土地とかいらんけどね。そんなんより現金の方が面倒が無くて良いんだよなぁ。でもまぁ、貰えるものを貰えないというのは面白くないね。


「最も働いたものが最も多くの取り分を得るのが平等だと思うが、どうだ?」


 貰うとなったらいっぱい貰いたいね。よくよく考えたら、俺って結構頑張ったしさ。支出も多かったし、一番儲けたけども払った分も多いんだよね。


「それは私の判断するところではないので何も言えないのだが……」


「では、俺が判断しよう。結論は単純だ。俺の今回の働きに対する報酬を求めるなら南部全てを貰う必要がある。それが俺の判断だ」


 冗談のつもりで言ったんだけど、コーネリウスさんの顔色が悪くなってしまってますね。

 南部なんて田舎なんかいらないんだけどね、俺は。代わりにお金を寄越せよって気持ちです。


「戦に勝ったことに対する見返りならば、俺はこれくらいを要求するが、払えるわけもないだろうから我慢しているわけだ。俺が我慢しているのに、お前らは平気な顔で見返りを要求するのか? お前らが我慢しないというならば、俺も我慢せずに南部を貰うだけだが、こういう場合はどうするべきだろうな?」


「そ、それは力尽くで奪うというのも考えに入れているということで……?」


「口で言って払わない奴は、殴って払わせるのが依頼主に対する冒険者の正しい態度だと思うがな」


 俺も一応冒険者だからね。コーネリウスさんが知っているかどうかは知らんけどさ。


「確かにアークス卿の言い分も理解できるが、南部諸侯貴族も戦費でかなり苦しく、褒美も何も無い現状では不満がたまるばかりで……」


「だったら、王家に陳情でもするんだな。払ってくれる保証はないが、南部の人間同士でこそこそと戦費を回収しようとするよりは俺の心証は良いぞ。そもそも、俺はお前らから南部を守ったことに対する報酬を貰っていないということも忘れずにな」


 ぶっちゃけると、完全に忘れていたけどね。別に金に困ってるわけじゃないから、積極的に取り立てはしないよ。まぁ、お金ないみたいで可哀想ってのも取り立てしない理由の一つだけどさ。


「俺はお前らが可哀想だから取り立てをしないでいてやっているんだ。そのお前らがもっと可哀想な奴らを食い物にしようとしているのを見ると、俺の同情心に揺らぎがしょうじるかもしれないということを理解しておいた方が良いぞ」


 何て言うかね、旦那が死んだ貴族の未亡人とか親が死んだ坊ちゃん嬢ちゃんから物を奪うのは見ていて気持ちが良いもんじゃないのよね。可哀想な人をさらに可哀想な目に合わせるのは良くないような気がしてきたわけです。

 可哀想な人を可愛そうな目に合わせる奴を俺は可哀想とは思えないんで、たぶんっちゃうし、そういうことはしたくないんで気をつけてくださいってことを言いたいわけですよ、俺は。


「いや、だが、しかし、そうなると他の貴族になんと言えば……」


「それを考えるのは俺の仕事か? 違うだろう、これはそちらの仕事だ。南部の貴族のまとめ役ならば、きちんと言うことを聞かせろ。別に難しい話じゃない。俺が言いたいのは、お互いが嫌な思いをしなくて済むようにしようというだけだ。それぐらいなら誰にだって出来るだろう?」


 俺はちょっと自信が無いけどね。他人の気持ちとか良く分かんない時あるしさ。でも、努力はしてますし、キミらも努力しようぜってことよ。


 コーネリウスさんの顔色がどんどん悪くなっているけど、体調には気をつけて欲しいね。休んでも良いけど、俺の言いたいことをみんなに伝えてからにして欲しいもんだ。

 まぁ、コーネリウスさんには色々と世話になっている気もするから大切にしてあげるとしよう。困ったことがあったら助けてやるくらいの事はしてやろうかね。俺だってそれくらいの人情はあるしさ。



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