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【解放のゴーレム使い】~ロボはゴーレムに入りますか?~  作者: すぎモン/詩田門 文【聖ドラ改稿中】
第4章 エルフの里 テスラの大森林編

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第61話 もうひとつの使命~ベストな選択ですか?~

「今頃ノコノコと……。何しに出て来やがった? ババア……。私に滅ぼされるために出てきたのか? なかなか(しゅ)(しょう)な心がけだな。ゼフォーに妙なことを吹き込んだのは、貴様か!?」


 敵意剥き出しで、ベッツ・アーエムゲイルが()える。




 (いっ)(こう)の前に現れたのは、歳の頃12~13歳くらいの少女。


 服装は、薄い白色の()(ごろも)


 (ほたる)のような光の粒子を引き連れながら、宙にふわふわと浮遊している。


 明らかに、普通の人間ではない。


 念話で全員の脳に直接話しかけてきた彼女こそ、精霊女王ローラだった。

 

 自分達エルフ族の信仰対象だというのに、ベッツはローラをババア呼ばわり。


 その(あげ)()、自身が使える最大級の雷魔法を組み上げていく。


 ()る気満々だ。




「ちょ、ちょっと!? ()めなさい、ベッツ! 今の弱体化している私がそんな魔法受けたら、本当に消滅しちゃうんだから!」


 本気で消滅の危機を感じたローラは、悲鳴を上げた。


 念話による意思の()(つう)をやめ、肉声でだ。




「ああ、何ということでしょう……。ちょっと前までは、私を母親みたいに(した)ってくれていたというのに。ゼフォーと(いっ)(しょ)に、『ローラ様~、ローラ様~』と」




 話を聞いていた(やす)(かわ)(けん)()は、何だか反抗期の息子と子離れできない母親のようだと思った。




「70年も前のことを、『ちょっと前』とか言うな。私の黒歴史だ、忘れろ。それよりも貴様はゼフォーに、人間族を滅ぼすよう指示したのか?」


「それは誤解です。確かにゼフォーがハイエルフを継いだ時、人間族の危険性について語ったことがあります。ゼフォーは『ならば人間族は、滅びるべき種族だというのですか?』と、問いかけてきました」


 ローラは目頭を指で押さえながら、話を続ける。


「私はゼフォーに、少し様子を見るよう言ったのです。まさか、こんなに早く行動を起こしてしまうとは……」


「ゼフォーがハイエルフを継いだ時ということは、もう23年も前だろう? 300年生きるエルフの時間感覚からすれば、短いのかもしれない。だがゼフォーは、若いエルフ。23年は、かなり長く感じただろうさ。これだから、何千年も生きている奴は……」


 ベッツは(あき)れ、深い(ため)(いき)をついた。




「なぜ、ゼフォーを途中で止めなかった?」


「私が予想以上の速度で急激に力を失い、ゼフォーとの交信さえできなくなってしまったのです。こうして姿を現せたのは、最後の力を振り絞ったから」


 いつもむっつり顔の賢紀を除き、その場にいる全員の表情が凍りついた。


 「最後の力」という、言葉に反応して。




「世界樹は、もう間もなく枯れます。……寿命です」




 精霊女王による、衝撃の告白。


 同時にローラが背にしていた世界樹の枝が、大きな音を立てて裂ける。


 ズン! と重い音を立てて、枝は大地へと落下した。




 魔力の源である魔素。

 負のエネルギーである瘴気。


 世界樹はそれらを取り込んで、自然・生命エネルギーであるマナに変換する役割を持っている。


 他の植物も、その役割の(いっ)(たん)(にな)ってはいる。


 だが世界樹と周囲に発生する大森林に比べたら、その働きは()()たるものだ。


 世界樹が枯れてしまえば、この世界において重要なエネルギーのバランスが崩れる。


 魔素と瘴気ばかりが増大し、生命は滅亡へと向かう。




「世界の危機を回避するために、私は最後の力を振り絞ってあなた(がた)の前に姿を現したのです」


「それで? その、回避する方法とは何だ? どうせ、ろくな方法ではあるまい?」


「ベッツ……。エルフ達の伝承では、もう途絶えてしまっているかもしれませんね。ハイエルフはエルフ達の(おさ)。精霊女王による、(てん)(けい)の受け手。それ以外に、もうひとつの重要な役目があるのは知っていますか?」


「知るか! 母メルツェーデスは、ハイエルフの仕事をあまり話さなかった。私は継ぐ気が、ゼロだったからな」


「ハイエルフ、3つ目の使命……。それは世界樹が枯れる時に、新しい世界樹の(なえ)(どこ)となること」


「ゼフォーは、もう()った。(なき)(がら)でも、苗床にすることは可能なのか?」


 その場にいた全員に、嫌な予感が流れる。


 おそらく、ハイエルフの死体では無理だ。


 ハイエルフの後継者は、精霊女王ローラの指名で決まるという。


 この場にいる、ハイエルフとして充分な資質を持ったエルフと言えば――




「ベッツ・アーエムゲイル。あなたをハイエルフの後継者に指名します。新たな世界樹の種子となる私と共に、大地に根を張り、(すえ)(なが)くこの星を見守りましょう」


「ふざけるな! 死んでもごめんだ!」


「このままではすぐに、世界は滅びてしまいます。わがままは、通りませんよ!」




 ローラがゼフォーの亡骸に手のひらを向けると、その体から光の塊が飛び出す。


 それがエルフをハイエルフに変える何かであると、全員が瞬時に察した。




 光の塊をベッツにぶつけるべく、ローラが彼の(ほう)を向いた瞬間――




「【ライアットサンダー】」




 ベッツによる手加減抜きの雷魔法が、ローラを襲った。




 稲妻の嵐が容赦なく暴れ狂い、あどけない少女姿の精霊女王を包み込む。




「ぎゃああああっ! な……なんてことをするの!? あやうく消滅するところでしたよ!? エルフが信仰対象である精霊女王を魔法でぶっとばすなんて、(ぜん)(だい)()(もん)です!」


