表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【解放のゴーレム使い】~ロボはゴーレムに入りますか?~  作者: すぎモン/詩田門 文【聖ドラ改稿中】
第3章 獣人の国 ビサースト獣人国連邦編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/150

第35話 彼女の夢~何が正しいのですか?~

「にゃっ? その声は……。エリーゼちゃんかにゃあ?」




 机の下でボールみたいに丸くなっていた、ジャニア・エクセジアル王女の震えが止まる。




「やっほー、ジャニア。お久しぶりー。相変わらず、プルプルしてるのねえ……」


 (やす)(かわ)(けん)()の背後から、ひょっこりと顔を(のぞ)かせたエリーゼ・エクシーズ。


 彼女は机の下で丸まっていたジャニアに向かい、(ほほ)()みかけた。


 ジャニアはエリーゼに尻を向けていたので、その微笑みは届かなかったが。




「助けに来てくれたのかにゃあ?」


 ようやくジャニアは振り返り、おそるおそるエリーゼの顔を見た。


 人違いでないことを確認したジャニアの表情が、パアッと明るくなる。




「助けに来たっていうのもあるし、助けて欲しいこともあって来たの。まあ話はそこにいる、(しっ)()(ぶか)い女神様の使徒を解体してからよ」


 そう言って剣を抜こうとするエリーゼを、賢紀は手で制した。




「ステイ、(のう)(きん)(むすめ)。まずはご同業である女神の使徒さんと、話ぐらいさせろ」


「初めまして……じゃないか。君はバレンティーノの姿だったけど、もう会ってるよね。俺の名前は(あら)()()()。日本人だ」




 周囲に居る獣人達は、日本人という単語の意味が理解できない。


 しかしエリーゼだけは、「やっぱりケンキと同郷なのね」と納得したように(つぶや)いた。




「安川賢紀(くん)(きみ)のことは知っているよ。歳は俺のひとつ下で、21歳。地球での職業は、建設会社の重機オペレーター。【神の加護】の種類は【ゴーレム使い】。ロボットオタク。好きな女の子は(やま)()とき……」


「待て。なんでそこまで知っている? いくら帝国の諜報部が優秀だったとしても、地球での俺の情報までは調べようがないはずだ」


「この世界に来る前に、女神様が色々教えてくれたよ。君の(よう)姿()や能力、この世界での仲間達。そしてフリード神から与えられた、使命の内容も……」




 賢紀は(ひたい)を手の平で押さえながら、(ため)(いき)をついた。




「なんて有能で、親切な上司なんだ。ウチの浮気するしか能がない上司とは、大違いだな。フリードは説明不足な上に、間違った古い情報を持たせて俺をこの世界に放り込みやがった。リースディース様と、交換したいな……」


「ちょっとケンキ!」


 信仰熱心なフリード神の信徒であるエリーゼは、(まゆ)を吊り上げて非難の声を上げた。




「無理だよ。すでにフリード神から加護を受け取っている君を、リースディース様が配下に加えることはできない。無理にやろうとすれば、女神様も存在を構成する精神エネルギーに異常をきたして消滅するかもしれない。君も体の中の加護が変異して、死んじゃうよ」


「マジか? やっぱ無しで」


 瀬名の説明を受けて、賢紀はあっさり移籍を諦めた。




「途中まで、本気だったわね?」


 エリーゼが、ジト目で(にら)みつけてくる。


 後でフリード神に密告されないかと、賢紀は心配になった。




「そう。お互いに、相手の陣営に移ることは不可能だ。君が地球に帰るためには、フリード神からの使命を(まっと)うするしかない。リースディース様にお願いしても、無理だよ。配下にならないと、地球には飛ばせないらしいからね」


