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【解放のゴーレム使い】~ロボはゴーレムに入りますか?~  作者: すぎモン/詩田門 文【聖ドラ改稿中】
第4章 エルフの里 テスラの大森林編

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第48話 帝国の新型機~意味無くないですか?~

 雨のように降り(そそ)ぐ、矢の群れ。




 それを見た(やす)(かわ)(けん)()(のう)()をよぎったのは、死の覚悟でも恐怖でもない。


 「もったいない」、という思いだった。




 飛んでくる矢は、魔力を帯びている。


 素晴らしい魔力伝導効率から(さっ)するに、質のいい()(こう)を素材にしているのは間違いない。


 それをこのように大して狙いもつけず、雨あられと放つなど――


 ケチ――もとい物を大切に使う精神が(てっ)(てい)している賢紀にとっては、(ふん)(がい)ものの攻撃方法だった。


 アディ・アーレイトも、弾薬を大量に消費するスタイルではある。


 だが狙いは正確だし、無駄弾はほとんどない。




「アディに比べて、この【テスラガード】共ときたら……」




 小型無人マシンゴーレム、〈トニー〉は不要。

 賢紀はそう判断して、【ファクトリー】に収納した。


 代わりにとあるゴーレムを1体取り出し、ひっそりと放つ。


 そして飛来する矢の雨に、その身を(さら)した。




「いただきます」


 手を合わせて(つぶや)く、【ゴーレム使い】。




 彼は飛来する矢を、そのまま【ファクトリー】へと収納した。




 賢紀の身体を中心に、矢の無いドーム状の空間がぽっかりと形成される。




 ゴーレム操作中で動体視力が上がっている賢紀なら、矢ぐらいは見切って【ファクトリー】に収めてしまうことが可能だ。


 銃弾並にスピードのある飛び道具は、認識できないので無理だが。




「やはり、高品質の魔鋼だったな。俺がマシンゴーレムの材料として、再利用してやる」




 【ファクトリー】内で、矢の解析を(いっ)(しゅん)で終えた賢紀。


 彼は良質な材料をゲットしたことを、内心でほくそ()んだ。

 



 心にゆとりができた賢紀は辺りを見回し、戦況を確認する。




 まずは先頭にいた、(あら)()()


