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【解放のゴーレム使い】~ロボはゴーレムに入りますか?~  作者: すぎモン/詩田門 文【聖ドラ改稿中】
第3章 獣人の国 ビサースト獣人国連邦編

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第42話 友情の銃弾~「たぶん」って何だ!?~

『う~ん。こら、イカんばい』




 操縦席の魔道無線機越しに聞こえる、イースズ・フォウワードの不満げな(つぶや)き。


 それを聞いて、(やす)(かわ)(けん)()は疑問に思った。


「どうした? 敵機の頭を、見事に吹き飛ばしたように見えたぞ?」


 イースズの放った76mm(ミリ)狙撃砲〈ヨイチ〉の砲弾は、リースディア帝国軍のGR-1〈リースリッター〉を正確に()()いて撃破。


 それを賢紀は、カメラのズーム機能で確認していた。


 彼の目には、文句のつけようのない完璧な狙撃(スナイプ)に見えたのだが――




『下に5cm(センチ)もズレたばい。あぎゃんとは、外れたのと変わらん。火器管制システム(FCS)が、ポンコツ(ちゃんから)じゃなかとね?』


 狙撃仕様GR-1には、賢紀が開発した自慢のFCSが組み込まれている。


 高性能な魔道演算機(エーテルプロセッサ)が、これまた高精度なセンサーから得た気温や湿度、風向き、機体の振動等を(かん)(あん)


 自動的に照準補正を行う、(すぐ)れものだ。




「ホントか? どれ……」


 今回賢紀が乗っているGR-1にも、同じFCSが組み込まれている。


 賢紀は自分も狙撃砲で、帝国軍のGR-1を撃ち抜いてみた。


 FCS動作確認のためだ。




「全然問題無いと思うぞ? 狙い通り、〈クリスタルアイ〉のド真ん中をぶち抜いた」


『ド真ん中ってね? 今のも上に、3cm(センチ)ズレとったよ。ちょい、FCSをカットして撃ってみるけんね』




 「試射」のためにまた1機、帝国軍のGR-1が犠牲になった。




『右に1cm(センチ)……。ごめん、FCSのせいだけじゃなかごた。マシになったばってん、あたしが狙撃砲にまだ慣れとらんのもあるばい。ライフル弾の回転の影響も、考慮せんとといかんね』


(俺の自信作であるFCSが、邪魔だというのか? イースズ! おそろしい子!)


 相変わらずのポーカーフェイス。


 しかし脳内では某少女マンガの元女優先生のような表情をして、賢紀はイースズに()()の念を(いだ)くのだった。




 ちなみに2人が狙撃しながらFCSについて議論していた場所は、攻撃目標から約3km(キロ)も離れた山上であった。






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






 帝国のマシンゴーレム部隊は、浮き足立っていた。


 彼らの任務は、ビサーストからイーグニースへの脱走を図る獣人のゲリラ組織を追撃。(せん)(めつ)すること。


 攻撃目標は帝国軍から()(かく)されたものらしきゴーレム・トラック4台と、護衛のGR-1が2機。


 追撃に投入された24機、全機で襲い掛かるのは()(じょう)(せん)(りょく)もいいところ。


 しかしなぜかレクサ・アルシエフ将軍からは、全戦力を惜しまず投入するようにとの指示があった。


 敵が逃げるイーグニース共和国方面には、味方である国境警備部隊が包囲網を敷いている。


 これを含めれば、合計50機近いマシンゴーレムによる(きょう)(げき)という形になる。


 追撃部隊の隊長スィーエィ・チアールは、あまりの過剰な戦力投入に疑念を抱いた。


 だが「絶対に1人も逃がしてはいけない連中なのだろう」と解釈し、黙って忠実に作戦を(すい)(こう)すると決めていた。




(ふた)を開けてみればどうだ! この化け物共を相手に、たったこれだけの戦力で足りるのか!?)




