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【解放のゴーレム使い】~ロボはゴーレムに入りますか?~  作者: すぎモン/詩田門 文【聖ドラ改稿中】
第5章 ルータス王国奪回編

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第77話 エランの落ちた日(3)~試してみるか?~

 イレッサ様がマシンゴーレム2機を足止めして下さっている間に、馬車で前進するわたくし達。


 すぐに遅れを取り戻し、脱出グループの隊列に追いつけました。




 ――まずいですわ。


 前方に展開している帝国軍の排除に手間取り、隊列は(いっ)(こう)に進めていません。





 背後を振り返ると、マシンゴーレム達が再び動き始めているのが見えました。




 つまり、イレッサ様はもう――




 腹の底から、どす黒い殺意が湧きあがってきます。





『いい加減、あきらめやがれ! 悪いようにはしねえぞ~? 俺に従う、イイ女限定だけどな!』


 拡声魔道器(スピーカー)が、取り付けられているのでしょうか?


 マシンゴーレムの操縦兵は、()()た笑い声を大音量で()き散らしました。


 その態度と、機体の剣に付いた赤い血。


 わたくしは怒りで、(ほお)が熱くなりました。




 しかしわたくしよりも早く、マシンゴーレムへと飛び掛った影があります。




 疾風のように大地を駆けた、マイバッハ様です。


 細剣(レイピア)による突きが、脚部装甲板の隙間に突き刺さりました。




「……私の剣が、ここまで通じないとはね。(きみ)のように(しゅう)(あく)な存在に敗れるのは、無念だよ」




 マイバッハ様の細剣(レイピア)は、刀身の中ほどから折れていました。


 折れ飛んだ(きっ)さきが、地面に落ちます。


 それよりも早く、マシンゴーレムの巨大な足がマイバッハ様の全身を押し潰しました。




「マイバッハ! 貴様! よくも弟を!」


 レゲーラ様は熱線魔法【ヴァーミリオンレイ】を、マシンゴーレムに叩き込みました。


 何発も何発も。


 魔力が続く限りの全力連射です。


 ですがやはり、効果はありません。




『お~、たいした魔道士様だ。だがな、誰だってそれぐらいの魔法は撃てるんだぜ? このマシンゴーレムに乗ればな。【フレイムアロウズ】!』




 マシンゴーレムの杖から、巨大な炎の矢が放たれます。


 しかも複数本同時に。


 炎の矢はレゲイラ様に命中し、その全身を業火で包み込みました。


 障壁魔法を張る魔力も残っていなかったレゲイラ様は、なすすべもなく炎に焼かれてしまいます。


 


 (いっ)(しゅん)で炭化した体が、ドサリと地面に倒れました。




『おっと! 美人だったのに、もったいねえ! 連れて帰って、可愛がってやろうと思ったのにな』




 今度こそ、このゲスに目にもの見せてくれる。


 そう身構えた構えたわたくしの耳に、声が飛び込んできました。


 戦場に、似つかわしくない声が。




「うわああああん! おかあさん! おかあさん、どこお!?」




 避難民の集団が、駆けて行った方角から聞こえました。


 そちらを見やれば、小さな女の子の姿が。


 泣きながら、こちらに歩いて来ます。




『お母さんと、はぐれちまったのか? 安心しろよ。おじさんは、優しいからな。すぐにお母さんも、連れて行ってやるよ。……あの世にな!』


『よせ! ユリウス!』


 背後にいた上官らしき機体が、ユリウスを制止します。


 ですがこのゲスは聞こえないフリをして、女の子に杖を向けました。


 わたくしの位置からでは、助けようにも間に合いません。




『【ロックショットガン】』




 杖の前に、大きな岩塊が出現しました。


 岩塊は砕け散り、散弾となって女の子に襲い掛かります。




 その瞬間、視界の端を誰かが横切りました。


 人影は、女の子を守るべく覆い被さります。


 光の膜を(まと)っていたので、障壁魔法を展開しているのは間違いありません。


 しかし、あんな火力の魔法が相手では……。




 岩石の散弾が巻き起こした砂煙が収まり、その中から現れた人物は――




「ケータム殿下!」




 女の子を(かば)い背中をズタズタに傷つけられたのは、王太子ケータム殿下でした。


 殿下は政治の勉強に多くの時間を割かれ、他のご兄妹に比べると戦闘は不得手なはず。


 それが、なぜ?




