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【解放のゴーレム使い】~ロボはゴーレムに入りますか?~  作者: すぎモン/詩田門 文【聖ドラ改稿中】
第5章 ルータス王国奪回編

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第76話 エランの落ちた日(2)~泣いていらっしゃるのですか?~

 首都エランを脱出する、住民の集団が出発しました。


 これが最後のグループです。


 隊の先頭に立つのは、ランボルト・フューラカン様。


 (まん)(いち)敵に回りこまれても、ランボルト様の爆炎魔法ならば包囲網に穴を開けられるからです。




 わたくしは馬車に乗り、グループの殿(しんがり)を務めておりました。


 「赤い跳ね馬」の異名を持つ大剣使いの傭兵、ベネッタ・フェラーリンと共にです。




 後方を振り返ると、首都エランの都市防壁が見えます。


 高さは約8(メートル)


 非常に強固な都市防壁です。


 防壁の上には、セブルス・エクシーズ陛下が立っておられました。


 地面に突き立てた剣の柄に手を乗せ、(はる)か遠くから接近する敵部隊を見据えていらっしゃいます。


 どうやら陛下は、(ろう)(じょう)せんを行うと決めたようです。


 陛下が見つめる先に、わたくしも視線を向けます。


 (すな)(ぼこり)を上げて突撃してくる、重装歩兵が見えました。


 全身鎧で、身を覆っています。




「やけに、ずんぐりむっくりな体型ですわね……。いえ、あれが……」




 わたくしはすぐ、自分の勘違いに気付きました。


 (かぶと)のスリットから(のぞ)く緑色の(ひと)()は、人のものではありません。




 リースディア帝国軍の人型機動兵器、「マシンゴーレム」。




 後ろにいる歩兵や騎兵、弓兵の大きさと比較してみます。


 全高は、6(メートル)ほどでしょうか。


 全身金属のようなので、重量も相当なものだと推測できます。


 それが騎兵と変わらないスピードで、地響きを(とどろ)かせながら疾走してくるのです。




「あんな化け物を、相手にするっていうのかい!?」


 隣にいたベネッタが、顔を青ざめさせています。




「……いえ。化け物っぷりなら、うちの陛下だって負けておりませんわ」




 エラン都市防壁の上に、(ばく)(だい)な魔力が収束していくのを感じました。


 それは人間やドワーフのものとは思えない、規格外の魔力。


 放たれるのは陛下とイレッサ様による合成土魔法、【ギガントピット】。




 敵マシンゴーレム部隊の足元で、大地が割れました。


 ぽっかりと、直径1km(キロ)ほどの大穴が開きます。


 深さはここからではわかりませんが、少なくともマシンゴーレムの全高よりはあるようです。


 マシンゴーレム達は、次々と穴の中に落下していきます。




 魔法による攻撃は、まだ終わりません。


 今度はエセルス様の水魔法、【ハイドラファング】。


 大気中の水分が集まり、水の竜が生まれました。


 数匹の竜達は優雅に身をくねらせながら空中を泳ぎ、大穴の中に飛び込んで行きます。


 爆発的な、水飛沫が上がりました。




 水飛沫がまだ噴き上がっている最中に、ティーゼ様の魔法【プラチナムワールド】が完成します。


 時間が止まったかのように、水飛沫が空中で凍結。


 大気中の水分も凍り、周囲にはキラキラとダイヤモンドダストが舞い散っています。


 大穴の上に氷の(ふた)をして、マシンゴーレム達を閉じ込めることに成功したのです。




 帝国軍め!


 ざまぁ!


 ルータス王国()めんな! ……ですわ。




 わたくしは心の中で、帝国兵共に向かって中指を突き立てました。






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






「面倒だね……。あたいらの前方にも、帝国軍が回り込んできている」




 馬車の(ほろ)から顔を出して、(ぎょ)(しゃ)(だい)(ほう)(のぞ)いていたベネッタ。


 彼女は(いま)(いま)しそうに、(つぶや)きました。




 穴に閉じ込められたマシンゴーレム部隊の両側を()(かい)して、帝国軍の歩兵部隊は首都エランの方へと向かっておりました。


 しかし敵の(いち)()が、わたくし達の進路を阻むように展開してきたのです。


 王太子であるケータム殿下が、この集団にいると気付かれたのでしょうか?