 スィーエィは敵に停止するよう、警告を発してやるつもりなどなかった。


 遠距離からの攻撃魔法で車両を焼き払ってから、残されたマシンゴーレム2機を包囲。


 接近戦で、(ふくろ)(だだ)きにしてやる予定だった。




 だが魔法の射程距離に入る前に、3機が頭部を破壊され行動不能になった。


 どこから来たのかわからない謎の攻撃で、(またた)く間にだ。


 その後も遠くから響く破裂音と共に、1機また1機と撃破されていく。




 賢紀とイースズが放つ、76mm狙撃砲の弾速が速すぎて視認できないこと。


 狙撃地点があまりに遠すぎて、見えないこと。


 それらの理由により、帝国兵達は何が起こっているのか認識できていなかった。


 何の前触れもなく、機体頭部が吹き飛ぶという理不尽な現象。


 それはもはや、神か悪魔の仕業としか思えない。




『何だ!? あの動きは!? 獣みたいに速い奴が……ぐわっ!』


『あれは「銃」ってやつか? サファイア9が、(いっ)(しゅん)でズタズタだ。……くそっ! こっちに来――』


『サファイア7、8が真っ二つだ! 何が起こってるのか、把握できない! ……えっ!?』


『敵機の両肩に、ルータス王家の紋章を確認した。……あれはルータスの亡霊だ!』




 突然頭を吹き飛ばす謎の攻撃以外にも、森の中から悪夢のような敵機が迫ってきていた。

 

 無線機から次々と飛び込んでくるのは、絶望的な報告。


 もはや報告の(たい)()していない絶叫も、多く混ざっている。


 魔力レーダーの映像投影魔道機(ディスプレイ)からは、味方を示す光点が恐ろしいスピードで消えていった。




(撤退しようにも、背中を見せたら(いっ)(しゅん)で狩られそうだ。ならばせめて、あのトラックだけでも)


