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【解放のゴーレム使い】~ロボはゴーレムに入りますか?~  作者: すぎモン/詩田門 文【聖ドラ改稿中】
第5章 ルータス王国奪回編

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第68話 開戦の火蓋~説明をしてもらえるんでしょうね?~

「パァン!」




 背後から聞こえた銃声に、スーテラ・トーターはビクッと体を震わせた。




 数秒遅れて、彼女は気付く。


 何かがおかしいと。


 銃口は背後からではなく、左右からこめかみに押し付けられていたはずだ。




「へへへ……。スーテラ、びっくりした?」




 スーテラが銃声だと勘違いしたのは、アレックス・(セバスチャン)・マッサがボイスパーカッションで再現したものだった。


 リビング内にいた全員が、(いっ)(しゅん)本物の銃声かと思って(けい)(かい)してしまった。


 リアル過ぎるモノマネである。




「おおっ! 大統領に、ケンキの旦那に、エリーゼちゃんに、ヴィヴィオさんに……そうそうたるメンツが、そろってるじゃねーか。……やっぱりウチの社長も、グルだったか」


 陽気にヒュウと、口笛を鳴らすアレク。




 スーテラの両こめかみに押し付けられていた銃口は、すでに下げられている。


 それでも彼女は下を向き、プルプルと全身を震わせていた。


 顔を真っ赤にしながら。




「何だ? ビビリ過ぎだろう、スーテラ。ひょっとして、()らしちゃった?」




 デリカシーの無いアレクの冗談に対する返答は、強烈な右ストレートだった。


 全身の回転運動を()(れい)に直線運動へと変換したパンチは、的確にアレクの顔面を(とら)える。


 彼の長身はリビング外へと吹き飛び、廊下の壁に叩き付けられた。


 リビングルーム内からその光景を見ていた(やす)(かわ)(けん)()は、自身の並外れた魔力感知能力ゆえに気付いてしまった。


 スーテラがひっそりと股間付近に、浄化魔法を使ったことを。


 彼女の名誉(と、自分の身の安全)を守るために、絶対誰にも(さと)られないようにしなければ。


 賢紀は固く、心に誓う。




「お嬢さん、すまねえ。ちと、悪ノリが過ぎたみてえだな」


 左側からスーテラに銃を突きつけていた豚獣人、ポルティエ・ナイレーヴンは素直に謝罪した。


 スーテラの剣幕と右ストレートに、恐れをなしたのかもしれない。




「アレクはわたくしが責任をもって、射殺しておきますわ」


 右側から銃を突きつけていたアディ・アーレイトは、しれっと責任をアレクに(てん)()していた。


 殺気を放ってスーテラをビビらせていたのは、自分だというのに。






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






「いてて……。死ぬかと思った」


 賢紀の回復魔法により、アレクは意識を取り戻した。


「スーテラの親父さんの夢を見たよ。川の向こう側から、笑顔でおいでおいでしてた。あの笑顔はマシンゴーレム習熟訓練の時、地獄のシゴキを始める前の笑顔と同じだった。俺はもう、全速力で逃げ出したね」


