表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
約束守りの図書館令嬢  作者: 北乃ゆうひ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/66

29冊目 ライブラリア、ティベリウム、エントテイム

すみません、予定外の外出で投稿が遅れてしまいました

1話更新になってから、意図せず更新タイミングが不安定になっていて申し訳ないです

一応、ストックがある限りは毎晩更新予定のつもりなので、引き続きよしなにお願いします٩( 'ω' )و


 デートから数日が経ち――


 久々に本を読みながら部屋でのんびりとすごしていると、ドアをノックしてエフェが入ってくる。


「お嬢様、隠し部屋に公爵閣下からお手紙が」

「ありがとう」


 本にしおりを挟んで閉じると、エフェから手紙を受け取って開封する。

 内容としては、食事と買い物に付き合ってくれたお礼がメイン。


 それから――


「エフェ、フィンジア様からお茶会に誘われたわ。来週の光の日よ。

 サラも一緒に連れて行きたいから、ミレーテとすりあわせしておいて」

「かしこまりました」


 エフェは私付きであるというのは周知の事実。

 それもあって、直接サラと接触すると、色々と面倒事になりやすい。


 だからエフェとミレーテの間に、信用できるメイドや使用人を一人挟んだ上で、伝言や手紙で情報の共有をしている。


 今回の件も、エフェ→他のメイドや使用人→ミレーテの順に情報を回して、サラへと届くようにするのだ。


 それを受け取ったサラは当日になったら、何かの理由を付けてこちらへとやってくるだろう。

 まぁ、パーティの一件でフーシアのやり方に腹を立てているというポーズが取れるようになったから、私の部屋へと来やすくなったとは言っていたけど。


 それに、エフェとミレーテ。それから領書邸と、王立図書館の双方の協力によって、私とサラの普段着やパーティドレスのなどもあちこちに隠させてもらっている。


 なので、着の身着のままどちらかの図書館へと飛び込んでも、着替えることが可能だ。


 上手く連絡が取れれば、ケルシルト様やエピスタンのお屋敷に匿ってもらうことだって出来る。


 とはいえ、エピスタンの家はまだ怖いかな。

 公爵家はケルシルト様が当主なのでいくらでも融通がきくだろうけど、テーメーズ家は、別にエピスタンが当主というワケじゃないしね。


 エピスタンが協力的でも、その家族がどう思うかが分からないので、怖いは怖い。

 どこかのタイミングでテーメーズ伯爵には、ちゃんとご挨拶に伺った方がいいかもしれないなぁ。


 一応、この間のパーティの時、ケルシルト様へ挨拶にきた伯爵とはご挨拶させていただいたんだけれども。あの場はあくまで顔合わせ程度。お世話になるかもしれないと考えるなら、別途に挨拶は必要だろう。


 なにはともあれ。

 パーティの一件以降、最悪の場合の逃走手段や身を隠す手段を少しずつ用意している。


 最悪な時の最終手段なんてモノは使わないに越したことはないけれど、ありもしないライブラリア家の利権なんてものを狙って、フーシアを利用する輩が出てくる可能性も十分あり得るからね。


