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【解放のゴーレム使い】~ロボはゴーレムに入りますか?~  作者: すぎモン/詩田門 文【聖ドラ改稿中】
第6章 魔族の国 魔国ディトナ編

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第100話 光の文字~何かの間違いだ……そうだろう?~

「はあ? 時空魔王って、寿(じゅ)(みょう)で死んだんじゃなかったとね? あれは、魔石に残った魂には見えんばい。がっつり実体持っとるし」


「別に、よろしいのではありませんか? 実体があるのなら、説得も可能というものです」


「叩きのめして、いうことを聞かせる……。シンプルでいいじゃない」


 話が違うとうろたえる、イースズ・フォウワード。


 逆にアディ・アーレイトとエリーゼ・エクシーズは、「説得」が通用しそうな相手だと安心した。




 魔王は何の(まえ)()れもなく、右手を水平に振るう。


 すると強烈な魔力と闇の波動が、黒い炎となって立ち昇った。


 黒い炎は高速で地面を走り、(やす)(かわ)(けん)()へと襲い掛かる。




 4人+賢紀が操る小型無人マシンゴーレム〈トニー〉は、闇の波動を回避した。




「さすがは魔王。大した威力ね」




 無事に回避はしたものの、エリーゼの(こわ)(いろ)は硬い。


 (いっ)(ぽう)で賢紀は、「あの魔法カッコいいな。後で真似してみよう」などと(のん)()なことを考えていたのだが。




「各自、()()を開始しろ」




 賢紀の号令で、他の3人+1機は散開した。




 まずはアディが、大口径ハンドガンの銃弾を魔王の胸に叩き込んだ。


 衝撃で、魔王の全身が震える。


 着弾跡からは、黒い煙が噴き出した。


 どうやら相手が実体化しているのは、間違いないようだ。




「効いてはいます。……でも、微々たるものですわ」


「なら、これはどう!?」


 今度はエリーゼの剣が、振り下ろされた。


 緑色に輝く魔導の(やいば)が、唐竹割りの軌道で魔王に迫る。




 さすがの魔王も、食らえば大きなダメージを受けると判断したのだろう。


 赤く輝く片手剣を召喚し、エリーゼの攻撃を受け止めた。




 その隙にイースズのライフル弾が、魔王の側頭部に命中。


 魔王の頭が、横にぶれる。




 さらに追い討ちをかけようと、賢紀は〈トニー〉を走らせた。




 だがその拳が届く前に、魔王の身体は虚空へと()き消える。




 全員で周囲を見渡すと、魔王はフロアの(すみ)まで移動していた。


 ほんの(いっ)(しゅん)のうちに。




「空間転移……。時空魔王の名は、()()ではないということですわね。ケンキ様! もっと高火力の武器を下さい!」


 賢紀はマシンガンを、【ファクトリー】から取り出した。


 それをアディに、手渡そうとした時だ。




 ドスッ! という聞き慣れない音が、【ゴーレム使い】の耳に届いた。




 「何の音だ?」と疑問に思うが、分からない。


 しかしマシンガンを受け取ろうとしていたアディが、全身を硬直させてこちらを見ている。


 彼女には、何の音か分かっているようだ。




 賢紀はアディの視線を追った。




 すると見慣れた自分の腹から、見慣れぬ物体が生えている。

 

 長く伸びた、1本の黒い爪だ。


 それが自分を背後から貫いたのだということを認識した瞬間、激しい(しゃく)(ねつ)(かん)が賢紀を襲った。




(ああ、そうか……。「時空魔王」っていうぐらいだからな。自分自身が、空間転移できるんだ。爪だけ空間を飛び越えさせての攻撃も、可能というわけか……)




 外見は冷静に見えて、内面は慌てていたり動揺していることの多い賢紀。


 だが今回は、やけに心も落ち着いている。


 自分の状態も、客観的に分析できた。




 これは致命傷だと。




 血液と共に、全身から力が抜けていく。




 1番近くにいたアディが、すぐさま回復魔法で治療を(こころ)みた。


 しかしとても、助かりそうにはない。




(俺はもうダメだ……。アディ、早く魔王との戦いに戻れ。〈トニー〉も動けなくなるから、(いっ)()に戦況が(かたむ)くぞ)




 賢紀はそう言いたかったのだが、言葉が出ない。


 口から(こぼ)れるのは、血液のみ。


 魔王との戦いに専念して欲しいという願いとは裏腹に、エリーゼとイースズも賢紀の(そば)まで駆けつけてしまった。


 3人がかりで、回復魔法をかけ始める。




(馬鹿! 全員で来てどうする? みんな死んでしまうぞ!)




