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【解放のゴーレム使い】~ロボはゴーレムに入りますか?~  作者: すぎモン/詩田門 文【聖ドラ改稿中】
第6章 魔族の国 魔国ディトナ編

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第93話 サービス回の【ゴーレム使い】~おっぱいって、お湯に浮くったい!?~

 磨き上げられた、白い大理石づくりの床と柱。


 豪華なシャンデリア型魔道灯が、いくつも吊り下げられた天井。


 シックで高貴な雰囲気を(かも)し出す、(えん)()(いろ)(じゅう)(たん)




「ここはお城か……?」




 ホテルのエントランスが放つ圧倒的な高級感に、(やす)(かわ)(けん)()は圧倒されていた。


 (そと)(づら)は平然としているが、彼は基本的に小市民である。


 こんな高級ホテルに宿泊するなど、()(おく)れしてしまう。



 温泉があると聞いていた賢紀は、寂れた旅館のような宿泊施設を勝手にイメージしていたのだ。


 しかし実際に訪れてみると、セレブ()(よう)(たし)という表現がしっくりくる(おう)(きゅう)(まが)いのホテルだった。


 戦闘でボロボロになっていたルータス王国首都エランの王宮より、よっぽど王宮っぽい。




 ここまで立派な宿だと、宿泊費が気になるのが賢紀という男。


 エリーゼ女王陛下をお連れしてはいるものの、彼女の財布はアテにできない。


 ルータス王国の首都エランの復興や戦費にお金がかかり、現在彼女の称号は借金女王だ。


 賢紀がマシンゴーレムや各種特許を売って得た資金も、かなり少なくなってきている。




「エリーゼ。こっちの(ほう)は、大丈夫なのか?」


 賢紀は手の平を上に向け、人差し指と親指で丸を作る。


 「お金」を意味する、ハンドサインだ。




 しかしそれを見て、サッと顔を赤らめたエリーゼ・エクシーズとイースズ・フォウワード。


 そして、殺気を放つアディ・アーレイト。




「ちょっとケンキ! こんなところで何を!」


「ケンキ様、射殺されたいのですか?」


「いやん。ケンキさん、それはでけんばい。心の準備が……」


 賢紀はそのジェスチャーが、この世界では違う意味を持つことに気付いた。




「そうか。この世界では、意味が違うのか……。これは俺のいた国では、『お金』を意味するハンドサインだったんだがな」


「『お金』のサインは、こうですわ!」


 アディは人差し指、中指、親指の3本で、何かを(つま)むような()(ぐさ)を見せた。




「まったく、もう。びっくりしちゃったじゃない。……宿泊費の心配なら、無用よ。ここの宿泊費だけじゃなく今回の旅費全額、ヴィアお(じい)ちゃんにおねだりしたら出してくれたの」