 彼は強力な光の障壁魔法を使用し、降り注ぐ矢を弾き返していた。


 自分だけでなく、味方ほぼ全員を守っていたのだ。


 ほぼというのも、賢紀だけは障壁魔法の範囲外である。


 自分がしれっと範囲外にされていたことに、【ゴーレム使い】はちょっとムカついた。




 エリーゼは、矢の雨の中を猛スピードで走っていた。


 走りながらも、彼女は矢を的確に斬り払う。


 エリーゼの長剣はやや長く、取り回しは決して良くないはずだ。


 だが縦横無尽に走る剣閃から、不自由さは全く感じられない。




 レクサはもっと凄かった。


 両手に構えた(ふた)()りの剣は、完全に左右独立した動き。


 次々と矢を斬り払う。


 しかも風魔法でカマイタチを作り出し、矢をまとめて切断していく。


 まるで脳が、3つはあるような処理能力だ。




 同じ剣士でも、ニーサ・ジテアールは少しタイプが違う。


 悠然と歩きながら、矢を斬り落としているようだ。


 「ようだ」というのも、賢紀にはニーサの動きが(かす)かにしかわからない。


 右手がぶれたかと思った瞬間には、矢は斬り落とされていた。


 刀は確かに抜かれたはずなのに、いつの間にか再び(さや)へと納まっている。


 手数が足りない分は、無数の小さな氷の板で矢を防ぐ。


 魔法で、空中に生み出したものだ。 


 剣の腕だけでなく、魔法の腕も相当なものだと賢紀は(しん)(かん)した。




 イースズ・フォウワードは、風の魔法で矢の群れを()らしていた。


 (かん)(げき)()って、次々と矢を放つ。


 矢に込めた魔力量は、【テスラガード】の射手達とは比べ物にならない。


 鮮やかな紫色の光が帯となり、森の奥へと吸い込まれていく。


 かなりの間を置いて、聞こえる悲鳴。


 イースズの矢が、的確に標的を(つらぬ)いている証拠だ。




 アディ・アーレイトの姿は見えない。


 彼女は最初に矢の大群が押し寄せて来た時、賢紀の視界から消えた。


 木々を蹴りながら、駆け上がって行ったのまでは確認している。


 時折聞こえる大口径ハンドガンの銃声と、エルフ達の絶叫。


 「アサシンスレイヤーは、今日も元気にスレイしているな」と、賢紀は(のん)()な感想を抱いていた。




「おい! 矢を集めてばっかりいないで、戦えよ! 安川!」


 光の障壁で味方を守りつつ、様々な属性の魔法で【テスラガード】達の数を減らしていた瀬名。


 彼は(いら)()たしげに、賢紀へと向かって叫んだ。




「もう戦っている。気付いていないのか? 俺が遠隔操作で、ゴーレムを放っていることに」




 賢紀の【ゴーレム使い】の能力は、日々進化を続けている。


 度重なる実戦と、【ファクトリー】でのマシンゴーレムの開発・修理。


 超人的な魔力操作を必要とする、マシンゴーレムのマニュアルコントロール。


 脳の処理能力の限界を超えた、センサー類との【直結(フルコンタクト)】等々。


 能力が(みが)きあげられるには、充分な経験を積んできた。


 おかげで最近では、かなり離れたところからゴーレムを遠隔操作できるようになってきたのだ。


 複雑な構造で、マシンゴーレム並みの出力を持つ〈トニー〉はまだ難しかったりするが。


 単純構造のゴーレムなら、遠距離からでも精密に動かせる。


 


「いきなり敵の()(はい)が消えているのは、(きみ)()(わざ)か? 悲鳴すら聞こえない」


「ああ。この『ウォーターゴーレム』を使って、(ちっ)(そく)させている」


 飛んでくる矢の数が減ってきたので、処理能力に余裕ができた賢紀。


 彼は先程放ったものに加えて、もう1体のウォーターゴーレムを出現させた。


 ウォーターゴーレムは蛇のような形状になり、(いっ)(たん)賢紀の体に巻きつく。


 その後は人型となり、主人の隣に(たたず)んだ。


 のっぺらぼうな顔だが、なぜか口だけはある。


 ニヤリと(こう)(かく)を吊り上げていた。




 このゴーレムのヒントになったのは、ランボルトの()(みつ)な爆炎魔法だ。


 先日魔物の掃討大会にて、元宮廷魔道士筆頭は目標の脳だけを破壊してみせた。


 あれに比べると、ウォーターゴーレムの運用は簡単だ。


 敵の鼻や口から侵入し、肺を水で満たすだけでよい。




 賢紀は制圧を早めるため、2体目のウォーターゴーレムを敵にけしかけた。


 ゴーレムは、地面に薄く延びる。


 (こけ)の間に(しん)(とう)し、ほとんど視認できなくなった。


 そのまま音も立てずに、スルスルと森の奥へと進んでゆく。




「暗殺向きの能力だな……。君の能力ってホント、主人公っぽさとか神の使徒らしさとかは(かい)()だね」


「うるさい、ほっとけ。俺は最近、この加護を気に入ってきたんだ……お?」




 賢紀の耳に、良く聞きなれた音が(かす)かに届く。




 ジェットエンジンの吸気音に良く似た、(かん)(だか)い音。




「安川……。これはまさか……?」


「【ゴーレム使い】の俺が、聞き間違えるわけがない。〈トライエレメントリアクター〉の吸気音だ」


 マシンゴーレムの動力源たる、〈トライエレメントリアクター〉の吸気音が聞こえるということ。


 それはすなわち――




「エルフがマシンゴーレムを保有しているなんて、カレラさんは全然話していなかったぞ」


「帝国にも、そんな情報は入っていない。帝国(ウチ)のGR-1を、()(かく)したのか? 安川がパクったと思われていた内の何機かは、エルフが入手していたと?」




 賢紀は吸気音のする方向に意識を向け、魔力の流れを注意深く観察する。


 【ゴーレム使い】の能力成長に(ともな)い、【ゴーレム解析(アナライズ)】も進化している。


 直接手で触れなくても、(おお)(ざっ)()な情報なら読み取れるようになってきていた。




「違うな……。GR-1じゃない。リアクターの出力が、GR-1の2倍はあるぞ。数は……15機だな」




 【テスラガード】の弓兵達を倒し、戻ってきていたパーティの面々。


 賢紀の発言を受けて、彼らの顔に(きん)(ちょう)が走る。




「こちらもマシンゴーレムを出そう。さすがに2倍の出力差がある15機が相手では、GR-1では勝てぬだろう。GR-()の使用を許可する」


「何? GR-()だと?」


 ニーサの言葉に、賢紀が激しく反応した。


 帝国新型機の存在に、彼のロボット・オタク・スピリットは激しく燃え上がる。


「スペックは? 何か(ざん)(しん)な機構はあるのか? 見た目はどんなデザインだ? ペットネームは決まっているのか? 開発コンセプトは? GR-1とのキルレートはどうなっている? とにかくこの【ゴーレム使い】さんに、いちど見せてみなさい」


