海といろいろ(9)
続きです。
水に潜って、息を止める。
こもった泡の音と自分の鼓動の音に包まれた。ここまではお風呂に潜ったときと同じ。
けれども目を開けば全く違う景色が広がっている。海水は程よく冷たく、ところどころ温かった。体は波に不規則に揺られ、安定しない。けれども不思議と嫌な感じはしなかった。
実はゴーグルをどこかに放り投げてそれきり持ってくるのを忘れてしまっていた。塩水ということもあって、少し恐る恐る目を開いたが思ったより目に滲みなかった。なんならプールで目を開けたときよりも滲みない気すらする。まぁどっちにしろたぶん目にはよくない。
今居るのはまだ足のつく深さ。
ちょっと潜ればすぐ地面に手が届く。
地面はさらさらの砂。
指先が掠るだけで簡単に舞い上がった。
「ぷは」
一旦息継ぎで海面から顔を出す。
姿勢は中途半端な膝立ちだ。陸上で同じ姿勢をしたら即倒れるだろう。
するとそこに手だけ平泳ぎをしてさくらがやって来る。
「どう?初めての海は?」
「......魚とか居ないんだね」
「居るところには居ると思うわよ」
「まじぃ?」
そんなことを話していたら、そこに近くでざぶざぶやっていたみこちゃんたちもやってきた。
二人は完全に歩いている。
頭の上からどらこちゃんの声が降ってきた。
「向こうの方に磯......?があるみたいだからそっち行かないか?」
「私たちちょっと疲れちゃいまして......。一緒にどうですか?」
みこちゃんもひょっこり顔を覗かせて言う。
「磯いず何......?」
さくらが首を半周させて指を指す。
その先には少し離れているが、ゴツゴツした黒い岩が海を縁取っていた。
「あれが磯。たぶん小魚くらいはいると思うわよ」
「むむぅ......。じゃ行ってみよか」
手でひさしをつくって目を細める。
「なるほど」
「何よ......?」
「せっかくなんだし泳いで行かない?こうぐいーっと......」
私の言葉にあからさまにどらこちゃんが嫌な顔をした。
それに気づいたみこちゃんが割り込む。
「あぁっと......私たちは先に行ってますから、お二人で」
こそこそどらこちゃんがみこちゃんの背後に隠れた。
「分かった。ほんじゃ後で......」
「いやなんで私は着いてくの前提なのよ......」
さくらが私の肩にのしかかる。
その顔を覗き込む。
何を思ったのか、私が何も言わないうちに言った。
「あ、別に着いてかないってわけじゃないから」
結果的には、そのまま二チームに分かれた。
みこちゃんたちは既に砂浜を目指して歩き出している。
「じゃ私たちも行くわよ」
「どうせなら沖まで......」
「あんま待たしちゃ悪いでしょ......まぁちょっとだけね」
有り余った体力を腕に込める。
その腕で水をかいて方向転換をした。
太陽の光を反射する水平線を指さす。
「れっつら......?」
「あんなとこまで行かないわよ」
「ごー......」
続きます。




