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【解放のゴーレム使い】~ロボはゴーレムに入りますか?~  作者: すぎモン/詩田門 文【聖ドラ改稿中】
第5章 ルータス王国奪回編

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第79話 獣達の死闘~本当にこれでいいのか?~

 この世界には、月が3つある。


 その全てが雲に覆い隠された、暗い夜の出来事だった。




 帝国軍の占領下にある、元ルータス王国の首都エラン。


 その外壁南側を(しょう)(かい)していたGR-1〈リースリッター〉が、コックピットブロックを撃ち抜かれた。


 パイロットは即死だ。


 司令部の広域魔力レーダーは、捉えていた。


 狙撃が行われたと思われる瞬間に発生した、強力な魔力反応を。


 エランから、15km(キロ)も離れた地点だったこと。


 敵の狙撃手と思われるその魔力反応が、急速に離脱していったこと。


 それらを理由に、レクサ・アルシエフ将軍は追撃を断念した。




 同じ夜の明け方。


 今度は都市の東側を、慎重に警戒していたGR-1がやられた。


 またもや操縦席を、正確に撃ち抜かれて。


 やはり急速に、レーダーレンジ外へと離脱していく敵の狙撃手。


 今回は、データベースとの照合に成功した。


 敵機の正体は、XMG-3〈サジタリィ〉。


 かつて帝国軍に使役されていた戦闘奴隷、イースズ・フォウワードの機体だ。


 城塞都市ダスカンでの戦闘において、アシュトン・マーティーンが撃破したとの報告をレクサは受けていた。


 しかしアシュトンから、「機体は大破させたが、パイロットは死んでいないかもしれない」とも聞いていた。


 イースズは反乱軍の中でも、最大級の脅威とされている操縦兵の1人。


 (とど)めを刺せなかったのは、痛かった。


 だがアシュトンもイースズから機体右腕を潰されており、やむを得ない状況だったのだろうとレクサは判断した。




 レクサは都市防壁外での哨戒を、やめさせた。


 (しゃ)(へい)(ぶつ)の無い平地で、〈サジタリィ〉を相手にするなど自殺行為に等しい。


 狙撃砲の(まと)になるだけだ。




 今のところ、イーグニース共和国軍本隊が接近している様子はない。


 これ以上無駄に哨戒機を出しても、犠牲が増えるだけだろう。


 帝国軍は(ろう)(じょう)しながら、平地を進軍してくる連合軍を砲撃によって減らせばいい。


 最終的にはエランの都市防壁内におびき寄せて、市街戦に持ち込む。


 充分な物資を貯めこんでいる帝国軍にとっては、その戦法がベスト。




 しかしそんなレクサの判断をあざ笑うかのように、夕刻には3機目が犠牲になった。


 やられたのは帝国軍の最新鋭機、GR-3〈サミュレー〉。


 レクサを驚かせたのは、その狙撃方法。


 都市防壁を貫いて、壁の裏に隠れていた機体を撃ち抜いたのだ。


 イースズの技能なら、それくらいの芸当は想定内。


 しかしレクサは、「反乱軍はその選択を取れないはずだ」と読んでいた。


 反乱軍の(はた)(がしら)となっている、エリーゼ・エクシーズ女王。


 数々の修羅場をくぐっているとはいえ、彼女はまだ16歳の少女に過ぎない。


 自分の故郷を破壊しながらでも、帝国軍を撃退する。


 そんな非情な選択を、取れるとは思っていなかった。


 エリーゼを甘く見過ぎていたことを、レクサは反省する。




 帝国軍内には、動揺が広がっていた。


 誰もが皆、超長距離からの狙撃に怯えている。


 次は自分の番でないことを、戦女神リースディースに祈るばかりだった。




 そして、さらに翌日の早朝。


 信じられないことに、今度は1発の砲弾で2機まとめてだ。


 防壁より1ブロック内側の道路にいた、GR-3が1機。


 さらに1本向こうの道路にいたGR-1が、まとめて狙撃された。




 都市防壁。


 建物を2(むね)


 GR-3。


 建物を1棟。


 そして、GR-1の順で貫いた砲弾。




 ――このままでは、どこにいても殺される。




 (じょう)()(いっ)した狙撃に、帝国兵達の恐怖は爆発した。




 10機のGR-3が待機命令を無視し、飛び出してしまったのだ。






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






『戻れ! お前ら! そのまま突き進んでも、(まと)になるだけだぞ!』




 レクサは魔道無線機越しに帰還命令を下すが、それに応える()()りはない。


 操縦兵達は、恐怖で正常な判断力を失っていた。


 10機のGR-3は、(くる)った(いのしし)のように突進する。


 イースズが潜んでいると思われる、北の山岳地帯へと向かって。




「やむを得ん。アシュトン、お前も行け」


「ダスカンの時のように、陽動ではないのか?」


「その可能性はあるが、このままにはしておけん。GR-3が、10機もまとめてやられては大損害だ」


「確かにな」


「それに陽動だった場合に備えて、私がここに残る。私以外にフォウワードをやれるのは、お前の〈ファイアドレイク〉だけだ」


「わかった」


 了承を簡潔に告げ、アシュトンはマシンゴーレムのドックへと向かう。




 建物2階にある司令室の非常階段から外に出ると、階段を降りず()(すり)に足をかけた。


 そのまま大きく(ちょう)(やく)