 スィーエィは、単機で強引な突破を試みる。


 車両の護衛についている2機のGR-1は、森の中で暴れまわっている非常識な連中と比べると(れん)()が低い。


 彼の目には、そう映っていた。






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






エネスクス(フリーダム5)ゴリ()。そちらに獲物を、1匹通します。あなた達も獣人ならば、それくらい狩ってみせなさい』


 無線から響く、アディ・アーレイト教官の無慈悲な声。


 それを聞き、エネスクス・ホーンドとゴリは絶句した。


 彼女は実戦の中で、訓練の成果を見せてみろというのだ。




『ウホ……。マジすか? ふ……ゴリ(フリーダム6)、了解。エネスクス(フリーダム5)、トラックの護衛と……余裕があれば、援護を頼む。俺が迎え撃つ!』


 無線から聞こえたゴリの声は、かなりの緊張をはらんでいた。


 彼にとっては、初のマシンゴーレム戦。


 無理からぬことだ。




 (いっ)(ぽう)のエネスクスは、実戦2回目。


 とは言っても、(うい)(じん)の時はほとんど()()()ちによる勝利だった。


 明確な殺意を持って襲ってくる兵士相手に、どこまでやれるかは未知数だ。


 しかもすぐ近くには、守らなければならないシロン・ブガッディ達が乗ったトラックも走っている。


 感じるプレッシャーは、ゴリとさほど変わらなかった。




 アディによってわざとトラックの近くまで通されたGR-1は、頭部の形状が(いっ)(ぱん)(へい)のものと(じゃっ)(かん)(こと)なっていた。


 (さく)(てき)(のう)(りょく)が強化された、魔力レーダーの大型アンテナが目を引く。


 指揮官機だ。




 敵指揮官機は森の中から飛び出すと同時に、【ロックキャノン】の魔法を放った。


 岩の砲弾が出現し、トラックに向けて飛ぶ。




『フンガァ!』




 ゴリは暑苦しい()(たけ)びを上げながら、砲弾の進路上に割り込んだ。


 飛来する岩を、機体の魔法障壁で受け止める。


 あっけなく粉々になる、岩の砲弾。


 無論、GR-1の装甲ならダメージは(かい)()だ。




 しかし敵の指揮官も、それは想定内。




 ゴリが棒立ちになっている隙に素早く間合いを詰め、斬りかかってきた。



 得物は帝国マシンゴーレムの制式装備である片手剣、〈リネアール〉だ。


 剣で槍に勝つためには、相手の3倍技量が必要であるといわれている。


 しかし、敵指揮官機の間合いの取り方は(ぜつ)(みょう)だった。


 槍のリーチを生かすには近過ぎ、両端を使った接近戦をするには遠過ぎる。


 剣がアドバンテージを持つ距離を、(たく)みに保ちながら切り結ぶ。


 (なん)(ごう)か打ち合っていると、次第にゴリは劣勢に立たされてきた。




「伏せろ! ゴリ!」




 エネスクスは叫ぶと同時に、スナイパーライフルを発砲した。


 片膝を地面に着いた、膝撃ちの姿勢だ。


 エネスクスの言葉通り、地面に貼り付くように伏せたゴリの機体。


 その直上を、57mm(ミリ)ライフル弾が通過した。


 敵機はとっさに身を(ひね)って、致命傷を避けようと試みる。


 だが脇腹をライフル弾に(えぐ)られ、バランスを崩した。




 さらにゴリが、槍で敵機の足を払う。


 転倒した相手のコックピットブロックにすかさず槍を突き立て、完全に沈黙させた。




「ふう~。ゴリ、無事か?」


『「無事か?」じゃねーよ! 今の銃弾、後頭部をかすったぞ! もうちょっと、タイミングかコースに余裕を持たせろよ!』


「やだなー。ゴリのことを、信じていたんだよ。『当っても、たぶん死なない』ってさ」


『「避けてくれる」じゃねえのかよ! しかも、「たぶん」ってなんだ!?』


 2人の少年がじゃれ合っていると、アディの機体が接近してきた。


 近くで戦いぶりを、見守ってくれていたようだ。


 鬼教官に怒られまいと、エネスクスとゴリはじゃれ合いを中断。


 機体の姿勢を正す。




『ふむ。2人共、なかなかの戦いぶりでしたわね。あまり()()()ない戦いをするようでしたら、追加の訓練が必要かと思っていましたが』


 エネスクスはそれを聞いて、心の底から(あん)()した。


 アディやエリーゼ・エクシーズ相手のシミュレーター訓練は、地獄だ。


 思い出しただけでも、吐きそうになる。




『いえ、俺はまだまだ未熟です。引き続き、ご指導を(たまわ)りたいと思います』


 ハキハキと答えるゴリ。


 それを聞いたエネスクスは、戦々恐々としていた。


(ゴリの馬鹿! お前はドMか!? 1人で勝手に、アディさんからシゴいてもらえ!)


 そう口には出せず、エネスクスはおずおずと申し出る。


「えーと。僕はライフルの狙撃とかも覚えたいんで、ケンキさんにでも指導してもらおうかな~なんて……」




 エネスクスはケンキやイースズの狙撃技術を、今回の戦いで充分思い知ることができた。


 イースズはベアモン(なま)りが強くて、何を言ってるかわからないことが多い。


 なので狙撃については、賢紀に教わる方がわかりやすいだろうと思っている。


 もちろん、アディやエリーゼの訓練を受けたくないがための逃げだったのだが――




エネスクス(フリーダム5)……。あなた、度胸がありますわね……』


 アディの発言の意味を、この時のエネスクスは知る(よし)もなかった。


 エリーゼとアディ。

 2人の鬼教官を鍛え上げた悪魔の存在を知った時、エネスクスは深く絶望することになる。




『まだ国境側に、10機ほど残っています。片付けてきますから、あなた達は引き続きトラックの護衛を――』




 アディの言葉を(さえぎ)るように、警告音(アラート)が鳴り響く。




 新たに2機。


 味方ではないマシンゴーレムの出現を、知らせてきていた。




 レーダーに表示された2つの光点の移動スピードは、異常な速度だった。


 帝国軍のGR-1にしては、明らかに速すぎる。




『何だ!? この異常な速度は!?』


 ゴリの声は、上ずっていた。


 隣に居たアディもショットガンを構えて、緊張感を(ただよ)わせる。




安川賢紀(フリーダム1)より各機へ。新たに2機、とんでもないのが出現した』




 続けられた賢紀の言葉に、(いち)(どう)は凍りつく。






『6機がかりでも、あれには勝てない。抵抗するな』






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― 新着の感想 ―
[良い点] ゴリも鬼教官賢紀の犠牲になられましたか……
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