ランチタイム(22)
続きです。
家に上がるとすぐにリビングに通される。
前来たときと変わり映えしない、普通のリビングだ。
「待ってて〜。今おやつかなんか用意するから。あ、椅子座ってな」
「あ、はぁ・・・・・・」
相変わらずのみこ母のペースに乗せられるまま、近くの席に着く。
みこもとりあえずといった感じであたしの隣に座った。
「なんか・・・・・・すみませんね」
「あぁいや、いいんだ。ていうか邪魔してるのはあたしの方だしな」
言いながら隣に座ったみこの横顔をちらりと見る。
やはり見たところ特に具合が悪そうにも見えない。
顔色もよく、表情も穏やか。
あまり人の心を読み取るのに長けているわけじゃないが、もう何ということもなさそうだ。
まだみこ母は戻らなそうなので、一足先にあたしの話を始める。
「なぁ?」
「・・・・・・? なんですか?」
あたしの声に応じるみこの顔には思い詰めた様子もない。
何かを伝えようという意思も無さそうだし、あたしの知らないところであたしの知りたかった何かは解決したのかもしれなかった。
だとしてもその正体を知りたい気持ちは変わらない。
「あのさ、結局・・・・・・あの給食のとき。あのときどうしたんだ? 様子が少し変っていうか、まぁ・・・・・・ほら心配だったからさ」
「ああ、あれはですね・・・・・・」
みこは少し何かを考えるように、あるいは思い出すようにして視線を上に向ける。
「そうですね。あのときは・・・・・・はい、ちょっと具合が悪かっただけ、ですね」
「・・・・・・そうか? その・・・・・・いやもちろんあたしの勘違いかもしれないんだが、こう・・・・・・何か言おうとしてなかったか?」
「・・・・・・そう、でしたかね? あはは、忘れちゃいました」
みこはそうやって至って自然な表情で笑う。
その笑顔の前では・・・・・・。
「そう、か・・・・・・」
これ以上の追求などとても出来ないのだった。
なんだろう。
あたしが気にしすぎなだけだったんだろうか?
本当にただ具合が悪くて、それを読み取り違えただけなんだろうか?
正直、違和感は消えない。
けど、じゃあみこが何かを隠しているとして、どうしてそんなことをするかも分からない。
確かに、あんまり主張の多い子って風では無さそうだが、それにしたって・・・・・・。
「・・・・・・いや、分からないか」
みこは明らかに何か考え込んでいるあたしの顔を首をかしげるようにして覗き込む。
その視線に気づいて、すぐに取り繕った。
本当ならもう少しずかずかと色々聞きたいのだが、どうしてかみこの前だとそれが難しい。
なんというか、そうしてしまうと今の距離感が容易く失われてしまうような気がした。
今のままでは、真相はただのみこの体調不良ということで片付けるしかなくなる。
だがその結論ではやはりしっくりこない。
誰かがもう少しこの話題に切り込んでくれたらと思うのだが・・・・・・。
「お待たせ〜」
と、そこに丁度に缶のお菓子箱を持ったみこ母が既に中身のクッキーを一枚かじりながらやってくる。
元々「何故みこを休ませたか」というのをこの人が話すと言ってあたしを招き入れたのだ。
それに、この人なら色々無遠慮に踏み込んでくれそうである。
うまくいけば、もっと納得のいく答えが得られそうだ。
みこ母がテーブルに缶を置いて空いている席に座る。
さて、では色々と聞かせてもらおうか。
続きます。




