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【解放のゴーレム使い】~ロボはゴーレムに入りますか?~  作者: すぎモン/詩田門 文【聖ドラ改稿中】
第5章 ルータス王国奪回編

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第73話 師の教え~そういうものだろう?~

『帝国軍が、(てっ)退(たい)を始めたわ』




 魔道無線機越しに、エリーゼ・エクシーズから入った通信。


 それを聞いて、アディ・アーレイトの意識は過去から現代に引き戻される。


 いつの間にか集中力を欠き、回想を始めてしまっていた。


 反省し、アディは状況を確認する。


 集中力を欠きながらも、順調に敵機を撃破していたようだ。


 特に機体の損傷も無く、味方の被害も少ない。




 エリーゼとアディの眼前には、元サーブラウス公爵の城。


 現在の帝国進駐軍司令部まで、200(メートル)の距離に迫っていた。




 司令部である城の塔上部には、広域魔力レーダーが設置されていた。


 だが今は、〈フレアハウンド〉のサブマシンガンで粉々に破壊されている。


 「目」を潰されたことが決定打になり、帝国軍は撤退を開始したのだろう。




 (やす)(かわ)(けん)()の乗るXMG-4〈シラヌイ〉には、広範囲かつ強力な(さく)(てき)(のう)(りょく)を持つ魔力レーダーが搭載されている。


 そこから得た情報を、データリンク機能によって友軍全機と共有できるのだ。


 敵機を意味する黄色い光点のほとんどが、城塞都市の北側に向けて動き始めている。


 帝国軍は、城塞都市ダスカンを諦めた。


 それは間違いない。




「アディ様。どこか、お体の具合でも悪いのですか?」


 操縦補助を務める火の高位精霊スザクは、心配そうに問いかけた。


 鳥型だが、なかなか表情豊かな精霊だ。


 瞳は緑色の炎なのだが、ハの字に曲がり心配そうな顔つきになっている。




「ごめんなさい。ちょっと、集中力を欠いていましたわ」




 ここ最近は戦闘が続いていたから、きっと疲れているのだ。


 〈フレアハウンド〉はクセが強く、操縦には体力と神経を使う。


 タフネスには自信があるが、さすがに限度があるのだろう。


 そう納得し、アディは再び集中力を高める。




『帝国軍を、城塞都市の外まで追い立てるぞ。イースズ(フリーダム4)。平地に逃げ出た連中を、(かた)(ぱし)から撃ち抜け』


 安川賢紀(フリーダム1)の指示が、無線から聞こえる。


 撤退する帝国軍の追撃に、アディも加わろうとした時だ。


 イースズからの(きん)(ぱく)した通信が、解放軍全機に届いた。




ケンキさん(フリーダム1)! 狙撃はでけん! 何かわけくちゃわからんのが、1機近づいて来とる。GR-3の改造機ばい。何ね!? あの動きは!? ……近寄って来んで!』






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






 XMG-3〈サジタリィ〉の操縦席(コックピット)内で、イースズ・フォウワードは(ひたい)に玉のような汗を浮かべていた。


 映像投影魔道機(ディスプレイ)に映る敵機を、彼女は3つの瞳で(にら)みつける。




 すでにイースズは、電磁加速砲(レールガン)〈タケミカヅチ〉による第1射を放っていた。


 しかし、回避されている。


 10km(キロ)も先からの狙撃だったとはいえ、敵はイースズが()()()()()()避けたのだ。


 音速の20倍という、超高速で発射された砲弾を。




 イースズが持つ【紫水晶眼】のような、未来予知の魔眼ではない。


 魔法だとか、そういう(たぐい)の能力でもない。


 超人的な勘と、反応速度で避けた。


 その事実に、イースズは(うす)(ざむ)いものを感じる。




 即座に、並みの機体と乗り手ではないと判断したイースズ。


 彼女は額にある、【紫水晶眼】の力を発動させた。


 これで敵機の動きを予測し、狙撃することができる。


 