 小悪魔孫娘と孫バカ大統領、恐るべし。


 賢紀は心の中で、密かに(せん)(りつ)した。




「そうか、それならいい。……ところで俺がさっきしたサインは、この世界ではどういう意味だ?」


「教えない! ……今後、公衆の面前では絶対にしちゃダメよ!」


 エリーゼ達の態度を見て、どうやらかなり()(わい)なサインだったのだろうと推測する賢紀。


 彼は今頃になって、()ずかしくなった。






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






 部屋は全員が、個室を与えられていた。


 しかもそれぞれに与えられた部屋は、全てスイートルーム。


 ヴィアルゼ・スヴェール大統領の孫に対する甘やかしっぷりは、とどまるところを知らない。




「……なのに何故みんな、俺の部屋に集まる?」




 広いため、こうして4人集まっても全然(きゅう)(くつ)ではない。


 だが皆それぞれ、自室で(くつろ)げばいいのにと賢紀は思う。




「あんなに広い部屋に、1人で居てもね~」


「わたくしは、姫様のお世話がありますので」


「広すぎて、落ち着かんばい」




 これではスヴェール大統領が出してくれた宿泊費の大半が、無駄になってしまう。


 大統領のお給料がイーグニース共和国民の税金から出ていることを思うと、胸が痛む賢紀だった。




「あ、ケンキ。晩御飯は全員分、この部屋に運ばせるよう言ってあるから」




 自由神の使徒に、プライベートな時間はないのである。






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






 エリーゼが言った通り、賢紀の部屋には夕食が運び込まれてきた。


 かなりの量だ。


 4人分ということもあるが、1人あたりの量も多い。




「きたきた~! サスィミィのモリュアワッセ! 魔国ディトナを訪れたら、いちどは食べとかないとね」


「確かに()(れい)ばってん……。これ、生魚ど? (うわさ)には聞いとったけど、抵抗あるばい」


 大きな平皿に盛り付けられた、色とりどりの切り身。


 中には、微量の魔力を感じるものもある。


 魚系魔物の切り身も、混ざっているのだ。


 竹っぽい植物で作られた(うつわ)の中には、半透明の小さな球体がびっしり入っている。


 宝石のように美しいこれは、おそらく魚卵だ。


 地球のイクラと似ているが、異世界のものは色がかなりピンク寄りである。




「どう見ても、刺身の盛り合わせなんだが……」




 夕食を見て、地球を思い出す賢紀。


 懐かしい気分に(ひた)っていたが、ふと気付いてしまった。


 「そういえば俺、刺身の盛り合わせなんて食った記憶がない」と。


 ノスタルジックな気分は、きれいさっぱり消え去ってしまう。


 代わりに余計なツッコミが、脳裏に浮かんでくる。


 そもそも洋風なホテルのスイートルームと、刺身の盛り合わせはミスマッチなのではないのかと。




「はいはーい。みんな、私にちゅうも~く。今からこの、『チョップスティック』の使い方を教えるわよ。昔、ティーゼお()()様に教えてもらって……。何でケンキは、そんなに馴れた手つきで扱えるのよ?」


「だって、普通に(はし)だしな。……っていうか、何で箸だけ英語なんだ?」


 エリーゼ先生によるお箸の使い方講座を聞き流し、ひょいひょいと刺身を(つま)んでは黒色の液体につける賢紀。


 ちなみにこの液体の名前は、(しょう)()ではない。


 「ショウ・ユー」というらしい。






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






 刺身を満喫し終えてから、約30分後。


 大浴場の温泉を(たん)(のう)するべく、お風呂の支度を整えたエリーゼ達は集合していた。




 またしても、賢紀の部屋に。




「俺の部屋に集合する必要、無くないか?」


「いーえ、あるわ。ケンキが(のぞ)かないように、前もって釘を刺しておかないと。……もし覗いたら、風呂桶投げつけるからね」


「隣のメイドさんは、それ以上のことをする気みたいだが?」


 エリーゼの隣では、アディが無言で拳銃の弾倉(マガジン)を装填していた。


 爆炎魔法を炸薬代わりに用いたケースレス弾は、お風呂の中でも問題なく発砲できるはずだ。




「エリーゼちゃん。そんな心配せんでも、クールな賢紀さんはそぎゃんこつせんよ」


「いーえ! イースズは分かっていないわ! ケンキはむっつりスケベ! これが真実よ!」


「2人とも、ご心配なさらずに。覗いた瞬間に、わたくしが両目を射抜きます」


「アディ。人前で、あんまり発砲するなよ」


 (いち)(おう)(けい)(こく)すると、賢紀も男性浴場へと向かうべくお風呂の支度を整え始めた。


 特に忘れてはならないのは、入浴中に手首に()める(たい)(しょう)バンド。


 これが無ければ、入浴中に瘴気中毒でお湯にプカリと浮く羽目になる。




「いい? ケンキ? ホントに覗いちゃ、ダメだからね? こーんなナイスバディを拝むことができなくて、残念ね。プークスクス」


「いや、別に……」




 淡白な【ゴーレム使い】の反応に、何故かムッとするエリーゼ。


 彼女はズカズカと大股で、大浴場へと歩いて行った。




 賢紀はエリーゼ達を見送り、自分も入浴の準備を整える。




「よし、準備OKと……」






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






 ホテルの大浴場は、露天風呂となっていた。


 日本生まれである賢紀にとってはそう珍しいものではないが、エリーゼ達にとっては初体験である。


 女湯に入った彼女らは、美しい星空と荘厳な岩風呂に「ほわぁ~」と声を漏らす。




 浴場の注意書き通りに、かけ湯で体を流す3人娘。


 みずみずしい肌をお湯が伝い、なんとも(なまめ)かしい。




 旅の汗を洗い流した彼女達は、さっそく湯に浸かった。




「はぁ~。癒されるわぁ~」


「これは気持ち良過ぎて、(とろ)けてしまいそうですわね」


「極楽ばい♪」




 しばらくは「あ゛~」だの「う゛~」だの(うめ)きながら、お湯の中で脱力しスライムと化していた3人娘。


 イースズはちらりと、隣にいたエリーゼの胸元を見た。




「す……凄か……。おっぱいって、お湯に浮くったい!?」


「ちょ……ちょっとイースズ! どこ見てるのよ!」


「そうですわよ、イースズ。姫様のおっぷぁいは、わたくしのものです。わたくしの許可を取ってから、ガン見してください」


「アディ! 貴女(あなた)も何を言ってるのよ!?」




 アディに注意を向けたのが、悪かった。


 エリーゼの視界から外れたイースズは、密かにお湯へと身を沈めた。(マナー違反)