 両手を変態的にワキワキさせながら、ニーサに詰め寄る賢紀。


 ()(かん)を覚えた女帝は、思わず1歩後退した。




「ニーサ! 絶対そいつに、〈サミュレー〉を触らせるな! 【ゴーレム使い】の能力で、機体情報を丸裸にされるぞ!」


 自分の(たくら)みを(ばく)()されて、賢紀は舌打ちした。


 しかし瀬名がペットネームだけは()らしてくれたので、ちょっと収穫だったと喜んでいる。




「そっちも、イーグニースの新型があるんだろう? こっちも新型を見せるんだから、そちらも出してくれ」


「いやだ」


 瀬名の提案に、ごねた賢紀。


 あんまりな【ゴーレム使い】の返答に、その場にいた全員が(こし)(くだ)けになる。




「ケンキ! ごねてる場合じゃないでしょう! ……ほら来た!」


 エリーゼの指差す方向から木々を掻き分け、マシンゴーレムが出現した。


 針金のように細いシルエットを持つ機体だ。


 【ゴーレム使い】でなくても、ひと目でわかる。


 これまでに量産された帝国のGR-1〈リースリッター〉とも、イーグニースの新型機MG-2〈ユノディエール〉とも全く違った系統のマシンゴーレム。


 エルフが独自に開発した機体と見て、間違いなかった。




「くっ! 俺が時間を(かせ)ぐ! その間にみんなは、マシンゴーレムに搭乗するんだ!」


 瀬名はそう叫ぶと、2機のマシンゴーレムを【アイテムストレージ】から出現させた。




 ルビーのように輝く赤い機体には、ニーサが。


 森林迷彩色に塗装されたもう1機には、レクサが搭乗した。


 2人がリアクターを起動させると、莫大な魔力が生み出される。


 追ってくるエルフのマシンゴーレムよりも、はるかに大きい出力だ。


 〈クリスタルアイ〉を輝かせ、2機のGR-3は静かに立ち上がった。


 そのしなやかな動きを見て、賢紀は確信する。


 MG-2と同じく、人工筋肉を使った次世代型マシンゴーレムだと。




 イーグニースのMG-2と同じように、全高は8(メートル)以上になっているだろう。


 頭身はGR-1と比べて伸びているが、機体の四肢がMG-2より太い。


 装甲の厚さと人工筋肉の搭載量は、こちらの機体が上だと思われる。


 鋭い目つきの双眼式〈クリスタルアイ〉が、(にら)みを利かせている。


 (いっ)(ぽう)口元はシャープで、すっきりとしたデザインだ。


 両肩や腰部の装甲板は、小さなものが何枚かずらし重ねて装着されている。


 そのシルエットは、「鎧武者」を連想させた。




「なるほど。〈サミュレー〉……サムライというわけか。ニーサ帝の日本刀といい、荒木が帝国に日本の文化を持ち込んだようだな」


 感心して(うなず)く【ゴーレム使い】に、帝国の【英雄】が叫ぶ。


「のんびり観察していないで、君達も早くマシンゴーレムに乗ってくれ!」




 瀬名は時間を稼ぐために、敵機に向かって走り出した。


 生身のままだ。


 走りながら瀬名は、剣に膨大な量の魔力を込めた。


 魔力伝導により、愛刀【神剣リースディア】は眩しく輝く。


 青白い光の刃を振りかざし、瀬名は針金ゴーレムに向かって(ちょう)(やく)した。




「ハアッ!」




 驚くことに瀬名は、針金ゴーレムの胴体を真っ二つにした。


 生身で、しかも単独でのマシンゴーレム撃破。


 これはエリーゼの父セブルス・エクシーズ王に続く、大陸史上2人目の偉業だ。


 しかもセブルス王は深手を負いながらだったのに対し、瀬名は無傷での撃破である。


 それを見た賢紀は、疑問を口にせずにはいられなかった。





「あいつ、マシンゴーレムに乗る意味無くね?」






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世界樹や戦女神リースディースなど、本作と若干のリンクがある作品
【聖女はドラゴンスレイヤー】~回復魔法が弱いので教会を追放されましたが、冒険者として成り上がりますのでお構いなく。巨竜を素手でボコれる程度には、腕力に自信がありましてよ? 魔王の番として溺愛されます~

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