「たまにおるったいね。こういう相手が……」




 (いっ)(しゅん)(さき)の未来における敵機の動きが、いくつも見える。


 これはイースズの射撃に合わせて、いく通りもの対応ができる(あかし)だ。


 反応速度が、魔眼の未来予知を上回っている。


 次々と分裂しては、消えて行くように見える敵機の姿。


 少し気持ちが悪くなってしまったイースズは、魔眼の力をカットした。




 敵GR-3改造機は、なおも接近し続けてきている。


 岩や森などの(しゃ)(へい)(ぶつ)を活用しているが、隠れても1箇所には(とど)まらない。


 〈タケミカヅチ〉の威力を見て、遮蔽物ごと撃ち抜かれる可能性を考慮しているのだ。


 巧みな乱数機動とフェイントを交えながら、慎重に、時に大胆に機体を走らせ〈サジタリィ〉へと迫る。




「ご主人~。ひょっとして、ピンチ?」




 フーリが身を起こした。


 帝国軍を狙撃している間も、ほとんど寝っぱなしだったというのに。




「ピンチたい! 残弾が少なか! それにあの機動力なら、接近されたら勝ち目は無か!」


「撃破されるのは困る。頑張ってよ、ご主人」


「あんたも頑張らなんたい!」






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






「なんだか、心がざわつきますわね……」




 イースズに接近する、謎の敵機。


 報告を受け、アディは全身が(あわ)()つような感覚に(さいな)まれていた。


 単に、仲間の危機だからというわけではない。


 獣人特有の本能。


 何か自分にとって、良くないことが起こりそうな予感がする。




安川賢紀(フリーダム1)より、イースズ()。いま、帝国軍の無線を(ぼう)(じゅ)した。そいつはダスカン進駐軍の撤退を、援護するために来た増援だ。前に荒木の野郎が言っていた、獣人操縦兵(パイロット)のマシンゴーレム部隊。部隊名は、「獣人機動兵団」』