 そのまま潜水でエリーゼの背後へと回り込み、浮上と同時にたわわな果実を(わし)(つか)みにする。




「キャッ! ちょっとイースズ! やめなさい!」


「よかじゃなかね。よかじゃなかね。減るもんじゃなかし」


「く……くすぐったい! アディも見ていないで、イースズを止めて……」




 アディは見ていなかった。




 胸を揉みしだかれる(あるじ)に興奮し過ぎた彼女は、鼻血による出血多量で風呂場の床に倒れていたのである。


 とても幸せそうな笑顔で。


 完全に、護衛失格である。




「アディ! 後で、お仕置きだからね! ……あっ! ちょっとイースズ! これ以上は、ダメだってば!」


 イースズの手は止まらない。


 ドMな者がSに回るとやり過ぎる傾向があるといわれているが、まさにその状態なのだろう。


 自らが責められる光景をイメージして、エリーゼに重ね合わせるイースズ。


 (こう)(こつ)とした表情で、3つの瞳を妖しく輝かせる。




「いい加減に、しなさーい!」




 イースズは失念していた。


 接近戦では、エリーゼに(かな)わないことを。


 胸に伸びていたイースズの両手を、怪力でガッシリ拘束するエリーゼ。


 そのまま変態エルフの腕を、後ろ手に()じあげてしまう。




「で……でけんばい、エリーゼちゃん! 拘束して、むりやりだなんて……。いや~ん!」


「『いや~ん』じゃないわよ! よくもやってくれたわね? うりうり! URYEYYYY(ウリイイイイイイ)!」


 今度はエリーゼが、イースズの胸を揉みまくる。


 エリーゼほどではないが、彼女もかなりのボリュームである。




「へ……変な声が、出そうばい……」


「我慢しなくてもいいのよ? イースズ」


「変な声出したら真夜中の世界に追放されるって、死んだ母さんが言っとったばい!」




 ちょっと涙目になりながら意味不明なことを口走るイースズを見て、エリーゼは手を止めた。




「どう? ケンキ? 想像して、興奮しちゃった?」




 男湯に居るはずの賢紀に向かって、エリーゼは問いかける。


 しかし、返ってくるのはカポーンという風呂桶の音だけだ。




「……1人分の気配は感じるばってん、ケンキさん本当に壁の向こうにおると? 別のお客さんじゃなかとね?」


 途端にイースズは恥ずかしくなり、顔を赤らめた。


 先程の痴態を、賢紀以外に聞かれるのは嫌なのだ。


 恥ずかしいが、賢紀にならば構わない。




「今は観光シーズンじゃないから、私達以外に宿泊客はいないわ。フロントの人が、そう言ってたもの。つまり壁の向こうにある気配は、ケンキのもの」


「でも、返事がなかよ?」


「きっと今頃壁の向こうで、『膨張してしまった……。恥ずかしい……』とかやってるのよ。あいつ、むっつりスケベだから」


「えー。ケンキさんは、クールに見えるばってんねー」


「もっと興奮させてやりましょう。そんで我慢できずに壁の向こうから覗き込んできたところを、風呂桶で撃墜してやるんだから」




 エリーゼの意地だった。


 淡白な仮面の裏に隠した欲望を、自分達の魅力で狂わせ暴く。


 そして覗いた罪を責め立て、【ゴーレム使い】にアレコレ要求してやるのだ。


 「もっと私を、甘やかしなさい」とか。




「……というわけでイースズ、もっとイイ声で鳴きなさい」


「ええっ!? そこはエリーゼちゃんが、自分でエッチな声出すところばい」




 2人は湯けむり漂う浴場の中で、対峙した。


 手には(せっ)(けん)と、植物から作られたボディスポンジが握られている。


 両手はすでに、(あわ)(あわ)