 無謀なことを。


 この集団の先頭には――




 お腹にずっしりと、響く振動。


 遠くから、帝国兵の悲鳴が聞こえてきました。




「お。アレが(うわさ)に聞く、ランボルトの『猛牛モード』かい? いやー、派手なもんだねえ」


 ベネッタは楽しげに、馬車の前方を見ています。


 まるで、花火でも見ているかのような反応です。

 

 わたくしも荷台から身を乗り出して、前方を見ます。


 ちょうどそのタイミングで、景色が夕焼けみたいに赤く染まりました。


 2回目の振動と爆音が、馬車を揺るがします。


 天まで届くかと思うほどに、高く上がった爆炎。


 舞い散る木の葉のように吹き飛ばされる、帝国歩兵達の姿。


 ランボルト様の爆炎魔法、【エクスプロード】です。




「ヒュウ♩ 連発! ランボルトも帝国軍には、怒り心頭ってところさね」


 口笛を吹き鳴らすベネッタ。


 彼女の言う通り、ランボルト様は帝国軍に対する怒りも持っておられるのでしょう。


 ですが爆炎魔法を見たわたくしに伝わってきたのは、別の感情。




 巻き上がる炎は、どこか(はかな)げ。


 大気を震わす爆音は、まるで(どう)(こく)のよう。




「ランボルト様……。泣いていらっしゃるのですか……?」






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






「……アディ! まずいよ! 氷の蓋が、破られる!」


 ベネッタに言われて、マシンゴーレム達が閉じ込められている大穴の方向を見ます。


 ちょうど穴の上を覆っていた氷塊が、粉々に砕け散るところでした。




 太陽の光を反射して、輝く氷の破片。




 立ち込める氷煙の中から最初に現れたのは、巨大な手。


 続いてゆっくりと、緑色に輝く瞳が穴の中から浮かび上がってきます。


 そして金属で作られた巨体も、()い出てきました。




 穴から這い出たマシンゴーレムのほとんどは、首都エランの方向に駆け出します。


 ですが2機だけ、わたくし達の集団を逃すまいと追撃してきました。




「ベネッタ。先頭のランボルト様が包囲網を突破するまで、わたくし達であのマシンゴーレム2機を食い止めますわよ」


「やれやれ。これは陛下に、報酬を上乗せしてもらわないとねえ」


 ベネッタは背中の大剣を抜き、荷台後方の(ふち)に足を掛けました。




 マシンゴーレムの走行速度は、騎兵並み。


 最後尾を走るわたくし達の馬車まで、すでに残り数十(メートル)




 (せつ)()




 オレンジ色に輝く光線が、空を切り裂いて飛来しました。




 光線は先頭を走っていたマシンゴーレムに突き刺さると、青白い閃光を撒き散らします。


 同時に高熱で、周辺の地面が融解します。


 これは熱線魔法、【ヴァーミリオンレイ】。


 王立魔法研究所の研究員でもある、第2王女レゲイラ様の得意とする魔法です。




「アディ! ベネッタ! 援護します!」


 馬車から飛び降りたわたくし達に向かって、レゲイラ様が走ってこられます。


 母親であるアゲイラ様譲りの金髪が、熱風に(なび)いていました。




 来てくれた味方は、レゲイラ様だけではありません。


 第4王子、マイバッハ様も並んで駆けてこられます。


 マイバッハ様は、ハーフエルフ。


 片手に細剣(レイピア)(たずさ)えた、美貌の剣士です。


 本業は王子でも剣士でもなく、芸術家なのですが。




「マイバッハ! あなたは前衛よ! 絵ばかり()いているせいで、腕が(にぶ)っていたりしないでしょうね?」


「やれやれ。姉上は、芸術というものをわかっていない。むしろ芸術と武は、近しいものです。私は芸術とは何たるかを追い求めることにより、剣技における美しさと、合理性の(しん)(えん)(かい)()()たのです。すなわち……」


