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【解放のゴーレム使い】~ロボはゴーレムに入りますか?~  作者: すぎモン/詩田門 文【聖ドラ改稿中】
第5章 ルータス王国奪回編

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第75話 エランの落ちた日(1)~死ぬとか思っているんじゃねえだろうな?~

 リースディア帝国軍の襲来直前。 




 この頃のわたくしは、姫様の邸宅を管理するメイドでした。


 9番隊隊長になられた時に、騎士団から貸し出された家です。


 ルータス王家は数代前から、王位継承権の低い王子・王女の積極的自立を(うなが)す方針。


 姫様のご兄妹はごく少数の従者を連れ、()(せい)で暮らされている(かた)が多いのです。


 王立魔法研究所の職員になっていたり。


 商売を始められていたり。


 芸術家として、そこそこ名を売り始めた方もいらっしゃいます。


 王太子であるケータム様は、問答無用で王宮残留確定ですが。




「いいな、エリーゼは……。俺も自由に生きたい」


 そう言って、姫様をガチで羨ましがっていらっしゃいました。


 王位争いではなく王位の押し付け合いが起こる国家など、近年のルータス王国ぐらいのものでしょうね。




 ルータス王国騎士団では、任務に従者を連れて行くことは禁止されておりました。


 たとえ王族や、貴族であろうともです。


 姫様は今、任務で国境付近まで遠征に出ております。


 わたくしは家で()()()()しく家事をこなし、夫の帰りを待つ寂しい人妻の気分。


 ああ。

 主人である姫様のことを思うと、身体が()()って火照って……。


 なんて、冗談を言ってる場合ではありませんでしたわ。




 その日。


 リースディア帝国軍本隊接近の知らせを受けて、王宮には多くの人々が集められていました。


 大臣、騎士団長、高名な戦士、魔道士、その他有識者などです。




「ダメだ、ランボルト。おめーはガキ共を連れて、脱出しろ」


「ふおっ、ふおっ、ふおっ。陛下も(こく)なことを(おっしゃ)る。この(ろう)(こつ)に、おめおめと生き恥を(さら)せと? わしはもう、老い先短い身。せめて死に場所ぐらい、自分で選ばせて下され。このエランで、人生を終えたい」




 セブルス・エクシーズ陛下と言い争っておられるのは、先代宮廷魔道士筆頭のランボルト・フューラカン様。


 大変高名な魔道士です。


 わたくしや姫様も、魔法の講義を受けたことがあります。


 すでに引退されていらっしゃったのですが、陛下が王宮にお呼びしたのです。




 帝国軍襲来の報を受け、わたくしも王宮に参上しておりました。


 「暗殺者を殲滅せし者(アサシンスレイヤー)」などと呼ばれているので、それなりに戦力として期待されていたのでしょう。


 その集まりの場でランボルト様が、陛下のお言葉にゴネていらっしゃるのです。


 住民の脱出を、王太子殿下達と共に先導しろとのご命令でした。




「生き恥って……バッカおめー。すぐに介護が必要になりそうなジイさまを残して、俺達が死ぬとか思っているんじゃねえだろうな? 俺を誰だと思っていやがる。『大陸最強の悪い虫』だぞ? 虫ってのは、しぶてえもんだろうが」


 自らをしぶとい虫呼ばわりする陛下に、周囲から失笑が()れました。


 そこに居るだけで、悲観的な空気を吹き飛ばしてしまう。


 セブルス・エクシーズ陛下は、そんな王でした。




「お願いよ、ランボルト。あなたに行ってもらわないと、脱出組は、若い人達ばっかりになっちゃうでしょう? 逃げ延びた人達を、まとめられる人が必要なの。人生経験のある人がいないと……」