 これで相手の体を()(わい)に洗い、嬌声を上げさせてやるのだ。




「……エリーゼちゃん。ここはアディちゃんに、犠牲になってもらったらどぎゃんね?」


「……悪くないアイディアね。それをお仕置きにしましょうか?」




 鼻血を垂らして伸びていたアディは、危機を感じてガバッ! と身を起こす。




「い……嫌ですわ! 姫様にお仕置きされるのは興奮しますけど、あのムッツリ【ゴーレム使い】にサービスしてやるつもりは毛頭ありません!」


 アディは尻尾をプルプルと震わせながら、壁際へと(あと)退(ずさ)りした。


 そんな彼女を、友人と主は追い詰めてゆく。


 泡まみれの両手を、ワキワキさせながら。




「くっ! かくなる上は! どうせ恥ずかしい思いをさせられるなら、あちらの恥ずかしい姿も拝ませていただきますわ! 粗末なモノを、わたくしに見せてご覧なさい!」




 アディ(全裸)は、高く跳躍した。


 さすが獣人族という素晴らしい身のこなしで、男湯と女湯を仕切る壁の登頂部に腕をかける。


 そのまま彼女は身を乗り出し、男湯を覗き込んだ。




「……覗きは困りますね」




 アディと目が合ったのは、無愛想【ゴーレム使い】ではない。


 男湯の清掃に入っていた、やたら恰幅のいい魔族の女性職員だった。






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 男湯を清掃していた魔族女性は、ホテルの支配人だった。


 彼女は他のお客様に迷惑をかける行為に厳しく、警察に突き出すと言ってきたのだ。


 男湯を覗いたアディは元より、おふざけが過ぎたエリーゼ、イースズに対しても激おこである。


 警察行きだけは、勘弁してもらったエリーゼ達。


 だが脱衣所の床に正座させられ、みっちりお説教を受けた。




「ケンキ! どういうつもりなの!」




 賢紀に割り当てられた部屋のドアが開け放たれ、エリーゼが踏み込んできた。


 (あで)やかな浴衣姿だが、足がプルプルしている。


 エリーゼの後方からは、同じく浴衣姿のイースズも入室してきた。


 アディだけは、風呂上がりでもやっぱりメイド服だ。

 譲れぬポリシーを感じる。


 彼女達も、足が痺れていた。




「ん? エリーゼ、何を怒っているんだ? みんな今戻ったのか? だいぶ長風呂だったな」


「『何を怒っているんだ?』じゃなーい! あなた結局、大浴場に来なかったでしょう!?」


「何で男湯に居なかったことが、お前にわかるんだ?」


「覗いて見たのよ! ……アディが」


「エリーゼ……。覗きは犯罪だぞ? 主である、お前が止めないとダメだろ?」


「わ……わかっているわよ! おかげで、すっごく怒られたんだから! それもこれも、全部ケンキのせいなんだからね!」




 賢紀には、さっぱり状況が分からない。




「何で大浴場に、来なかったのよ?」


「風呂の準備を終えたところで、ウトウトしてしまってな。ちょっと寝てた」


「寝てたですって~!?」


「ああ。おかげで頭が、スッキリしたぞ。俺も温泉に、入ってくるとするか」




「……もう! おっぱい揉まれ損じゃない! ケンキのバカ! 知らない! あなたのせいで怒られたって、フリード様に()()ってやる!」




 エリーゼはプリプリと怒りながら、自室に帰ってしまった。




「本当に、何を怒ってるんだ? エリーゼの奴は?」


「乙女心のわからない人ですわね。フリード神から、神罰を受けるといいのですわ」


 冷たく言い放ち、アディも自室に引き上げてしまう。




「正座でお説教されるなら、ケンキさんからが()か。それなら萌えるばい」


 と、意味不明なことを言いながらイースズも退散した。




「……何かよく分からんが、風呂入って寝よう」

 





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 【ゴーレム使い】は1人で、温泉を堪能した。


 (ごう)(しゃ)な岩風呂を占拠するという(ぜい)(たく)は、たまらないものがある。




「この世の天国だな。……最高だ」




 少しぬるっとした泉質の湯が、賢紀を包み込む。


 戦いや旅に疲れた彼の体は、芯から温まり癒されていった。




「今夜は()(ごこ)()(ばつ)(ぐん)の巨大ベッドで寝れる。……いい夢が見られそうだ」




 充分に温まった賢紀は、湯から上がる。


 肉弾戦に弱い【ゴーレム使い】だが、体は見事に引き締まっていた。


 湯が伝う筋肉は、芸術的ですらある。


 エリーゼの(ほう)こそ、セクシーな賢紀の肉体を()()たりにしたらドキドキしてしまうに違いない。




 なお、賢紀の股間をアディが見ていたら、「粗末なモノ」発言は撤回せざるを得なかっただろう。






■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□






 幸せな気分で眠りについた、【ゴーレム使い】。




 しかし彼が翌朝目が覚めると、ある部位から毛が生えていた。


 いつもは生えていない場所から、突然の発毛。


 これがエリーゼの理不尽な密告により下された、上司からの神罰だということはいうまでもなかった。






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