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【解放のゴーレム使い】~ロボはゴーレムに入りますか?~  作者: すぎモン/詩田門 文【聖ドラ改稿中】
エピローグ

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第129話 彼の見たかった景色~時空……魔法……?~

 XMG-0〈タブリス〉から降り、魔国ディトナの大地に立ったニーサ。




 すると、1人の魔族が近寄ってきた。


 背中に生えた、黒鳥の翼が目を引く男性だ。




「初めまして、ニーサ・ジテアール殿(どの)。私の名は、アーラーン・ヤマハ」


 アーラーンと名乗った彼は、爽やかな笑みでニーサに握手を求めてくる。




「私は魔国ディトナの(へき)()に研究所を構え、ひっそりと時空魔法の研究をしております。魔法の使い手としても(てい)(こく)(いち)である貴女(あなた)が手伝ってくれるのなら、研究も(はかど)るというもの」


「時空……魔法……? かつて時空魔王が操ったという、あの……?」


 ニーサの声は、少しくぐもっていた。


 (やす)(かわ)(けん)()から渡された、瘴気マスクを着用しているせいだ。


 その賢紀が、アーラーンの身上について追加説明をしてくれる。




「そうだ、ニーサさん。アーラーンは時空魔王、トキコ・ヤマハから生み出された分身体の1人。いうなれば、魔王の息子だ。ルータス王国の第2妃だった、ティーゼ・エクシーズ……旧姓ティーゼ・ヤマハの弟に当たる」


「はっはっはっ! 姉上が他国に嫁入りしていたのを知ったのは、ごく最近です」






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






 このアーラーンという男は(やま)()(とき)()の手により、ティーゼの次に生み出された。


 彼の役目は、()(おう)(りょう)の管理。


 そして、時空魔法の研究を後世に残すこと。




 しかしアーラーンは途中から魔王陵の管理が面倒臭くなり、ディトナ政府に運営を押し付けた。


 身軽になった彼は、大好きな時空魔法の研究に没頭。

 山奥の研究所へと、引きこもってしまったのだ。


 定期的に墓参りするという、母との約束も忘れていた。


 母の名前が「アクヤック・レイジョール」で定着しようとしている時も、「もう、その名前でいいんじゃね?」と放置。


 そんな、親不孝息子だったりする。




 200年ぶりに魔王陵の外へと出た季子が行方を探し出し、彼をボコボコに制裁した。


 だが、あまり反省している()()りがない。


 横で見ていた賢紀が、ちょっと引くほどの制裁だったのだが。




 「まったく、誰に似たのやら」と、季子への冗談を言った賢紀。


 すると魔王様は、刺すような視線で賢紀を(にら)みつけた。




安川君(あなた)に決まっているでしょう!」




 季子がそう言いたいのは明らかだったが、賢紀は全く気付いていなかった。






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






「ヤスカワ。私に時空魔法の研究を手伝わせ、最終的には何をさせようというのだ?」


「ニーサさん。俺は、荒木との約束を果たしにきた」


「……セナとの?」


「セナ・アラキは、俺がこの世界から連れ去ってしまった。だが無事に、地球へと帰還している。フリード神の話では、家族と再会し(いっ)(しょ)に暮らしているそうだ」


「家族に会えたか……。良かった……」


「だがニーサさんを失って、奴はヘタれている。毎日メソメソと、泣いているらしい」


「ヤスカワ……。さすがにそれは、そなたが()(ちょう)しているだろう。確かにセナは、涙もろいところもあったが……」


「地球には、魔法がない。荒木が自力でこの世界に戻ることは、不可能だ。そこで根性無しのアイツは、みっともなく(すが)ることにした。こっちの世界にいる、ニーサさんにな」


「それで、時空魔法か?」


「そうだ。『自分からは、会いに行けない。だからニーサの(ほう)から、俺をエンス大陸に召喚してくれ』だそうだ。俺はできる限りニーサさんに、協力して欲しいと頼まれている」


