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累計20万部突破 完結済【書籍化・コミカライズ】心の声が聞こえる悪役令嬢は、今日も子犬殿下に翻弄される   作者: かのん
第五章

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17話

新年もよろしくお願いいたします(●´ω`●)


 洞窟の中を、鼻の香りを頼りに進んでいくと、しばらくした後に、心の声が聞こえ始め、私は足を止めた。


「アシェル殿下、この先にいるようです」


「出来るだけ近寄ろう」


 アシェル殿下は第二部隊に指示を出し、いつでも応戦できる世にする。


 心の声の数から、結構な人数の残党がいることが確認できる。


 目視出来る程の距離になり、私達は足を止めて息をひそめる。


「さっさと歩け」

『くそ……念のためにと薬を打ったが……これじゃあ全然進めないぞ』


 残党の集団が、ノア様のことを歩かせようとしている。


 ノア様は足を引きずっており、顔面は蒼白だ。


 それを見たカルちゃんは飛び出しそうになったけれど、私はそれを抱き留めた。


「カルちゃん……今は、今はダメよ」


「エレノアちゃん! 離して! ノアが! ノアが!」

『いやいやいやいやいや! 可哀そうなノア!』


 泣き叫ぶカルちゃんは抑える私の手をひっかく。


 アシェル殿下が止めようとしたけれど、私は首を横に振ってカルちゃんの背中を優しく撫でる。


「カルちゃん。ノア様を助けるために、最善の策で行きたいの。この狭い洞窟の中での戦闘は難しいわ。いつノア様の首輪を発動されるかわからないから」


 カルちゃんはその言葉に小さくうなり声をあげて、それからうなずく。


 私はカルちゃんを抱き上げる。


『ノア……後少しだから、後少しだからね』


 ノア様が背中を押されよろめくのが見える。


「う……」

『大丈夫。カルちゃんが今頃知らせてくれているはずだ。時間を稼ぎながら、進めば騎士達が動くだろう』


 私は小声でアシェル殿下に状況を伝える。


 その時、分かれ道が来て、残党の一人の男がノア様を洞窟の前へと押した。


「ほら、どっちだ」


『ちゃんと教えろよ。この先のお宝の位置をよ!』


 その言葉を、私はアシェル殿下に伝えながら首を傾げる。


 私達はアニスとルイスが二人にしか何故か感じ取れない花の香りを頼りにここまで来た。


 だけれどノア様は?


 様子を見つめていると、ノア様はため息をつきながら答えた。


「あっちだ……」

『……本当に、本当に……いるのか?』


 ノア様の声から緊張しているのが分かる。


 その声に、私とアシェル殿下は視線を合わせる。


「もしかしたら、竜の……生き残り、でしょうか」


 小さな可能性だけれど、ノア様が感じ取っている存在。それは、もしかしたら竜なのではないか。


 私とアシェル殿下はそう考えた。


 視線をアニスとルイスへと向けた時、エル様が私達に向かって手を伸ばした。


「……未来のことを、あまり聞くべきではないぞ」

『過去が変わればどのような影響が出るか分からない……いや、すでにユグドラシルのせいで大きく変わっているかもしれないがな』


 その忠告に、私は確かにそうだと尋ねようとしたことを止める。


「エル様、ノア様の首輪を外すことは可能ですか?」


 問いかけにエル様は首輪をじっと見つめる。


 それから唸り声をあげた。


「魔術を用いて作られている。私の力に反応しないとも限らないからな……私では難しいだろう」


 アシェル殿下はそれを聞くと言った。


「エレノア、とにかく、ついていこう。この洞窟は道を間違えれば外に弾き出される仕組みの可能性がある。つまり、道は一つだから、先回りも出来ない。あと、あぁいう代物にはスイッチが必ずあるはずだ。それを手に入れよう。エレノアはスイッチを持っている男を特定してほしい」


「わかりました」


 うなずき、私達は気づかれないように後を追っていく。


 そしてしばらく、曲がり角を曲がった後、突如として明るい空間へ抜けたのであった。


 美しい緑が溢れる草原が、そこにはあった。


 立派な木が一本たち、その横には美しい泉がある。


 その泉を取り囲むように、大きな花がいくつも咲いているのが見えた。


 声を潜めて、二人が言った。


「時の花だ。あれです」


「あんなにたくさん……」


 私はうなずきつつ、巨木の方へと歩いていく男達を見つめる。


 竜の姿も、ユグドラシル様の姿も見えない。


 私は心の声へと耳を傾けた。


「どういうことだ……どういうことだ! いないじゃないか!」

『竜が絶対にいるはずだ! それなのに、何故⁉』


「おい! お前が言ったんだろう! 竜族の生き残りがいれば竜の居場所が分かるっていったじゃないか! どういうことだよ」

『くそ。竜一頭で五年は遊んで暮らせると思って、ついてきたのに!』


 男達は声を荒げ、それから仲間割れのような会話を繰り広げ始める。


 そんな中、ノア様は泉の方をじっと見つめながらじっと立つ。


「おい! お前、嘘をついたな! もう用済みだ!」


『くそくそくそ!』


 そう言うと男がスイッチらしきものを手に持ちかかげた。


 それを慌てて他の男が止める。


「よせ! こいつは竜族だぞ! こいつだけでも高く売れる!」

『ただ働きにするつもりか!』


 男達が言い争っていた、その時だった。


「……生きていたのか……」


『神よ……』


 ノア様の瞳から一筋の涙が零れ落ちるのが見える。


 私達は男達が言い争っていること、そしてスイッチが見えたことで動き始めた。


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