 アディの頭上にある犬耳が、ピクリと反応した。


『特に兵団長のアシュトンとかいう奴は、腕が立つらしい。お前に迫っているのは、多分そいつだ。後退しろ』


 師と同じ敵兵の名前に、(いっ)(しゅん)たじろいだアディ。


 だがすぐに、人違いだと思い直す。




 アシュトン・マーティーンは、エラン防衛戦で死んだはず。


 最期まで、国王や王妃達と共に戦い抜いて。


 そう珍しい名前ではない。

 別人だ。


 自分に言い聞かせ、冷静さを保とうとしたアディ。


 だがそこへ、イースズからの無線が入った。




『敵機の両肩に、冥界の番犬「ガルム」のマーク! これは……アディちゃん(フリーダム3)と、同じ……?』


エリーゼ(フリーダム2)よりケンキ()! イースズ()! それは確かなの? 冥界の番犬がパーソナルマークで、名前がアシュトン!? ……アディ! 待ちなさい!』


 アディはエリーゼの制止を振り切って、〈フレアハウンド〉をフル加速させた。




「ど……どうしたのですか? アディ様!?」


「スザク。ちょっとその獣人兵団長に、用があるのです」




 さらにアディは無線を使い、自軍の指揮官に要求する。




ケンキ様(フリーダム1)。〈ヘルズバイター〉を、2丁ください』




 魔力レーダーに、友軍機を示す緑色の光点が現れた。


 位置は都市防壁北門のすぐ近く。


 アディの(よう)(せい)を受け、ケンキが〈マルチプルティセプター〉という装置を解除したのだ。


 これは多角的センサー()(まん)と、光学迷彩を行う魔法兵器。


 〈マルチプルディセプター〉によって帝国軍の魔力レーダーは使い物にならなくなり、光学迷彩で賢紀の機体は見えなくなっていたというわけだ。




 光学迷彩も解除され、XMG-4〈シラヌイ〉がその姿を現す。


 (しっ)(こく)のボディ。


 怪物じみた、4つの〈クリスタルアイ〉。


 そして背中にセンサーやアンテナを生やした、(まが)(まが)しいシルエット。


 【ゴーレム使い】のデザインセンスが()(かん)なく発揮された機体だが、エリーゼ達からの評判はすこぶる悪い。




 そんな〈シラヌイ〉の前で、アディは足裏の〈超魔導リニアホイール〉にブレーキをかけ急停止。


 両手のサブマシンガンを、投げ捨てる。




アディ(フリーダム3)。アシュトンは、知り合いなのか?』


『わたくしの師匠です。敵に捕まって、【奴隷首輪(スレイヴチョーカー)】でも着けられているんでしょう。ほんと、世話の焼ける師匠ですわ』


 口ではそう言いながらも、アディは幸運だと考えていた。


 死んでいたはずの師が生き延びていて、救出のチャンスも残されているのだから。




 アディは賢紀が【ファクトリー】から取り出した、グレネードマシンガン〈ヘルズバイター〉を受け取った。


 受け取ると、すぐに急加速。


 都市防壁北門から、広大な平原へと飛び出していく。




 狭い市街地から解放された〈フレアハウンド〉は、その高い機動力を存分に発揮した。


 リニアホイールが光の粒子を撒き散らし、大地に美しい二条の軌跡を(えが)く。


 すでに速度は、400km/h(キロ)を超えている。


 いつもは無茶な突撃を止めるスザクも、アディのただならぬ様子を感じ取っていた。


 黙って機体の空力制御に、専念している。




 途中で何機か、帝国軍のGR-3を追い抜いた。


 撤退中だった機体だ。


 アディは追い抜き(ざま)に、セミオートでグレネード弾を撃ち込み撃破する。




 相手も発砲してくるが、すれすれで回避。


 背中の大型(ウイング)と、機体各所に配置された補助翼(カナード)による空力調整。


 リニアホイールの駆動力調整(トルクベクタリング)


 これらを組み合わせて、速度を落とさず機体を器用に曲げているのだ。


 〈フレアハウンド〉は回避と同時に、反撃のグレネード弾を叩き込んでいく。




「スザク。イースズと交戦中の敵機に、秘話回線通信は開けますか?」


「この距離では、無理ですよ」


「ならば帝国軍全機に聞かれてしまいますが、仕方ありませんね」




 アディは無線の全周波数を使い、アシュトンに呼びかけた。




『師匠! アシュトン師匠でしょう!? わたくしです! あなたの弟子、アディ・アーレイトです!』


『アディ……?』


 無線機越しだが、間違いない。


 (なつ)かしい、師の声が返ってくる。




『そうです。師匠は【奴隷首輪(スレイヴチョーカー)】か何かで、帝国軍に従わされているのでしょう? 安心して、解放軍に投降して下さい。仲間に、首輪を外せる者がいますわ』


『誤解があるようだな、アディ。俺には奴隷首輪など、着けられてはいない』


『ではなぜ? ……まさかアゲイラ様か誰かを、(ひと)(じち)に!?』


 死んだと思われていた、アシュトンが生きていたのだ。


 アゲイラ妃も生き延びていて、人質にされている可能性だってある。


 誰よりもアゲイラを(すう)(はい)し、忠誠を誓っていたアシュトン。


 彼女を人質にされているとしたら、従うしかあるまい。




『アゲイラ様……アゲイラは死んだよ。目の前で、レクサ将軍のGR-1に斬られた。即死だ……。セブ、ティーゼ、エセルス、……そしてアゲイラ。かつて(いっ)(しょ)に大陸を旅した仲間達は、みんな死んでいった。イレッサ様が亡くなられたのも、間違いない』


 段々と、アディの頭は混乱してきた。


『奴隷首輪でもない。人質でもない。ならばなぜ、師匠は帝国軍なんかに従っているのです!? 奴らはわたくし達から、大切な人達を……居場所を奪った奴らですよ!?』


『強い者に従う。俺達獣人は、そういうものだろう?』




 アディは、頭を殴られたような衝撃を受けた。




 確かに獣人族には、強い者を尊重する(ふう)(ちょう)がある。


 しかし多種多様な種族が暮らすルータス王国では、その風潮は薄かったはずだ。


 それにアディはアシュトンが帝国軍を、「強い者」と認めているのが理解できなかった。


 ニーサ帝やレクサ将軍、英雄セナ・アラキなどの強者はいるが、アシュトンが彼らに従わなければならないほどだとは思わない。




 帝国軍が、マシンゴーレムを持っていなければ。


 ルータス騎士団にも、マシンゴーレムがあれば。


 あの戦争の結末は、違っていたはずだ。




 何よりアシュトンはルータスという国を、そこに暮らす人々を愛していたのだ。


 それを滅ぼした、帝国軍に加担しているなど信じられない。




『そんな……。師匠は帝国軍を強者だと認め、(みずか)らの意思で従っていると……』


『動揺しているな、アディ。俺は教えたはずだ。強い精神を持てとな。このぐらいのことで、いちいち心を乱していては……』




 無線機越しに、くぐもった破裂音が聞こえた。






 魔力レーダーのディスプレイから、緑色の光点が消える。




 イースズの乗る、〈サジタリィ〉の反応を示す魔力反応が。






『……また、大切なものを失うぞ』






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