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【解放のゴーレム使い】~ロボはゴーレムに入りますか?~  作者: すぎモン/詩田門 文【聖ドラ改稿中】
第4章 エルフの里 テスラの大森林編

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第64話 女王の即位~いつ即位したのですか?~

「何? ベッツ? こんな時に……。愛の告白かしら?」




 冗談めかして言うカレラ・ジーテに、ベッツ・アーエムゲイルは真顔で答えた。


(たん)(とう)(ちょく)(にゅう)に言うと、そうだ」


「ベッツ……。あんまりストレート過ぎるのも、ムードが無いわ……。女の子からは、引かれちゃうわよ?」


 カレラは「困った人ね」と言いたげに、整った鼻からフーッと息を吐き出す。




「では、改めて……。カレラ、イーグニースに住まないか? 私と(いっ)(しょ)にだ」


 眼鏡のブリッジを指で押し上げながら、ベッツは問いかけた。


 その表情には、(かす)かな緊張が見て取れる。


「ゼフォーとローラを失ったエルフの里は、バラバラになる。大森林に引きこもっていた連中も、これからは自分達で考えて、道を決めなければならない。大森林が枯れるまで森の中で暮らす連中と、イーナクーペの街まで出てくる連中に分かれるだろうな」


 ベッツが予想する今後の展開を、カレラは静かに聞き続ける。


「君はイーナクーペまで、出てくるつもりだろう? どうせならさらに広い世界を、私と2人で見に行かないか?」




 カレラは両腕を組み、(いた)(ずら)っぽく(ほほ)()みながら答えた。


「うーん。さっきの告白よりは、マシな誘い方ね。60点。ベッツ……私、あなたのこと好きよ」


「それじゃあ……」


「でもダメ。イーグニースには、エリーゼちゃんやアディちゃんがいるんでしょう? 私は、あの子達の近くには行けない。……あなたは気付いているはずよ? ポルティエ・ナイレーヴンにセブルス・エクシーズの暗殺を依頼したのは、【テスラガード】時代の私」


「どうせ、ゼフォーの命令だろう? それにエリーゼ殿下やアディ殿が、気にしているわけがない。化け物セブは傷ひとつ負わなかったし、狙われた本人が()()としてポルティエを諜報員に雇いやがったんだからな」


 カレラは右手の人差し指と中指を立て、口(ふさ)ぐようにベッツの唇に押し当てた。




「理由その2。あなたはまだ、大事なお仕事の途中じゃなくて?」


「確かに。エセルスと、バカセブに頼まれたよ。『自分達に何かあった時には、遺伝子魔法学で子供達の力になってくれ』とね」


「少なくともルータスを取り戻して、エリーゼちゃんの政権が安定するまでは彼女に協力しないとダメよ。……そして理由その3、コレが1番大きな理由。私はここに残って、やることがあるの」


 それはベッツにとって、意外な答えだった。




「ここに? イーナクーペまで出ずに、テスラの大森林の中に残ると? 森の中に残る連中のまとめ役にでもなるつもりか? (いっ)(たい)何をする気なんだい?」


 カレラは(よう)(えん)に微笑んで、ふっくらした唇をベッツの耳に近づけた。


 彼女はそのまま、甘く(ささや)く。




「け・ん・こ・く♪」


「はあ?」




 愛する女性の前なのに、これまでの人生で最も間抜けな返事をしてしまった。


 ベッツはそう、深く反省した。






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






「はい。みんな、ちょっと聞いて」


 神殿の裏手から、表へと戻ったベッツとカレラ。


 カレラはポンポンと手を叩き、エルフ達の注意を自分に向けさせた。




「ゼフォー様やローラ様がいなくなって、とっても不安になっているのは分かるわ。だけどいつまでも、オロオロしているわけにもいかないでしょう? 世界樹が枯れた今、大森林もいつかは枯れてしまうもの」


「カレラ……。ワシらは大森林を出て、イーナクーペの街で生きていくしかないのか? しかし今さら、他の種族と共存する生活に適応できるかのう?」


 カレラの呼びかけに、1人の老エルフが不安そうにぼやいた。




「他の種族と上手く付き合う必要はあっても、無理して外の暮らしに合わせることもないと思うわ。私達は(ほこ)り高き森の民。マナの守り手、エルフですもの。その誇りは、これからも必要よ」


 この場の大多数を占めるのは、森の中で暮らしていたエルフ達。


 彼らは(みな)、不安そうな顔をしている。

 