 わたくしは急いで駆け寄り、回復魔法を掛けました。


 ですが明らかに、もう手遅れです。




「やあ、アディ……。女の子は無事……かい?」


(しゃべ)っては、いけません! ……大丈夫です。殿下のおかげで、傷ひとつ負っていません」


「良かっ……た……。でも本当は……こんなことじゃ……いけないんだろうな……。僕は何があっても……生き延びて……みんなの指導者に……ならなくちゃ……。でも、身体が勝手に……」


「良いではありませんか。ルータス王国は自由の国。自由神フリード様も、殿下を(とが)めなどいたしません。王太子だからといって、殿下の生き様を縛ることは誰にもできません」


「そうか……。最期に僕は……自由に生きられた……。生きてやったぞ……。ざまあみろ、時代遅れの王制め……」




 それが殿下の、最期のお言葉でした。




 光を失って、虚ろに空を見上げる瞳。


 わたくしは殿下の(そう)(ぼう)をそっと閉じさせ、(なき)(がら)を地面へと横たえました。




「あああああっ!」




 背後から聞こえたのは、ベネッタの絶叫。


 振り返るとそこには、左手の肘から先を失った彼女の姿。


 噴水のように、血を噴き出しています。


 彼女はすぐに、回復魔法で止血を試みました。


 しかし切断された先をくっつけてから回復魔法をかけないと、切断面から先は二度と元に戻りません。


 なのにベネッタが迷うことなく回復魔法をかけたということは、肘から先は跡形もなく吹き飛ばされたのでしょう。




「アディ……どうしよう……。あたいもう、大剣振れなくなっちゃった……」




 傷の痛みよりも、得意の大剣を振るえなくなったショックの(ほう)が大きいようです。


 それでも歴戦の剣士であるベネッタは、戦う姿勢を崩しません。


 大剣を捨て、サブウェポンとして腰に差していた片手剣を抜き放ちます。




 左手を失ったベネッタを見て、思いました。


 このままでは、何もかも奪われる。




 わたくしの中で、何かが切り替わります。



 

 もう、他のことはどうでもいい。


 考えられる全ての手段を使い、こいつらを殺す。


 今は師匠と生きて再会することも、イレッサ様との約束も忘れよう。


 獣人の闘争本能と、腹の底から無限に湧きあがる殺意に全てをゆだねよう。




 だらりと脱力したわたくしの体は、自分でも信じられないくらい軽く動きました。


 ユリウスとかいうゲスが乗る、マシンゴーレムの足元へ。


 (まばた)きする間に到達します。


 ユリウスが、慌てて機体の剣を振り下ろしてきました。


 ですが、もう遅い。


 わたくしの体は機体の股下を(くぐ)り抜け、背後を取っています。


 スカートの下から投げナイフを取り出し、わたくしはありったけの魔力を込めました。


 魔力伝導により、刀身が桜色に輝きます。


 この状態で投げれば、鉄板をも貫ける。


 わたくしは、ナイフを(とう)(てき)しました。


 狙いはマシンゴーレムの腰部にある、スリット。


 気付いていますのよ?


