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【解放のゴーレム使い】~ロボはゴーレムに入りますか?~  作者: すぎモン/詩田門 文【聖ドラ改稿中】
第3章 獣人の国 ビサースト獣人国連邦編

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第39話 イースズの正体~お生まれはどちらですか?~




『ケンキー! 大丈夫ー!?』




 遠くから、拡声魔道器(スピーカー)越しの叫びが近づいてくる。


 エリーゼ・エクシーズとアディ・アーレイトのGR-1〈リースリッター〉だ。




「エリーゼ、アディ、無事だったか。無線に応答が無いし、魔力レーダーにも反応が無いから心配したぞ」


『ごめんなさい。私もアディも機体頭部を矢がかすめて、センサーや無線をやられちゃったの。相手も時間を(かせ)ぐつもりみたいだったから、私達もケンキが来るまでリアクター出力を(しぼ)って隠れていようと思ったんだけど……。緑色の奴は、こっちに来ちゃってたみたいね』




 エリーゼとアディは機体頭部を動かして、周囲を(けい)(かい)する。




『【女神の使徒】の白い機体は、どうしたの?』


「ああ、もう倒した。機体の(ざん)(がい)は、(すで)に【ファクトリー】の中だ。操縦者(パイロット)の体は、灰になった」


『同郷の人間だったでしょうに、(よう)(しゃ)ないわね~。ま、女神の使徒なんて、生かしておくとロクなことにならないと思うわ。そっちの森林迷彩色に塗られた機体のパイロット……イースズって呼ばれてた女は、生きてる?』