「はいはい。続きは無事に、生き残ってからね。……ああ、やっぱり全然効いてないわ」


 レゲイラ様のおっしゃる通りでした。


 大地を溶解させるほどの熱線魔法が直撃したというのに、マシンゴーレムにはダメージを受けた()()りが見られません。


 速度を緩めながら、ゆっくりとこちらに近づいて来ます。




 その時。




 マシンゴーレム足元の地面が、(とつ)(じょ)崩れました。




 2機とも腰まで地面に埋まり、そのうち1機はかなり動揺しています。




 埋まっているマシンゴーレムとわたくし達の間に、1頭の馬が割り込んできました。


 その背中には、小柄なドワーフ女性が(またが)っています。




「子供達に、手出しはさせませんよ!」




 わたくし達の離脱を援護するために、駆けつけてくださったイレッサ様でした。


 重力魔法で馬と自分の体重を軽減させ、通常よりもずっと速く走ってこられたのです。




「あの人ったら、ひどいのよ。私も最後まで、(いっ)(しょ)に戦いたかったのに……。『あの距離で今から間に合うのは、お前だけだ。頼む』って」


 イレッサ様の笑顔は、どこか寂しそうでした。




「でも、間に合って良かったわ。さあ、行きなさい。私の子供達」

 

 レゲイラ様もマイバッハ様も、イレッサ様が産んだ子供ではありません。


 しかしエクシーズ家4人の妻は、誰の産んだ子でも実の子のように接しています。


 お子様方も、4人の妃様全員を実の母親のように(した)っていらっしゃったのです。




「イレッサお()()様……」


 レゲイラ様の頬に、涙がひと(すじ)流れました。


 マイバッハ様は肩を震わせながら、涙を(こら)えた顔をしていらっしゃいます。


 イレッサ様に(いち)(れい)すると、(きびす)を返してレゲイラ様を(うなが)しました。




「姉上。行きましょう!」


 ()(ごり)()しそうにしてたレゲイラ様も、イレッサ様に背を向け駆け出しました。




「アディ。あなたも『私の子供達』に、含まれているのよ。行きなさい! ベネッタ、アディをよろしくね」


「イレッサ様お1人を残して、行けるわけがありません!」




 イレッサ様の背後では、地面に埋まったマシンゴーレム達が這い出そうとしています。


 イレッサ様は、乗っていた馬から飛び降りました。


 馬を逃がすと、わたくしの方を向いたまま魔法を発動させます。


 超重力魔法、【グラビトンマッシャー】です。


 背後にいるマシンゴーレム2機が、割れた地面へと押し戻されました。




「アディ。いつかお城の中庭でした約束、憶えている? 『あの子を守ってあげて』」


「……っ! わかりました。必ず……。必ずわたくしがお守りします!」


 わたくしの返事を聞いたイレッサ様は、満足げに微笑みました。


 そして魔力をさらに集中させるべく、マシンゴーレムの(ほう)へと向き直ります。


 質量の大きなマシンゴーレムは、普通なら動くこともできずに自重で圧解してしまうはず。


 しかし敵は、【グラビトンマッシャー】に耐えていました。


 イレッサ様の重力魔法は、大陸トップクラスだといわれているのに。


 (うわさ)(たが)わぬ、魔法防御力です。


 機体を(きし)ませながらも、割れた地面から()い上がってきます。






 わたくしはイレッサ様に背を向け、走り出すことしかできませんでした。






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本作に頂いた、イラストやファンアートの置き場
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ユグドラシルが呼んでいる~転生レーサーのリスタート~

世界樹や戦女神リースディースなど、本作と若干のリンクがある作品
【聖女はドラゴンスレイヤー】~回復魔法が弱いので教会を追放されましたが、冒険者として成り上がりますのでお構いなく。巨竜を素手でボコれる程度には、腕力に自信がありましてよ? 魔王の番として溺愛されます~

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