 3人ががりで回復魔法を掛け続ければ、賢紀は(いち)(めい)を取りとめるかもしれない。


 だが戦闘の最中に、魔王がそんな時間を与えてくれるはずがないのだ。


 美しくも暗い微笑を浮かべながら、魔王はゆっくりとこちらに歩いてくる。


 手にした赤い魔剣で、全員を切り刻む気のようだ。




(だめだ……! せめてお前らだけでも……。何か……何か手はないか?)




 ――自分はもう、どうなってもいい。


 この3人を生き残らせるためには、手段を選ばない。


 何か手を考えろ。


 お前は自由神の使徒だろう?


 信徒を守る力も無くて、何が【神の使徒】だ。


 俺の中にある【神の加護】よ、力を貸せ。


 ついでにフリード神も、力を貸せ。


 誰でもいいから、力を貸せ。




 何の名案も思いつけなかった賢紀は、ついに他人任せな思考に到達する。


 こんな場所で、誰が力を貸してくれるというのだろうか。




 だが、それに応える者が現れた。




(仕方ない。ケンキ! 〈トニー〉のコントロールを、(わらわ)()()せ!)




「ユー……ハブ……コン……トロール」


「アイ・ハブ! (あと)は大人しく、寝ておれ!」


 【ファクトリー】から飛び出した、マリアが叫ぶ。


 すると黒い有機的なフォルムをした小型マシンゴーレムの瞳に、赤い光が灯る。

 

 床にうつ伏せで倒れていた〈トニー〉は、飛び上がった。


 人間でいうと、腹筋と背筋に当たる人工筋肉の力のみでだ。


 200kg(キロ)のボディが、4~5(メートル)の高さまで飛び上がる。




 そこから落下する勢いを生かし、〈トニー〉は魔王の後頭部に(かかと)()としを決める。


 床に叩きつけられ、バウンドする魔王。


 彼の髪を、〈トニー〉は、引っ(つか)んだ。


 さらに、(つま)(さき)を踏みつける。


 その状態から、〈トニー〉は拳のラッシュを見舞った。


 赤く輝く魔力を(まと)った両拳が、目視できないほどのスピードで振るわれる。


 (つま)(さき)を踏まれている魔王は、吹き飛ぶことも許されない。


 (しゃっ)(こう)の嵐に(ほん)(ろう)され、ボロ(ぞう)(きん)と化してゆく。




 〈トニー〉はラッシュの最後に、固定していた魔王の爪先から足をどけて解放。


 左ストレートで派手に吹き飛ばし、ドーム状建物の扉に叩き付けた。




「トドメじゃ!」




 〈トニー〉の全身が、夕日のように輝く。


 拳に行うだけでも難しい魔力伝導を、マリアは〈トニー〉の全身にやってみせたのだ。




 夕日と化した〈トニー〉のタックルを受け、時空魔王アクヤック・レイジョールは跡形も無く消滅した。




 ついでに〈トニー〉も、無茶な運用により壊れた。






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□





 賢紀はアディとイースズの2人に両脇から抱えられて、ドーム状建物の中に入っていく。


 回復魔法により傷口は塞がったが、大量の血液を失っていてフラフラだ。




 建物の中には、通路が伸びていた。


 無機質で不自然なほどに白く、明るい通路だ。




 どういう原理なのかは不明だが、建物は全くの無傷だった。


 魔王を消滅させる程の威力を持つ、〈トニー〉のタックルが直撃したにもかかわらずだ。

 