「わからん。これから確認する。アディは機体に乗ったままで、周囲を警戒してくれ。エリーゼは降りて、剣を構えておいて欲しい」




 (やす)(かわ)(けん)()は小型無人マシンゴーレム、〈トニー〉を呼び出した。


 黒いボロマントを(まと)った、「バレンティーノの従者」仕様だ。


 実はこのマント、優れた魔力遮断性能を持つ魔道具だったりする。


 しかし「()()えが悪いから、やめなさい」とエリーゼに言われてしまったので、【ファクトリー】の肥やしになることが決定している。



 賢紀は〈トニー〉を、イースズ機に近づけた。


 機体はアサルトライフルの連射を受けて、ボロボロになっている。


 コックピットハッチの外部開閉レバーを操作。


 ロックが外れたハッチを、〈トニー〉が持ち上げる。


 魔力供給が途絶えたマシンゴーレムのハッチは、パワーアシストが無くかなり重い。




 コックピットブロックに直撃していなくとも、被弾の衝撃は操縦席に到達する。


 破片が跳ねまわり、操縦者の体を切り刻むケースも多い。


 イースズが死亡している可能性は、充分にあった。




 賢紀は〈トニー〉の両眼である〈クリスタルアイ〉と、自分の脳を魔力で【直結(フルコンタクト)】した。


 安全に、操縦席(コックピット)を確認するためだ。


 また頭痛が襲ってきたが、安全には代えられない。




 操縦席内で、イースズはぐったりしていた。


 どうやら気を失っているようだ。


 仮面とフードが外れたイースズの素顔を見て、賢紀は驚いた。




「この長く(とが)った耳……エルフか。しかも、()()だと?」




 透き通るように白い肌。


 彫刻を超えるほど、整った顔立ち。


 エメラルド色に輝く長い髪は()()みに()われ、肩の前に垂れていた。


 歳の頃は、賢紀やアディと同じくらいに見える。


 だがエルフ族は寿命が長く、若い期間も長い。


 見た目で年齢は、判断できない。


 そして(ひたい)には、通常エルフにはありえない第3の(まぶた)があった。




 賢紀は〈トニー〉を使って、操縦席からイースズを抱き起こした。


 どうやら気絶は、演技でないようだ。




 〈トニー〉からイースズの体を受け取り、賢紀は回復魔法をかける。


 すると1分も経たないうちに、イースズは目を覚ました。




「……んっ、ここは?」




 うっすらと、イースズの瞳が開かれる。


 (そう)(ぼう)は青い瞳で、額の目だけがアメジストのように美しい紫色だった。




「気がついたか? 大きな怪我は、していないだろうな? 安心しろ、いきなり危害を加えるつもりはない」


 安心させようとする賢紀の言葉に反し、イースズは激しく動転した。


 顔を真っ赤にして、「ばっ!」と謎の叫び声を上げる。


 瞬時に賢紀の腕から飛び降り、破壊された自機の(かげ)に隠れてしまった。


 油断無く剣を構えていたエリーゼが、反応できないほどの(はや)(わざ)だ。


 賢紀とエリーゼはそーっとイースズを追いかけ、機体の裏側へと回った。


 そこでは耳まで真っ赤になったイースズが、両手で顔を覆いブツブツと呟いていた。




「どぎゃんしよう……。男の人に、お姫様抱っこされてしもうたばい……。あぎゃんこつされたら、妊娠してしまう……」


「そのぐらいじゃ、妊娠なんてしないわよ! 大体エルフの妊娠確率って、かなり低いでしょうが!」


 エリーゼのツッコミは、賢紀にとって初耳な情報だった。


 ならばエルフのエセルス妃を2回も(はら)ませた、セブルス国王の繁殖力は本物ではないのか?


 賢紀は会ったこともないエリーゼの父に、変な方向で()(けい)の念を覚えた。




「は? なんでエルフって、わかるとね? ……ばっ! 仮面! 仮面!」


 エリーゼの言葉を聞き、イースズは慌てて顔――特に額にある、第3の目を隠そうとする。


 だが仮面は、操縦席のどこかに転がっているはずだ。


 仮面を(あきら)めたイースズは、せめて第3の目だけでも隠したいらしい。


 ローブの中からバンダナを取り出して、額に巻いた。




「なあ……。なぜか俺にはイースズの言葉が、日本の九州弁っていう(ほう)(げん)に聞こえるんだが……」


『ケンキ様。それはルータス西部に位置する、ベアモン地方の(なま)りですわ』


 指向性集音魔道機(マイク)で会話を聞いていた、アディが教えてくれた。




「あなた、ハーフエルフね? なんでハーフエルフが帝国軍で、マシンゴーレムなんかに乗ってるのよ」


 エリーゼが剣をイースズに突きつけながら、(じん)(もん)を開始した。




「あたしは好きで、マシンゴーレムに乗っとったわけじゃなかとよ。戦闘奴隷だけん……」


 そう言ってイースズは、ためらいがちに首元を見せた。


 白く細い首元には似合わない、無粋な黒い金属製の首輪。


 奴隷の証である魔道具、【奴隷首輪(スレイヴチョーカー)】が()められていた。


 これには電撃魔法で苦痛を与え、無力化する機能が備わっている。


 その苦痛に抵抗し続けると、最悪死に(いた)ることもあった。


 しかもむりやり破壊しようとすると、壊れる瞬間に最大の電流が流れる仕組みになっている。


 身に着けている者の脳を焼き、心臓を停止させる程の電流だ。




「帝国軍がルータスに侵攻してきた時、真っ先にベアモンは占領されたとよ。あたしは希少なハーフエルフだけん、すぐに捕まったとばい。奴隷として、帝国貴族のコレクターに高値で売り飛ばされようとしとった」


 イースズはバンダナ越しに、額の瞳をさする。


「ばってん、三つ目魔族とのハーフだけんね……。気持ち悪がられて、買い手が付かんかったとよ。そしたら弓の腕前を買われて、戦闘奴隷にされて……。戦っとるうちに、『適性がありそうだから、マシンゴーレム乗りになれ』って……」