 そこから大気を、取り込んでいることは。




 怒りに狂っていても、わたくしの体に無駄な(りき)みはありません。


 しなやかに動いた筋肉の力は、完璧にナイフへと伝わりました。


 ナイフは光の帯と化して、マシンゴーレムの吸気スリットへと吸い込まれていきました。




『おっ……? メイドてめえ! 何をしやがった!?』


『どうしたユリウス? 故障か?』


『すいません、団長。右足への魔力供給回路が、切断されました。……小ざかしい真似しやがって!』




 ユリウスの機体は、足を引きずりながらわたくしの(ほう)に向き直りました。




「あら、()(ざま)ですこと。(おお)(ぎょう)なゴーレムに乗らないと戦えない、(おく)(びょう)(もの)のくせして……。そのゴーレムすら満足に操れないなんて、情けないにも程がありますわ」


『メイドの分際で、調子に乗るんじゃねえぞ! こっちにはまだ、無傷な団長がいるのを忘れてねえだろうな!?』




 忘れてなどいません。


 後方に控える、両肩にグリフォンのマークが描かれた機体。


 乗っているのは、「団長」と呼ばれる男。


 こちらの(ほう)が、ユリウスなどより明らかな強敵です。


 機体の足運びなど、動作の(はし)(ばし)から感じ取れます。


 ――そして戦士としての矜持(プライド)が、高いことも。


 わたくしはそれに、賭けてみることにしました。




「ハッ! どうせその団長様も、マシンゴーレムが無ければ大したことないのでしょう? どうですか? ()(ぼし)でしょう? 悔しかったら、わたくしを捕まえてごらんなさい!」


 わたくしはそう叫んで、側方に見える森へと駆け出しました。


 避難民の(いち)(だん)から、マシンゴーレムを引き()がさなくては。




『団長! 追いましょう! 王太子を()るという目標は、もう達成できました。(あと)は、好きに暴れていいんでしょう?』


『これ以上無駄な(さつ)(りく)で、帝国軍の品位を下げるな! ……いや。あの獣人メイドは、確か……。よし、追うぞ』




 掛かった!




 なぜ団長の気が変わったのかは、わかりません。


 ですがこれで、避難民達からマシンゴーレムを引き離せる。


 (あと)はわたくしが上手く団長のマシンゴーレムを撒いて、逃げ切るだけ。


 森の中での追いかけっこならば、小回りの利くわたくしが有利なはず。






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






「……ちょっと読みが、甘かったようですわね」


 わたくしは、追い詰められていました。


 森の中にあった、大きな崖の淵へと。


 崖下には、深い闇が広がっております。


 さすがにわたくしでも、落ちたら助かりそうにありません。


 団長と呼ばれた男が駆る、マシンゴーレム。


 その動きは、ユリウスのものよりはるかに(しゅん)(びん)でした。


 操縦者の判断も鋭かった。


 30分あまりの逃走劇の末、現状に(いた)るというわけです。




 帝国軍にやられるぐらいなら、いっそ飛び降りてみましょうか?


 下に深い川でもあれば、助かるかも?


 わたくしが、そんな算段を立てていた時でした。


 眼前のマシンゴーレムが膝を突き、胸部装甲が開いたのです。


 中から飛び降りてきたのは、軽装の戦士。


 武装は右手に片手剣。

 左手に小盾。


 年の頃は、30代半ばといったところでしょうか?


 整えられたコールマン(ひげ)()()しい、ダンディな男です。


 惜しい。


 敵でなければ、なかなか目の保養になったかもしれないのに……。


 わたくし、姫様の次にダンディなおじさまが好みなのですわ。




 ダンディ剣士は油断無く剣を構え、名乗りを上げてきました。






「リースディア帝国軍第4機動兵団長、エマルツ・トーターだ。マシンゴーレムに乗らないと大したことない男かどうか、試してみるか? 『アサシンスレイヤー』アディ・アーレイトよ」









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本作に頂いた、イラストやファンアートの置き場
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他の作者さんが書いた異世界ロボットものとのコラボ作品
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本作のラスボスが、生まれ変わって主人公になる異世界転生自動車レースもの
ユグドラシルが呼んでいる~転生レーサーのリスタート~

世界樹や戦女神リースディースなど、本作と若干のリンクがある作品
【聖女はドラゴンスレイヤー】~回復魔法が弱いので教会を追放されましたが、冒険者として成り上がりますのでお構いなく。巨竜を素手でボコれる程度には、腕力に自信がありましてよ? 魔王の番として溺愛されます~

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