 臨死体験から生還したアレクは、(ほお)をさすりながらエマルツ・トーターとの(かい)(こう)を語った。


 エマルツがアレクの訓練教官だったというのは、賢紀にとって初耳だ。


 自分が手を下した相手の話が出て、少し後ろめたい気持ちになった賢紀。


 だが教え子のアレクと娘のスーテラは、あまり故人をしのぶような雰囲気ではなかった。




「そうか。父より私に、シゴかれるほうがいいか。明日の昼休みから白兵戦の個人レッスンを、もっとハードにしたほうが良さそうだな」


「社長! 昼休みはしっかり休むよう、スーテラに言ってくれ!」


「そうだ! ロスター社長! 昨晩の襲撃について、社長も(いち)(まい)()んでいるとか。納得のいく説明を、してもらえるんでしょうね? 返答によっては――」


 スーテラがローザリィ社を辞めると言い出さないか、仕事を(あっ)(せん)した賢紀は心配した。


 しかし――




「返答によっては、特別手当を要求します!」


 なんとも現金なスーテラの発言に、少しホッとした賢紀だった。




「わかったわかった! 次のボーナスに、上乗せしといてやる。お前らに黙っておいて悪かったと、ワシも思っておる」


 スーテラの剣幕に、ロスター社長もタジタジである。


 あっさりと、特別手当の支給を呑んでしまった。




「ほれ見ろ、ヴィアルゼ。ウチのガキ共は、気付いただろうが。じゃからこの2人には話しておいたほうが良いと、ワシは言ったんじゃ」


「ええい! 他人のせいにするでない! 『教えておくと、演技っぽくなるから』という意見に、お主も同意したではないか!」


 ロスター・ローザリィ社長の非難に、反論するヴィアルゼ・スヴェール大統領。


 この2人は、大統領がまだヴォクサー社の社長だった頃のライバル同士。


 ちょっとしたことですぐに意地の張り合いを始めてしまう、仲がいいんだか悪いんだか良く分からない関係で有名だ。




 ぎゃあぎゃあ言い争うジジイ達を横目に、エリーゼ・エクシーズがアレク達に語り始めた。


「私も2人には、教えておくように言ったのよ。でないと危な過ぎるわ。本気のアレクとスーテラが駆るMG-2に、GR-1で挑むなんて。あなた達は銃火器なしで、ちょっと攻撃したらすぐ撤退する予定とはいってもねえ」


「やっぱ昨日の銀ピカGR-1の襲撃部隊は、ルータス解放軍の面々か……。エリーゼちゃん、操縦上手くなったな~」


「死ぬかと思ったわよ。アレク。あなたにはいつか、リベンジするんだから。互角の機体で、勝負してね」




 アレクとエリーゼのやり取りを聞いていたスーテラは、大統領達に確認した。


「要するに、昨日の襲撃は『自作自演』なのですね?」


 大統領が(うなず)く。




「ポルティエからの情報では、元ルータス王国の首都エランに大規模なマシンゴーレム部隊の集結が始まっておる。近いうちに、リースディア帝国が仕掛けてくることは明白じゃ。しかしいまだに共和国議員の中には、開戦に腰が引けておる者もいる」


 そこで大統領は、リビング中央のテーブルに置いてある魔道具を操作した。


 空中に映し出された映像は、マシンゴーレムの戦闘動画。


 銀色のGR-1〈リースリッター〉に斬りかかられる、ローザリィ社のMG-2〈ユノディエール〉。


 昨晩ローザリィ社のマシンゴーレム試験場で、撮影されたものだ。




「こいつを共和国議員達が見れば、(まん)(じょう)(いっ)()で帝国への宣戦布告が決まる。それにこの映像があれば、魔国ディトナやフォーウッド精霊国にも開戦の正当性を主張しやすい。……ま、帝国は自作自演だと騒ぐだろうがな」


