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【解放のゴーレム使い】~ロボはゴーレムに入りますか?~  作者: すぎモン/詩田門 文【聖ドラ改稿中】
第3章 獣人の国 ビサースト獣人国連邦編

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第37話 【ゴーレム使い】の祈り~追加人員は来ませんよね?~

『……取り消せよ!』




 (やす)(かわ)(けん)()の予想以上に、(あら)()()()のプライドは傷付いていた。


 放たれる殺気の鋭さが、1段階上がる。


 元レーサーに、「操縦がヘタクソ」は禁句だったようだ。




『何度でも言ってやる。アンタの操縦はヘタクソだ。エマルツ・トーターやアレクみたいなエース格とは、比べ物に――』




 今度は無言で、斬りかかって来る瀬名。


 魔力で油圧系の動きをブーストし、瞬発力を向上させた踏み込みだった。


 しかし賢紀は、余裕で回避した。




 瀬名機は膝関節をやられているというのに、無茶な機動(マニューバ)だ。


 それだけではない。


 賢紀の(しん)(とう)(けい)モドキにより、機体内部に確実なダメージが通った。


 内部の部品には、衝撃で不具合が(およ)んでいるはずだ。




(コイツはそれに、気付いていない。自分自身の肉体が、(がん)じょう過ぎる。……多分、そういう種類の【神の加護】なんだろう。機体に対する、()(づか)いが足りない)




 現在のGR-1には、機体の不具合を自己診断する機能がついていない。


 賢紀やエリーゼ・エクシーズ、アディ・アーレイトは機体の不具合に(びん)(かん)だ。


 しかしそういうことに(にぶ)いパイロットが乗ることも、想定しなければならない。


 自己診断機能を充実させようと、賢紀は決意した。




 そんな風に開発者視点であれこれ考えている間にも、瀬名は斬撃を繰り出してきた。


 暗い岩場に、白銀の(けん)(せん)(はし)る。




 確かに速い。


 (いっ)(ぱん)(てき)な操縦兵では、すぐに切り刻まれてしまいそうなレベルの連撃だ。




「……しかし、雑だな。速いだけで、機体の動きにしなやかさがない。同じ魔力ブースト機動でも、アレクの(せん)(さい)()(みつ)なコントロールとは全然違う」


 機体の損傷抜きにしても、強引で負担のかかりそうな機動(マニューバ)だ。


 フェイントも、工夫が足りない。




 賢紀は、心が急に冷めていくのを感じていた。


 瀬名のプライドをへし折ってやりたいという気持ちが、すっかり失せる。


 いや、すでに充分へし折ったからだろうか。


 同時にマシンゴーレム乗りとしての荒木瀬名に対する、興味も薄れていく。




『俺より性能のいい機体や武器を使っているからって、図に乗るなよ!』


 それは決定的な(せり)()だった。


 賢紀が(いだ)く瀬名への興味が、「薄れる」から「無くなった」に変わる。




 確かに賢紀の機体は、改造機だ。


 見た目こそ普通でも、一般的なGR-1〈リースリッター〉よりも優れたスペックを持っている。


 しかし瀬名の白いGR-1も、それに匹敵する性能を持つカスタム機。


 部分によっては、上回ってすらいる。




 自分のような【ゴーレム使い】でもないのに、ここまで仕上げた帝国技術者は優秀。


 さすがはマシンゴーレムの開祖だと、賢紀は感心していたぐらいだ。




『道具のせいにしているようじゃ、乗り手としては三流だ。アンタ、地球でも大したレーサーじゃなかったんじゃないのか?』


 狂ったように剣撃を繰り出していた瀬名だったが、賢紀の言葉に動きを止めた。


 怒りが(ろう)(ばい)へと変わる。


『違う……。俺はやれることは全部、やってきたんだ……。それなのに……』


 何やら心の傷を(えぐ)ってしまったようだが、【ゴーレム使い】の反応は平然としていた。




『そうだ、アンタとじゃれ合っている場合じゃない。自由神の使徒として、仕事をしないとな』


 頭の冷えた賢紀は、(うで)(くら)べのスタイルからいつもの戦闘スタイルに戻す。


 武器のアドバンテージを、最大限に生かすスタイルに。


 また「ずるい」とか言われるかもしれないが、もう腕の差は明らかだった。


 これ以上、付き合う義理はない。


 速やかに決着をつけて、エリーゼやアディの援護に向かう必要がある。

 



