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【解放のゴーレム使い】~ロボはゴーレムに入りますか?~  作者: すぎモン/詩田門 文【聖ドラ改稿中】
第5章 ルータス王国奪回編

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第66話 母の教え~つよいこころ?~

 わたくし、昔の夢を見ていますわね。


 「これは夢だ」と、自覚できる夢。


 確か、「(めい)(せき)()」というものですわ。




 小さかった頃の自分。

 これは、何歳ぐらいの頃でしょうか?


 金色の髪の毛をくしゃくしゃにした、小さな犬獣人の女の子。


 泣きながら、道を歩いています。


 服はボロボロで、体は()り傷だらけ。


 尻尾も垂れ下がっています。




 思い出しましたわ。


 これは、5つか6つの時。


 近所の悪ガキ共10人とケンカして、負けたのですわ。


 女の子は家の扉を開くと、叫びながら駆け込んで行きました。




「お母さーん!」


 幼かった頃のわたくし――アディ・アーレイトは、母アーリィの胸に飛び込んで行きました。


 母は泣きじゃくる幼き日のわたくしを抱きしめ、頭を()でてくれます。




 お母さん……。


 女手ひとつでわたくしを育てるなんて、大変な苦労があったでしょうに。


 そんなことはおくびにも出さず、いつもわたくしをやさしく抱きしめてくれたお母さん。


 わたくし、不覚にも泣いてしまいましたわ。


 21歳にもなって――


 でも、ここは夢の中。


 誰も見ていないから、かまいませんわよね?




「あらあらアディ、どうしたの? またケンカ?」


 恥ずかしながらわたくし、この頃から血の気が多かったのです。


 近所の悪ガキ共との抗争に、明け暮れておりました。


 そこそこケンカは強かったのですけど、この時の相手は年上の男の子達が10人。


 さすがに(かな)いませんでしたわ。


 はて?

 おかしいですわね?


 わたくしどうして、そんな無謀なケンカを買ったのでしたっけ……?




「あいつら……あいつら! お前の父親は、お母さんとわたしを捨てたろくでなしだって!」




 ああ、そうでした。


 父のことを馬鹿にされて、プッツンしてしまったのでした。


 わたくしが物心ついた時、父は(すで)に亡くなったと聞かされていました。


 全く記憶に残っていない、父の姿。


 それでもわたくしは、父を(ほこ)りに思っていました。


 母がいつも、わたくしにこう言い聞かせていたからですわ。




「アディ……。あなたのお父さんは、とっても強い人だったのよ」


「うん、わかってる。だからあいつらにも、そう言ったのに! ろくでなしなんかじゃないって、言ったのに!」




 幼かった日のわたくしは、また声を上げて泣き始めました。




「いいじゃない。私とアディは、お父さんがとっても強かったって知っている。私達を捨てたんじゃないことも、知っている。それでお父さんは、満足してくれるはずよ」


「でもわたし、(くや)しい!」


 母はわたくしの(ほお)を、そっと両手の平で包み込みました。


 母の手の感触、憶えています。


 わたくしを育てるために仕事と家事を懸命にこなし、荒れてゴツゴツした手。


 わたくしは、そんな母の手が好きでした。


 強くて、頼もしくて、そして優しい手。




 母はわたくしの瞳を(のぞ)き込みながら、穏やかな声でこう言いました。




「アディ、強くなりなさい」


「あいつらを、みんなやっつけられるぐらい?」




 母は優しく(ほほ)()みながら、首を横に振ります。




「力だけが、強さじゃないわ。『心』もよ」


「こころ? つよいこころ?」




 この時のわたくしは、母の言葉の意味がよくわかっていませんでした。


 でも今なら、少しわかるような気がします。


 きっと母のような人を、心が強い人というのでしょうね。




 ああ……。


 そろそろ夢が、()めてしまいそうですわ。


 夢でもいい。

 もう少し、母の姿を見ていたい。


 無理がたたって、この3年後には亡くなってしまった母の姿を。




 待って!


 お母さん、行かないで!


 わたし、強くなるから! 


 今度はわたしが、お母さんを守るから!




 ……お母さん!






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






「お母さん!」


「アディ、大丈夫か?」




 目の前には、男性の顔がありました。




(お父さん……?)




