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きらきら・ウォーゲーム  作者: 空空 空
きらきら・ウォーゲーム
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カラーカテゴライズ(8)

続きです。

「それじゃ、始めようか」

 言葉と同時に、炎が燃え上がる。

しかしその炎が盾を完全に飲み込むことはなく、盾も少しずつ肥大化しているように見えた。

「どうするよ......?」

 どらこちゃんの掌が一層大きく燃え上がる。

「こっちは三人。手数で攻めるよ!」

 言って剣を放り捨てる。

「ちょっと......それどうすんのよ?」

 勿体ないじゃないかと、さくらが聞いてくる。

 その答えを今見せてあげようと、ゴローを呼んだ。

「ゴロー......あれを」

「あれって何ニャ......?」

「......」

「え?ほんとに何......?」

「三角定規......」

 小声で囁く。

新しい武装のお披露目の時間だ。

「なんかよく分かんないけど......使わないなら借りるわよ」

 さくらは私が捨てた剣を拾う。

忽ちそれは闇のエネルギーに包まれた。

さくらはその様を物珍しそうに眺めている。ちょっと持ってみたかったのかもしれない。

 そうしている間にも、ゴローから三角定規が届く。

受け取ると、それは拳銃に姿を変えた。

「......つっても、水の弾丸出すならただの水鉄砲だろ......」

 ロマンのないことを言うどらこちゃんの言葉は聞かなかったことにして、両手で銃を構えた。

「準備は終わったみたいだね......」

 体の周りを炎と、水と、木が渦巻くようにして取り囲む。

 そのてんこ盛りな姿に圧倒されないように、がむしゃらに攻撃を仕掛けた。

 黒い金属の塊から吐き出された水の塊は目にも止まらぬ速度で、敵に到達する。

その弾丸は頬を掠めて微量なダメージを与えた。

 その発泡音を合図に、こちらの猛攻が始まる。

どらこちゃんは持ち前の力強さで火球を連続で放り、さくらはエネルギーを斬撃に乗せて飛ばす。

銃弾ほどの速度はないにせよ、その一撃は重たかった。

しかし、当たらなければ意味がない。

 炎の球は水流に飲み込まれ、斬撃波は捩れながら伸びる木を抉るだけで本体には到達しない。

「その程度?当たらないじゃん」

「あいつ......ムカつくわね」

 鼻で笑う姿に、さくらが正直な評価を下す。全く同意だった。

 その怒りも乗せて引き金を引く。

攻撃は完全に防がれるかかするかしかしないが、三人ということもあって相手は完全に後手に回っている。

自分ではまだ気づいていないようだが、私たちの攻撃を捌いているばかりで攻撃出来ていない。

「なんか......側から見る分には雪合戦みたいですね......」

「本人たちは真剣ニャ......」

 色々な属性が混じり合って両陣営変な風に光っている。

考えてみればお互いに棒立ちで攻撃のぶつけ合いというのは確かに間抜けな様だった。

「ゴロー!」

 どのみちこのペースは崩さなければならない。このままでは勝敗が決する前に日が沈んでしまう。

「今度は何ニャ......?」

 攻撃の通りそうな場所に照準を合わせながら、ゴローと話す。

「今度必要なのは......」

「必要なのは?」

「必要なのは、ゴロー!」

 尻尾を掴んで、そしてゴローを放り投げた。

くるくる回りながら、ゴローが空中に弧を描く。

「うわっ......何だ!?」

 突然の魔球にサメの頭が上を向く。

「ぬいぐるみは投げるものじゃないニャ!」

 私たちから注意が逸れる。

「なるほどね......」

「囮ってわけか」

 どらこちゃんたちが、このチャンスに渾身の一撃を用意する。

 炎は燃え盛り空気を焦がす。

熱が破裂するように熱風となって吹き抜けた。

 闇は光を吸収し、風景をねじ曲げる。どんな闇よりもドス黒く、禍々しく、やっぱり光っていた。

「なっ......囮!?」

 今まで余裕綽々だった表情に焦りが汗となって現れる。

一瞬の隙が命取りとなって、交差する二つのエネルギーが襲いかかる。

戦い始めてからの初めてのクリーンヒット。

 二つの渦巻く力の流れをその大きくもない体で受け止めると、その体は大きく空に舞い上がった。

 空中でのけぞる体に更に銃弾を打ち込むと、より遠くに運ばれてしまう。

その姿は強風の中踊るビニール袋みたいだった。

 エネルギーの残滓が煙となってたち込める。