 建物の屋根を足場に、エランの空を駆け抜ける。


 普通の兵士が走ってくるよりも(はる)かに短い時間で、アシュトンはドックへと到着した。




 1番奥にある愛機、GR-6〈ファイアドレイク〉。


 その近くへと、早足で(あゆ)()るアシュトン。




 ベースであるGR-3よりも人工筋肉の量を増やし、重厚さを増した四肢。


 装甲板も形状が変更され、丸みを帯びている。


 女神の使徒セナ・アラキが考案した、高速機動時における風の抵抗を軽減する形状を採用しているらしい。

 

 その結果〈ファイアドレイク〉は、GR-3の鎧武者じみたシルエットから人型の魔物を連想させる(たい)()へと変わっている。


 頭部は人型というには前後に長く、リザードマンや竜人のようなイメージを抱かせるに至った。


 〈ファイアドレイク〉の愛称は、そこから来ている。


 〈ファイアドレイク〉はアシュトンを見下ろし、こう問いかけた。




 「お前は本当に、これでいいのか?」と。




 スピリット()アシステッド()インターフェース()を採用していない〈ファイアドレイク〉が、勝手に喋るはずもない。


 聞こえたのは、アシュトンの内なる心の声だったのかもしれない。




「ああ。こうするのが、1番いいんだ」




 視線を床に落とし、アシュトンは(みずか)らに言い聞かせる。




 彼は迷いを振り切るかのように勢い良く跳躍し、〈ファイアドレイク〉のコックピットへと飛び乗った。






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






 〈ファイアドレイク〉の(ほう)が、GR-3よりも遥かに足が速い。


 アシュトンは、独断で飛び出したマシンゴーレム兵達に追いついた。




『お前達。(あと)は俺に任せて、エランに戻れ」




 アシュトンはマシンゴーレム兵達と並走しながら、魔道無線機で呼びかける。




『ああっ!? ()(じん)()(ぜい)が、人間様に(さし)()してるんじゃねえぞ!』


 アシュトンは無線のマイクを(いっ)(たん)()り、操縦席(コックピット)の中で毒づいた。


「ちっ! 人間至上主義の連中か。親切心で、言ってやってるんだがな」




 なおも、マシンゴーレム兵は続ける。


『獣人機動兵団だか何だか知らねえが、俺は亜人がマシンゴーレムに乗るなんざ認めねえ!』


『それはレクサ将軍に、(じか)(だん)(ぱん)でもしろ。とにかく、この先にいる狙撃兵はお前らが(かな)う相手じゃない。犬死にしたくなかったら、引き返せ』


『へっ! 犬死にはワン公である、お前の得意技だろうが! 何が「敵う相手じゃない」だ。見ろ! これだけの数にビビッて、奴は撃ってこない! 見つけて、(ふくろ)(だた)きに――』





 殺気に反応できたのは、アシュトンだけだ。


 魔力レーダーが反応するよりも早く、彼は回避機動を取った。


 〈ファイアドレイク〉の前方を走っていた、2機のGR-3に大穴が開く。


 超長距離から放たれた砲弾は、大地に長い破壊の爪痕を刻んだ。


 アシュトンが回避機動を取っていなければ、まとめてやられてしまっていたところだ。




「1発で3機も落とそうなんざ、虫が良すぎるぞ」




 続けて放たれた2発の砲弾は、GR-3を2機ずつ貫通した。


 まるでアシュトンの(つぶや)きが、聞こえたかのようだ。




 残った4機も、次々と爆炎を上げた。


 操り糸を切られたマリオネットのように、地面へと倒れ込む。




 アシュトンの立っていた地点にも、擲弾(グレネード)が着弾した。


 激しい炎と衝撃波を撒き散らしたが、〈ファイアドレイク〉は素早く飛び退き範囲から逃れる。




『……アディ。それがお前の機体か?』




 背中の大型ウイングと、機体各所に備えた補助翼(カナード)


 脚部が大きめなデザインが目を引く、暗褐色のマシンゴーレム。


 アシュトンの眼前には、XMG-2〈フレアハウンド〉が(たたず)んでいた。




 名乗らなくても、すぐに分かる。


 マシンゴーレムの操縦には、操縦者のクセや雰囲気が反映されやすい。

 

 何年も(いっ)(しょ)に暮らし、互いの戦い方を観察してきたのだ。

 間違えようもない。


 そして機体両肩にある冥界の番犬ガルムのマークは、かつてアシュトンが胸当てに(えが)いていたもの。


 何の偶然か、2機はほとんど同じ機体色をしていた。


 ヘルハウンドの血を混ぜ込んだ、赤黒い特殊塗装。


 高い耐熱性を、装甲に付与するものだ。




 無線の全周波数で呼びかけたにもかかわらず、〈フレアハウンド〉からの返事は無かった。


 ただ無言で、グレネード・マシンガンの銃口がアシュトンへと突きつけられる。




「そうだアディ。それでいい……」




 〈ファイアドレイク〉もまた、プラズマライフルを静かに構えた。


 マルチランチャー〈スターダスト〉を改造し、高出力化したものだ。




 開戦の合図は、アディが放ったグレネードの爆音だった。




 回避して、横へ跳躍する〈ファイアドレイク〉。


 それを追って同じ方向へ、リニアホイールで急加速する〈フレアハウンド〉。






 肉体の延長として、巨大な金属の四肢を得た獣達。




 2匹の死闘が、始まった。






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