「ああ、言ってなかったな。私はルータスに渡ってから、フリード神の信徒になった。もう、精霊信仰者ではない」


 精霊であるローラの体は、マナと魔力の結晶体で構成されている。


 実体は、ないはずだ。


 なのに体のあちこちが焼け焦げ、長く美しかった髪はボリューミーなアフロヘアーへと進化を()げていた。


 体を構成するマナと魔力をかき乱されて、ダメージを受けた姿を再現したのだろう。


 フリード神の使徒である賢紀は、心の中でベッツにお礼を述べる。


 「フリード教に入信いただき、(まこと)にありがとうございます」と。


 他の者達は両手で口を押さえ、必死で笑いを(こら)えていた。


 ローラのアフロヘアーは、インパクト絶大過ぎる。

 



「くっ! こんなことをしている時間は、無いというのに……。ならば、仕方ありませんね。ベッツのことは、(あきら)めます」


 精霊女王の言葉に、ベッツを除く全員の気が(ゆる)む。




 イースズ・フォウワードは相変わらず口元を押さえ、笑いを堪え続けていた。


 ハーフエルフである自分に、ハイエルフの後継問題は関係ないと思っていたからだ。


 そう思って油断していなければ、いつものようにひらりと回避できていたはずだった。




「避けろ! イースズ!」




 ベッツが警告するが、イースズの反応は(いっ)(しゅん)遅れてしまう。


 彼女が目線を上げた時にはもう、光の塊が体の中に吸い込まれてしまっていた。




「イースズ・フォウワード。……いえ、イースズ・アーエムゲイル。次のハイエルフは、あなたです」






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






 あっ、わかる……。


 精霊女王との、つながりを感じる。


 今のあたしは、エルフでもハーフエルフでもなか。


 別の何かになっとるばい。




「馬鹿な!? イースズは、ハーフエルフだぞ!? 混血児や他の種族との子を身ごもったエルフは、ハイエルフとしての資質を失う。だからこそ、(はく)(がい)されてきたのだろう!?」


 ベッツ兄さんはものすごく怒って、精霊女王に食って掛かっとる。


 なんか、それが(うれ)しか。




「普通はそうです。混血児は、エルフとしての長所が薄れるケースが多い。しかし、彼女は例外です。よほど特別な種族との混血なのか、純血の歴代ハイエルフよりも強い力を感じます」




 何かあたしは、精霊女王って好きになれんばい。


 自分の考えを、(いっ)(ぽう)(てき)に押し付けてくるし。


 母さんがエルフの里を追い出されたのも、こいつが言いだしっぺって聞いとる。


 それば今さらあたしをハイエルフの後継者にするなんて、ずいぶん虫のよか話と思うったい。




「イースズ。今すぐ世界樹から、離れるんだ。テスラの大森林から出れば、自動的にハイエルフの力は無くなりこのババアの元へと戻る。森林内のヒキコモリエルフ達の中には、喜んでハイエルフになりたがる変態も多い。そいつらに、勝手にやらせておけばいい」


 兄さんはあたしが世界樹の苗床にならんで済むように、必死で色々と考えてくれとる。


 でもそれを否定するようなことを、精霊女王の(ばあ)さんは言い出したったい。


「ダメです。強い力を持ったハイエルフでないと、苗床としての役割を果たせません。現在このテスラの大森林でその力を持っているのは、あなたとイースズ。ぎりぎりで、カレラ・ジーテも合格といったところです。カレラに、苗床の役目をやってもらいますか?」


「……っ! ならば私がハイエルフを継ぐ。今すぐ力を、私に移せ!」




 あー。

 今の反応で、わかったばい。


 たぶん、兄さんはカレラさんのことが……。




「イースズに力を移してみて、わかりました。彼女の(ほう)が、あなたより力を持っています。より力の強いハイエルフが苗床になった方が、世界樹の成長も早い。世界のエネルギーバランスも、早期に安定することでしょう」


 精霊女王の婆さんは、ニコニコしとる。


 なんかそれが、腹立つばい。




「イースズがハイエルフになるのが、この世界にとってベストな選択なのです」


 婆さんはそう言うばってん、世界樹になってずっとここいるのは(いや)たい。


 もっとケンキさんやエリーゼちゃん、アディちゃんと(いっ)(しょ)に冒険して、大陸中の色んな場所に行ってみたか。


 兄さんともまだ会ったばかりで、話したかことがいっぱいある。


 母さんのこととか。

 エルフのこととか。

 これまでの人生とか。



 

 きっとあたしが世界樹になっても、みんな時々会いには来てくれる。


 でも――


 長い寿命を持つ世界樹のあたしより、みんな先に死んでいく。


 考えただけで、それは(さみ)しか。




 ばってん――




 マナが()(かつ)して、魔素と瘴気だけになった世界。


 それは人も動物も、魔物すらも生存できん世界たい。


 そんな世界でエリーゼちゃんが。


 アディちゃんが。


 兄さんや、イーグニースのみんなが。


 そしてケンキさんが、苦しみながら死んでいく。


 そんな世界、あたしは許容できん。




 絶対に!






「よかよ。あたしが世界樹になる」






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世界樹や戦女神リースディースなど、本作と若干のリンクがある作品
【聖女はドラゴンスレイヤー】~回復魔法が弱いので教会を追放されましたが、冒険者として成り上がりますのでお構いなく。巨竜を素手でボコれる程度には、腕力に自信がありましてよ? 魔王の番として溺愛されます~

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