 陛下の第2妃、ティーゼ様がおっしゃられました。


 肩までの金髪に、青いドレス。

 そして背中に生えた、黒鳥の翼。


 人間族や獣人族にはない、魔族ならではの美しさを持った王妃様です。




「ベッツの奴は、どこにおるのですかな? 奴は見た目は若いが、歳はわしと大差ない。奴の(ほう)が、適任ですじゃ」


「彼は今、首都近郊にいないわ。研究の素材を集めるために、魔国の近くまで行っているの」


「やれやれ。(かん)(じん)な時に、おらぬ奴め。それならばわしやベッツより、(はる)かに人生経験豊富なティーゼ様の(ほう)が……いや、何でもありません」


 ティーゼ様が王宮ごと凍てつかせてしまいそうな、強大な魔力を集中させ始めました。


 それを感じ取って、ランボルト様は口をつぐみます。


 200歳ちょっとのティーゼ様に、年齢の話は禁句ですわよ。




「ランボルト……。私達は4人共、ここに残るわよ。セブ(くん)(そば)を、離れたくないもの」


 ティーゼ様の言葉に、残りの王妃様方全員が(うなず)きました。




「かあーっ! 帝国軍相手に、派手なドンパチやらかすつもりかよ? ウチの嫁共は、気が強くって困るぜ!」


 今度は皆、ドッと笑いました。


 わたくしもつられて、いつの間にか笑っていましたわ。




「やれやれ。ティーゼ様にそう言われては、仕方ありませんのう……。あまり遠くまで逃げると、戻って来るのが大変ですじゃ。陛下。早めに帝国軍を、蹴散らしてくだされ」


「おう! わかったぜ! ジジイの足腰じゃ、長旅には耐えられねえだろうからな。ソッコーで、全滅させてやるぜ!」


 勝ち目が無い戦いなのは、陛下もランボルト様も充分わかっていらっしゃるはずです。


 帝国軍の最新鋭兵器、「マシンゴーレム」。

 

 その(けん)(ろう)な耐魔法装甲を貫く手段は、今のところ見つかっておりません。


 帝国との国境付近に配備されていた警備隊は、(またた)く間に壊滅させられてしまいました。


 戦力差は、圧倒的。


 けれども――




「帝国のアホ共には、これ以上何もくれてやらねえ! 俺の国も! 民も! 嫁やガキ共も! 何ひとつだ! 野郎共! 大暴れする準備は、できているんだろうな!?」


 王の間にいた人々は、大歓声で応えました。


 あまりの音量に、王宮全体が震えているようです。


 皆が士気を高め、戦意を(こう)(よう)させています。


 わたくしやアシュトン師匠も、()(たけ)びを上げておりました。


 獣人の闘争本能が、刺激されたのです。


 今思うと、少々はしたなかったですわね。




 王妃様方4人の反応は、(さま)(ざま)でした。




「セブ様……。それでは国王というより、山賊の親分みたいです」


 (あき)れて(ため)(いき)をついたのは第1妃、(きつね)獣人のアゲイラ様。




「ふふっ。セブ(くん)らしくて、いいじゃない」


 想定内とばかりに余裕の()みを浮かべたのが第2妃、魔族のティーゼ様。




「燃えてきたわね! 久しぶりに、セブと(いっ)(しょ)に戦える!」


 闘志をみなぎらせていたのが第3妃、エルフのエセルス様。




「あなた……。私達は、どこへでもついていきます。あなたと(いっ)(しょ)なら」


 最後に第4妃、ドワーフのイレッサ様が優しく(ほほ)()みました。




 あの時のイレッサ様の笑顔、わたくしは忘れられません。






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






 会議が終わった(あと)


 わたくしは王宮の廊下で、師匠から呼び止められました。




「アディ、お前は脱出組だ。ケータム殿下達と、(いっ)(しょ)に行け」


「師匠。わたくしには、姫様の邸宅を守る義務があります。ここに残りますわ」


「馬鹿! その姫様は今、ビサーストとの国境付近だろうが。ここに帰り着く頃には……全て終わっている」


 「俺達の勝利で」……とは、師匠は言いませんでした。




「昔、イレッサ様がおっしゃっていただろう? 『あの子を孤独や悲しみ、苦悩からも守って欲しい』とな。お前が守らなければならないのは、邸宅なんかじゃない。エリーゼ様ご本人だ。……あの子を1人にするな」


「『1人にするな』ですって? 自分達が誰も生き残れないような言い方は、やめて下さい!」


 わたくしは、泣きそうでした。


 「強くなれ」と、母も師匠も(つね)(づね)言っていました。


 けれども、涙を(こら)えきれそうにありません。


 師匠は、わたくしのお父さんかもしれない。


 まだそれすらも、確かめてもいない。


 なのに師匠がわたくしの前から、消えてしまうかもしれない。


 今ここで、確かめておかなければ。


 もう二度と、聞くことができないかもしれない。


 そんな恐怖が胸中を駆け巡り、わたくしは決心しました。


 真実を、確かめる決心を。




 あなたは、わたくしのお父さんなのでしょう?




 そう問おうとした直前、師匠の方から先に口を開きました。




「アディ。再会できたらお前に、大事な話がある。お前の父親に関することだ」


 師匠の瞳には、強い決意の光が宿っていました。


 わたくしの母、アーリィ・アーレイトの墓前で見せたのと同じ瞳です。




「心配するな、俺は強い。今度こそ、守ってみせる」


 師匠はわたくしの頭に手を伸ばし、やや乱暴に髪をクシャクシャと撫でました。


 お母さんと同じ、大きくて頼もしい手。


 もうこの手を、失いたくない。




「アディ……。強く生きろよ」






 そう言って去る師匠の背中に、わたくしは声をかけることができませんでした。






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【聖女はドラゴンスレイヤー】~回復魔法が弱いので教会を追放されましたが、冒険者として成り上がりますのでお構いなく。巨竜を素手でボコれる程度には、腕力に自信がありましてよ? 魔王の番として溺愛されます~

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