「もし、セナの召喚に成功したら……。私と彼は再び大陸の制覇を目指し、そなたと戦うことになるかもしれぬ」


「ニーサさんは、もう皇帝陛下じゃないだろう? ……この大陸のどこかで、2人静かに暮らして欲しい」


「……そうだな。それも、悪くないかもしれん」




 薄暗い牢獄の中で無力感に打ちひしがれ、ただ処刑されるのを待っていたニーサ・ジテアールはもういない。


 賢紀達の前に、(ゆう)(ぜん)(たたず)む姿。


 かつて大陸制覇の野望を(かか)げ、覇道を突き進んでいた元女帝そのものだ。


 ――時空魔法を我が物にして、(あら)()()()と再会する。


 強い決意に、目がギラギラと輝いていた。




「こうしてはおられんな。アーラーン! さっそく、研究所へ案内してくれ」


「まあまあ、ニーサ殿。そんなに慌てなくても……。地球への門を開く魔法は、すでに時空魔王だったママが完成させているんです」


 気がはやるニーサを、アーラーンは(おう)(よう)に手の平を振ってなだめる。




「兄上! その歳で、母上のことをママ呼びはやめるのじゃ! 気持ち悪い!」


 横で聞いていたマリアがクレームを入れるが、彼は涼しい顔でスルーした。




「……ただ、課題もありまして。【魔王】の能力を持つママでないと扱えないような、複雑極まりない術式です。普通の人間や、魔族にも扱えるよう簡略化。地球から特定の人物を呼び寄せる術式に、アレンジするという研究が必要です」


「けっこう先が、長そうではないか。私達人間族の寿命は、そなた達魔族より短いのだ。さっさと研究を始めるぞ!」


「その前にもう1人、ニーサさんに用のある人がいる」




 次に賢紀が紹介したのは、ドワーフ族の男だ。


 水色の髪を、整髪料でツンツンに逆立てている。


 この魔国ディトナでは、大気中の瘴気濃度が高い。


 魔族以外の種族だと、生命活動に危険が及ぶほどにだ。


 にもかかわらず、彼は瘴気マスクを着用していない。




「匂う……。お前からは匂うぜ。速い奴の匂いがな!」


「女性に対して、臭うとは失礼な! そういえばヤスカワ! そなたも牢で私の臭いを気にして、浄化魔法をかけたな? 2人とも、殴られる覚悟はできているな?」


 ゴキゴキと(こぶし)の関節を鳴らして、()(かく)するニーサ。


 彼女から間合いを外しながら、賢紀は水色ドワーフの紹介を始めた。




「ニーサさん。こちらは、コージー・レインさん。マシンゴーレム用推進器(スラスター)技術の(だい)(いち)(にん)(しゃ)だ。それと彼は最近、レース用車両型ゴーレムの開発を進めている」


「レース? 確かセナが、地球でやっていた競技だな?」


「そうだ。ここにあるような周回路を猛スピードで走って、速さを競い合う。あいつはそのレースを幼い頃からやっていて、プロを目指していたそうだ。コージーさんは、その競技をこの国でも()()らせようとしているんだが……。少々、問題があってな」


「足りねえのさ……数が……。DRIVER(ドライバー)……。SPEED(スピード)に全てをかける、CRAZY(クレイジー)な奴らのな……。俺は……わかっちまった……。向いてねえのさ……DRIVER(ドライバー)には……。だからMACHINE(マシン)を託す……。SPEED(スピード)に祝福された、GOOD(グッド) LUCK(ラック)な奴に……」


「最初はうちのアディやイースズを、乗り手として紹介しようと思ったんだ。しかし本人達が、ディトナ暮らしを嫌がってな……。他に腕の立つマシンゴーレム乗りで、レース用ゴーレムに乗ってもいいって人を探している」


「ふむ。私にそのドライバーとやらを、やらせようというのか? セナのやっていた競技だから、興味はあるが……。私は時空魔法の研究で、忙しくなる。そんな時間は、取れないと思うが?」




 オファーを断ろうとするニーサに対し、口を挟んだのはアーラーンだ。


「ニーサ殿。時空魔法の研究は、多大な魔力を使います。魔力回復を待たねばならないので、1日に進められる研究は微々たるものです。わりと空き時間ができると思いますから、その間はドライバーとして活動してはいかがですか?」


「ふむ……」


「それと、ニーサ殿の衣食住に関してなのですが……。ぶっちゃけるとウチの研究所では、給料が出せません。コージー殿のチームとドライバー契約をして、自分の生活費は稼いでいただきたいのです」


「……そのレース用ゴーレムとやらに乗るしか、選択肢はなさそうだな。……いいだろう。だが私は、車両型ゴーレムの運転経験が少ないぞ? 少しだけ、ゴーレムトラックのハンドルを握ったことぐらいしかない」


「ニーサさんなら、大丈夫だろう。GR-3で、あんな超スピードの戦闘(コンバット)機動(マニューバ)をこなすんだからな。……ああ。それと帝国から(てっ)退(たい)するときに、コイツをパク……預かってたんだ。返す」