 (いっ)(ぽう)で割と平気そうなのが、イーナクーペの街からゼフォーの葬儀に駆けつけたエルフ達だ。


 彼らはすでに、他の種族と交流するのに慣れている。


 そしてもうひとつ。

 動揺していない理由がある。




(カレラめ。イーナクーペの連中には、すでに根回しを終えているな? 私にゼフォーを止めて欲しいと連絡して来た時には、もう計画は進行中だったわけだ)


 舌を巻くベッツの前で、カレラの演説は続いていく。




「エルフとしての誇りは持ちつつ、外の種族と対等に付き合っていく必要があるわ。そのために、エルフの国家を作りましょう。名前は『フォーウッド精霊国』。精霊女王ローラ様は、消滅したわけじゃない。世界樹が枯れて、姿を現せなくなっただけ。これからも変わらずに、私達の国を見守って下さるわ」




 エルフの集団のあちこちから、歓声が上がった。




「フォーウッド! いい名前だ!」


「精霊女王(ばん)(ざい)!」


「いいぞー! カレラ、いいこと言うなあ!」




 歓声を上げていたのは、カレラが仕込んだサクラ達だ。


 だがそれに釣られて、他のエルフ達の歓声も徐々に大きくなる。




「フォーウッド!」


「カ・レ・ラ!」


「フォーウッド!」


「カ・レ・ラ!」




 場が充分に盛り上がった所で、カレラはとても重要な話をサラッと切り出した。




「とりあえず(ざん)(てい)として、私が国の代表ということでいいかしら?」


『意義無ーし!』




 ベッツはガクッとよろけた。


 普段は陰気な森のエルフ達が、あまりにも簡単に熱狂し過ぎだろう。


 まだ若いカレラを、あっさり国の代表にしてしまった。




「ま……まあカレラは【テスラガード】のリーダーを務めた経験もあるし、私とゼフォーに次ぐハイエルフの後継者候補と言われてたからな……。元から発言力はあった」


 それにしても、この鮮やかな(せん)(どう)手腕。


 本当は彼女こそ、1番ハイエルフの後継者に相応(ふさわ)しかったのではないのか?


 とんでもない女傑に()れてしまったものだと、ベッツは苦笑いを浮かべた。






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






 エルフ達がフォーウッド精霊国の誕生に湧き立つ様子を、リースディア帝国から来た3人は警戒しながら見守っていた。


 レクサ・アルシエフ将軍は()(けん)にしわを寄せ、低い声で(つぶや)く。


「これは……。まずい流れですね」


「ああ……。できればこの場でフォーウッドを国家として認め、同盟まで(てい)(けつ)してしまいたい。先にイーグニース共和国と同盟でも結ばれたら、(おお)(ごと)だからな。しかし……」


 リースディア帝国の若き女帝、ニーサ・ジテアール。


 彼女は、(にが)(むし)()(つぶ)したような表情をしている。




「ニーサの権限なら、独断での同盟締結は可能なんじゃないのか?」


 (あら)()()()()(てき)に、ニーサは頭を抱えた。




「本来ならば、そうだ。しかしフォーウッドは、エルフの国家。帝国の主流である、()(じん)(はい)(せき)()の貴族達が黙ってはいまい。奴ら全員を敵に回せば、さすがに私も退位を迫られる」


 充分に根回しさえすれば、亜人排斥派を敵に回すことなく同盟締結も可能だろう。


 帝国内の亜人を嫌う者達の中にも、エルフだけは特別視している者が多い。


 その高い魔法技術や、射手としての能力。

 人間族とは(いっ)(せん)(かく)()(ぼう)は、(しょう)(けい)(まな)()しで見られるのだ。


 エルフを欲しがる、()()()(れい)コレクターの資産家もいる。


 イースズの射撃・マシンゴーレム操縦技能を高く評価していた、軍部の人間達もいる。


 彼らを巻き込み、時間を掛けて根回しを行えば――




 しかしこれは、スピードを要する案件だ。


 イーグニースのヴィアルゼ・スヴェール大統領が、フォーウッド建国の話を聞きつけたら?