「アンタもやっぱり、地球に帰りたいのか?」


 賢紀の質問に、瀬名の表情が曇る。


 彼はゆっくりと、首を振って否定した。




「俺は……色々あって、地球には帰りたくない。それにこっちで、大切な人ができたんだ。今は女神様から受けた使命よりも、そっちが大事かな。俺は、この世界で生きて行く」


「ちなみにアンタは女神様から、『どこまでやれ』と言われているんだ? フリード信徒の根絶やしか?」


「いや。俺の使徒としての使命は、『安川賢紀の抹殺』だよ。悪いけどね……」


「女神様の使命よりも、大切な人ができたんだろう? そっちを優先して、俺達のことは放っておいてくれないか?」


「その大切な人の夢のために、俺は君達を倒さなければならない」


「『大切な人』……。リースディア皇帝、ニーサ・ジテアールね?」


 横からエリーゼが問いかける。




「そうだ。帝国によるこのエンス大陸の統一という、彼女の夢。そのために俺は剣を振るい、マシンゴーレムを駆る」




「何が夢だ! 下らない! その身勝手な夢のために、何人死んだと思っているんだ!」


 ()調(ちょう)だけは(ひょう)(ひょう)としていたエネスクス・ホーンドも、ついに(げっ)(こう)して叫んだ。




「ここ数十年がたまたま平和だっただけで、この大陸の歴史は長くて(せい)(さん)な戦いの歴史よ。過去にはルータス王国やビサースト獣人国連邦が帝国を(しん)(りゃく)し、迫害(はくがい)したことだってある。ジテアール帝が争いの歴史に終止符を打つべく大陸の統一を目指したとしても、間違っているだなんて言わないわ」


 そう言いながらもエリーゼは背中の剣を抜き、(きっ)(さき)を瀬名に向ける。




「何が正しくて何が正しくなかったかなんて、(こう)(せい)の歴史家達が勝手に議論すればいいわ。私は自分の信じるものや、大切なもののためにアンタ達を斬る。アンタ達も自分の信じる夢のために、(あらが)えばいい。どう? シンプルでしょう?」


  敵も味方も関係なく、エリーゼの言葉にその場にいた全員が納得してしまった。


 ――そうだ。

 小難しい理屈をこね回して自分を正当化などせず、やりたいようにやればいいと。




「エリーゼちゃんは相変わらず脳筋で、羨ましいにゃあ。悩みとか、無さそうだにゃあ」


「ジャニア! あんた(あと)で、尻尾ムギューの刑よ!」


「にゃにゃあ! そんなことされたら、お嫁に行けないにゃあ……」


 ジャニア王女は、再び縮こまってしまった。




「とにかく、暴れるんならみんな外でやって欲しいにゃあ。エリーゼちゃんや女神の使徒が本気で暴れたら、この遺跡は崩壊してしまうにゃあ」


「それは(いち)あるな。(きみ)らもジャニア王女に死なれると困るだろうし、俺もスカウト予定の獣人達が巻き込まれたら困る。外に出て、マシンゴーレム戦でケリをつけよう」