 賢紀の【ファクトリー】から出現したのは、ニーサの愛機GR-7〈ゲッカヴィジン〉。


 そして操縦補助を務めていた、月の高位精霊フェンだ。


 狼型の精霊である彼は、尻尾をぱたぱたと振りながらニーサに近づいた。




「姫! ご無事で何よりでござる」


「フェン! そなたも元気そうで、何よりだ。ずっとヤスカワの【ファクトリー】内にいたのか?」


「左様。……参りました。【ファクトリー】の中では、レオナ殿とマリア殿がしょっちゅう派手に(けん)()するのでござる。まあ美人精霊2人とご(いっ)(しょ)できて、(せっ)(しゃ)はなかなか楽しくもあったのでござるが。はっはっはっ!」


「女好きなところは、相変わらずだな。……私はこれから、ディトナで暮らす。フェンも、ついてきてくれるか?」


「よろこんで! ……レオナ殿も(いっ)(しょ)に、よろしいでござるか?」


 フェンの提案に応じて、光の高位精霊レオナも【ファクトリー】から出てきた。




「正直私は、〈サンサーラ〉の中に残りたいのですが……」


「レオナ。俺は〈サンサーラ〉を、(いっ)(しょう)【ファクトリー】の中に封印するつもりだ。荒木が帰ってきても、渡さない。……だから、フェンと(いっ)(しょ)に行った(ほう)がいい」


「そうですか……。私もあなたとは、(いっ)(しょ)にいたくありません。セナをこの世界から追い出しておいて、自分だけのうのうと戻ってきた人なんかとは……。〈ゲッカヴィジン〉に、フェンと2人暮らしでは(きゅう)(くつ)ですが……。我慢します」


「ふん。ニャン公……。元気でいるのじゃぞ」


 相変わらず、口が悪いマリア。


 だが彼女の表情は、少し寂しそうだった。




 そんなマリアに背を向け、レオナはニーサの元へと飛行していく。


 長い尻尾を、ゆらゆらと振りながら。




 まるで人間が、別れの(あい)(さつ)で手を振るかのように。






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






 これからの生活について、あれこれ話を続けるニーサ、アーラーン、コージー、そして精霊達。


 彼らから離れ、賢紀とマリアはXMG-0〈タブリス〉の足元へと戻ってきていた。


 そこには少し遠くからニーサを見守っていた、エリーゼ・エクシーズがいる。




「セナとの約束……ね。ケンキ……。セナは本当に、家族と再会できたの?」




 賢紀は何も答えない。


 だがエリーゼなら、答えなど聞かなくてもわかってしまう。


 無表情な彼の瞳。

 その奥にある、悲しみの色を見れば――




「……やっぱり、ケンキは嘘つきね」




 エリーゼは、ニーサ達の(ほう)へと目を向けた。


 新たな目標を前に、闘志をみなぎらせる元皇帝。


 彼女の姿を見て、エリーゼはふわりと微笑んだ。




「……でも、優しい嘘だと私は思うわ」




 エリーゼの言葉に、賢紀は少し背中が軽くなったような気がした。






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 (のち)にコージー・レイン達は、車両型ゴーレムによるモータースポーツを立ち上げた。


 シリーズ名は、「レーシングゴーレム選手権」。


 「レーシングゴーレム選手権」は、魔国ディトナで(またた)く間に人気競技となった。


 ディトナの人々は、新しい娯楽に飢えていたのだ。


 これまで人気娯楽だった、魔王陵探索者ランキングが消滅してしまったせいである。




 「レーシングゴーレム選手権」の観客動員数は激増し、多くのチームやスポンサーが参入。


 レーシングドライバーは、国民的なヒーローへとなっていく。


 やがて「レーシングゴーレム選手権」の話題は、他国へも広がり始めた。


 3年後にはエンス大陸各国を転戦する、「エンスグランプリ」が開催される。




 エンスグランプリ初代チャンピオンは、ニーサ・ジテアール。




 政治的な理由によりリースディア帝国ラウンドを欠場したにも関わらず、彼女は年間チャンピオンの座に輝いた。




――第1回 エンス・グランプリ――


年間ランキング




1位 ニーサ・ジテアール


2位 デミーオ・スポルトス


3位 アディ・アーレイト


4位 GO☆RI


5位 …………






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失格 ケンキ・ヤスカワ


※重大な車両規定違反により、年間ランキングポイントを(はく)(だつ)。以降、2年間の出場停止処分とする。






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本作に頂いた、イラストやファンアートの置き場
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ユグドラシルが呼んでいる~転生レーサーのリスタート~

世界樹や戦女神リースディースなど、本作と若干のリンクがある作品
【聖女はドラゴンスレイヤー】~回復魔法が弱いので教会を追放されましたが、冒険者として成り上がりますのでお構いなく。巨竜を素手でボコれる程度には、腕力に自信がありましてよ? 魔王の番として溺愛されます~

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