 賢紀は瞬時に、【ファクトリー】から銃を取り出す。


 アサルトライフル〈ムアサドー〉だ。


 アレクと戦った時と違い、銃身が短い。


 近距離での取り回しを重視した、カービン仕様に改造してある。




 近距離ということもあり、賢紀は狙いよりも広範囲に弾をばら()くことを優先した。




 フルオート射撃を実行。




 貫通力強化の魔法を付与した40mm(ミリ)弾は、瀬名機全身に降り注ぐ。




 白く美しい装甲は、ボロ雑巾へと変わっていった。




 たまらず転倒する瀬名の機体に、賢紀はさらなる追い撃ちをかける。


 30発全弾を撃ちつくしたライフルを【ファクトリー】にしまい、次に取り出したのは新開発したショットガン。




 横たわる瀬名機に向けて、自機を歩ませる。


 歩みながら発砲。


 1発。


 2発。


 ――4発。




 途中で瀬名機のリアクターが機能停止し、機体への魔力供給が途絶えた。


 魔力の反応を感知するレーダーから、光点が消える。


 最後の1発は、至近距離からの射撃だった。


 コックピットブロックの分厚い胸部装甲が、たまらずに吹き飛ぶ。




 信じられないことに、操縦席(コックピット)の中で瀬名は生きていた。


 体はかなり(ひど)い有様だったが、目の光は失っていない。


 カメラ越しに、(にら)み上げて来る。




「信じられない生命力だ……。俺だったら、とっくに死んでいる。念には念を、入れた(ほう)がいいな」




 賢紀は機体左手に収納された()(ほう)(じょう)を伸ばし、虫の息になっている生身の瀬名に向ける。


 リアクター起動時なら、常時展開されているはずの魔法障壁が()()えていた。


 分厚い耐魔法装甲も吹き飛んだ今、賢紀の魔法から瀬名の身を守るものは無い。




『代わりに女神様に、謝っておいてくれ。「ウチのアホ上司が、浮気してすいませんでした」ってな。……【エクスプロード】』

 



