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【解放のゴーレム使い】~ロボはゴーレムに入りますか?~  作者: すぎモン/詩田門 文【聖ドラ改稿中】
第6章 魔族の国 魔国ディトナ編

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第103話 あの日の真実(3)~何で人ひとり避けられない!?~

(ケンキ! (わらわ)のことは、絶対にバラすでないぞ! 妾を売ったら、【ファクトリー】の内にある〈擬似魂魄AI〉搭載型マシンゴーレム全機の擬似魂魄を食ってやる!)




 マリアは念話でこっそり、(やす)(かわ)(けん)()にだけ脅しをかけたつもりだったのだが――




「聞こえているわよ~? マリアちゃん。素直に出てこないなら、仕方ないよね」


 そう言うと(やま)()(とき)()は、何もない空間に片手を伸ばした。


 指先がバチバチと雷光を()き散らしながら、虚空へと消えてゆくく。


 季子が手を伸ばし続けると、(ひじ)の辺りまでが雷光の中へと消えた。




 エリーゼ・エクシーズ達3人娘には、何が起こっているのかさっぱり分からない。


 しかし【神の加護】持ちである賢紀には、季子が何をしようとしているのか理解できていた。




「信じられないな……。俺の【ファクトリー】に、外部から干渉しているのか? 魂だけになっても、さすがは『時空魔王』」




 やがて賢紀には、ある感触が伝わった。


 【ファクトリー】内にいるマリアを、何かがむんずっ! と(つか)む感触が。




 季子が雷光の中から手を引き抜くと、身長60cm(センチ)ほどの小さな人影。


 (しっ)(こく)(ころも)(まと)った、ツインテールの赤髪少女。


 季子にガッシリと捕まった、闇の高位精霊マリアの姿があった。




「は……母上……。お久しぶりです……」




 マリアは顔面に、ダラダラと汗を流している。


 精霊である彼女には、発汗による体温調節など必要ないはずだ。


 精神状態が、外観に反映されているのだろう。




「ふふふっ、久しぶりね。何で素直に出て来なかったの? そして、何でそんなにビクビクしているのかな? 私の言いつけをちゃんと守っているのなら、何も怯えなくていいはずよ?」


「はい! 妾は母上の言いつけを、忠実に守りました! ケンキ・ヤスカワという名前で異世界から来たという人物を、発見次第速やかに! 全速力で! 母上の元へとお連れしました!」




((((ウソつけ!))))




 散々ゴネて魔国ディトナ行きを(しぶ)っていたマリアのウソに、全員が心の中で激しく突っ込んだ。




「『全速力』、ねえ……。あなたさっき、地下100階の魔王(笑)と戦っていたよね? おかしいよねえ? ()(おう)(りょう)近くからあなたが私に呼びかければ、脱出用転移魔法陣からショートカットしてここまで来れる。ちゃーんとそう、教えていたはずなのにねえ……。どういうことなのかな?」


「あう……その……。ケンキがどうしても、『魔王陵のダンジョンに挑戦したい』って……」


 マリアは両手の人差し指同士をツンツンと突き合わせながら、賢紀にちらちらとアイコンタクトを送ってきた。


「話をあわせろ!」と、言いたいのは明らかだ。


 しかしマリアのせいで遠回りしたあげく死にかけた賢紀は、素直に合わせてやる気にはなれない。




 「どうしたものかな?」と考えあぐねていると、季子はさっさと次のアクションに移ってしまう。




「ちょっとお友達にも、お話を聞いてみましょうか?」




 季子は指先から光を放ち、空中に弧を(えが)いてゆく。


 弧が(つな)がって光の円周となった瞬間、その内側は鏡のように輝いた。


 光の丸鏡から、4つの影が飛び出してくる。




 土の高位精霊ヨルム。


 火の高位精霊スザク。


 風の高位精霊フーリ。


 スピリット()アシステッド()インターフェース()でマシンゴーレムの操縦補助を担う、3体の高位精霊たち。


 【ファクトリー】の()(そうろう)と化している、水の高位精霊レヴィもいた。




「魔王さん、ウソだよ! マリアちゃんは魔王さんに〈シラヌイ〉の操縦席(コックピット)取られるのが嫌で、ケンキさんと会わせたくなかったんだ!」


「腹痛も()(びょう)です! 【ファクトリー】の外に出たら、魔王様に察知されるからと!」


「マリアっち、めんどくさがってた」


「ヨルム! スザク! フーリ! 貴様ら! 妾を売ったな! 後で覚えてお……」


 そこで、マリアの言葉は止まった。


 表面上は笑顔の母から放たれる、強烈な怒気。


 それに気づき、全身を凍りつかせたのだ。




「『コックピット』とか〈シラヌイ〉って、何の話? 私がマリアちゃんから取るって、どういうこと?」




 200年間魔王陵の中で引きこもっていた季子は、最近の兵器であるマシンゴーレムについては知らないようだ。


 