 大統領は、人の悪い笑みをニヤリと浮かべた。


 彼はこの時を、ずっと待っていたのだろう。


 愛する娘、イレッサ。


 その夫であり、大統領の親友でもあったセブルス・エクシーズ。


 大切な2人を奪った、帝国への復讐の時を。




 大統領の隣には、息子であり現ヴォクサー社の社長であるヴィヴィオがいた。


 彼は感情を殺した目で、動画を見ている。


 父親のあからさまな怒りに隠れがちだが、彼も姉を奪われた怒りと悲しみを胸に秘めていた。




「やっと、この時が来たわね……。ルータスは、私のものよ。返してもらうわね」


 自ら女王への即位を宣言したエリーゼの発言は、いかにも王族らしい内容だった。


 しかし言葉とは裏腹に、彼女の声は静かで(むな)しさに満ちている。


 ルータスを奪回しても、彼女が大切にしていた家族は戻ってこないからだ。




「仕事だからな……。悪く思うなよ、荒木。ニーサ陛下。レクサ将軍。グレアムさん……」


 賢紀はテスラの大森林で共闘した面々を、思い出していた。


 楽しかった建国祭の記憶を、むりやり胸の奥に押し込める。




 「仕事だから」と言ったが、賢紀が戦う理由はそれだけではない。


 エリーゼ、アディの故郷を取り戻したい。


 この世界に来て、最も長く過ごしたイーグニース共和国を守りたい。




 だから――




「俺は自由と解放を(つかさど)る神、フリード神の使徒ケンキ・ヤスカワ。リースディア帝国を打ち倒し、フリード神への信仰を取り戻すのが使命だ」


 初めてイーグニース共和国の重鎮達に、()(じょう)を明かした賢紀。


「だがこれは、俺自身の意思だ。信徒エリーゼと共に、ルータス王国を奪回する」




 いつも平坦な口調で語る【ゴーレム使い】は、珍しく熱を込めて宣言した。






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






 イーグニース共和国からリースディア帝国への宣戦布告がなされてから、15分後。

 



 かつてはルータス王国の、サーブラウス公爵領と呼ばれた地域。


 そこにはイーグニースとの国境線を監視するために設営された、帝国軍の(ちゅう)(とん)()があった。


 (いっ)(しょく)(そく)(はつ)の状態だったイーグニースへのにらみをきかせるため、GR-1〈リースリッター〉が10機。

 最新鋭機であるGR-3〈サミュレー〉が、3機も配備されている。


 駐屯地としては、かなり大規模な戦力だ。




『ついに、始まっちゃいましたね。本国のほうからは、まだ何も言ってこないんですか?』


 そう無線で呼び掛けたのは、帝国の若い操縦兵(パイロット)だった。


 彼はGR-1で、駐屯地周辺を(しょう)かい(ちゅう)


 呼び掛けた相手は、(いっ)(しょ)に哨戒任務に就いていた先輩操縦兵である。




『まだだな。本国にもそろそろ、イーグニースの宣戦布告は届いたはずだがな。いくつかの無線を中継しなければならんから、タイムラグがあるのは確かだが……』


 哨戒任務中に無線での私語など、先輩である彼が(いさ)めるべき場面だ。


 しかし先輩操縦兵は、緊張感を欠いていた。


 宣戦布告から、まだ15分しか経っていないこと。


 ここ数日の偵察では、イーグニース国境警備軍に増員の動きが見られなかったこと。


 そして自分が搭乗しているGR-3の圧倒的な性能に、(まん)(しん)していたことなどが理由だ。




『俺、不安ですよ。まだ見てないけど、イーグニースにもマシンゴーレムがあるって話でしょう?』


『なーに、心配するな。いざとなったら俺と、このGR-3が守ってやる!』


 映像投影魔道機(ディスプレイ)の中で、先輩操縦兵のGR-3が頼もしく胸を叩いて見せる。


 それを見て、若い操縦兵はホッとしていた。




『ほう? その程度のチンケな機体に乗っている(ぶん)(ざい)で、ずいぶんと強気だな』


 突然無線に割り込んできた少女の声に、帝国の操縦兵2人はギョッとした。


 敵機の可能性を考え、若い操縦兵は魔力レーダーに視線を走らせる。


 だが自分のGR-1と先輩のGR-3以外、反応は見当たらない。




『誰だ!? 貴様は!? イーグニース軍か!?』


『そう問われて、バカ正直に答える敵がいると思うのか? まあいい、教えてやろう。(わらわ)の名は、マリア。さあ踊れ、()(ぼく)ども。狂乱の(うたげ)を始めようぞ』


『何だ? ……機体の制御が……乗っ取られる!? おい! 逃げろ!』


 守ると言ってくれた、先輩操縦兵のGR-3。


 その手に握られたマルチランチャーの銃口が、若い操縦兵の方を向いている。




『なんだ? 先程そやつを、「守る」とかほざいていたではないか? どうした? もっと抵抗してみせろ!』


『やめろ……。よせー!』




 若い操縦兵は、最期まで動けなかった。


 操縦席のメインディスプレイが真っ白な光で包まれるのを、ただ呆然と見つめていた。






 宣戦布告から、18分。




 リースディア帝国軍の駐屯地がひとつ、壊滅した。






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