「お前を(したが)えていた、(あら)()()は死んだ。もう逃げて、自由にしたらどうだ?」


 賢紀の提案に、イースズは悲しそうに首を振った。




「セナさん、死んだとね……。あたしの主人として契約されているのは、セナさんじゃなか。帝国将軍のレクサ・アルシエフ。あいつが死なんと、この首輪ば外せんとよ」


「本当に、外せないのか? ちょっと見せてみろ」




 賢紀は試しに、イースズの奴隷首輪を【ファクトリー】へと収納してみた。


 首輪はあっさり消え、白く美しい首がスッキリする。




「は? 首輪……。どこに行ったと!?」


「ふむ。こういう構造と魔力回路か……。帝国の技術力も大したものだが、もう完全に理解した。契約者の書き換えも、取り付け・取り外しも自由自在だ」


「そ……それじゃ、あたしは……」


 自由の身になったことへの感激で、イースズの目から涙がこぼれそうになる。




「それとな、イースズ。俺はお前の額にある3つ目の瞳、凄くいいと思うぞ。綺麗だし、隠していたらもったいない」


 そう言って賢紀はイースズに近づき、額に巻かれたバンダナをそっとほどく。


 第3の瞳からも、涙が(あふ)れそうになっていた。


 彼女の頬はバラ色に染まり、細かく震えている。




「ちょっとケンキ! どうしたの? 変なものでも食べた?」


『ケンキ様。そのようなチョロイン女に、優しくしてはいけませんわ。もう落ちかけていますわよ?』


 イースズは胸の前で手を組み、熱いまなざしで賢紀を見つめる。


「ケンキさん、あたし……。あたし……」


「……というわけで、コレは返す」




 ガチャン! という、かつても聞いた金属音。


 それが自分の首元から聞こえる。


 イースズがおそるおそる首元を見下ろすと、見慣れた奴隷首輪が再び嵌っていた。




「契約者は、俺に書き換えてある。なに、ちゃんと働いてくれれば、苦痛を与える機能なんか使わない。……多分な。獣人以外にも、こんな有能な人材をスカウトできて良かった」


 奴隷首輪をつけてむりやり連れて行くことを、「スカウト」と言ってはばからない自由神の使徒。




「そ……、そんな……。あたしの三ツ目ばイイって言ってくれる人、家族以外で初めてだったとに……」


「……ん? 本当に、凄くイイと思うぞ? 目が3つあるということは、視野の広さや空間認識力が段違いのはずだ。俺を追い詰めた弓の(ぜつ)()も、その目によるところが大きいんだろう? 優秀な、狙撃手の資質を持っている」


 賢紀はイースズを()(たた)えるが、彼女はガックリと、地面に膝をついてしまった。




「さすがケンキ。色々と、残念な男ね」


 エリーゼは言葉とは裏腹に、なぜか安心したように(つぶや)いた。




『ああいうのを、「フラグクラッシャー」と言うのですわね』


 操縦席から告げるアディの声は、(あき)れていた。




 そしてイースズは――




「ケンキさんの奴隷? あら? 何だか、悪くなかかもしれん」


「ちょっと! ケンキ! イースズが新しい世界の扉を開いちゃったわよ!? どうするの!? ……全く! アレクといい、変なのばっかり拾ってくるんだから」






(俺がこの世界に来て、1番最初に拾った変なのはエリーゼだけどな)


 賢紀はそう思った。


 だが口に出さない方が賢明だと判断し、胸の奥に封印すると決めた。






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本作に頂いた、イラストやファンアートの置き場
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他の作者さんが書いた異世界ロボットものとのコラボ作品
スーパーなろうロボット小説大戦~天涯のアルヴァリス×解放のゴーレム使い~

本作のラスボスが、生まれ変わって主人公になる異世界転生自動車レースもの
ユグドラシルが呼んでいる~転生レーサーのリスタート~

世界樹や戦女神リースディースなど、本作と若干のリンクがある作品
【聖女はドラゴンスレイヤー】~回復魔法が弱いので教会を追放されましたが、冒険者として成り上がりますのでお構いなく。巨竜を素手でボコれる程度には、腕力に自信がありましてよ? 魔王の番として溺愛されます~

― 新着の感想 ―
[一言] ケンキも、ハーレムしてるし。 鈍いし……。 イースズFoooooo! はーしれ、はしーれ、イースズのトラック!!
[良い点] 本当に「女神の使徒」は灰になってしまったのですかね? 何かありそうな臭いがします……
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