十九話
オリーティシア様もジークフリート様にエスコートされついてきてくれた。
舞台の上に上った私はアシェル殿下に視線を向けると、すっと会場に向かってアシェル殿下が手を向ける。
『君が伝えたいことを、その心のままに伝えて。大丈夫。僕は君を信じてる』
今、ココレット様の背中を支えられるのは私達しかいない。
同じ女性として、同じ不思議な能力の持ち主として、出会ったばかりだけれど友人として。
私はココレット様の横に立つと、その手をぎゅっと握る。
「皆様、ココレット様と共に私は地下へとレプラコーンを追いかけて行きました。そこで目にしたのは巨大な古竜。このままでは何が起こるかわかりません。信託は彼女を選び、そして彼女こそ、今、ここにいる周辺諸国を救う女性なのです」
オリーティシア様も前へと進み出ると、澄んだ通る声で言った。
「今すべきは、危機に対して一致団結する事。予言の乙女を中心にして、皆で力を合わせる時が来たのです」
ココレット様を見つめる視線が変わり始めるのを肌で感じた。
心の声も変わっていく。
『そうだ。今は危機に対処するのが先決』
『神々の信託だ。信じるしかない』
『一致団結するのが得策だろう』
人の心とは意図も容易く変わるし、他人の言葉に左右される。
だからこそ、芯をもって言葉を紡ぎ、語り掛けていく必要があるのだ。
私は会場にいる人々を真っすぐに見つめながらそう思った。
ココレット様の背筋がしっかりと伸びている。侮られないように、気を張っているのが分かる。
危機に対して一致団結するということは、綻びを作ってはいけないということ。
一度できた綻びは、気が付いた時には大きな亀裂となる。だからこそ、今はそうしたものを作らないようにするのが最善だ。
神々がここでこの子が予言の乙女ですとはっきりと告げてくれたならばもっと受け入れられるだろう。けれど、それではいけないのだ。
ココレット様は前を見据えた。
「未来をはっきりと見ることが出来ました。これより緊急会議を開かせていただきます。各国代表者は会議場へと移動をお願いいたします」
『ここからは時間の勝負だがよ』
一体何が起こるのだろうか。
私自身ココレット様から何が起こるかを聞いた訳ではない。
だからこそ不安はある。
けれど、最善を尽くしていくしかないのである。
私達は会場を移動すると、各国の代表者が集まる会場へと入った。
不思議なことに白い壁や椅子など以前は少し冷たく硬質に見えたものがココレット様の放つ乳白色の温かな色合いによって温かさを感じられるようになった。
私とオリーティシア様はココレット様を支える為に一緒に会議へと参加することとなった。
各国の代表者達の表情は厳しい。一体何が起こるのか分からないからこそ不安もあるのだろう。
ココレット様に頼まれた物を私とオリーティシア様は準備をし、机の上へと地図を広げ、チェスのコマを指示された場所に立てていく。
指示された場所は、各国の王都近くや森の中、無人島、かなり広範囲に及ぶ。
一体なんだろうかと思っていると、私達のいるこの神々の島にもコマが置かれた。
ココレット様は静かに深呼吸をすると口を開いた。
「これから、古竜が目覚めたことに起因して地脈が乱れ、各箇所にある火山が噴火します」
ココレット様の言葉に、皆が息を呑む。ただ、ココレット様の言葉に誰も言葉を挟むことなく聞き入っている。
「古竜は火山の地脈を落ち着かせる役割を果たしているので、最小限にこの事態を防ぐためには古竜を迅速に眠らせること、そして周辺諸国の皆様には、被害を最小限に防ぐために動いてほしいのです」
声が上ずっており、心の声が聞こえないほどに、緊張して言葉を発しているのが分かる。
「火山の噴火に備えて人の安全確保が最優先です。そして戦える者はここに残り、古竜をもう一度眠らせるために尽力いただきたいのです。古竜の役目は地脈を落ち着かせること。けれど間違えて目覚めてしまったようなのです。神々は古竜を迅速に眠らせてほしいと、地上に生きる者達の為にそう願っています」
ココレット様の言葉に、アシェル殿下が口を開いた。
「では、割り振りと明確な場所と時間、そしてどのくらいの規模の者なのか分かる範囲で教えて言っていただけますか? それを元にして周辺諸国で割り振りをしましょう」
『エレノア。ココレット様から聞いてメモをしてこちらに持ってきてもらえると助かる』
私はうなずいた。
「では、私が聞き、まとめてそちらへと持っています」
アシェル殿下はココレット様に向かって言った。
「私の方で周辺諸国と割り振りを話している間にエレノアに伝えていただけますか?」
『時間がないな。古竜への対応策も考えて行かなければならない』
その時、獣人の国のカザン様が口を開いた。
「では、私の方では古竜への対応策を考えていこう。ココレット嬢は、古竜を眠らせる方法があるのであれば教えてほしい。あと各国出せる兵力を教えてほしい」
『こりゃあ厄介だ。古竜か……伝説級の化け物を眠らせるにはどうしたものか。下手をすれば周辺諸国が滅亡の危機か。そりゃあ神々も信託を落とすはずだ。信仰する人間がいなくなるのは嫌だろうからな』
私とオリーティシア様はココレット様から情報収集を行い、それを伝達する役割を果たしていく。
ココレット様には無数の未来が指輪をつけたことによって鮮明に見えだしたらしく、頭を押さえながら細かに教えてくれた。
ただ、ずっと見えている状況だからなのか頭が痛い様子であり、私は少しでも痛みを和らげられるようにと、医務室へと向かった。
氷嚢と頭痛薬があればそれを持っていこうと思い中に医務室へと入り、氷嚢を準備し持っていこうとした。
その時、ヴィクター様が医務室へと入ってくると私の前までやってきたのであった。
春はお腹がよく空きます。
パンケーキ食べたい\(^o^)/
チョコレート食べたい!
そして、肉。肉食いたい(・∀・)