 (いっ)(しゅん)、そんな考えがよぎりました。


 しかし、目の前にいる男性は人間。


 わたくしの父は、獣人だったと聞いています。




 寝ぼけていた頭が、ようやく回転を始めました。


 まず、ここはもう夢の中ではありません。

 現実です。




 場所はゴーレム・トラックの荷台。


 わたくし達は作戦に備え、交代で仮眠を取っていたのでしたわ。




 目の前にいる男性は、わたくし達が信仰するフリード神の使徒。


 異世界から来た【ゴーレム使い】、ケンキ・ヤスカワ。




「うなされていたようだが、悪い夢でも見たか?」


 これは先程の「お母さん!」という叫びも、聞かれてしまったとみて間違いないでしょう。


 (ほお)には、涙の伝った跡が残っているはずです。


 空気に当って、ひんやりする感触でわかります。




 射殺しましょう。




 わたくしはとっさにそう判断し、素早く大口径のハンドガンを抜きます。


 銃口をケンキ様の(ひたい)に、ピタリと突きつけました。


 最近のケンキ様は、姫様――もう女王様ですが、姫様と呼ばせていただきます。


 その姫様に近づく、害虫の疑いありですわ。


 口封じと害虫駆除が同時にできて、(いっ)(せき)()(ちょう)というものです。




「発砲はよせ。作戦行動中だぞ」




 銃を突きつけられているのに、ケンキ様は(まゆ)ひとつ動かしません。


 この(かた)も、なかなかに心の強いお人ですわ。


 姫様は「そんなことは無いわよ。心の中は、けっこう焦っているはずよ」と、おっしゃっていましたけど。


 わたくしには、そうは見えません。




「このことは、誰にも言いませんか?」


「ああ……」




 よろしいでしょう。


 完全に、信用したわけではありません。


 ですがケンキ様を射殺しては、この戦争に勝ち目がなくなってしまいますもの。




 わたくしはゆっくりと、銃口を下げました。




「なあアディ。年頃の女の子が泣くのが、そんなに恥ずかしいことなのか?」


「わたくし、『年頃の女の子』をやっている場合ではありませんの。母との……そして姫様の母上であらせられるイレッサ様との、大事な約束がありますので」


「そうか……」




 それ以上、ケンキ様は何も言いませんでした。




 わたくしはゴーレム・トラックの後部にある扉を開け、外に出ました。


 トラックの(かたわ)らには、4機の人型機動兵器。


 片膝を地面に着いた、駐機姿勢です。




 マシンゴーレム。




 わたくしと母の故郷ルータス王国を滅ぼした、悪夢の兵器。


 科学と魔法が混ざり合った、鉄の巨人。


 それに乗って戦場を駆けることになるとは、なんとも皮肉なものです。


 でもまあ、道具に罪はありませんものね。

 道具は使う者の心次第。


 わたくしはこのマシンゴーレムに乗って、大切なものを守ります。


 そしてあの日、失ったものを取り返します。




 必ず。






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






 イーグニース共和国の首都、スウィーフトの郊外。


 そこには、ローザリィ社のマシンゴーレム研究所・試験場がある。


 MG-2〈ユノディエール〉の開発中は、夜中までフル稼働していた。


 だが機体が完成した今は、夜中まで動いてはいない。


 深夜は虫の声が、夜の闇に静かに響くだけ。


 ――のはずだった。




「遅いぞ! アレク!」


「悪い! スーテラ! パンツが見つからなかった!」


「パンツぐらい、穿()いて寝ろ!」




 深夜の試験場には、けたたましい警報が鳴り響いていた。




 侵入者だ。




 何者かに侵入された場合、マシンゴーレムを強奪されるのは非常に危険。


 なので侵入者があった時の対応が、社則で定められている。


 宿舎で寝泊りしているスタッフはドックに集まり、テストパイロットは機体に搭乗。

 起動状態で、待機するようにと。




「産業スパイかな?」


「それなら、まだいいがな……っ! この識別反応は……GR-1が3機!」




 リースディア帝国軍のマシンゴーレム、GR-1〈リースリッター〉。


 最新型であるGR-3〈サミュレー〉への転換が進んでいるとはいえ、いまだに帝国軍の主力を務めるマシンゴーレムだ。




「マジかよ!? 帝国軍か!? 国境警備軍は、何をやってるんだ!」




 アレクが叫んでいると、操縦席(コックピット)の魔道無線機から大きな声が響き渡った。


 ロスター・ローザリィ社長の声だ。




『ガキ共! もう機体には、乗っているな!?』


「そんなデカい声出さなくても、聞こえてるって! 研究所に来てたんだな、社長」


()()()()な。それよりもアレク、スーテラ。帝国のクソ野郎共は、こともあろうか我が社にケンカを売ってきおった。民間企業だからって、ナメられるわけにはいかん。……やれ!』




 社長の爆弾発言に、さすがのアレクも引く。




「い……いいのかよ? 間違いなく、戦争になるぜ」


『奴らがここに出現した時点で、もう開戦は確実じゃ! (ふる)()とは、戦えぬか?』




 アレクは、わりと平気だ。


 帝国軍に居た頃の忠誠心は、全ての兵士の中でも最下位争いをしていた自信がある。


 しかし、スーテラはどうだろうか?


 アレクは機体の〈クリスタルアイ〉越しに、隣にいたスーテラのMG-2を見やる。




『フッフッフッ……。帝国軍……。私にセクハラとパワハラの限りを尽くしてきた、帝国軍……。シアーゼ隊長をはじめとして、ろくな連中がいなかった……。マトモだったのは、エマルツ兵団長(お父さん)くらいのもの……。今こそ、(うっ)(ぷん)を晴らす時!』


 スーテラの機体。

 そのカメラ部分に当たるゴーグルが、危険な光を宿(やど)した。






「社長~。なんかスーテラ、超()る気みたいよ」






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本作に頂いた、イラストやファンアートの置き場
解ゴー FAギャラリー

他の作者さんが書いた異世界ロボットものとのコラボ作品
スーパーなろうロボット小説大戦~天涯のアルヴァリス×解放のゴーレム使い~

本作のラスボスが、生まれ変わって主人公になる異世界転生自動車レースもの
ユグドラシルが呼んでいる~転生レーサーのリスタート~

世界樹や戦女神リースディースなど、本作と若干のリンクがある作品
【聖女はドラゴンスレイヤー】~回復魔法が弱いので教会を追放されましたが、冒険者として成り上がりますのでお構いなく。巨竜を素手でボコれる程度には、腕力に自信がありましてよ? 魔王の番として溺愛されます~

― 新着の感想 ―
[良い点] 射殺しましょう。 [一言] ふいうちで、笑いました。 すごい。アディらしい台詞(笑) 第4章あたりから、あぁ、そうそう、解ゴーって、こういう話だったなーと思い出してきました。
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