 ジャニア王女の提案に、同意したのは瀬名だった。


 だがその同意に、賢紀が疑問を(とな)える。




「ちょっと待て。何でわざわざ、マシンゴーレム戦なんだ? 俺の能力は、戦女神から聞いているんだろう? 俺は白兵戦より、マシンゴーレム戦の方が強いぞ?」


「俺の趣味だ。扉の陰に隠れているお嬢さんも、それでいいかい?」




 誰もいないはずの場所に、瀬名は問いかけた。




「やっぱりバレていましたのね……。あなたとそこの仮面の女性以外は、気づいてなさそうでしたけど」


 部屋に入って来たのは、片手に大口径ハンドガンを下げたメイド服の犬獣人。


 アディ・アーレイトだ。


 この場で不意を突いて発砲しても、瀬名には当たりそうにないと判断して姿を現したのだ。




「にゃあ! アディお姉さまも来てくれたんだにゃあ! どうりで獣人しか入れない、この遺跡に入れたはずにゃあ」




『お姉さま!?』




 その単語に(いち)(どう)は疑念を(いだ)いたが、今は深く追求している状況ではなかった。




「ほら、おっちゃん。あいつ今、『趣味』って言ったよ。僕の言った通り、ただの乗りたがりだったじゃん」


「ほんまに、世の中にはけったいな奴がおるもんやな……」


 すっかり(どく)()を抜かれていたエネスクスの指摘に、ロジャー・レインは返す言葉もなかった。






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






 太陽が沈み、夜の(とばり)が下りてゆく。




 賢紀達は遺跡を離れ、近くの岩場へと来ていた。


 【魂の牙】の獣人達は遺跡に残り、ついてきていない。




 戦場に選んだこの場所は、背の高い(いわ)(だな)が点在し(しゃ)(へい)(ぶつ)が多い。


 だが地面は砂地で、平坦になっている部分も存在している。


 滑走(グライディング)機動(マニューバ)を生かしたり岩陰に隠れたりと、多様な戦術が取れそうな地形だった。




「さて、俺と安川は1対1(タイマン)で。そっちのエリーゼちゃん達は、うちのティーテ……いや。イースズちゃんと、遊んでいてもらってもいいかな?」


 ここで仮面の女の本名が、イースズだということが判明した。


 エリーゼとアディの2人を相手にやり合おうというのだから、かなり腕は立つのだろうと賢紀は判断する。




 安川賢紀と荒木瀬名、2人の神の使徒は手の平を後ろに向けた。


 (かん)(ぱつ)を入れず、背後の空間にマシンゴーレムが出現する。


 賢紀の背後には、砂漠用の迷彩色に塗られたGR-1〈リースリッター〉が3機。




 瀬名の背後には、白いGR-1の改造機。


 そして緑色のGR-1。


 驚くことに、緑色のGR-1は森林迷彩色に塗装されていた。




(ちっ。帝国軍も、低視認性(ロービジ)塗装の有効性に気づいてきたか……。しかしこの白い奴は、何でこんなに目立つ塗装をしているんだ? 何か塗料に秘密が……?)


 深読みしていた賢紀だったが、その色が単に瀬名の好きな色だったとは知る(よし)もない。




「重機オペレーターだったんだろ? 【ゴーレム使い】になる前から、こういう機械の操縦は得意だったのかな?」


「まあ、そんなところだ。そういうアンタは、地球では何の仕事をやってたんだ? 名前からして、レーサーとかか?」


「ご名答。俺は(エフ)(スリー)っていう、自動車レースのドライバーだったんだよ。サーキットは命を賭けた戦場だ。君達サラリーマンとは、くぐった修羅場の数が違う。それを見せてあげるよ」


「……常に危険と隣り合わせの、建設現場を()めるなよ?」




 2人は互いに(あく)(たい)をつきあうと、操縦席へと駆け上がりハッチを閉めた。




 エリーゼ、アディ、イースズの3人もそれぞれの機体に乗り込み、マシンゴーレムの動力源――〈トライエレメントリアクター〉を起動させる。


 帝国軍の技術を模倣(コピー)し、新たに搭載した魔道無線機。


 それに向け賢紀は、(たん)(たん)と指示を下した。






エリーゼ(フリーダム2)アディ(フリーダム3)交戦開始(エンゲージ)






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
本作に頂いた、イラストやファンアートの置き場
解ゴー FAギャラリー

他の作者さんが書いた異世界ロボットものとのコラボ作品
スーパーなろうロボット小説大戦~天涯のアルヴァリス×解放のゴーレム使い~

本作のラスボスが、生まれ変わって主人公になる異世界転生自動車レースもの
ユグドラシルが呼んでいる~転生レーサーのリスタート~

世界樹や戦女神リースディースなど、本作と若干のリンクがある作品
【聖女はドラゴンスレイヤー】~回復魔法が弱いので教会を追放されましたが、冒険者として成り上がりますのでお構いなく。巨竜を素手でボコれる程度には、腕力に自信がありましてよ? 魔王の番として溺愛されます~

― 新着の感想 ―
[気になる点] 争いの歴史は繰り返される……ですか。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