 先ほどまで戦闘を行っていた空間とこの建物は、魔王お得意の空間魔法により切り離されていたのかもしれない。


 賢紀はそう推測している。




「すまない、マリア。親殺しをさせてしまった……。アクヤックは、お前の親父さんだったんだろう?」


「はあ? あんなもの、親などではないわ! 魔王が(たわむ)れに作った、魔王っぽいボス役の魔物じゃ! 妾と本物の魔王は、奴のことを魔王(笑)と呼んでおったわ」


 (笑)が付いている存在に殺されかけたという事実に、賢紀達の心はひどくヘコんだ。




「ハッ! そうじゃ! 妾はもう、【ファクトリー】に引っ込むからな。本物の魔王には、妾の存在を黙っておくのじゃぞ!」


 賢紀の返事も聞かずに、マリアは【ファクトリー】の中へと姿を消した。


 立っているのがやっとの賢紀に、精霊達の勝手な出入りを制限する気力は残っていない。




 空中に掻き消えたマリアに、エリーゼは涙ぐみながら感謝の言葉を述べた。


「ありがとう、マリアちゃん……。ケンキを助けてくれて」


「直接助けてくれたのは、お前らの回復魔法だろう? ありがとう、助かったよ。……だが今度ああいう場面になったら、俺の治療なんか後回しにしてくれ。(あや)うく、全滅するところだったぞ」


「嫌よ! またそうなったら、きっと私は同じことをするわ!」


「あたしもばい!」


「わたくしは……状況次第ですわね」


「……わかったよ。俺が死にかけないようにすればいいんだな? 白兵戦でも、安全に戦える手段を考える」




 賢紀は以前にも、全身に装着するパワードスーツ型マシンゴーレムを開発しようとしたことがあった。


 その時は〈トライエレメントリアクター〉と〈慣性(イナーシャル)緩和魔道機(レデューサ)〉の搭載スペースが確保できなくて、諦めたのだが。


 開発を、再開する時がきたのかもしれない。




 賢紀達が通路を進んでいくと、真っ白な扉が現れた。


 その(かたわ)らには、お馴染みの案内(せき)()がある。


 賢紀は肩を借りるのをやめ、石碑の正面に立った。


 浮かび上がる石碑の文字を、読み上げていく。





『地下100階クリア、おめでとうございます。先程あなた方が倒した魔王モドキは、私が作り出した番人です。本物の私の肉体は、(すで)にこの世にはありません』




「なるほど。レヴィの言う通りだったな。ダンジョン各所にあったこの石碑は、魔王様からのメッセージだったというわけか」


 賢紀はエリーゼ達と(うなず)き合ってから、さらに石碑の文字を読み進める。




『魂だけはこの扉の奥に(とど)まっておりますので、良かったら少しお話をしましょう。地下100階踏破の記念に、素敵なプレゼントも用意しております。時空魔王――』




 そこまで読み上げて、賢紀は床に(ひざ)を突いた。


 全身が細かく震え、目の焦点が合わない。




 彼は石碑にしがみつくと、光の文字を爪でガリガリと引っ()き始めた。




 そこに浮かび上がっている魔王の名前を(えぐ)り取ろうとするように。




「嘘だ……。何かの間違いだ……。そうだろう?」




 あまりに強い力で引っ掻いたため、爪が()がれ、指先からは血が流れ出していた。


 今度はその血を(こす)りつけて、光の文字を()(つぶ)してしまおうとする賢紀。


 だが、光の文字は消えない。




 ――事実なんだ、受け入れろよ。




 そう主張しているかのように、輝き続ける。




「ちょっと! 何やってるのよケンキ! やめて! 血が出てるじゃない!」




 エリーゼが駆け寄り、賢紀を石碑から引き()がす。


 賢紀が塗り潰そうとしていた部分に目を向けた彼女も、同じく(きょう)(がく)した。


 震える声で、なんとか言葉を絞り出す。




「そんな……。そんなことって……」




 石碑を見たアディの顔は蒼白になり、イースズはヒュッと(のど)を鳴らした。




 そこには、魔王の名前が(しる)されていた。






 時空魔王、トキコ・ヤマハ――と。






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ユグドラシルが呼んでいる~転生レーサーのリスタート~

世界樹や戦女神リースディースなど、本作と若干のリンクがある作品
【聖女はドラゴンスレイヤー】~回復魔法が弱いので教会を追放されましたが、冒険者として成り上がりますのでお構いなく。巨竜を素手でボコれる程度には、腕力に自信がありましてよ? 魔王の番として溺愛されます~

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