 先に同盟でも結ばれたら、今度は反ニーサ派の攻撃材料にされてしまう。


 「なぜ陛下はその場にいて、同盟を締結しなかったのか?」と。


 絶大なカリスマ性を持つニーサが統治しているとはいえ、帝国も(いち)(まい)(いわ)ではないのだ。




 イーグニースの大統領は、エリーゼ・エクシーズの祖父。


 帰国した彼女は、真っ先にフォーウッド建国の報告をするだろう。


 しかし、この大森林からイーグニース共和国は遠い。


 ここからニーサが帝国まで帰るのに比べ、エリーゼがイーグニースに帰り着くのにはかなり時間がかかる。


 それにイーグニースは共和制ゆえに、意思決定にも時間がかかるはずだ。




「中途半端な根回しになるかもしれんが、ギリギリいけるか?」


 頭をフル回転させるニーサだったが、事態はさらに予想外の方向へと爆進する。




 (りん)とした王族モードに切り替えたエリーゼが、とんでもないことを言い出したのだ。




「わかりました。ルータス()()エリーゼ・エクシーズが、正式にフォーウッド精霊国の建国とカレラ・ジーテ女王の即位を承認いたしましょう。今ここに、両国の同盟締結を提案させていただきます」




 エリーゼの隣でお茶を飲んでいたアディ・アーレイトとイースズ・フォウワードが、盛大に鼻から飲み物を噴き出す。


 飛沫(しぶき)で小さな虹が発生した。


 2人とも、美人が台無しである。




「驚いたぞ、エリーゼ。いつ、即位したんだ?」


 「驚いてる」と言いつつも全然そうは見えない様子で、(やす)(かわ)(けん)()はエリーゼに(たず)ねる。


「今よ。どうせ私以外に、王位継承権のある(けい)()は生き残っていないもの。イーグニースと帝国の戦争が始まれば、私はルータス女王を名乗り解放軍の旗頭になるつもりだったし。……ちょっと早くなっちゃったけど、問題ないわ」


 色々と、問題はありそうだ。


 だが残念ながら、それを指摘してくれる者がこの場には誰もいなかった。




「うおーっ! ルータス王国の女王が、俺達の国を認めてくれたぞ!」


「ルータスは、私達エルフを高く評価している国よ! エセルスが王家に(とつ)いだし、ベッツも研究者として高い地位にいるらしいわ!」


「知っているか? エリーゼ女王は、イーグニース大統領の孫娘でもあるんだぞ!」




 ここぞとばかりにサクラ達が、エリーゼに都合のいい情報だけを叫びまくる。




「ルータスって滅亡しなかったっけ?」


とか、


「ルータスの王様って、セブルスっていうオッサンじゃなかったの?」


 といった声は、聞こえてこない。


 そういう情報を知っているイーナクーペのエルフ達は、扇動する(がわ)に回っている。


 森の中で暮らしていたエルフ達は、外界に興味が無く情報に(うと)いのだ。


 「エルフにとって都合のいい国の女王が、自分達の国を認めてくれたみたいだ」くらいにしか思っていない。




「……やられた。我々帝国との同盟は、最初からカレラ・ジーテの選択肢になかったのだな」


 ニーサは「もうしょうがない」とばかりに、(あきら)めの(ため)(いき)をついた。




「陛下。帝国内の亜人差別を取り除くには、まだまだ時間がかかります。今のまま同盟を締結していたとしても、プライドの高いエルフ達はやがて()(はん)していたでしょう」


「もうここに居合わせた時点で、ニーサの政治的ダメージは避けられなかったってことか……」


「レクサ。瀬名。そう深刻そうな顔をするな。私の政治的ダメージは避けられなかったが、人間族存亡の危機は避けられたのだ。当面のところは……だがな。今はそれを、素直に喜ぶとしよう」




 ゼフォー・ベームダールの葬儀会場だったはずなのに、ローラの大神殿は建国祭典の場へと変化を()げつつある。




「さあ、今夜は建国の(うたげ)(もよお)すわ。エルフ族による新たな歴史のスタートを、祝いましょう」


『うぉーっ!! カレラ女王、バンザーーーーイ!!』




 どうやらエルフには、「()(ふく)す」という習慣がないらしい。


 故人ゼフォーが忘れられているようで、なんだか可哀想になった賢紀。


 ゼフォーのお墓である新しく植えられた木に向かい、【ゴーレム使い】はそっと祈った。






(ゼフォーさん。エルフ達は自分の力で、(たくま)しく生きていけそうです。あ。それとあなたの愛機〈ミドガルズオルム〉は、ドサクサに(まぎ)れて俺がいただきました。リアクターの魔石もエルフじゃないみたいですし、返さなくてもかまいませんよね?)








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ユグドラシルが呼んでいる~転生レーサーのリスタート~

世界樹や戦女神リースディースなど、本作と若干のリンクがある作品
【聖女はドラゴンスレイヤー】~回復魔法が弱いので教会を追放されましたが、冒険者として成り上がりますのでお構いなく。巨竜を素手でボコれる程度には、腕力に自信がありましてよ? 魔王の番として溺愛されます~

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