 今読んでいる手紙にも、いくつかの家の不穏な動きまで記してくれている。

 ケルシルト様は随分な心配性らしい。


 手紙を封筒に戻し、引き出しに閉まってから、読んでいた本に手を置く。


「この本に記されているコトをちゃんと読み取れるのなら、うちの密約利権なんてモノ、他人が手にしたところでどうにもならないんだって分かるだろうに」

「分からないから手を出してくるし、成功失敗問わず結末を想像できないのでは?」

「エフェも結構辛辣よねぇ」


 でも、実際はそうなんだろうな。


「それではミレーテに連絡をしてきますね」

「ええ、お願い」


 エフェが出て行ったのを見送ってから、私は本を開く。

 何度も読んでいる本だけれど、改めて読み直したくなった本だ。


 図書館でも本屋でもいいんだけど、貴族だろうが平民だろうが、手を出しやすく、そう高くない値段で購入できる建国の歴史書。

 これを読んでいれば、建国の際に王家とライブラリア家でどういうやりとりがあったのか、多少は書いてあるんだけどね。


 密約の詳細な内容こそは書いてないけど――

 かつてエントテイム王国は、賢者の国と呼ばれるライブラリアの領土に踏み入り、傘下に入れようとした。

 ライブラリア側は争いを望まず、傘下入りを受け入れた上で、知恵の収集だけはさせて欲しいと言ったのだ。


 その際に、ただ知恵を収集するだけでなく、その集めた知恵を貸すようにとエントテイム側は返した。


 それに対してライブラリアは、我が家と我が家が集めし知恵を守り続けてくれるのであれば、こちらはその知恵を貸し与えようと約束した。


 そうして密約を結び、ライブラリア家がそれを守り、国に貢献し続ける限り、王家はライブラリアを守るという運びになった。


 今もなお、ライブラリア家は尽力しているからこそ、王家はライブラリアを守っているという文言だって歴史書の中にはある。


 まぁそれを密約利権とか言い出している輩がいるっぽいのは聞いたことあるから、読んだ人でも、理解には至らないヤツはいるのだろうなぁ……とは思う。


 ちなみに、ケルシルト様の家――ティベリウム家についても、同書籍に記されている。


 元々、ティベリウム領とその周辺の一部はティベリウム王国という土地だった。

 国土は小さくとも、周囲がうらやむような裕福さで国民がみな満たされているような国。


 当時、エントテイム王国は、国土を広げようと周囲の国へ交渉や侵略を多くやっていたそうである。

 その時、ティベリウム王国に対して侵略に近い形を取ろうとしていた。

 

 それを事前に察知した当時のティベリウム王が、先制して交渉を持ちかけてきたらしいのだ。


『国土が欲しいならうちの国をそちらに加えても構わない。

 自分たちも、そちらの国のいち貴族になるコトに問題ないし、何なら国を治めて富ませるコツなどはいくらでも教えてやる』


 ……この下り、読むたびに、わりと正気を疑うんだけどね。

 当時のティベリウム王は、どこまで考えてこの提案をしたのやら。


『我々は元々怠惰な一族なのだ。統治することにもう疲れたし面倒くさくなっていたところだから、エントテイム家にうちの国も任せる。

 ただし、エントテイム家に統治を任せらていられないとティベリウム家の人間が判断した時は、容赦なくエントテイム家を潰して国を乗っ取る』


 統治すんの面倒くさくなった――ってなんだよ、と思わなくもない。


 ただ、後半の部分に関してはなんとなく、ケルシルト様も言いそうだな……って感じる辺り、彼はまさしくティベリウム家の人間なのだろう。


『そのような関係を作るコトにためらいがないのであれば、友誼(ゆうぎ)と密約を結ぶとしよう』


 どのような内容の密約を結んだのかは分からないけれど、エントテイム王国はその提案を受け入れて、ティベリウム王国を傘下に治めた。

 そして、ティベリウム家は公爵家となったワケだ。


『エントテイム家が密約を守り続けるかぎり、ティベリウム公爵家はエントテイム王家を支え続けてくれるだろう』


 ――歴史書にはそんな文言が入っている。


 このせいで、王家はティベリウム家に弱みを握られていて、国の実権を握っているのはティベリウム家だ……などと言う人もいるらしい。


 ようするに……事実はさておいて自分にとって都合良く歴史や裏事情を解釈して、色々とゴネたいのだろう。


 ライブラリア家にしろ、ティベリウム家にしろ、当主である私やケルシルト様から、家を奪い取ったところで、その後、密約を果たすことは不可能だ。


 血筋がどうこうという話ではなく、私やケルシルト様は、密約ありきの教育を受けてきたというのが大きい。


 密約との関わり方、扱い方、それに伴う王家との関係性と付き合い方。

 そして、ライブラリアであれば『大図書館』の継承のような、そういう特殊事情の理解。


 それらが一つでも欠ければ、密約は果たせない。


 故に、お父様はどこまでいっても当主代行であり、中継ぎである。

 お父様には、それらが欠けているし、そして欠けていることに気づいていない時点でダメダメである。


 まぁそうでなくても、密約利権なんてモノに目が眩んで色々画策している連中に一番足りてないのは危機感だけどな。


 ライブラリアとティベリウムが密約を結んでいる相手は誰だって話だ。

 王家だぞ、王家! エントテイム王家サマだ!


 自分たちの行いは、王家へケンカ売ってるんだって自覚できてない連中、結構やばいと思う。


 密約利権とやらほしさに、うちやティベリウム家を攻撃した時、一番腹を立てるのは誰かって視点が欠けすぎてるっていうのはどうよ。


 それに、バカが変に暴れすぎると、ティベリウム家が怒りかねねない。

 歴史書の記述と、ライブラリア家視点でティベリウム家の密約について考えれば、今もなお国を乗っ取るくらいのことは出来そうだし。


 そうは言っても――エフェじゃないけれど――、そういうところまで想像ができない人たちは色々とやらかすワケだ。


 だから根回しして叩き潰す為に動かないといけない。面倒くさいけどね。


「お父様とフーシアと……」


 以前、エフェに調査を頼んだフーシアの人間関係。

 誰かが余計なことを吹き込んだのか、その調査ももうすぐ終わるようだし……。


「まとめて解決できれば、それに越したことはないのだけれど」


 私は小さく嘆息して、本へと目を落とす。

 気がつけば余計な思考は端へと追いやられ、意識は本の内容へと沈んでいくのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