 爆炎魔法が、至近距離から炸裂した。


 魔法障壁と耐魔法装甲により、賢紀にダメージは無い。


 だが瀬名は、当然無事では済まない。




『念のため、もう1発。【エクスプロード】』




 いくら人間離れした生命力を持っていても、瀬名の体は(すみ)(くず)と化しているはずだった。




『大サービスだ。もういっちょ【エクスプロード】』




 瀬名が復活しないか恐れたビビリな賢紀は、3発目の爆炎魔法を放ったのだった。






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






 自分の機体から降りてきた賢紀は、瀬名の生死を確認していた。




「操縦席周りだけじゃなくって、他の部分もズタボロだな。こりゃあ【ファクトリー】内で修理するのにも、時間がかかるぞ」


 ズタボロにしたのは、自分の(しつ)(よう)な射撃と爆炎魔法。


 なのに自分は悪くないかのように、【ゴーレム使い】はぼやいた。


 ついでに瀬名機の(ざん)(がい)を、ちゃっかり【ファクトリー】に格納する。




「腕の差を機体のせいにするようなヘタクソ(くん)が乗るよりも、俺達が修理して使ってやった(ほう)がこの機体も喜ぶはずだ」


 かなり身勝手な言い分だったが、残念ながらそれを(とが)める者は近くに誰も居ない。




 荒木瀬名の死体は、残っていなかった。


 状況から見て、逃げおおせたとは考えにくい。


 魔力の残りカスすら、感じ取れないのだから。


 爆散し、焼き尽くされたと考えるのが妥当だろう。




「安らかに眠れ、同じ世界から来た男よ……。そして(いくさ)()(がみ)リースディース様。どうか追加で、使徒を補充してこないで下さい」


 自分の仕える神にさえ、ロクに祈ったことのない賢紀。


 だが彼は敵対する女神様に向けて、真剣な祈りを(ささ)げるのだった。






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






 再びマシンゴーレムの操縦席に収まった賢紀は、魔道無線通信で仲間達に呼びかける。




安川賢紀(フリーダム1)だ。エリーゼ(フリーダム2)アディ()、こっちは片付いた。そちらの状況を知らせろ」




 だが無線から返ってくるのは、沈黙だけだった。




エリーゼ(フリーダム2)? アディ(フリーダム3)?」




 やはり応答がない。




 賢紀達の機体には、魔力レーダーが搭載されている。


 ビサーストに入ってから、完成させたものだ。


 これのおかげで操縦席内に居ても、周囲の魔力情報が映像投影魔道機(ディスプレイ)(すみ)に写し出される。


 膨大な魔力を放っているマシンゴーレムなら、おおよその位置は(つか)むことができるのだ。




 しかし今、コックピットには魔力反応が全く表示されていない。


 エリーゼ機、アディ機、そしてイースズ機の反応もだ。




「レーダーはまだ完成したばかりで、出力が弱いからな。仕方ない。リスクは(ともな)うが、魔法障壁をカットするぞ」


 マシンゴーレムを守り、同時に周囲の魔力を感知する(さまた)げにもなっている魔力障壁。


 それをカットすることにより、魔力レーダーはより詳細に機体位置を探知できる。


 だがそれは同時に、自機の魔法防御力を大幅に落とすという危険も(はら)んでいた。


 もちろん賢紀は、危険を充分に(しょう)()している。


 周囲を(けい)(かい)しながら、(しん)(ちょう)に魔力障壁をカットした。




 その瞬間。




 魔力レーダーに、反応が出現した。


 視界隅に、紫色の光が映る。


 賢紀はとっさに機体を倒し込み、転がりながら飛来する光を回避。


 光は機体が立っていた空間を、切り裂いた。


 GR-1の全高ほどもある大岩を(ふん)(さい)し、大地を穿(うが)つ。




 粉砕された岩が飛び散った(あと)、地面に突き刺さっていたのは金属製の矢。


 魔力を帯びて紫色に輝く、マシンゴーレム用サイズのものだ。




「荒木なんかより、仮面の女の方がよっぽど強敵だったというわけか。まあ仮面のキャラが強いのは、ロボットアニメのお約束だな」




 魔力レーダーの反応は、再び消えていた。


 イースズは感知されぬようリアクター出力を最小限に(しぼ)り、息を(ひそ)めて隠れている。


 そして自分を射抜く瞬間を、うかがっている――というのが賢紀の見立てだ。




 第2射は、まだ来ない。


 今と同じ距離から射ても、回避されるという判断だろう。


 賢紀の腕と機体の運動性なら、当然可能だった。


 向こうも矢を、無駄づかいしたくはないはずだ。


 賢紀にとって不利なことに、近くには矢を防げそうな(しゃ)(へい)(ぶつ)がない。


 瀬名と戦っているうちに、(ひら)けた場所へと出てしまっていた。






 相手は凄腕の狩人、獲物は自分。


 緊張した賢紀の(ひたい)に、(ひと)(すじ)の冷たい汗が流れた。






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本作に頂いた、イラストやファンアートの置き場
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ユグドラシルが呼んでいる~転生レーサーのリスタート~

世界樹や戦女神リースディースなど、本作と若干のリンクがある作品
【聖女はドラゴンスレイヤー】~回復魔法が弱いので教会を追放されましたが、冒険者として成り上がりますのでお構いなく。巨竜を素手でボコれる程度には、腕力に自信がありましてよ? 魔王の番として溺愛されます~

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