「ああ、そういうことだったのか……。俺のパートナー役を山葉に取られると思い込んで、マリアはここに来たがらなかったんだな」




 納得した賢紀は、季子に説明してやることにした。



 魔王陵に来た目的や、現在のエンス大陸情勢。


 そしてマシンゴーレムという、新しい兵器の台頭を。




「山葉。実はな……」






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






「なるほど。分かりました。私の魔石を、その『マシンゴーレム』という人型機動兵器の動力源に使いたいのね?」


「そうだ。頼めるか? 戦場に行くなんて、山葉にはキツいと思うが……」


「なに言ってるの。私が魔族として生きてきた300年。どれだけ(いくさ)の連続だったたことか……。この世界に来て1年くらいの安川君より、よっぽど戦争慣れしてると思うよ? 全盛期の私の戦いっぷりとか見たら、安川君引いちゃうかも?」


「それは心強い」


 ――と言いつつも、賢紀は内心ちょっとビビっていた。




「……安川君。本当に、ちょっと引いてるでしょ?」


 見透かした季子に、無表情キープながらもドキリとする賢紀。


 そしてなぜか、ピクッと肩を震わせたエリーゼ・エクシーズ。




「安川君のロボットに助けてもらうんじゃなくって、(いっ)(しょ)に乗って戦う展開になるなんてね……。ふふっ。それはそれで、面白いかも?」


「母上っ! ケンキの操縦補助は、妾だけで充分じゃ! 母上は無理なさらずに、魔石の中で眠っていてもらっても……」


「忘れてた! ……安川君のことを、私に隠そうとしたマリアちゃんはお仕置きよ」


「ヒッ!」




 季子は再び、空中に光の円を(えが)き出した。


 スザクとそっくりの悲鳴を発するマリアの上半身を、光の中に突っ込んでしまう。




 すると光の中に消えたマリアの上半身は、賢紀の眼前に出現した。


 普段の(ぼう)(じゃく)()(じん)な態度はどこへやら。

 涙目になったマリアと目が合う。


 下半身は、季子の前に浮いたまま。


 ちょうど腰の部分から、真っ二つにされた状態だ。


 感覚などはそのままらしく、空中に突き出た足と尻はもぞもぞ動いている。




「あなたの勝手な行動で、安川君はお腹に穴が開く羽目になったのよ? しっかり反省しなさい」




 空中で壁尻状態となっていたマリアの(でん)()に、季子の平手打ちが炸裂した。


 精霊であるマリアにも、幽霊である季子にも実体はないはずだ。


 なのにパァーン! という、かなり痛そうな音が響き渡る。




「ほぎゃあーー! 母上! みんな見ている前で、こんな恥ずかしい罰は勘弁してくだされ! 高位精霊たる、妾の威厳というものが……。うひぃーー!」


 抗議するマリアの尻に、2発目の平手が飛んだ。


「あなたみたいな悪い子に、威厳もへったくれもありません。お尻百叩きの刑です」


「うわーん! ごめんなさいなのじゃー! もうしませんのじゃー! ぎゃぴぃーー!」




 平手打ちの連打を受けて、マリアの臀部は赤く腫れあがっていく。


 黒い衣に包まれているのに、蛍の尻みたいに発光していた。


 精霊女王ローラが、焦げてアフロになった時と同じだ。


 体を構成するマナや魔力をかき乱され、ダメージを受けた姿が再現されている。




 【魔神の加護】による精神干渉のせいか、あるいは戦いの日々が彼女を変えたのか。


 500年の間に、季子の性格はかなり過激になってしまったようだ。




「そういえば山葉。どうして寿命で死んだ(あと)200年も、魔石の中で生き続けていられるんだ?」




 賢紀は疑問を口にした。


 季子の想いを、聞いてしまった(あと)なのだ。


 自分に会いたいがための、執念のなせる技だったら申し訳ない。


 そう賢紀は、考えていたのだが――




「ケンキ! 母上は魔神の神罰で、しばらくあの世へ()けぬのじゃ!」


「マリアちゃん。お仕置き中に、余計なこと言わないの」




 尻叩きが再開され、マリアの暴露は悲鳴で(さまた)げられた。


 しかし、賢紀の追求は止まらない。




「200年も魔石に封じられるなんて、いったい何をやらかしたんだ?」




 その話題になった()(たん)、季子は(うつむ)いてしまった。


 両手の人差し指同士をツンツンと突き合わせながら、気まずそうに(しゃべ)り始める。


 先程のマリアと全く同じ()(ぐさ)に、「やっぱり本当に親子なんだな」と賢紀は実感した。




「あう……その……。私を()き逃げした奴のことが、許せなくって……。ちょっと復讐してやろうと思ったの。ソイツを私が()いた『薄い本』の中で、『受け』として登場させて……。その時の『攻め』として、勝手に魔神ヴェントレイ様を登場させちゃった」


