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累計20万部突破 完結済【書籍化・コミカライズ】心の声が聞こえる悪役令嬢は、今日も子犬殿下に翻弄される   作者: かのん
第四章

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7話

 自分がどこにいるのか、頭の中がふわふわとする感覚に包まれながら私は目を覚ました。


 見知らぬ天井が見え、私は体を起こすと、一瞬、何か大切なことが頭の中から抜け落ちてしまっているような感覚に陥る。


「何かしら……」


 戴冠式自体は夜に行われる予定であり、それまでの間、今日は街を見て回る予定となっている。


「誰と……」


 頭の中に霧がかかっているような感覚に、私は瞼を閉じて、それからゆっくりと開き、そしてはっとする。


「あら? 私、寝ぼけていたのかしら。急いで準備をしなくちゃ。今日はアシェル殿下と一緒に街を散策! ふふふ。楽しみだわ」


 起き上がった私は、侍女に手伝ってもらい簡単な朝食を自室で取り過ごす。


 その後に街を散策するために、ロマーノ王国流行りの服装に身を包み、アシェル殿下のいる隣の部屋へと向かった。


 一応外側から。


 内側にも通れるようにと扉はあるのだけれど、やはり少しそれを使うのはなんだか恥ずかしくて外側から行く。


 部屋の外にはノア様が控えており、私はノア様と共にアシェル殿下の部屋へと返事があってから入室する。


 アシェル殿下も、街の若者風の服装だけれど、やはり雰囲気が違う。


 どこからどう見ても王子様だ。


 私は胸がきゅんとときめきながら、アシェル殿下は何を着ても似合うなと思いつつ、これは今度、服飾職人を呼んで、アシェル殿下に一番似合う洋服を考えてみるのもいいかもしれない、なんてことを思う。


「おはよう。エレノア。どうしたの? 僕、どこかおかしい?」


 私があまりにも見つめるものだから、少し心配そうなシェル殿下も可愛い。


「いえ、あまりに素敵だったので、見惚れてしまいました」


 素直にそう告げると、アシェル殿下は嬉しそうに微笑んだ後、私に歩み寄ると、私の手を取り、手の甲に口づけを落とす。


「エレノアも。すごく可愛い。ふふふ。エレノアってば、可愛すぎて、普通の町娘には到底見えないね!」

『あんまり他の人には見せたくないくらいだよ』


「まぁ。ふふふ」


 私達は笑い合い、手をつなぎ合うと、街へと出かけることになったのであった。


 今回、ロマーノ王国側より来賓の者やその護衛や侍女などには全員その証である指輪が配られている。


 街の人達もそれを周知しており、その証を付けた者には不敬を働かないようにという指示が出されているらしい。


 また指輪には様々な魔法がかけられているということであった。


 道に迷わないようにという魔法や、不敬な対応をした者を記録する魔法などがあるとの話しだった。


 街へいくためにと、丸い球が支給されており、同室にいる者は全員転移できる魔法が込められているとのことであった。


 ノア様も、騎士服からロマーノ風の服へと着替え、私達は今回三人で出かける。


「エレノアがやってみる? 面白いよね」

『こういうのってわくわくするよね!』


 私は慌てて首を横に振った。なんだか自分がするとうまくいかない気がしてお願いをする。


「えっと、アシェル殿下お願いします」


「え? いいの? わーい。じゃあ、行くよ!?」

『魔法っておもしろいなぁ!』


 アシェル殿下は床に球体を打ち付け、次の瞬間、私達は煙に包まれると同時ににぎやかな街の広場に立っていた。


「わぁぁぁ」

『すごいな。本当に一瞬だ』


「賑やかな、街ですね!」


「エレノア様、アシェル殿下、私は後ろに控えておりますので、街の散策をお楽しみください」

『二人共楽しそうで何よりだ。問題が起きないといいのだがな』


「ノア様いつもありがとうございます」


 そう伝えると、ノア様は優しく微笑んだ。


 ちなみにノア様もかなり目立っており、アシェル殿下もノア様も、街の女性達がちらちらとこちらを見てくるのが分かる。


 この街の広場は移動してくる人達の現れる場所として決まっているのか、次々に私達以外にも煙に包まれて現れる人々がいた。


 それを見ても周りは驚く姿もないので、これが日常なのだろう。


 アシェル殿下は私の手を取ると繋ぎ、にっこりと微笑んだ。


「エレノア行こうか。手を離しちゃだめだよ」

『はぁ。さすがはエレノア。すでに男性達の視線を引き付けている。だめだよ! 僕のエレノアだからね!』


「はい。アシェル殿下」


 私も、街の女性達にアシェル殿下を取られないようにと、手をぎゅっと握り返した。


 ロマーノ王国の町には、様々な店が並んでいる。


 サラン王国よりも装飾品などがより細かく、少し暗い印象のある店も多い。


 魔法についての代物が多いからか、店先に並んでいる品物はサラン王国とは全く違う。


「すごいですね。魔法の物がたくさんあります」


「本当だね。見て。魔法の杖が、売っているよ! わぁぁ。かっこいいなぁ」

『僕も魔法使ってみたいよ』


「かっこいいですね。私も魔法使ってみたいです」


 ただ、この魔法と魔力についてだけれど実の所ロマーノ王国以外だとその力が発現できないということが現在分かっていた。


 それ故に、ロマーノ王国以外で魔法は使うことが出来ず、故にロマーノで生まれた者はロマーノの外に出て行くことはほとんどない。


 魔法が他の場所だと使えない理由については現在調査が進められているようだ。


 私達は店を見て回りながら、魔法の不思議さに魅了されていく。


「なんだか少し怖い雰囲気もあるけれど、やっぱり面白いよね」

『なんだか、絵物語とかに出来そう』


「そうですね。でも本当に不思議です」


 人々はとても賑わっており、店も繁盛している様子であった。ただ、時々気になることもあった。


「アシェル殿下」


「うん……僕も少し気になっていた」

『あの、路地裏にいる人達でしょう?』


 私がうなずくと、アシェル殿下は心の中で静かに言った。


『たぶん、魔力なしの人たちなんだと思う……そこまで多くはないと聞いていたけれど……ロマーノ王国のこれからの課題だね……』


 魔力がなければ迫害される。


 そして魔力がないと分かった時点で捨てられる子どもが多いのだろう。


 路地裏には子どもの姿も見られた。


 違う国で生まれていたならば、問題がなかたはずなのに。


 ロマーノ王国に生まれたがために、迫害される日々。それは迫害される人々の心をどれだけ削ることなのだろうか。


『大丈夫。きっとレガーノなら、国を良い方向へと変えていくことが出来るさ』


 私はアシェル殿下の言葉にそうであると信じたいと、そう思ったのであった。


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