地面を転がるシルエットをみこちゃんの発光が照らし出していた。

 そのシルエットが地面に手をついて立ち上がる。

「クッソ!囮なんて卑怯だぞ!」

 この子はどうもちょっとした小細工に引っかかる運命の持ち主らしい。

二度も私の策にハマったことになる。

「まぁ......囮のつもりではなかったんだけど」

 ひょっとするとそれは囮なんかよりずっと汚い手段。

不意打ちだ。

 煙の中にもう一つ大きな影が立ち上がる。

煙に包まれていてもはっきりと分かる筋肉の盛り上がり、満身創痍の少女の前に立ち塞がるのは筋骨隆々の猫執事だった。

「あ......な......な、何......これ?」

 戦力外だと思っていたのが、こんな姿で現れたらそりゃ驚くだろう。

「パワードゴロー、参上ニャ」

 言いながら正拳突きを披露する。

ほとんどタメなしで繰り出されたそれは空気を弾き、辺りに充満した煙を一瞬で晴らした。

大きな破裂音に耳鳴りすら聞こえる。

「くっ......!」

 その圧倒的な筋力の前に狼狽える。

大きな影が体にかぶさり、拳を振り下ろそうと体を捻る。

 その時だった。

「ニャ......!?」

 紫色の光が炸裂する。

闇の光に近いものを感じるが、ずっと密度が薄い光でその属性は判然としない。

その光をゼロ距離で受け止めるゴローは吹き飛ばされこそしないが、防御姿勢をとって身動きが取れなくなっていた。

「来た!進化!勝利の女神は私に微笑んだぞ!」

 光の中心で、歓喜の声を上げる。

光は私たちの場所へも流れ込み。

強風の様に駆け抜ける。

「くっ......」

「大丈夫か......?」

 吹き飛ばされそうになるが、どらこちゃんに支えられてなんとか踏ん張る。さくらも掴まって吹き飛ばされまいとしていた。

みこちゃんは道の隅でしゃがみ込んでいる。

「遂に私は属性を超越した!今手にした力......万能!私は勝つんだ!」

 万能。

一切の相性を無視するということだ。

それはどんな場合でも有効打となる。

 しかしどらこちゃんの表情はそれを聞いて一変する。

「なんだ......そんなことか......」

「え......?」

「そんなことって......どうすんのよ、これ?」

 体からどらこちゃんの支えが失われる。

「え......あ、ちょ!?」

 瞬間上体が煽られてもつれる。

さくら共々吹き飛ばされてしまった。

「......ったぁ」

 転がされて打ちつけた尻をさする。

さくらはちゃっかり私をクッションにして被害を最小限に抑えていた。

 視線だけ前に戻す。

猛烈なエネルギーの流れの中で、どらこちゃんはドラゴンを彷彿とさせる炎の翼を形作り、その中心に向かって行っていた。

「何のつもり......?」

 エネルギーが一層高まる。

範囲外に吐き出された私たちの元へも再び光の帯が伸び始めていた。

「万能。その名の通り弱点がないってわけだ」

「そう。私の能力に弱点は無くなった。あんたたちは敵わないってこと」

「だが!」

 どらこちゃんが食い気味に否定する。

「だが、秀でた点もない。何にでも効くが、一番じゃない。お前は属性を捨てた。それがお前の......敗因だ!」

 炎の翼を使って飛び上がる。

どらこちゃんの全身は螺旋を描く炎に包まれた。

「別に火は私の弱点じゃないんだけど?」

 言葉と共に、光の流れも激しくなる。範囲が狭まり、逆に密度が増しているようだった。

しかし、どらこちゃんは動揺すらしない。

「お前は自分の能力の本質を理解してない。自分で言っていただろ?単なる有利不利ではない。それぞれの属性で性質がまるで違うんだ」

 炎の温度が極限まで高まり最早光の塊と化す。

「炎は圧倒的破壊の権化!突き抜けた個に、器用貧乏は敵わないんだよっ!」

 光と光が衝突する。

エネルギーの渦には炎が混ざりだし、しまいにはそのまま炎の渦と化してしまった。

 しかしその炎も突然音もなく消える。

「あらら......使えなくなっちまった」

 残念そうに呟くどらこちゃんが立っていた。

その前に土まみれで立つ少女の服の隙間からは、粉々に砕けた宝石が溢れるのだった。

 溢れる光の粒がゴローに吸い込まれていく。

「勝った......」

「なんか......あれ、横取りじゃない?」

 さくらが隣で呟いた。

「確かに。それは少し思った」

 こうして、私はまたキラキラ粒子を蓄えたのだった。

続きます。

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