「それだけか? まあ確かに、怒られそうな話ではあるが……。それで200年とは、魔神も厳しいな」


「配下の女性達から絶賛されたもんだから、私ったら調子に乗っちゃって……。印刷技術をこの世界に持ち込んで出版したら、大ベストセラーになっちゃった」


 自分の頭を小突きつつ、笑顔で舌をちょこっと出す季子。


 魔王様、テヘペロポーズである。




 賢紀は魔神に、心から同情した。


 そちらの趣味などないのに、自分と同性が絡み合う本を魔国中にバラ()かれたのだから。


 賢紀は高校時代、季子が描いたその手の漫画をチラ見してしまったことがある。


 当時は大人しかった季子の作品とは思えないぐらい、どぎつい内容だった。




 男性同士が絡み合う本だと聞いたエリーゼとイースズは、「見たいー、見たいー」と騒ぎ出す。


 どうやら「腐」の資質があるようだ。




 同好の士を見つけた季子は嬉々として【次元収納魔法】を発動させ、異空間から1冊の薄い本を取り出した。




「1冊あげるけど、魔国にいる間は見つからないように隠してね。禁書になっているから」




 いそいそと、ページをめくるエリーゼ。


 イースズは尖った長い耳をピクピクさせながら、エリーゼの肩越しに本をのぞき込む。


 アディ・アーレイトは全く興味がないようで、銃の分解整備を始めてしまった。




 何ページか本を(めく)った時、エリーゼの手が止まった。




「ねえ、ケンキ……。ちょっとこの本を見て」


「俺は遠慮しておく。そういう趣味を持つ人達の価値観は(そん)(ちょう)したいし、山葉の漫画は上手いと思う。だが俺に、そっちの趣味はない」


「違うの……。そんなんじゃない。この本に出てくる、男を見て」


 本を開いたまま、硬直しているエリーゼ。


 イースズは賢紀の方を振り返り、真剣な目を向けてくる。


 ただならぬ気配を感じた賢紀は彼女達の背後へと歩み寄り、季子作の「薄い本」を覗き込んだ。




 登場人物は、2人の男性。


 1人は酷薄そうな顔に眼鏡をかけた、黒いロングコートの男。


 これが季子の話に出てきた、魔神ヴェントレイに違いない。




 問題は、もう1人の男だった。




 賢紀の胸に、焼けつくような殺意が湧いてくる。


 相対していないのに、こんな気持ちになるのは初めてだ。


 今まで(いだ)いていた敵対心は、身体の中にある【神の加護】が(あお)り立ててたに過ぎない。


 賢紀はそれを、ハッキリと理解した。




 本の中にいたのは見知った黒髪、黒目の青年。


 やたらと(たん)()な顔にデフォルメされていたが、1発で誰がモデルか分かってしまう。






「安川君、知ってるの? その()き逃げ野郎のこと」


「ああ、よく知ってるさ……。元レーサーなんだろう? 何で人ひとり、避けられないんだ? ……(あら)()()()!」




 いつも無感情な【ゴーレム使い】にしては、珍しい。


 周りにも明確に伝わる程の怒りを込めて、安川賢紀は戦女神の使徒の名を叫んだ。






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本作に頂いた、イラストやファンアートの置き場
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他の作者さんが書いた異世界ロボットものとのコラボ作品
スーパーなろうロボット小説大戦~天涯のアルヴァリス×解放のゴーレム使い~

本作のラスボスが、生まれ変わって主人公になる異世界転生自動車レースもの
ユグドラシルが呼んでいる~転生レーサーのリスタート~

世界樹や戦女神リースディースなど、本作と若干のリンクがある作品
【聖女はドラゴンスレイヤー】~回復魔法が弱いので教会を追放されましたが、冒険者として成り上がりますのでお構いなく。巨竜を素手でボコれる程度には、腕力に自信がありましてよ? 魔王の番として溺愛されます~

― 新着の感想 ―
[良い点] いままでの感想返信であれだけヒントをもらっていたのに、季子さんがカレンデバイスみたいになるのかな? と漠然と思っていただけで、まさか時空魔王が彼女だとは思いませんでした! 分かりそうなもの…
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